デジタル大辞泉
「比例」の意味・読み・例文・類語
ひ‐れい【比例】
1 例をあげてくらべること。
﹁目高が湖に泳ぐような―で海が広いとは云え﹂︿葉山・海に生くる人々﹀
2 物の形において、各部分相互間または全体と部分との割合が釣り合っていること。
﹁眼の長さが顔の幅に―しないとか﹂︿漱石・それから﹀
3 二つのものが一定の関係をもつとき、一方の増減につれて他方も増減すること。﹁身長と体重は必ずしも―しない﹂
4 二つの変数の間で、一方が2倍・3倍となるにつれて、他方も2倍・3倍となっていくこと。関係をy=ax︵aは0でない定数︶と表す。正比例。
5 二つの変数の比が他の二つの変数の比と等しいこと。a‥b=c‥dで表す。
[類語]正比例・反比例
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ひ‐れい【比例】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 例をあげてくらべること。照らし合わせること。また、くらべられるような例。
(一)[初出の実例]﹁たとへ卿相の列に加りぬとも、他家の比例にあらじ﹂(出典‥読史余論︵1712︶二)
(二)[その他の文献]︹顔氏家訓‐風操︺
(三)② 互いに関連しながら変化する二つの数・量の関係の一つ。一方が二倍・三倍…になるにつれて、他方も二倍・三倍…となること。この関係を y=ax ︵aは0でない定数︶と表わす。正比例。︹数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書︵1889︶︺
(四)③ 二つの数・量の割合が、他の二つの数・量の割合に等しいこと。また、その関係にある数・量を扱う算法。a‥b=c‥dで表わす。正比例。︹数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書︵1889︶︺
(五)④ 一定の関係にある二つのものの間で、一方の増減に従って他方も増減すること。
(一)[初出の実例]﹁縦に引る諸線楕円の胼厄と、大円の胼田との如き、悉く皆同比例なり﹂(出典‥暦象新書︵1798‐1802︶中)
(二)﹁すると足音に比例した大きな鬨の声が起った﹂(出典‥坊っちゃん︵1906︶︿夏目漱石﹀四)
(六)⑤ 物の形の、各部分の間の割合や量的関係などがつりあっていること。︹哲学字彙︵1881︶︺
(一)[初出の実例]﹁眼の長さが顔の幅に比例(ヒレイ)しないとか﹂(出典‥それから︵1909︶︿夏目漱石﹀三)
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比例 (ひれい)
proportion
四つの数a,b,c,dについて,a:b=c:dであるとき,a,b,c,dは比例をなしているといい,a:b=c:dを比例式,または比例という。a,dを比例式の外項,b,cを内項と呼ぶ。また,三つの数a,b,cについて,a:b=b:cであるとき,bはa,cの比例中項であるという。
比例式の性質
四つの数a,b,c,dについて,
︵1︶a:b=b:cならば,ad=bc。すなわち,比例式の外項の積は内項の積に等しい。
︵2︶逆に,ad=bc︵≠0︶ならば,a:b=b:cである。
︵3︶したがって,a:b=c:d︵ad≠0︶ならば,a:c=b:d,d:b=c:a,b:a=d:c。すなわち,比例式が与えられたとき,その内項を交換してもよいし,外項を交換してもよい。
︵4︶a:b=b:c︵ad≠0︶のとき,次の︵a︶~︵c︶が成り立つ。
![](/image/dictionary/sekaidaihyakka/block/01219701.png)
比例定数
変化する二つの数︵または量︶x,yと,一定の数︵または量︶kがあって,y=k・xとなるとき,yはxに比例する︵あるいは正比例︶といい,kを比例定数という。このとき,xが2倍,3倍,……になれば,それに対応するyも2倍,3倍,……になる。このx,yのグラフは原点を通る直線になり,その直線の傾きは比例定数kによって決まる。
→反比例
執筆者‥西村 純一
建築における比例
建築家が建物を構想していくうえで,各部寸法やそれと全体との関係,すなわち比例を考えるのは,欠くことのできない過程であり,比例の決定方法は建築家にとって古くから重大な関心事であった。古代には,人々の宇宙観とかかわる数値が用いられることが多く,たとえば,旧約聖書に記されたソロモンの神殿では,2と3を組み合わせた数値によりすべての寸法が決定されていたが,これらの数は,太陽と月,あるいは天と地,当時知られていた惑星の数などと関連しているとみられる。またエジプトなどでは,建築の配置や立面の決定にあたって,こうした数値を基にした︿基準格子﹀が用いられていたことも知られている。宇宙観とのさらに直接的なかかわり方としては,ピラミッド斜面の角度が星の位置との関係で定められたとか,ジッグラトの階段高さが,ある惑星の見かけの往復運動を象徴しているといった例も見られる。
これら抽象的・象徴的比例観に対し,古代ギリシア人は比例を形態美の源泉とみなし,生物的形態,とりわけ人体が,もっともよく宇宙的調和を体現した比例をもつものとして,それを建築にあてはめた。円柱はそのまま人体になぞらえられ,たとえばドリス式円柱は男性の人体であり,その高さは直径の6倍とするのが望ましく,イオニア式は女性で,直径の8倍の高さがよいとされた。そして円柱直径の1/2を1モデュールと呼び,各部寸法をすべてこれの倍数値で表す方式が,いわゆる︿オーダー﹀の体系の根幹となっていた。古典建築の最初の理論家,古代ローマのウィトルウィウスは,こうした比例の体系こそが建築を科学たらしめるものであると信じていたが,同時に,ピタゴラスやプラトンを引用しながら,6という数の神秘性を強調しており,比例の観念と神秘主義,象徴主義との結びつきの深さをおもわせる。
中世には古代ギリシアの美的,功利的な比例観は薄れ,代わってキリスト教的な象徴主義が主流となり,三位一体を表す3や十二使徒を表す12などの数値を用いた単純な倍数系列が多く見られた。しかし12世紀以降は,ピタゴラス派の協和音程理論の比例数値により平面を決定した教会堂が現れており,これはノートル・ダム楽派の荘重な︿オルガノン﹀の出現と軌を一にしている。同様に,華麗なフランボアイヤン・ゴシックと複雑精緻なリズムで構成される︿アルス・ノバ﹀の音楽の出現も,密接な関連をもっている。中世の音楽と建築は,古典古代の人体寸法を基にした比例とは異質の,きわめて人工的で超越的な比例秩序を共通の基盤にしていたといえる。
ルネサンスに入ると,再びウィトルウィウスを基礎とする比例理論が建築の中心課題となり,ここでもまたピタゴラスの理論が重要な手がかりとされたが,しかし人体的比例の堅持と,それに加えて透視図法的な,一定の視点からの三次元的比例が主たる関心事となった。L.B.アルベルティ,フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニ,レオナルド・ダ・ビンチといった当時の代表的比例理論家たちは,音楽用語を用いて建築の比例を論じ,調和級数によって空間の奥行きの比例を決定しようとしていた。16世紀以降は,さらに新プラトン主義の影響による数の神秘主義が加わり,きわめて知的な古典主義的比例の体系が確立されていく。A.パラディオの︽建築四書︾に示された建物寸法は,すべてこうしたルネサンス的な比例によって与えられたものであった。しかしこの間,16世紀のマニエリスムの到来とともに,こうした静的な比例観に対しては批判が加えられるようになり,ミケランジェロにあっては,比例はもはや不変の美の規範ではなく,作家個人の手法に属するものとみなされるようになっていた。バロック,ロココを通じてこの傾向はさらに強まり,18世紀の新古典主義においても,一部でフリーメーソンにより象徴的比例の復活がみられたものの,ロマンティックな超越的壮大さや不規則な美を求める傾向に押され,再び建築理論の中心的位置を占めるには至らず,近代の合理主義は,宇宙観とのアナロジーによる古典的な比例の伝統を完全に絶ち切ってしまう。
19世紀の建築理論家ビオレ・ル・デュクは,比例よりも尺度の重要性を説き,ある尺度に基づく基準格子︵二等辺三角形︶の使用を推奨している。一方,19世紀から20世紀初めにかけては,純粋な視覚上の問題として比例に関心が寄せられ,パルテノンなどの建築の美を,その比例やいわゆる視覚矯正などから解き明かそうとする試みが盛んとなり,その結果を制作にも反映させようとする動きがみられた。また近代の工業化は,尺度に対する新しい要求︵モデュラー・コーディネーション︶を提起しており,その手段としての︿モデュール﹀設定が望まれるようになった。ル・コルビュジエのモデュロールは,こうした二つの要求を同時に満たそうとしたもので,人体寸法を基準とし,フィボナッチ数列を駆使した複雑な体系からなっている。しかしこれはル・コルビュジエの期待に反し,彼の一門の人々以外からはほとんど用いられることがなかった。そのあまりの複雑さにもよるが,本来的にアナロジカルな象徴性を有する比例概念と,純実用的な尺度概念とを直接的に結びつけたことにも,その原因があったと見られる。またその比例の裏付けとなるべき現代の宇宙観・世界観の混乱も,これを助けた。
モデュロール以外の現代のモデュールは,こうした形而上学とまったくかかわらない,純実用的な尺度の体系に甘んじている。しかし,建築の比例に対する内的な要求は決して消滅したわけではなく,古典的な比例理論と比肩しうる新たな比例理論を獲得できるかどうかは,われわれの世界観が何らかの新たな抽象的比例によって表現しうるか否かにかかっているといえよう。
→オーダー →音律
執筆者‥福田 晴虔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
比例
ひれい
二つの正数xとyとの間に、y/x=aすなわちy=ax︵aは定数︶という関係があるとき、yはxに比例する、または正比例するといい、aを比例定数という。このときx=(1/a)yも成り立つから、yがxに比例すれば、xはyに比例する。そこで、これらをまとめて、yとxは比例するともいう。yがxに比例するとき、xの値x1、x2に対応するyの値をy1、y2とすれば、y1:x1=y2:x2すなわちy2:y1=x2:x1が成り立つ。したがって、xの値がk倍になれば、yの値もk倍になる︵k>0︶。逆に任意の正数kについて、このことが成り立てば、yとxが比例することも容易に示される。
二つの正数x、yの間に、xy=aすなわちy=a/x︵aは定数︶という関係があるとき、yはxに反比例する、または逆比例するといい、aを比例定数という。このときxがyに反比例することも明らかであるから、まとめて、yとxは反比例するともいう。yがxに反比例するとき、xの値x1、x2に対応するyの値をy1、y2とすればx1y1=x2y2すなわちy2:y1=x1:x2が成り立つ。したがって、xの値がk倍になれば、yの値は1/k倍となる︵k>0︶。逆に、任意の正数kについて、このことが成り立てば、yとxが反比例することも示される。
比例、反比例関係の例はきわめて多い。たとえば、三角形において、底辺の長さを一定とすれば、高さと面積は比例し、面積を一定とすれば、高さと底辺の長さは反比例する。比例と反比例の関係は、ゼロでない数aを比例定数として、x、yがかならずしも正でない場合にも拡張できる。一般に、二つの数xとyとの間にy=axα︵a、αはゼロでない定数︶という関係があるとき、yはxのα乗に比例するという。比例と反比例はそれぞれα=1,α=-1である特別な場合である。また、α=2,α=1/2とすれば、yがxの平方に比例する、平方根に比例する場合になる。α=-2のときは、yはxの平方に反比例するともいう。yがxのα乗に比例するときは、xの値がk倍になれば、yの値はkα倍になる︵k>0︶。たとえば、円の面積はその半径の平方に比例し、逆に、半径は面積の平方根に比例する。比例関係はまた三つ以上の変数についても考えられる。たとえば、三つの数x、y、zの間にz=axy︵aはゼロでない定数︶という関係があるとき、zはxとyに複比例する、または単に、比例するという。このとき、yを一定とすればzはxに比例する。たとえば、三角形の面積は、その高さと底辺の長さに比例する。
﹇植竹恒男﹈
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
普及版 字通
「比例」の読み・字形・画数・意味
【比例】ひれい
前例。前例による。宋・司馬光︹知制誥を辞する、第三状︺夫(そ)れ
塗(しと)を以て人を用ひ、能否を問はず、比例從事して、是非を
みざるは、此れ最も國家の
法にして、宜しく革正すべき
の
なり。
字通﹁比﹂の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
比例
ひれい
proportion
aと bを,2つの数,または2つの同種の量とする。 aと bの比 a‥b と,2つの数または同種の量 cと dの比 c‥d の間に a‥b=c‥d という関係が成り立てば a,b ,c ,d は比例または正比例するという。一般に,x と yを2つの変数とするとき,k を0でない定数として y=kx という関係が成り立てば,y は xに比例するという。このとき関数 x→kx が正比例関数である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
比例【ひれい】
正比例とも。ある量xが増加・減少するのに伴い他の量yが常に一定の比率(比例定数)kで増加・減少する関係。一次関数y=kxで表され,直交座標上のグラフは原点を通る直線になる。反比例の対。
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世界大百科事典(旧版)内の比例の言及
【オーダー】より
…建築の構築的体系およびその秩序。後には特に,古典建築様式における円柱の形式とそれに付随する構成の比例体系を指すようになる。古代ギリシア思想においては,あらゆる自然の有機体と同様に,建築も自然の法則に従い,あるいはそれを模倣すべきものであった(アリストテレスのいう〈ミメーシス〉)。…
【建築】より
…このことは,列柱廊(コロネード)やアーケードや格子のような,壁でないものに囲まれた空間が独特の性格をもつことからもわかる。構成(コンポジションcomposition)とは,建築の各部分の三次元的な組合せの調和であるが,その効果は[比例](プロポーションproportion)とスケールscale(人間との対比から決まる大きさ)に依存している。比例は,全体と部分,部分と部分との大きさの割合であり,ギリシア建築に起源をもつ古典様式では,比較的単純な数学的比例体系が全部分を包括していることが尊重されたが,より直観的な比例体系をもつ様式も少なくない。…
【シンメトリー】より
…幾何学でいう左右対(相)称,点対称など([対称])。古代ギリシア語の〈シュンメトリアsymmetria〉が語源で,これは事物の大きさがある共通の尺度で測り切れる(割り切れる――通約)状態を指し,さらにある基準に対して一定の比例を保つこと,またそのような比例の保証する美的・宇宙的調和をも意味した。幾何学的対称はこの本来の語義の一部にすぎず,このように限定されたのは近世以後のことである。…
※「比例」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」