デジタル大辞泉
「粘液」の意味・読み・例文・類語
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ねん‐えき【粘液】
(一)〘 名詞 〙
(二)① ねばりけのある液体。ねばねばした汁。︹楊万里‐得寿仁寿俊二子中塗書詩︺
(三)② 生体内で生成され分泌される粘性多糖類の液。からだを保護する役目のほか、食物の消化管内の通過を助けたり、また、食虫植物などでは食物を捕えたりする役目もある。
(一)[初出の実例]﹁此病は壊液より因し、此患は粘液より起れり﹂(出典‥形影夜話︵1810︶下)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
粘液 (ねんえき)
mucus
mucilage
生体内でつくられる粘性の高い液体をいい,粘液腺mucous glandで生産,分泌される。これに対して,漿液︵しようえき︶腺でつくられる粘性の低い液体は漿液と呼ばれる。環形動物,軟体動物︵ナメクジ︶,魚類︵ウナギ︶,両生類には皮膚の表皮細胞の間に粘液腺として皮膚腺があり,粘液を分泌して体表をおおい,これを保護するものがある。一方,脊椎動物では,口腔,鼻腔,気道,食道,胃,腸,排出器官,生殖器官など体内各部の内壁面が粘液におおわれ,湿潤に保たれている。粘液腺には1個ないし複数の粘液細胞があり,粘液はこの細胞でつくられる。粘液細胞では核は基底近くに偏在し,疎面小胞体でつくられたタンパク質成分とゴルジ体でつくられた糖成分とから成る糖タンパク質が顆粒︵かりゆう︶となって細胞を満たしている。粘液の成分はさまざまであるが,糖成分がムコ多糖となったムコ多糖タンパク質,すなわちプロテオグリカンがよく知られている。なお,結合組織の基質もムコ多糖や糖タンパク質から成り,粘性が高いので粘液として扱われる。
植物の場合には,粘液をもつ管を粘液道mucilage canalという。粘液道は一般に細胞間隙︵かんげき︶が管状にできることによってつくられるが,離生間隙,すなわち細胞間が離れることによって生じるもの︵サボテン科︶と,破生間隙,すなわち細胞自体がこわれることによって生じるもの︵ラン科︶とがある。
執筆者‥町田 武生+原 襄
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粘液
ねんえき
生物が分泌する粘りの大きい液体の総称。動物、植物の上皮組織にある粘液腺(せん)より分泌される。粘液の化学的組成は生物によってさまざまであるが、一般的には多糖類とタンパク質、たとえばムコ多糖類やプロテオグリカンなどを主成分とするものが多い。魚類や両生類などの脊椎(せきつい)動物、環形動物や軟体動物など多くの無脊椎動物の表皮から分泌される粘液は表皮の保護に役だつといわれている。脊椎動物の種々の器官の内壁は粘液によって覆われ、粘膜とよばれる。粘液は上皮の保護以外にも種々の機能をもち、とくに濾過(ろか)摂食をする軟体動物や環形動物などでは、餌(えさ)となる粒子の捕捉(ほそく)と運搬に重要な役割を果たす。植物においても、ムシトリスミレやモウセンゴケのような食虫植物では、粘液は昆虫などをとらえる機能をもっている。サボテンやコンブには内部に粘液をためた、特別な形をした分泌組織があり、粘液管といわれる。細菌にも粘液状被膜をもつものがある。
﹇村上 彰﹈
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粘液【ねんえき】
生物体の体表や体内に生成,保持される粘稠(ねんちゅう)な水溶液の総称。多くは特定の腺︵粘液腺︶の分泌物。粘液物質は一般にムチン︵粘質︶と総称され,糖タンパク質のほかコンドロイチン硫酸やヒアルロン酸,ペクチン酸など牽(けん)糸性の高分子化合物を含み,そのぬるぬるした性状により当該体部の保護,潤滑,清掃に当たる。食虫植物や二枚貝などでは,食物の捕捉に不可欠の役割を演じる。
→関連項目粘膜
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粘液
ねんえき
mucus
粘液腺あるいは漿液腺から分泌される,ねばねばした無色の液体の総称。おもにムチンという複合蛋白質から成り,粘膜の表面をおおって細胞を保護し,湿潤に保つ働きをもつ。
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普及版 字通
「粘液」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
粘液
粘液細胞が産生分泌する粘稠な液.主成分は糖タンパク質.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の粘液の言及
【腺】より
…もっとも卵巣,精巣は,上記のように脊椎動物では性ホルモンを分泌する内分泌腺でもあるので,これら二つの意味をからませて生殖腺または性腺といわれることが多い。なお,植物にもみつ腺や粘液腺といった腺組織がある。︻川島 誠一郎︼
︻ヒトの腺︼
腺では普通,腺細胞glandular cellが集団をなして分泌機能を営むが,腺細胞が単独に散在することもあり,この場合は細胞がすなわち1個の腺であるといえる。…
【体液】より
…中国や日本など東洋の医学で,昔から気や風の変化から疾患を〈病む気〉,つまり〈病気〉として説明してきたのとはきわめて対照的で,こうした体液病理学による医学的思考は,ルネサンス以後に解剖学が進歩して器官の病理学(固体病理学)と入れかわるまで,ヨーロッパで支配的だった。 古代ギリシア・ローマでヒッポクラテスやガレノスらにより取り上げられるのは,粘液phlegm,血液blood,黒胆汁melancholy(black bile),胆汁(黄胆汁choler,yellow bile)という4種の体液であり,これらの平衡と調和を保つことが健康の条件で,ある体液に過剰,不足,移動などが起これば,心身の変調や病態が生じると考えられた。例えば,癲癇(てんかん)の発作は,冷たい粘液が突然脈管内に流れ込んで血液を冷却,停滞させる場合に起こるが,粘液流が多量で濃厚なときには,血液を凝結させるから,直ちに死を招く。…
※「粘液」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」