日本大百科全書(ニッポニカ) 「目(め)」の意味・わかりやすい解説
目(め)
め
eye
光の強弱や波長を刺激として受容する感覚器官で、ヒトの場合は頭骨の前面に左右1対ある眼窩(がんか)内にそれぞれあって上下の眼瞼(がんけん)(まぶた)で保護されている。目は主として眼球と視神経からなり、これに眼球付属器(眼瞼、結膜、涙器、眼筋など)が加わって視覚器を構成する。
[桑原安治・大島 崇]
眼球
眼球は後方で視神経に連なり、ほぼ球形で、成人の平均直径は24ミリメートル。眼球壁は3層からなり、最外層は角膜と強膜、中層はぶどう膜、最内層は網膜である。
[桑原安治・大島 崇]
角膜
眼球の前方にある時計皿状の透明な膜で、光線を通過させて眼内に送る。俗に黒目とよばれる部分に相当する。成人で平均直径11ミリメートル、厚さ約1ミリメートル。周辺部の強膜から膨隆し、外から見ると奥にある虹彩(こうさい)が透けて見え、中央に瞳孔(どうこう)が見える。
[桑原安治・大島 崇]
強膜
角膜に連なって眼球の後方約6分の5を占める強靭(きょうじん)な膜で、膠原(こうげん)線維が密集して血管が少ないため白色不透明である。俗に白目とよばれる部分に相当し、角膜の周辺で結膜(球結膜)に移行する。角膜とともに眼球を保護して眼球内圧を一定に保ち、眼球の形を維持するのに役だっている。厚さは約1ミリメートルで、後方では視神経鞘(しょう)に連なり、内側はぶどう膜に接している。
[桑原安治・大島 崇]
ぶどう膜
網膜
眼球壁の内面にあって後方約4分の3の範囲に広がる薄い膜で、その内面は硝子体(しょうしたい)に接し、外面は脈絡膜に接する。検眼鏡で前方から観察できるが、これを臨床的に眼底像とよんでいる。物体の像が結ばれる部分で、後極部には黄斑(おうはん)部があり、その中央部は中心窩とよばれて、もっとも視力のよい部分である。後極部から4~5ミリメートル内側に視神経が眼球壁を貫く視神経乳頭がある。この部分は網膜の組織を欠き、これが盲点に相当する。網膜には桿状体(かんじょうたい)および錐状体(すいじょうたい)とよばれる視細胞があり、光や色を感ずる。
眼球の内容は硝子体、水晶体、眼房水からなり、眼球内圧の維持と光線の屈折に関与する。
[桑原安治・大島 崇]
硝子体
無色透明な半流動体で、卵白よりやや固く、眼球内腔(ないくう)の約5分の4を満たし、眼球の形状を保ち、外力による変形に抵抗するとともに、眼内に入った光線を網膜まで通過させるが、その屈折率は1.335である。
[桑原安治・大島 崇]
水晶体
眼球前半部中央にあり、前方は瞳孔および虹彩、後方は硝子体で境された両凸面レンズ状の形をした透明な組織で、直径約9ミリメートル、前後の厚みが3.7~4.4ミリメートル、屈折率1.44~1.55である。毛様体筋の収縮によって厚みが変わり、目の調節作用に関係する。
[桑原安治・大島 崇]
眼房水
角膜、毛様体、水晶体、硝子体で囲まれた腔を満たす透明な液体で、虹彩を境として腔が前後に分かれ、それぞれを満たす液体を前房水、後房水という。眼房水は毛様体で産生され、瞳孔を通じて前房に流れ、虹彩根部(付着部)と角膜とのなす隅角(ぐうかく)の部分から強膜静脈洞に吸収される。こうして眼房水はつねに循環しながら眼圧の維持をはじめ、水晶体、虹彩、角膜の栄養に主要な役割を演ずる。
[桑原安治・大島 崇]
眼球付属器
眼瞼、結膜、涙器、眼筋、眉(まゆ)が含まれ、おもに眼球を保護している。
[桑原安治・大島 崇]
眼瞼
上眼瞼と下眼瞼に分けられ、外面は皮膚、内面は結膜(眼瞼結膜)に覆われ、その間に上眼瞼挙筋と眼輪筋とよばれる筋肉があって眼瞼を開閉する。眼輪筋の後方にマイボーム腺(せん)とよばれる脂腺を内蔵した瞼板という組織があって、眼瞼の形を整えている。また、眼瞼の縁には睫毛(しょうもう)(まつげ)が上下に並列して生えている。
[桑原安治・大島 崇]
結膜
眼球の表面と眼瞼の裏面を覆う薄い粘膜で、上下の眼瞼の裏面から延びて根元で反転し、角膜縁で終わっており、眼瞼結膜、結膜円蓋(えんがい)、眼球結膜の3部に分けられる。
[桑原安治・大島 崇]
涙器
眼筋
眉
いわゆる眉毛で、上眼瞼の上部、上眼窩縁の真上にあたるところに弓状に生えており、眉弓(びきゅう)とよばれる。
[桑原安治・大島 崇]
目の機能
目の病気
部位別疾患
機能別疾患など
屈折異常による近視、遠視、乱視のほか、調節異常の老視、視野異常の視野欠損や盲点、視力異常の弱視や眼精疲労などがある。さらに、眼位異常の斜視、眼圧異常の緑内障、眼筋異常の眼筋麻痺(まひ)や複視など、光覚異常の夜盲症、色覚異常、色視症などもある。
[桑原安治・大島 崇]