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'''ビワ'''︵枇杷、[[学名]]: |
'''ビワ'''︵枇杷{{sfn|田中潔|2011|p=85}}、[[学名]]: {{Snamei||Eriobotrya japonica}}︶は、[[バラ科]][[ビワ属]]の[[常緑植物|常緑高木]]および食用となるその実。
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原産は[[中華人民共和国|中国]]南西部で、[[日本]]では[[四国]]、[[九州]]に自生する。[[果樹]]としては九州、四国のほか[[和歌山県]]、[[千葉県]]︵[[房総半島]]︶{{sfn|貝津好孝|1995|p=65}}、[[静岡県]]<ref name="伊豆の白ビワ">[https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45386210Y9A520C1L61000/ ︻現場から地方創生︼伊豆市土肥の白ビワ、商品化相次ぐ 地名度向上に知恵]﹃[[日本経済新聞]]﹄電子版2019年5月28日︵2020年2月3日閲覧︶</ref>などで栽培される。[[葉]]は濃い緑色で大きく、長い楕円形をしており、表面にはつやがあり、裏には産毛がある。その大きな葉陰に[[楽器]]の[[琵琶]]に似た形をした一口大の多くの甘い実がなり、黄橙色に熟す。
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原産は[[中華人民共和国|中国]]南西部で、[[日本]]では[[四国]]、[[九州]]に自生する。[[果樹]]としては九州、四国のほか[[和歌山県]]、[[千葉県]]︵[[房総半島]]︶{{sfn|貝津好孝|1995|p=65}}、[[静岡県]]<ref name="伊豆の白ビワ">[https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45386210Y9A520C1L61000/ ︻現場から地方創生︼伊豆市土肥の白ビワ、商品化相次ぐ 地名度向上に知恵]﹃[[日本経済新聞]]﹄電子版2019年5月28日︵2020年2月3日閲覧︶</ref>などで栽培される。[[葉]]は濃い緑色で大きく、長い楕円形をしており、表面にはつやがあり、裏には産毛がある。初夏、その大きな葉陰に[[楽器]]の[[琵琶]]に似た形をした一口大の多くの甘い実がなり、黄橙色に熟す。
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== 名称 == |
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== 植物学的特徴== |
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[[常緑]][[小高木]]で、高さは5 - 10[[メートル]] (m) ほどになる{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。枝葉は春・夏・秋と年に3度伸長する。若枝は、淡褐色の細かい毛に覆われている{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}。 |
[[常緑広葉樹]]の[[小高木]]で、高さは5 - 10[[メートル]] (m) ほどになる{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。枝葉は春・夏・秋と年に3度伸長する。若枝は、淡褐色の細かい毛に覆われている{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}。 |
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[[葉]]は[[互生]]し、[[葉柄]]は短い{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。葉の形は、長さ15 - 20[[センチメートル]] (cm) 前後の広倒披針形・長楕円形・狭倒卵形で先端は尖り、基部は次第に狭くなって葉柄に続いていく{{sfn|山﨑誠子|2019|p=72}}。[[葉身]]は厚くて堅く、表面が凸凹しており[[葉脈]]ごとに波打つ{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。[[葉縁]]には波状の鋸歯がある{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}。葉の表面は初めは毛があるが、生育するにつれて毛はなくなり光沢が出てくる{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}。葉の裏面は、淡褐色の綿毛に覆われたままである{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}。
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[[葉]]は[[互生]]し、[[葉柄]]は短い{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。葉の形は、長さ15 - 20[[センチメートル]] (cm) 前後の広倒披針形・長楕円形・狭倒卵形で先端は尖り、基部は次第に狭くなって葉柄に続いていく{{sfn|山﨑誠子|2019|p=72}}。[[葉身]]は厚くて堅く、表面が凸凹しており[[葉脈]]ごとに波打つ{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。[[葉縁]]には波状の鋸歯がある{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}。葉の表面は初めは毛があるが、生育するにつれて毛はなくなり光沢が出てくる{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}。葉の裏面は、淡褐色の綿毛に覆われたままである{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}。
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花芽は主に春枝の先端に着く。花芽は純正花芽。花期は晩秋から冬︵11 - 2月︶で、甘い芳香がある地味な白い5弁の[[花]]を群がりつける{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。[[葯]]には毛が密に生えている。
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花芽は主に春枝の先端に着く。花芽は純正花芽。花期は晩秋から冬︵11 - 2月︶で、甘い芳香がある地味な白い5弁の[[花]]を群がりつける{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。花径は1 cmほどで、クリーム色を帯びた白い[[花弁]]は、茶色の短い軟毛が密に生えた[[萼片]]に包まれていて、開花のときは花弁を外側に出す{{sfn|田中潔|2011|p=85}}。[[葯]]には毛が密に生えている。長期の花期に多量の花密を蓄え、甘い芳香を放って昆虫または小鳥が来るのを待ち、花粉の媒介が行なわれる{{sfn|田中潔|2011|p=85}}。
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[[自家受粉]]が可能で、果実ははじめ緑色で、初夏︵5 - 6月︶に黄橙色に熟す{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}{{sfn|正木覚|2012|p=94}}。果実は[[花托]]が肥厚した[[偽果]]で、直径3 - 4 cm、長さは6 cm前後の球形から卵形、広楕円形になり、全体が薄い産毛に覆われている{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}{{sfn|山﨑誠子|2019|p=72}}。果実の中には大きな赤褐色の[[種子]]が数個あり、可食できる甘い果肉部分は全体の約3割ほどである{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。
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[[自家受粉]]が可能で、果実ははじめ緑色で、初夏︵5 - 6月︶に黄橙色に熟す{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}{{sfn|正木覚|2012|p=94}}。果実は[[花托]]が肥厚した[[偽果]]で、直径3 - 4 cm、長さは6 cm前後の球形から卵形、広楕円形になり、全体が薄い産毛に覆われている{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}{{sfn|山﨑誠子|2019|p=72}}。果実の中には大きな赤褐色の[[種子]]が数個あり、可食できる甘い果肉部分は全体の約3割ほどである{{sfn|田中孝治|1995|p=158}}{{sfn|川原勝征|2015|p=122}}。
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== 栽培 == |
== 栽培 == |
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やや日陰にも耐え、気温が比較的暖かいところで生育する{{sfn|山﨑誠子|2019|p=72}}。土壌は砂壌土がよく、根は深く張る{{sfn|正木覚|2012|p=94}}。果実を目的に栽培されるが、庭木などの植栽にもされ、葉が濃く茂るため目隠しとしたり、あるいは使い方によっては異国風の庭を演出することもできる{{sfn|正木覚|2012|p=94}}。[[実生]][[苗]]の結実には7 |
やや日陰にも耐え、気温が比較的暖かいところで生育する{{sfn|山﨑誠子|2019|p=72}}。土壌は砂壌土がよく、根は深く張る{{sfn|正木覚|2012|p=94}}。果実を目的に栽培されるが、庭木などの植栽にもされ、葉が濃く茂るため目隠しとしたり、あるいは使い方によっては異国風の庭を演出することもできる{{sfn|正木覚|2012|p=94}}。[[実生]][[苗]]の結実には7 - 8年の歳月を要する{{sfn|田中潔|2011|p=85}}。自家結実性のため、他品種を混植する必要はない。殖やし方は実生、接木であるが挿し木も可能。植栽適期は3月下旬、6 - 7月上旬、9中旬 - 10月中旬とされ、新植は可能だが移植することは不可である{{sfn|正木覚|2012|p=94}}{{sfn|山﨑誠子|2019|p=72}}。剪定は3月下旬 - 4月、9月に行う{{sfn|正木覚|2012|p=94}}。露地栽培の場合、摘房・摘蕾を10月、開花は11月〜2月、摘果を3月下旬〜4月上旬、袋かけを摘果と同時に行う。果実が大きくなるとモモチョッキリ︵[[オトシブミ|ゾウムシ]]の仲間︶の食害を受ける。
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花の数が多く受粉率が高いことから、花蕾が出たら摘蕾や摘房を行わないと、果実がたくさんなりすぎて実が小さくなってしまう{{sfn|田中潔|2011|p=85}}。食用目的で果実を育てるためには、さらなる摘果が必要となる{{sfn|田中潔|2011|p=85}}。 |
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;品種 |
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:[[江戸時代]]末期に日本に導入され、[[明治時代]]から、茂木︵もぎ︶や田中などの果樹としての[[品種]]がいくつかある。現在ではその他に大房、瑞穂、クイーン長崎︵福原︶、白茂木、麗月、陽玉、涼風、長生早生、室戸早生、森尾早生、長崎早生、楠、なつたよりなど多くの品種がある。中国ビワとして冠玉や大五星などがある。2006年、種なしビワである希房が品種登録された。
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:[[江戸時代]]末期に日本に導入され、[[明治時代]]から、茂木︵もぎ︶や田中などの果樹としての[[品種]]がいくつかあるが、栽培品種は少ない方で、この2品種で日本の生産量の95%を占める{{sfn|田中潔|2011|p=85}}。現在ではその他に大房、瑞穂、クイーン長崎︵福原︶、白茂木、麗月、陽玉、涼風、長生早生、室戸早生、森尾早生、長崎早生、楠、なつたよりなど多くの品種がある。中国ビワとして冠玉や大五星などがある。2006年、種なしビワである希房が品種登録された。
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:古代に渡来して野生化した物と考えられる自生木もあるが、種が大きく果肉が薄いため果樹としての価値はほとんど無い。 |
:古代に渡来して野生化した物と考えられる自生木もあるが、種が大きく果肉が薄いため果樹としての価値はほとんど無い。 |
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;産地 |
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=== 食用 === |
=== 食用 === |
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果肉は甘く、生食されるほかに[[缶詰]]などに加工されるが、種子が大きく廃棄率が30%以上である。生食する場合の可食率は65〜70%で[[バナナ]]とほぼ同等である。[[ゼリー]]などの菓子、[[ジャム]]等にも加工される<ref>[[池上保子]]﹃おいしくてクスリになる食べもの栄養事典﹄︵[[日本文芸社]]・日文実用PLUS︶95ページ</ref>。
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果肉は甘く、生食されるほかに[[缶詰]]などに加工されるが、種子が大きく廃棄率が30%以上である。生食する場合の可食率は65〜70%で[[バナナ]]とほぼ同等である。食べるところが少ないという苦情に応えるかたちで、﹁たねなしビワ﹂も作出されている{{sfn|田中潔|2011|p=85}}。[[ゼリー]]などの菓子、[[ジャム]]等にも加工される<ref>[[池上保子]]﹃おいしくてクスリになる食べもの栄養事典﹄︵[[日本文芸社]]・日文実用PLUS︶95ページ</ref>。
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果実酒は、 |
果実酒は、 |
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=== ビワにまつわる言葉等 === |
=== ビワにまつわる言葉等 === |
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ビワは種子から育てて結実するまでに長い年月を要する果樹で知られ、「[[桃]][[栗]]三年[[柿]]八年、枇杷(は早くて)十三年」などと言われている。 |
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「ビワを庭に植えてはいけない」という格言については、ビワの木は広く根を張るので家が倒れるなど、いくつか言い伝えがある。 |
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:ビワの木は広く根を張るので家が倒れるなど、いくつか言い伝えがある。 |
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ビワの[[花言葉]]は、﹁温和﹂{{sfn|田中潔|2011|p=85}}﹁あなたに打ち明ける﹂{{sfn|田中潔|2011|p=85}}とされる。
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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* {{Cite book|和書|author =貝津好孝|title = 日本の薬草|date=1995-07-20|publisher = [[小学館]]|series = 小学館のフィールド・ガイドシリーズ|isbn=4-09-208016-6|page =65|ref=harv}} |
* {{Cite book|和書|author =貝津好孝|title = 日本の薬草|date=1995-07-20|publisher = [[小学館]]|series = 小学館のフィールド・ガイドシリーズ|isbn=4-09-208016-6|page =65|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author = 川原勝征|title = 食べる野草と薬草|date = 2015-11-10|publisher = [[南方新社]]|isbn = 978-4-86124-327-1|page = 121|ref=harv}} |
* {{Cite book|和書|author = 川原勝征|title = 食べる野草と薬草|date = 2015-11-10|publisher = [[南方新社]]|isbn = 978-4-86124-327-1|page = 121|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author =田中潔|title =知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち|date=2011-07-31|publisher =[[主婦の友社]]|series=主婦の友ベストBOOKS|isbn=978-4-07-278497-6|pages =85|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author =田中孝治|title =効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法|date=1995-02-15|publisher =[[講談社]]|series=ベストライフ|isbn=4-06-195372-9|page =158|ref=harv}} |
* {{Cite book|和書|author =田中孝治|title =効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法|date=1995-02-15|publisher =[[講談社]]|series=ベストライフ|isbn=4-06-195372-9|page =158|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author=正木覚 |title=ナチュラルガーデン樹木図鑑|publisher=[[講談社]] |date=2012-04-26 |pages=94 |isbn=978-4-06-217528-9 |ref=harv }} |
* {{Cite book|和書|author=正木覚 |title=ナチュラルガーデン樹木図鑑|publisher=[[講談社]] |date=2012-04-26 |pages=94 |isbn=978-4-06-217528-9 |ref=harv }} |
2022年1月29日 (土) 22:51時点における版
ビワ | |||||||||||||||||||||||||||
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ビワ | |||||||||||||||||||||||||||
分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Eriobotrya japonica (Thunb.) Lindl.[1] | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ビワ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
(Japanese) Loquat |
枇杷 | |||||||||||
繁体字 | 枇杷 | ||||||||||
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簡体字 | 枇杷 | ||||||||||
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蘆橘 | |||||||||||
繁体字 | 蘆橘 | ||||||||||
簡体字 | 芦橘 | ||||||||||
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名称
和名ビワの語源は、葉の形や実の形が楽器の琵琶に似ているからとされる。中国語でも﹁枇杷﹂︵拼音: pípá; 粤拼: pei4 paa4︶と表記するほか[1]、﹁蘆橘﹂︵拼音: lú jú; 粤拼: lou4 gwat1︶とも呼ばれ、英語の﹁loquat﹂は後者の広東語発音に由来する。分布・生育地
中国南西部の原産で、日本には古代に持ち込まれたと考えられており[5]、主に本州の関東地方・東海地方の沿岸、石川県以西の日本海側、四国、九州北部に自然分布する[6]。またインドなどにも広がり、ビワを用いた様々な療法が生まれた。中国系移民がハワイに持ち込んだ他、日本からイスラエルやブラジルに広まった。トルコやレバノン、ギリシャ、イタリア南部、スペイン、フランス南部、アフリカ北部などでも栽培される。植物学的特徴
常緑広葉樹の小高木で、高さは5 - 10メートル (m) ほどになる[7][5]。枝葉は春・夏・秋と年に3度伸長する。若枝は、淡褐色の細かい毛に覆われている[7]。 葉は互生し、葉柄は短い[5]。葉の形は、長さ15 - 20センチメートル (cm) 前後の広倒披針形・長楕円形・狭倒卵形で先端は尖り、基部は次第に狭くなって葉柄に続いていく[6]。葉身は厚くて堅く、表面が凸凹しており葉脈ごとに波打つ[5]。葉縁には波状の鋸歯がある[7]。葉の表面は初めは毛があるが、生育するにつれて毛はなくなり光沢が出てくる[7]。葉の裏面は、淡褐色の綿毛に覆われたままである[7]。 花芽は主に春枝の先端に着く。花芽は純正花芽。花期は晩秋から冬︵11 - 2月︶で、甘い芳香がある地味な白い5弁の花を群がりつける[7][5]。花径は1 cmほどで、クリーム色を帯びた白い花弁は、茶色の短い軟毛が密に生えた萼片に包まれていて、開花のときは花弁を外側に出す[2]。葯には毛が密に生えている。長期の花期に多量の花密を蓄え、甘い芳香を放って昆虫または小鳥が来るのを待ち、花粉の媒介が行なわれる[2]。 自家受粉が可能で、果実ははじめ緑色で、初夏︵5 - 6月︶に黄橙色に熟す[7][8]。果実は花托が肥厚した偽果で、直径3 - 4 cm、長さは6 cm前後の球形から卵形、広楕円形になり、全体が薄い産毛に覆われている[5][6]。果実の中には大きな赤褐色の種子が数個あり、可食できる甘い果肉部分は全体の約3割ほどである[7][5]。 長崎県、千葉県、鹿児島県などの温暖な地域での栽培が多いものの若干の耐寒性を持ち、寒冷地でも冬期の最低気温-10℃程度であれば生育・結実可能である。-
果実の断面。中央に大きな褐色の種子が数個あり、可食部となる果肉部は3割ほどである。
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ビワの果実。形が楽器の琵琶に似る。甘い芳香があり、表面に産毛がある。
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花と蕾。冬の間に新しい枝先に群がって咲く。
-
新緑のビワ
栽培
利用
果実は甘く、生食や缶詰にされる。茶色い種子は、生薬の杏仁の代用として利用される。果樹であるが、葉は薬用として重宝されてきており、ビワ茶にしたり浴湯料にする[8]。食用
果肉は甘く、生食されるほかに缶詰などに加工されるが、種子が大きく廃棄率が30%以上である。生食する場合の可食率は65〜70%でバナナとほぼ同等である。食べるところが少ないという苦情に応えるかたちで、﹁たねなしビワ﹂も作出されている[2]。ゼリーなどの菓子、ジャム等にも加工される[31]。 果実酒は、 氷砂糖とホワイトリカーだけでも作れるが、ビワは酸味が非常に少ないので、果実のほかに皮むきレモンの輪切りを加えて漬け込むとよい[7]。また、果肉を用いずにビワの種子のみを使ったビワ種酒は、杏仁に共通する芳香を持ち、通の間で好まれる[7][5]。薬用
漢方と民間療法
葉は枇杷葉︵びわよう︶、種子は枇杷核︵びわかく︶とよばれる生薬である[3]。 ﹁大薬王樹﹂と呼ばれ、民間療薬として親しまれてもいる。なお、以下の利用方法・治療方法は特記しない場合、過去の歴史的な治療法であり、科学的に効果が証明されたものであることを示すものではない。 葉には収斂︵しゅうれん︶作用があるタンニンのほか、鎮咳︵ちんがい︶作用があるアミグダリンなどを多く含み[7]、乾燥させてビワ茶とされる他、直接患部に貼るなど生薬として用いられる。葉の上にお灸を乗せる︵温圧療法︶とアミグダリンの鎮痛作用により神経痛に効果があるとされる。 枇杷葉は、9月上旬頃に採取して葉の裏側の毛をブラシで取り除き、日干しにしたものである[7]。この枇杷葉5 - 20グラムを600 ccの水で煮出した煮汁を、1日3回に分けて茶のように飲むと、咳、胃炎、悪心、嘔吐、下痢止めに効果があるとされる[3][7][5]。また、あせもや湿疹には、煎じ汁の冷めたもので患部を洗うか、浴湯料として用いられる[3][7]。江戸時代には、夏の暑気あたりを防止する枇杷葉湯に人気があったといわれており、葉に含まれるアミグダリンが分解して生じたベンズアルデヒドによって、清涼飲料的効果が生み出されるといわれている[7]。 果実は咳、嘔吐、喉の渇きなどに対して効能を発揮する[32]。ビワ酒は、食欲増進、疲労回復に効果があるといわれている[7]。 種子は、5個ほど砕いたものを400 ccの水で煎じて服用すると、咳、吐血、鼻血に効果があるとされる[3]。 ただし、アミグダリンは胃腸で分解されると猛毒である青酸を発生する。そのため、葉などアミグダリンが多く含まれる部位を経口摂取する際は、取り扱いを間違えると健康を害し、最悪の場合は命を落とす危険性がある。医学的知見
安全性
ビワ、アンズ、ウメ、モモ、スモモ、アーモンドなどのバラ科サクラ属植物の種子 ︵種皮の内部にある胚と胚乳からなる仁︶には、種を守るために青酸配糖体であるアミグダリンが多く含まれ、未熟な果実や葉、樹皮にも微量含まれる[37][50][51]。 アミグダリン自体は無毒であるが、経口摂取する事で、同じく植物中に含まれる酵素エムルシンや、ヒトの腸内細菌が持つ酵素β-グルコシダーゼによって体内で分解され、シアン化水素︵青酸︶を発生させる[52][53]。 シアン化水素はごく少量であれば安全に分解されるが、ある程度摂取すれば嘔吐、顔面紅潮、下痢、頭痛等の中毒症状を生じ、多量に摂取すれば意識混濁、昏睡などを生じ、死に至ることもある[39][54]。 熟した果肉や加工品を通常量摂取する場合には、安全に食べることができる[37][55]。 アミグダリンは果実の成熟に従い、植物中に含まれる酵素エムルシンによりシアン化水素︵青酸︶、ベンズアルデヒド︵アーモンドや杏仁、ビワ酒に共通する芳香成分︶、グルコースに分解されて消失する。この時に発生する青酸も揮散や分解で消失していく[56]。 また、加工によっても分解が促進される[37][57]。 しかし、種子のアミグダリンは果肉に比べて高濃度であるため、成熟や加工によるアミグダリンの分解も果肉より時間がかかる[37]。種子がアミグダリンをもつのは自分自身を守るためにあると考えられ、外的ショックを受けてキズが入った種子には1000 - 2000ppmという高濃度のシアン化水素を含むものもある[37][52]。生の種子を粉末にした食品の中には、小さじ1杯程度の摂取量で安全に食べられるシアン化水素の量を超えるものある[58]。2017年に高濃度のシアン化合物︵アミグダリンやプルナシン︶が含まれたビワの種子の粉末が発見されたことにより、厚生労働省は天然にシアン化合物を含有する食品と加工品について、10ppmを超えたものは食品衛生法第6条の違反とすることを通知した[59][58][40]。欧州食品安全機関︵EFSA︶は、アミグダリンの急性参照用量(ARfD︶︵毎日摂取しても健康に悪影響を示さない量︶を20μg/kg体重と設定している[54]。 アミグダリンの最小致死量は50mg/kgであり[54]、3gのサプリメント摂取による死亡報告がある[39]。 2018年に国民生活センターは、ビワの葉と種子を原材料とした4銘柄の健康茶のシアン化合物濃度を測定し、種子を原材料とした3銘柄からは1パックにつきシアン化合物が160 - 660ppm検出された[40]。商品に記載された方法で浸出したものは1.7 - 7.3ppmと健康に悪影響を示す量ではなかったが、飲用量や淹れ方によっては10ppmを超える可能性がある。結果を受け国民生活センターは、事業者へは品質管理の徹底を、行政機関には指導の徹底を要望した[40]。 また消費者には、ビワの種子などを原材料にした健康食品等は、利用する必要性をよく考え、利用する場合は、製造者等により原材料や製品、摂取する状態でのシアン化合物の濃度が調べられているかを確認し、1度に多量に摂取しないようアドバイスをしている[40]。 厚生労働省は、ビワやアンズなどの種子を利用したレシピの掲載についても注意喚起を行っている[60][61]。家庭で生のビワやアンズの仁から杏仁豆腐を作ると、調理実験により数分煮るだけではシアン化物が全て除去されないことが報告されている[58]。場合によっては1 - 2食分の杏仁豆腐でシアン化物の急性参照用量(ARfD)を超えることが考えられる[62][58]。木材
乾燥させると非常に硬い上に粘りが強く、昔から杖の材料として利用されていた。現在でも上記の薬用効果にあやかり、乾燥させて磨いた物を縁起物の﹁長寿杖﹂と称して利用されている。激しく打ち合わせても折れることがないことから、剣道・剣術用の高級な木刀として利用されている。文化
文学
日本においては梅雨の頃に実がなるため、﹁枇杷﹂及び﹁枇杷の実﹂は仲夏︵芒種︹6月6日頃︺から小暑の前日︹7月6日頃︺まで︶の季語とされている[63]。また冬には、枝先にやや黄色味を帯びた白い五弁の小花を咲かせる。目立たない花ではあるけれどもかぐわしい香りを持ち、﹁枇杷の花﹂や﹁花枇杷﹂あるいは﹁枇杷咲く﹂などは初冬︵はつふゆ‥立冬︹11月8日ごろ︺から大雪の前日12月7日ごろ︺まで︶の季語となっている[64]。ビワにまつわる言葉等
ビワは種子から育てて結実するまでに長い年月を要する果樹で知られ、﹁桃栗三年柿八年、枇杷︵は早くて︶十三年﹂などと言われている。 ﹁ビワを庭に植えてはいけない﹂という格言については、ビワの木は広く根を張るので家が倒れるなど、いくつか言い伝えがある。 ビワの花言葉は、﹁温和﹂[2]﹁あなたに打ち明ける﹂[2]とされる。脚注
注釈
出典
参考文献
●貝津好孝﹃日本の薬草﹄小学館︿小学館のフィールド・ガイドシリーズ﹀、1995年7月20日、65頁。ISBN 4-09-208016-6。 ●川原勝征﹃食べる野草と薬草﹄南方新社、2015年11月10日、121頁。ISBN 978-4-86124-327-1。 ●田中潔﹃知っておきたい100の木‥日本の暮らしを支える樹木たち﹄主婦の友社︿主婦の友ベストBOOKS﹀、2011年7月31日、85頁。ISBN 978-4-07-278497-6。 ●田中孝治﹃効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法﹄講談社︿ベストライフ﹀、1995年2月15日、158頁。ISBN 4-06-195372-9。 ●正木覚﹃ナチュラルガーデン樹木図鑑﹄講談社、2012年4月26日、94頁。ISBN 978-4-06-217528-9。 ●山﨑誠子﹃植栽大図鑑﹇改訂版﹈﹄エクスナレッジ、2019年6月7日、72 - 73頁。ISBN 978-4-7678-2625-7。関連項目
外部リンク
- ビワ(枇杷) - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所)
- アミグダリン、レートリル、レトリル - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所)
- アミグダリンについて - 同
- 『ビワ』 - コトバンク