ロマン主義(読み)ロマンシュギ

デジタル大辞泉 「ロマン主義」の意味・読み・例文・類語

ロマン‐しゅぎ【ロマン主義】

 
romanticism1819  

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ロマン主義」の意味・読み・例文・類語

ロマン‐しゅぎ【ロマン主義】

 

(一)   ( [] Romanticism  )[  ]  
(一)[](1908︿)
 

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ロマン主義」の意味・わかりやすい解説

ロマン主義 (ロマンしゅぎ)


1819

 romanticismromantismeromanceromanromantic︿17J.T.E.romantique

 180018180218041836︿mal du siècle

 1800181020Waverley Novels9

 177020J.P.

 182030183018431820

 

 192020
   


18︿︿1819西

 ︿1798-99

 ︿1817182218241827-28182032調

 

 

 

 30西西


︿︿︿1889189118891890

 

 20301897退1897

 30403040

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロマン主義」の意味・わかりやすい解説

ロマン主義
ろまんしゅぎ
romanticism 英語
romantisme フランス語
Romantik ドイツ語


18西19romanticromantiqueromanromance171819classic


プレ・ロマン主義の時代


1817()退18()()

 181789()()1798()


欧米諸国のロマン主義

ドイツ

ドイツはもともと形而上(けいじじょう)学的思考を好む国民性があるだけに、ロマン主義はいっさいを自我の所産とするフィヒテの絶対的観念論やシェリングの神秘的な自然哲学に大きく影響されながら深化し、芸術家の自己創出であるとともに自己超克でもある「ロマン的イロニー」の概念を中心に絶対・無限なるものへの憧憬(しょうけい)を難解な詩(ポエジー)理論、というより一種の哲学に結晶させた。ノバーリス、ティーク、ついでブレンターノ、アルニム、クライスト、ヘルダーリン、ジャン・パウル、それにアイヒェンドルフ、ホフマン、シャミッソーなどの幻想作家や若きハイネなどがロマン派に数えられる。

[加藤民男]

イギリス

イギリスではシェークスピアを生んだ国柄から想像力の文学は特別な運動も理論化もなく自然に開花し、シェリーとキーツにおいて叙情性と理想主義と、それにロマン主義の一性格たる社会不正の告発が斬新(ざんしん)なイメージに表現されて至純な詩世界を結実させ、バイロンは近代社会に反抗して不安と絶望にさいなまれる魂を激烈に描出してその生き方ともどもまさしく反逆的ロマン主義の化身となった。他のロマン派としては、中世を舞台とする歴史小説を開拓したスコット、ブレイクとバーンズの両詩人、ラム、ハズリット、ディ・クウィンシーなどの散文家がいる。

[加藤民男]

フランス

フランスでは早くスタール夫人が北方のロマン主義文学の移入を説き、シャトーブリアン、セナンクール、コンスタンによって革命後の社会に生きる青年の苦悩が深刻に表現されながら、古典主義の牙城(がじょう)であったために、ラマルチーヌは別にして、ユゴー、ビニー、ミュッセ、デュマ、ネルバルらのロマン主義が勝利を収めるには約20年にわたる闘争を必要とした。戦いは詩歌、とくに演劇の革新をめぐって展開され、世界を全的に表現しようとするロマン主義劇の成立をみた。さらに芸術の自由は政治の自由と結び付き、七月革命以後はブルジョア体制批判の姿勢を強めてロマン主義的社会主義を生み出すに至る。特筆すべきは、スコットの影響を受けて歴史小説が流行すると同時に、その手法で人間を社会との関連において描写する発想が生じ、ノディエ、ゴーチエらの幻想作家とは対照的にスタンダール、バルザック、メリメら現実を直視する小説家が、後の写実主義への道を切り開いたことである。これはイギリスのディケンズにもまた当てはまるであろう。

[加藤民男]

南ヨーロッパ

南ヨーロッパにもフランスを媒介にしてロマン主義は伝播(でんぱ)し、とくにイタリアではオーストリアからの独立・国家統一運動(リソルジメント)と一体となって強い政治色を帯び、自由主義とキリスト教に裏打ちされた愛国的文学の確立へと高揚した。マンゾーニの歴史小説はその頂点である。ほかにペッリコを中心とするミラノの『調停者(コンチリアトーレ)』誌に拠(よ)るブレーメ、ビスコンティなどがあげられるが、レオパルディも手法こそ古典的ではあるが、感情の深さによってロマン主義の先駆者と考えてよい。

[加藤民男]

北ヨーロッパ

北ヨーロッパのロマン主義はオランダでは低調であったが、スカンジナビア諸国において概して活発に展開され、ロシアではプーシキン、レールモントフを生み出すことによってこの国に近代文学の誕生をもたらした。ミツキェビッチに代表されるポーランドのロマン主義は、列強による国土分割、さらにはロシアの支配という悲運を直接に反映して、イタリアの場合同様、民族主義的で愛国的な政治色を帯びている。

[加藤民男]

南北アメリカ

最後に南北アメリカに目を転じると、南米ではそれぞれの宗主国からの旅行者や亡命者によってロマン主義がもたらされ、とりわけアルゼンチンとブラジルにおいては先住民インディオを正しく理解しその習俗を描出しようとしたところに特徴をもつが、北米のアメリカ合衆国では反逆すべき既成の芸術原理に欠けていたうえに、ピューリタニズムと功利精神に阻まれて開花が遅れた。しかしスコット流のクーパーの小説やエマソンの超絶主義のほかに、アービング、ロングフェロー、ホーソン、ホイットマン、メルビルらに独特のロマン主義的傾向を認めることができる。ポーはロマン主義的というより、むしろボードレールに先行する近代性(モデルニテ)の詩人である。

[加藤民男]

ロマン主義の本質

このように、それぞれの国ないし民族の事情に応じて多種多彩に花咲いたロマン主義の本質を、明確に定義することは容易ではない。むしろ定義しえぬところにその最大の特徴があるとさえいわれるほどである。しかし、ただ一つ確言できるのは、それがフランス革命直後の西欧の市民社会形成期に発生した文学・芸術であるという事実である。この革命は自由と平等を高く掲げて非合理な秩序を打破し、生の深い現実に根ざした真実を希求する理想主義を高揚させた。ところが、その理想主義がたちまち直面したのは、出生による不平等にとってかわった富による不平等であり、その結果、解放されながら抑圧された自我は、精神の尊厳をかざして功利主義的体制に反逆するのでなければ、いたずらに不安、倦怠(けんたい)、無為、焦燥を徴候とする「世紀病」に冒され、あるいは想像力を無限に発動させて現実のかなたに自己充足しうる絶対境を打ち立てようとした。ロマン主義に感情の過多や表現の誇張と同時に、超越ないし逃避的性格が生じたゆえんである。したがって、自ら生み出した抑圧的な市民社会の真っただなかで、なお自由を希求する個的精神の苦闘というのがロマン主義の根幹といってよく、まさしくその自己矛盾ゆえに、逆にこの運動は近代文明に対する鋭い批判の刃(やいば)になりうるのである。

[加藤民男]

日本

日本のロマン主義(浪漫主義)は、封建的社会から近代市民社会への転換期を背景に生まれた。それゆえ、自我の確立と拡充、思想と感情の自由を急進的に求めたところに特色をもつ。それは、西欧文化とキリスト教思想の受容による、前近代的な儒教倫理や封建的習俗への反逆となって現れた。また伝統的な美意識による、西欧的な合理思想・功利主義への抵抗となって現れた。この二つの相反する動きのはざまを母胎として、日本の浪漫主義は成立している。

 その先駆けは、森鴎外(おうがい)『舞姫(まいひめ)』(1890)などの三部作や、『文学界』(1893~98)に拠(よ)った北村透谷(とうこく)の評論、島崎藤村の詩である。彼らは美と自由を主張し、人間性の解放と主情的真実を探り、自我の確立を目ざした。ついで明治20年代末に登場した高山樗牛(ちょぎゅう)は自我の充足と拡大を唱え、浪漫主義の理論的裏づけを行った。

 本格的な浪漫主義は、明治30年代の詩歌全盛の時代とともに開花する。主流となったのは、与謝野鉄幹(よさのてっかん)・晶子(あきこ)夫妻を中心とする『明星(みょうじょう)』(1900~08)である。好んで星と菫(すみれ)を歌い星菫(せいきん)派と称された。その本質は、奔放な情熱による自我の解放と恋愛至上と空想的唯美の世界への陶酔にあった。藤村の『若菜集』(1897)の流れをくむ薄田泣菫(すすきだきゅうきん)、蒲原有明(かんばらありあけ)、伊良子清白(いらこせいはく)らの浪漫(ろうまん)的情緒がそれに続いた。小説では、幻想と神秘の泉鏡花(きょうか)、自然の永遠性を渇望する国木田独歩(どっぽ)、翻訳では、鴎外の『即興詩人』(1892~1901)、評論では綱島梁川(つなじまりょうせん)の神秘的宗教論などがその実質を形成している。このロマン主義の流れは、明治40年代に入って、異国情緒とデカダンスを重んじる傾向へと変質していく。この傾向を新ロマン主義とも、耽美(たんび)派とも称する。

[浅井 清]

『H・G・シェンク著、生松敬三・塚本明子訳『ロマン主義の精神』(1975・みすず書房)』『小浜俊郎・後藤信幸訳『アルベール・ベガン著作集1 ロマン的魂と夢』(1972・国文社)』『C・シュミット著、橋川文三訳『政治的ロマン主義』(1982・未来社)』『F・O・シュレーゲル著、山本定裕訳『ロマン派文学論』(1980・冨山房百科文庫)』『加藤民男著『大革命以後――ロマン主義の精神』(1981・小沢書店)』『吉田精一著『浪漫主義の研究』(1970・東京堂出版)』『日夏耿之介著『明治浪漫文学史』(1951・中央公論社)』『笹淵友一著『浪漫主義文学の誕生』(1958・明治書院)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ロマン主義」の意味・わかりやすい解説

ロマン主義【ロマンしゅぎ】

 
romanticismromantismeromantic︿1819()︿西︿19西19R. ︿2030()
 

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「ロマン主義」の解説

ロマン主義
ロマンしゅぎ
romanticism

 
18
 () 19
1798
1
176118301857
201887301897  

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロマン主義」の意味・わかりやすい解説

ロマン主義
ロマンしゅぎ
romanticism

 
18191719  

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ロマン主義」の解説

ロマン主義(ロマンしゅぎ)
romanticism


1918調18()姿

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「ロマン主義」の解説

ロマン主義
ロマンしゅぎ
romanticism

 
1819
 

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のロマン主義の言及

【啓蒙思想】より

…ただし,ドイツでは,近代市民社会の未成熟という条件をいわば逆手にとって,思想の展開の時間だけをひとり促成栽培的に早めるといった現象が18世紀末から19世紀はじめにかけて見られる。この結果,この時期のドイツは,啓蒙思想への批判としてのロマン主義の花をどの西欧諸国よりもみごとにひらかせるという栄誉をになうことになったのである。以下,部門別に啓蒙思想の一般的特徴を概観しよう。…

【詩】より


()()西1819()()

【センチメンタリズム】より

…だがこれは時代思潮の特質を語る概念でもあり,理性や秩序や調和を尊重する時代の反動として個人の感情や自由を謳歌する立場が生じるとき,これを総称するために用いられる。18世紀の啓蒙主義に対抗して現れたルソーの立場はその典型的な例であり,悟性偏重に反抗する19世紀のドイツ・ロマン主義の活動や,実証主義の時代を経て19世紀末から20世紀にかけて現れた〈生の哲学〉に流れる基調もこれに含められる。【細井 雄介】 そもそも〈センチメンタル〉なる英語がひろく用いられるようになるきっかけは,18世紀のイギリスの作家L.スターンの《センチメンタル・ジャーニー》(1768)であった。…

【ドイツ美術】より


(182636)Gabriel von Seidl(18481913)(18961900)(184652)19(E.186886)(H.von185679)()20

【フランス文学】より

…12世紀に,宮廷風騎士道物語と呼ばれる新しいジャンルが現れた背景には,〈アーサー王伝説〉をはじめ,ケルト系の伝承が大きな形成力として働いている。近代になってからも,ケルト的な魂の神秘性に対する関心は,イギリス・ロマン主義を経由して,フランス・ロマン主義のなかにも流れこんでいるのが看取される。また,たとえば,〈俺はゴール人の祖先から青白い眼と,小さい脳味噌と,組打ちの不手際を受け継いだ〉というアルチュール・ランボーの詩句にみられるように,いわゆる大陸のケルト人の中核として,ローマの進出以前からガリアに先住していたゴール人の気質のなかに,自然さ,闊達さ,粗野ともいえる飾り気のなさ,原初的な荒々しい力を見いだし,それをフランス人の本来的な美徳の祖型として,あえて顕彰してみせた詩人もいる。…

【ラテン・アメリカ文学】より


(160917)(1817) 

【歴史学派】より




 

【ロマン派演劇】より

…ロマン主義とはおよそ18世紀の末から19世紀の前半にかけて,ドイツ,フランス,イギリスなどのヨーロッパ各地で展開した文芸・思想上の革新的思潮であり,その特徴は大まかに言えば,〈文化〉に存在する多くの規制を打破して,さまざまなレベルでの自由で統合的な表現を追究したことにあった。ここで言うところのロマン派演劇あるいはロマン主義演劇とは,このような革新的思潮の一環としての演劇運動を指して言ったものである。…

【ロマン派音楽】より


 E.T.A.()

※「ロマン主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

五節舞

日本の上代芸能の一つ。宮廷で舞われる女舞。大歌 (おおうた) の一つの五節歌曲を伴奏に舞われる。天武天皇が神女の歌舞をみて作ったと伝えられるが,元来は農耕に関係する田舞に発するといわれる。五節の意味は...

五節舞の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android