デジタル大辞泉 「三世」の意味・読み・例文・類語 さん‐ぜ【三世】 1仏語。前世・現世・来世、または過去世・現在世・未来世。過去・現在・未来の称。三界。三(さん)際(さい)。 2 本人・子・孫の3代。さんせい。 3 ︽親子の縁は一世、夫婦の縁は二世、主従の縁は三世というところから︾主従の関係。 [類語]二(に)世(せ)・他生・三界 さん‐せい︻三世︼ 1本人・子・孫の3代。さんぜ。 2 同じ地位・称号などを有する人の、3代目。また、同名の法王・皇帝などの3番目の人。﹁三世名人﹂﹁三世市川団十郎﹂﹁ナポレオン三世﹂ 3 移民などの3代目の世代。﹁日系三世﹂ み‐よ【三世】 前世ぜんせ・現世げんぜ・後世ごせ。さんぜ。「折りつればたぶさにけがる立てながら―の仏に花たてまつる」〈後撰・春下〉 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「三世」の意味・読み・例文・類語 さん‐ぜ【三世】 (一)〘 名詞 〙 (二)① 仏語。前世・現世・来世︵後世︶、または過去世・現在世・未来世の総称。過去・現在・未来の称。三際(さんさい)。三生(さんしょう)。三界(さんがい)。 (一)[初出の実例]﹁もしこの三世三劫の諸仏の名をききて或はよくかきうつし﹂(出典‥観智院本三宝絵︵984︶下) (二)﹁譬ひ三世に恨を結べりと云とも、恩を報つれば敢て讎(あた)の心を思ふ者无(な)し﹂(出典‥今昔物語集︵1120頃か︶一) (三)② ( 子の代までを一世、孫までを二世というのに対して ) 本人から曾孫への三代。曾孫にいたるまで三代にわたるのをいう。三世(さんせい)。 (一)[初出の実例]﹁太政官奏︿略﹀、其有下新造二溝池一、営二開墾一者上、不レ限二多少一、給伝二三世一﹂(出典‥続日本紀‐養老七年︵723︶四月辛亥) (四)③ ⇒さんせい︵三世︶② (五)④ ( 親子の縁は一世、夫婦の縁は二世、主従の縁は三世というところから ) 主従の称。 (一)[初出の実例]﹁さてはふしぎや我とても。もと主従の御名残り。これも三世の御値遇﹂(出典‥車屋本謡曲・朝長︵1432頃︶) 三世の語誌 (1)①は梵語 traikālya などの漢訳語。原語は﹁過去・現在・未来﹂﹁成長・持続・廃退﹂などの意。仏教において、存在の生滅する過程に仮りに立てられた三種の区分をいう。 (2)奈良朝に三世の観念が知られていたことは﹁万葉‐三四八﹂の﹁今代(このよ)にし楽しくあらば来生(こむよ)には虫に鳥にもわれはなりなむ﹂の例などからうかがえる。﹁三世﹂の使用例は平安中期以後に見え始め、中世から広く用いられるが、単独の例は少なく、多くは﹁三世諸仏﹂﹁三世因果﹂などの形で見られる。 さん‐せい︻三世︼ (一)〘 名詞 〙 (二)① 親・子・孫の関係にある三つの世代。三代。︹文明本節用集︵室町中︶︺ ︹礼記‐曲礼下︺ (三)② 同じ血統や同じ流派の祖または同名の法王や皇帝のうち、三番目の者。また、三代目の者。第三代。さんぜ。 (四)③ =さんぜ︵三世︶② (一)[初出の実例]﹁三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王とする﹂(出典‥皇室典範︵1947︶第六条) (五)④ 移民などの三代目の世代。﹁日系三世﹂。 み‐よ︻三世︼ (一)〘 名詞 〙 仏語。前世・現世・来世。さんぜ。 (一)[初出の実例]﹁わかれてもみよの契のありときけば猶行末をたのむ計ぞ﹂(出典‥とはずがたり︵14C前︶一) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
改訂新版 世界大百科事典 「三世」の意味・わかりやすい解説 三世 (さんぜ) 仏教の術語で,過去・現在・未来を意味する。この場合の︿世﹀はサンスクリットのアドバンadhvan︵時︶の訳語であり,︿世界﹀の︿世﹀がローカloka︵空間︶の訳語であるのと違うことに注意する必要がある。三世のうちの過去と未来において事物が存在するかどうかが仏教諸派で論ぜられた。説一切有部は︿三世実有法体恒有﹀を唱える。すなわち,︿いかなる事物も常に存在する,ただし,その作用に関し3種の時がある。作用がまだ起こらない時を未来といい,作用がある時を現在といい,作用がすでに終わった時を過去というのだ﹀という。経量部は︿過未無体﹀を唱えて,これを批判し,︿もし事物が常に存在するなら,あらゆるときに作用を起こすべきであろう。あるときに作用があり,あるときに作用がないのはおかしいではないか﹀という。 執筆者‥定方 晟 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
日本大百科全書(ニッポニカ) 「三世」の意味・わかりやすい解説 三世さんぜ 仏教の術語。サンスクリット語では一般にトラヨードゥバーナハtrayo 'dhvānaという。過去・現在・未来を意味し、また已(い)・今(こん)・当(とう)とも前世(ぜんせ)・現世(げんぜ)・来世(らいせ)︵後世(ごせ)︶ともいわれる。インドの宗教・哲学は一般に行為︵業(ごう)︶により三世に輪廻(りんね)するという思想を有していたのでいずれも三世を重視したが、とくに部派仏教中の説一切有部(せついっさいうぶ)は法の実有と刹那滅(せつなめつ)の考えに基づいて三世の概念を明確にした。これによると、法︵もの︶がまだ作用をおこさないときが未来、作用をおこした一瞬が現在、作用を終わったときが過去である。この規定によれば、過去・現在・未来という時間は実体のないもので、ものの作用の有無によってかりに名づけられたものにすぎない。唐代の普光(ふこう)が﹁時無別体、依法而立﹂といったのはこの意味である。これに対してインド哲学中のバイシェーシカ学派やニヤーヤ学派などは時間を世界運行のための基本的実体とみなした。三世は部派仏教以後、業思想、煩悩(ぼんのう)の分類、修行の方法などの複雑な仏教教理を形成せしめる基礎的概念の一つとなった。 ﹇加藤純章﹈ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の三世の言及 【説一切有部】より …しかし現在の研究では,有部の名の出る最古の碑文が後1世紀初頭であることから,その成立は上の年代よりやや下るものと考えられている。 有部の基本的立場は三世実有説である。森羅万象を形成するための要素的存在として70ほどの法(ダルマ)を想定し,これらの法が過去・未来・現在の三世に常に自己同一を保ち実在するが,我々がそれらを経験できるのは現在の一瞬間にすぎない,という主張である。… ※「三世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」