デジタル大辞泉
「油糟」の意味・読み・例文・類語
あぶら‐かす︻油×粕/油×糟︼
肥料や家畜の飼料用。
2 ︵油かす︶牛の内臓肉を時間をかけて油で揚げ、小さく切り分けたもの。中が柔らかく、外側がかりっとしていて香ばしい。→かすうどん
[補説]書名別項。→油糟
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あぶら‐かす【油粕・油糟】
(一)[1] 〘 名詞 〙 大豆、油菜、亜麻、落花生など、植物の種から油を抜きとったあとのかす。江戸時代以降、家畜の飼料、または作物の肥料とする。
(一)[初出の実例]﹁﹃山海の珍物数をつくされたり。只なき物とては油糟ばかりなり﹄と云ふ﹂(出典‥梵舜本沙石集︵1283︶三)
(二)[2] ( 油糟 ) 江戸前期の俳諧集﹁新増犬筑波集﹂の上巻の題。下巻の﹁淀川﹂と一冊をなす。松永貞徳著。寛永二〇年︵一六四三︶刊。宗鑑の﹁犬筑波集﹂の前句二六〇に貞徳が付句をし、自派の付方、作風を示したもの。巻末に和歌一〇首を添える。
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油粕 (あぶらかす)
ダイズ,ナタネ,綿実などの油分に富む植物種子から油分をしぼった残りを総称したもの。魚肥類とともに古くより肥料として流通しており,1940年ころまでは販売肥料の主流をなしていた。油かす類の三要素含量は表に示したとおりだが,窒素に富み,リン酸,カリウムを含有している。窒素は主としてタンパク質態であり,リン酸はフィチン態が主で,カリウムは水溶性である。土壌中での窒素の無機化は,最適条件下約1ヵ月で完了するので,良好な緩効性肥料として,施設園芸のような多肥栽培に好んで使われている。油かす類は有機質肥料であるのでカルシウム,マグネシウムや各種微量元素などの総合的補給に役だち,有機質複合肥料の配合原料としてよく使われている。
→有機質肥料
執筆者‥熊沢 喜久雄
近世農村と油かす
ナタネ,ゴマ,エゴマなどの搾りかすから始まり,綿実油の実用化に伴い綿実油かすも注目されるようになり,ほしかとともに広く商品作物に施された。中世末から利用されており,近世中期の元禄・享保期︵1688-1736︶には一般化した。これに伴ってその売値は急騰し,10玉につき1736年︵元文1︶銀28匁が71年︵明和8︶36匁,90年︵寛政2︶218匁となった。農業経営において近世前期では,肥料として山地の枯葉・落葉・畜肥・屎尿︵しによう︶・農地や自家の残しくずなど自給肥料にたよっていたが,新田開発などによって採草地は減る反面,商業的農業が展開し多角的集約的な農業経営に変わってくると,油かす肥料を利用する農家が増えてきた。ことにナタネ作やワタ作が盛んになってくると,その搾りかすも多量になった。しかし幕府は,これらの商品作物がナタネは灯油・食用・髪用などの原料,ワタは糸・織布類などの原料として一般庶民の生活需要品であるので,価格統制を加えた。このため,ナタネやワタの生産農民は,幕府の公認した特権商人︵株仲間︶に安値で買いたたかれる反面,油を搾ったあとのかす類をその特権商人から高値で求めねばならないことになり,農業経営上採算がとれなくなった。屎尿肥料を利用できがたい山地農村とか都市から遠く離れた農村では,この鋏︵はさみ︶状価格差に苦しむことになった。このため,とくに摂津・河内・和泉の農民は,ナタネやワタの流通に統制を厳しくしてきた幕府に対して領主支配を越え,村から郡,郡から国,さらに何ヵ国と闘争の連合を広め,幕府の統制政策の不当を訴えた。これは︿国訴︵こくそ︶﹀といわれ,1743年︵寛保3︶ころから起こるが,しだいにその規模も広くなり,嘆願内容も,肥料一般の高値やナタネ・ワタの売りさばき問題も含めるようになった。幕末にかけて,ことに飢饉の慢性化に伴って苦しんだ農民は,大規模な国訴闘争を繰り返すなかで,油かす値段の低廉をはかっていった。
執筆者‥小林 茂
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油かす
あぶらかす
油分に富んだダイズ、ナタネ、ワタなどの植物種子から油を絞った残りかすを精製したものの総称。多くの種類があり、原料によって、大豆油かす、菜種(なたね)油かすなどとよぶ。油かす類は、肥料の三要素、窒素、リン酸、カリウムを含む有機質肥料である。土壌中で分解が比較的緩やかに進行するので、肥効は概して遅効的であり、主として元肥(もとごえ)として用いられている。与えすぎても濃度障害による肥焼けを起こすおそれが少ないことから施設園芸や鉢栽培などに好んで使用される。なお、種類の違いによる肥効の遅速の差はあまりないが、肥料成分の含有量には違いがある。土壌中の分解過程で炭酸ガスや有機酸ができると、作物に悪影響が出るので、水や有機物と混ぜてあらかじめ発酵させ、液肥として用いられることも多い。
複合肥料の配合原料として油かすの需要量が逐次増加してきているが、一方では、油かすは飼料として利用されており、競合が激しく、その供給は飼料事情に大きく左右されている。
﹇小山雄生﹈
﹃黒川計著﹃日本における明治以降の土壌肥料考 下巻﹄︵1982・全農︶﹄▽﹃伊達昇・塩崎尚郎編著﹃肥料便覧﹄第5版︵1997・農山漁村文化協会︶﹄▽﹃肥料協会新聞部編﹃肥料年鑑﹄各年版︵肥料協会︶﹄▽﹃農林水産省生産局生産資材課監修﹃ポケット肥料要覧﹄各年版︵農林統計協会︶﹄
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油粕【あぶらかす】
油脂に富む植物種子から油をしぼった粕の総称。大豆粕は栄養価に富み,みそ,醤油の原料や飼料にされ,その他,菜種粕,綿実粕など多くの油粕は窒素肥料として利用される。
→関連項目飼料|濃厚飼料
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油糟
あぶらかす
江戸時代前期の俳諧論書。松永貞徳著。寛永 20 (1643) 年刊。﹃新増犬筑波集﹄の上巻で,下巻の﹃淀川﹄とあわせて1巻。山崎宗鑑の﹃犬筑波集﹄所収の付合 (つけあい) の前句に,新しく付句を試みて手本を示したもの。
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油粕
あぶらかす
干鰯 (ほしか) と並ぶ江戸時代における金肥の中心
植物の種子から油をしぼった粕 (かす) で,種子の種類によって,ダイズアブラ粕などと呼ぶ。江戸中期から大正時代ごろまで盛んに使われた。
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の油糟の言及
【ナタネ(菜種)】より
…日本で,種子からナタネ油をとるために栽培され,ナタネと総称されるものには,アブラナ科の,植物学的に異なった2種の作物がある。その一つアブラナBrassica campestris L.(英名Chinese colza。採油用品種群に対する名)は在来ナタネともいわれ,また種子が黄褐色で赤っぽいので赤種︵あかだね︶とも呼ばれる。葉は淡緑色で軟らかく,白い蠟質がなくて,若い葉は食用になる。クキタチとかククタチと呼ばれて,あえ物や汁の実,煮付けなどにして食べる冬菜の多くはこの類である。…
【油脂】より
…脂肪油fatty oilと脂肪fatの総称で,化学的には1個のグリセリンと3個の脂肪酸が結合したエステル(トリグリセリド)の混合物である。アルカリにより[ケン化]されてセッケンとグリセリンになる。
脂肪酸の物性はその分子量や不飽和度などに依存するが,とくにその融点は分子量の増大とともに高くなる傾向があり,炭素数10(C10)以下の脂肪酸は常温で液体であるが,それ以上のものは常温で固体となる。また不飽和度の低いものは化学的に安定で融点が高くなる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」