デジタル大辞泉 「難渋」の意味・読み・例文・類語 なん‐じゅう〔‐ジフ〕【難渋】 ﹇名・形動﹈(スル) 1 物事の処置や進行がむずかしくてすらすらいかないこと。また、そのさま。﹁交渉は難渋している﹂ ﹁風俗史を編成すること頗る―なる業なるのみか﹂︿逍遥・小説神髄﹀ 2 困ること。もてあますこと。また、そのさま。﹁泥道を歩くのに難渋する﹂ ﹁脚に―な腫物があった﹂︿鏡花・高野聖﹀ 3 生活が苦しいこと。貧乏なこと。﹁不景気で暮らし向きが難渋する﹂ ﹁徒に有産の輩を覆して無産の―に陥れたるに似たれども﹂︿福沢・文明論之概略﹀ 4 人に金品を与えたり、貸したりするのを惜しむこと。 ﹁主俄に欲念おこって、ほうびの金を―せしめんがため﹂︿仮・伊曽保・上﹀ [類語]︵1︶渋滞・停滞・難航・停頓・踊り場・横ばい・足踏み・とどまる・難しい・難(かた)い・困難・至難・お手上げ・難題・難問・難事・難関・関門・狭き門・登竜門・壁・懸案/︵2︶てこずる・手詰まり・苦労・困る・弱る・参る・窮(きゅう)する・困(こう)ずる・苦しむ・困り果てる・困りきる・困りぬく・困却する・往(おう)生(じょう)する・難儀する・閉口する・困惑する・当惑する・途方に暮れる・手を焼く・手に余る・持て余す・手に負えない・手が付けられない・手が掛かる・世話が焼ける・始末に負えない・始末が悪い・どうにもならない・如何ともしがたい・度し難い 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「難渋」の意味・読み・例文・類語 なん‐じゅう‥ジフ【難渋】 (一)〘 名詞 〙 (二)① ( ━する ) 物事の処理や進行が困難で渋滞すること。すらすらと事が運ばないこと。なやみしぶること。 (一)[初出の実例]﹁令奏之旨甚雖二懇切一、猶有二難渋之御気色一﹂(出典‥権記‐長徳四年︵998︶二月一一日) (二)﹁深き山路に迷ひ入りて︿略﹀雨は益々降りしきり其の難渋言ふべからず﹂(出典‥経国美談︵1883‐84︶︿矢野龍渓﹀前) (三)② ( ━する ) ( 形動 ) 困ること。もてあますこと。迷惑がること。また、そのさま。 (一)[初出の実例]﹁遠江守朝時朝臣加二評定衆一之後初出仕、此事不二庶幾一之由、内々難渋﹂(出典‥吾妻鏡‐嘉禎二年︵1236︶九月一〇日) (四)③ ( ━する ) 暮らし向きが悪くて苦しむこと。また、貧困であること。 (一)[初出の実例]﹁此仁曾住下宮川、替レ宿元因二難渋多一、至極慥成横道者、家賃不レ払焼二根駄一﹂(出典‥狂詩・二大家風雅︵1790︶) (五)④ 鎌倉・室町時代、裁判所の召喚に応じないなど、訴訟当事者が一方的に手続きを遅怠すること。 (一)[初出の実例]﹁差二定奉公人一召二問両方一之後、一方致二難渋一送二日数一、自二対決之日一過二廿箇日一者、不レ顧二理非一任二訴人申状一可レ有二御成敗一者﹂(出典‥吾妻鏡‐宝治元年︵1247︶二月一二日) (六)⑤ ( ━する ) ぐずぐずして義務や職務をすみやかに果たさないこと。また、年貢その他の貢租の納入をとどこおらせること。 (一)[初出の実例]﹁若有二難渋輩一之者、慥可レ注二進其交名一、為レ被レ付二官使等一也者﹂(出典‥東大寺文書‐文治四年︵1181︶正月七日・興福寺公文所下文案) (七)⑥ ( ━する ) 出し惜しみすること。与えたり、貸したり、返したりするのを惜しみ渋ること。 (一)[初出の実例]﹁大元本尊今朝自二光覚僧正方一請取、自二旧冬一種々難渋、頗沙汰外事也﹂(出典‥満済准后日記‐応永二〇年︵1413︶正月八日) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例