ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アハティサーリ」の意味・わかりやすい解説 アハティサーリAhtisaari, Martti [生]1937.6.23. フィンランド,ビープリ︵現ロシア,ブイボルグ︶ [没]2023.10.16. フィンランド,ヘルシンキ マルティ・アハティサーリ。フィンランドの政治家。大統領︵在任 1994~2000︶。数々の国際紛争の調停役として知られ,平和解決に尽力した功績が認められ,2008年ノーベル平和賞︵→ノーベル賞︶を受賞した。 フィンランド領ビープリ︵当時。→ブイボルグ︶に生まれ,ソ連=フィンランド戦争でビープリがソビエト連邦に割譲された際に家を失う。フィンランド中南部のクオピオに移り住み,その後北西部のオウルに引っ越す。1959年オウル大学を卒業し,1960年代前半にはパキスタンでスウェーデン国際開発協力庁の教育プログラムに携わった。帰国後の 1965年外務省に入省,1973~76年駐タンザニア大使として赴任し,1975~76年にはザンビア,ソマリア,モザンビークの特命全権公使も兼ねた。1977~81年,内乱で荒廃したナミビアで国際連合事務総長特別代表として紛争調停に尽力,1980年代を通して外務省に籍を置いたまま国連代表としてナミビア紛争に取り組み,1989~90年国連チームを率いてナミビアの独立を見届けた︵→ナミビア問題︶。1992~93年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の和平協議でも,重要な役回りを演じた。 1994年大統領選挙に勝利すると,フィンランドのヨーロッパ連合EU加盟を進めた。1999年EU議長国となり,同年6月にはEU代表としてコソボ紛争終結のために仲介の労をとった。しかし内政面ではふるわず,2000年に行なわれた大統領選挙では候補になることはできなかった。その後,紛争調停を専門とする非政府組織﹁危機管理イニシアチブ CMI﹂を設立。2005年にはインドネシアのアチェ独立紛争の調停役を務め,政府と反政府武装組織自由アチェ運動 GAMとの和平合意にこぎつけた。同 2005年,国連暫定統治下のコソボ自治州の最終的地位交渉に向けて国連事務総長特使に任命され,2008年2月のコソボ独立への流れをつくった。これらの国際紛争解決への貢献が評価され,同年ノーベル平和賞を受賞した。2009~18年世界の紛争や問題の解決をはかる国際的指導者のグループ﹁ジ・エルダーズ﹂The Eldersに参加。2000年 J.ウィリアム・フルブライト国際理解賞,2008年国際連合教育科学文化機関 UNESCOのフェリックス・ウーフェ=ボワニ賞受賞。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
日本大百科全書(ニッポニカ) 「アハティサーリ」の意味・わかりやすい解説 アハティサーリあはてぃさーりMartti Ahtisaari(1937―2023) フィンランドの政治家。2008年にノーベル平和賞を受賞。ビープリ︵現、ロシア領ビボルグ︶に生まれる。1939年のソビエト・フィンランド戦争によって故郷を追われた。1959年にオウル大学を卒業。高校教師を経て、1965年に外務省に入り、対外経済協力部門で活動したのち、1973年タンザニア大使に就任した。1978年に国連ナミビア特別代表となり、フィンランドにおいて対外開発銀行の総裁を務めながら、ナミビア問題の解決に尽力した。ナミビアは1990年に独立を果たし、アハティサーリは、一躍注目を集めることになった。1991年に外務大臣に就任、1992年から1993年にかけて、ボスニア・ヘルツェゴビナ和平交渉に国連特別顧問として参加した。1994年には社会民主党から大統領に立候補して当選、2000年まで務めた。大統領を退任後も、世界平和に貢献するために、NGO︵非政府組織︶﹁危機管理イニシアティブ﹂︵CMI︶を立ち上げ、インドネシアのアチェー問題に取り組み、インドネシア政府と独立派組織との仲介に努力、2005年の和平文書署名に導いた。また、コソボ紛争でも調停者の役割を担い、2005年から国連事務総長の特別使節として活動、和平交渉は成功しなかったが、2008年にコソボは独立宣言を発表している。そのほか、北アイルランド紛争、アンゴラ内戦、ソマリア内戦、イラク戦争の調停にもかかわった。 2008年、ノルウェーのノーベル賞委員会は﹁世界各地の国際紛争の解決に30年以上も努力を続けてきた﹂として、アハティサーリにノーベル賞を授与した。オウル大学、ヘルシンキ大学など多くの大学から名誉博士号を贈られた。2008年6月︵平成20︶に来日している。 ﹇編集部﹈ [参照項目] | コソボ紛争 | ソビエト・フィンランド戦争 | ナングロ・アチェー・ダルサラム | ビボルグ | ボスニア・ヘルツェゴビナ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例