デジタル大辞泉 「遠」の意味・読み・例文・類語 えん【遠】[漢字項目] ﹇音﹈エン︵ヱン︶︵漢︶ オン︵ヲン︶︵呉︶ ﹇訓﹈とおい ﹇学習漢字﹈2年 ︿エン﹀ 1 空間的、時間的に隔たっている。とおい。﹁遠隔・遠近・遠征/以遠・永遠・望遠・悠遠・遼(りょ)遠(うえん)﹂ 2 とおざける。﹁遠心力/敬遠﹂ 3 深くて大きい。奥深い。﹁遠大・遠謀/高遠・深遠﹂ 4 うとい。﹁遠戚/疎遠﹂ 5 遠(とお)江(とうみ)国。﹁遠州﹂ ︿オン﹀とおい。とおざける。﹁遠国・遠(おん)流(る)/久(くお)遠(ん)﹂ ﹇名のり﹈とお ﹇難読﹈遠(おち)近(こち) おち︹をち︺︻▽遠/彼=方︼ 1遠い所。遠方。 ﹁川より―にいと広くおもしろくてあるに﹂︿源・椎本﹀ 2 現在から隔たった時。 ㋐以前。昔。 ﹁昨日より―をば知らずももとせの春の始めは今日にぞありける﹂︿拾遺・雑賀﹀ ㋑以後。将来。 ﹁このころは恋ひつつもあらむ玉くしげ明けて―よりすべなかるべし﹂︿万・三七二六﹀ [補説]元来、遠く隔たった向こうの意。代名詞的に、﹁かなた﹂﹁あちら﹂の意にも用いる。 おと〔をと〕【▽遠/彼=方】 「おち(遠)」の音変化。「大宮の―つ端手はたで」〈記・下〉[補説]現代語の「おととし(一昨年)」「おととい(一昨日)」の「おと」もこの語にもとづき、時間的に遠いことの意を表す。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「遠」の意味・読み・例文・類語 おちをち【遠・彼方】 (一)〘 代名詞詞 〙 他称。 (二)① 遠く隔たっている場所を指す︵遠称︶。また、ある範囲にはいらない場所をもいう。 (一)[初出の実例]﹁白雲の八重に重なるをちにても思はん人に心へだつな︿紀貫之﹀﹂(出典‥古今和歌集︵905‐914︶離別・三八〇) (三)② 遠く隔たっている時を指す︵遠称︶。 (一)[初出の実例]﹁このころは恋ひつつもあらむ玉匣(たまくしげ)明けて乎知(ヲチ)よりすべなかるべし﹂(出典‥万葉集︵8C後︶一五・三七二六) (二)﹁昨日よりをちをばしらず百年(ももとせ)の春の始めは今日にぞ有りける︿紀貫之﹀﹂(出典‥拾遺和歌集︵1005‐07頃か︶雑賀・一一五九) 遠の語誌 (1)上代においては、方向を表わす代名詞は、指示代名詞に﹁ち﹂を付けて、﹁こち﹂﹁そち﹂等の言い方をするが、遠称にはこのような言い方がなく、﹁をち﹂﹁かなた﹂がこれを代用している。 (2)②の意は、﹁万葉集﹂では未来を表わしているが、中古では過去を表わしていると見られる。 とおくとほく【遠】 〘 名詞 〙 ( 形容詞「とおい」の連用形から ) とおいところ。遠方。[初出の実例]「おさないものの事なれば、よもとをくへはおちまいぞ」(出典:説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)中) とおとほ︻遠︼ (一)〘 造語要素 〙 ( 形容詞﹁とおい﹂の語幹相当部分 ) へただりの程度がはなはだしいこと、とおいこと。また、離れたところを示す。直接名詞、動詞、形容詞に接するほか、連体助詞﹁つ﹂﹁の﹂を伴った連体用法もある。﹁遠かがり火﹂﹁遠干潟﹂など。 おとをと【遠】 〘 造語要素 〙 「おち(遠)」の変化したもの。「おととし(一昨年)」「おとつはたで」など。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例