神郡（読み）カミゴオリ

デジタル大辞泉 「神郡」の意味・読み・例文・類語

かみ‐ごおり〔‐ごほり〕【神▽郡】

 
神領の一。一郡を神社の所領とし、租税を諸祭料などの費用にあてた。奈良時代には、伊勢の多気・度(わた)会(らい)の二郡、常(ひた)陸(ち)の鹿島、下(しも)総(うさ)の香取などがあった。かみぐに。しんぐん。  

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精選版 日本国語大辞典 「神郡」の意味・読み・例文・類語

かみ‐ごおり‥ごほり【神郡】

 

(一)〘 名詞 〙 神領とされた郡。神社がこの租税を収納し、庶務を国司とともに行なった。奈良時代には伊勢国度会郡、多気郡︵伊勢大神宮、寛平九年飯野郡を加える︶、安房国安房郡︵安房神社︶、出雲国意宇郡︵出雲大社︶、筑前国宗形郡︵宗像神社︶、常陸国鹿島郡︵鹿島神宮︶、下総国香取郡︵香取神宮︶、紀伊国名草郡︵日前神宮、国懸神宮︶があった。神国(かみぐに)。かんごおり。しんぐん。
(一)[初出の実例]﹁過ぎます神郡(かみごほり)及び伊勢・志摩の国造等に冠位を賜ひ﹂(出典‥日本書紀︵720︶持統六年三月)
  

しん‐ぐん【神郡】

  1. 〘 名詞 〙 ⇒かみごおり（神郡）

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神郡」の意味・わかりやすい解説

神郡
しんぐん

古代律令制(りつりょうせい)下、国郡制の郡全体を神宮・神社の領地とされていたその郡のこと。伊勢(いせ)の神宮では創建当初よりその周辺の地を神地(かんどこ)としていたが、大化改新による国郡制の施行とともに、その地を度会(わたらい)・多気(たき)の2郡とし、それを神郡と定めて、その郡よりの収入は国庫に入れるのではなく、すべて神宮に納め、その用途にあてることとし、のち平安末期までに伊勢国8郡が神郡とされていた。ほかに723年（養老7）の時点で、安房(あわ)神社に安房国（千葉県）安房郡が、出雲(いずも)大社に出雲国（島根県）意宇(おう)郡が、宗像(むなかた)大社に筑前(ちくぜん)国（福岡県）宗像郡が、鹿島(かしま)神宮に常陸(ひたち)国（茨城県）鹿島郡が、香取神宮に下総(しもうさ)国（千葉県）香取郡が、日前(ひのくま)・国懸(くにかかす)神宮に紀伊国（和歌山県）名草郡が定められていたが、律令制の崩壊とともに消失した。

［鎌田純一］

[参照項目] | 神領

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改訂新版　世界大百科事典 「神郡」の意味・わかりやすい解説

神郡 (しんぐん)


社領の一種で，貢納と奉仕の任をもつ神戸︵かんべ︶が一郡にわたって存在し，郡全体が神領となったもの。伊勢神宮では古くから伊勢国多気，度会郡を神領として寄せられ，その後飯野郡を加えて特にこれを神三郡︵しんさんぐん︶と称した︵のち神八郡︶。このほか，安房神社の安房国安房郡，鹿島神宮の常陸国鹿島郡，香取神宮の下総国香取郡，出雲大社の出雲国意宇︵おう︶郡，宗像神社の筑前国宗像郡，日前国懸︵ひのくまくにかかす︶神宮の紀伊国名草郡などがある。中世以降神領としての実質的な機能はなくなっていったが，名目上は明治維新まで続いた。
執筆者‥

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神郡」の意味・わかりやすい解説

神郡
しんぐん

 
﹁かみごおり﹂とも読む。一郡すべてが神社の所領となるもの。養老7 (723) 年には，伊勢国度会，多気 (伊勢神宮) ，安房国安房 (安房神社) ，出雲国意宇 (出雲大社) ，筑前国宗像 (宗像大社) ，常陸国鹿島 (鹿島神宮) ，下総国香取 (香取神宮) ，紀伊国名草 (日前，国懸神宮) を八神郡と呼んだ。伊勢で文治年間 (1185～90) の初め頃には8郡が伊勢神宮の神郡となり，これを神八郡と称した。  

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