避難準備
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避難準備︵ひなんじゅんび、英: evacuation preparation︶とは、人的被害が発生する災害発生の可能性がある場合に前もって避難の準備を行うこと。
﹁要配慮者﹂すなわち高齢者・障害者・乳幼児などのいわゆる災害弱者については、避難準備の段階での早期の避難が求められる。日本では災害対策基本法に基づき市区町村長が発表する﹁高齢者等避難﹂︵こうれいしゃとうひなん、英: Evacuation of the Elderly, Etc.[1]︶が、要配慮者の避難を呼び掛けそれ以外の住民にも準備を促す避難情報。水害・土砂災害・高潮に導入されている警戒レベルではレベル3の情報︵危険な場所から高齢者等は避難︶に位置付けられている[2]。
高齢者等避難[編集]
日本においては災害発生の可能性があるときに、災害対策基本法第56条の規定に基づいて、市区町村長が避難の準備を呼びかける情報を発表する。 第五十六条 ︵前略︶市町村長は、住民その他関係のある公私の団体に対し、予想される災害の事態及びこれに対してとるべき避難のための立退きの準備その他の措置について、必要な通知又は警告をすることができる。 — 災害対策基本法︵令和3年5月10日改正︶ 2004年︵平成16年︶に新潟・福島豪雨などの風水害により高齢者の被害が相次いだことから、2005年︵平成17年︶に内閣府のガイドラインで﹁避難準備情報﹂として制定され、同年6月28日に新潟県の三条市と長岡市ではじめて適用された。これにより、避難情報は3段階となる。なおこの時点では法律に明記がなく、各市町村が採用することで順次広がっていった。2013年6月の災害対策基本法改正で初めて明記されている[3][4]。 しかし、2016年︵平成28年︶の台風10号で高齢者施設の入居者が犠牲になったことで、﹁避難準備﹂では呼びかけの意図が伝わりにくいことが問題視された。高齢者等は避難を開始する段階であることを明確にするために、同年12月26日より﹁避難準備・高齢者等避難開始﹂に名称が変更された[5][4]。 この間、警戒レベルの導入による﹁災害発生情報﹂の導入で2019年からは避難情報が4種類に増える反面、分かりにくさも指摘されていた[4][6]。 さらに、2021年︵令和3年︶5月20日からは名称を﹁高齢者等避難﹂に改称している。避難行動の対象者をより明確にすることが理由で、避難勧告の廃止を含む改正災害対策基本法施行に合わせて行われた。これにより避難情報は下位から順に﹁高齢者等避難﹂﹁避難指示﹂﹁緊急安全確保﹂の3種類となった[2][6][7]。 火山災害では、﹁噴火警報︵居住地域︶﹂︵特別警報に該当する︶の発表が高齢者等避難の段階である。なお、噴火警戒レベル導入火山ではレベル4にあたる[8]。この名称もかつては﹁避難準備﹂だった。 避難は、学校や病院・福祉事務所などのそれぞれの機関で作成されている﹁地域防災計画﹂や﹁防災業務計画﹂に基づき行われる。﹁人的被害が発生するおそれ﹂という不確実な段階で地域の人々の避難準備をさせる、すなわち災害が発生しない可能性も内在しながら、人々の生命を優先させるために発令することに意義がある。なお、この情報が発令されたとしても、事業所の活動や商店などの営業は可能となっている。 テレビやWebサイト等による伝達の際、ガイドラインではISO 22324等を参考に危険度をカラーレベルで表現することが望ましいとされている。2019年に警戒レベルが導入されるとこれに合わせる形で変更された。現在高齢者等避難は赤系統 ︵RGB(255, 40, 0)︶。一例として2021年5月時点で、NHKのテレビ放送では同じ色[9]、Yahoo! JAPANの避難情報のページでは 赤系統の近似色 [10]︵※高齢者等避難に改称前は 黄色系統[11]︶を使用している。基準[編集]
市町村が各々の事情に応じて基準を設定するが、内閣府のガイドラインがその目安になっている。以下に主なものを挙げる[注 1]。
水害
川の水位が避難判断水位に達しており更に上昇すると見込まれる場合や、︵大きな川の中下流域では︶ 洪水警報に相当する危険度分布﹁警戒︵赤︶﹂の場合など。
土砂災害
大雨警報︵土砂災害︶が発表された場合や、危険度分布﹁警戒︵赤︶﹂の場合、過去の事例に基づく雨量基準などで早期避難を開始すべき水準に達した場合など。また、大雨注意報発表中の夕刻の段階で夜から早朝の間に大雨警報への切り替えの可能性がある場合。
高潮
警報に切り替える可能性が高い旨の高潮注意報発表や、高潮特別警報発表の可能性がある場合︵上陸24時間前︶。
※なお風水害では、台風等で避難が難しくなる暴風が予想される場合は風の弱い段階で、夜間から明け方に強い降雨が予想される場合は夕方の時点での発表を検討する。
津波
猶予時間のある遠地津波で、津波警報等に先立って発表する場合。
避難準備で行うべき事[編集]
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要配慮者︵災害時要配慮者、災害時要援護者︶ではない一般の人々が避難準備情報の発令により行うべき避難準備には、以下の内容があるとされている。
●正しい情報の入手
●地域の自治体による広報を聞く︵防災行政無線、広報車、地方自治体のホームページ等︶
●地域情報の入手が困難なときは、テレビ・ラジオにより入手
●気象情報などに注意する
●持ち物の準備
●避難場所の確認
●災害の種類・内容により場所が異なる場合がある
●近所の人への声かけ
●避難前には必ず電気のブレーカーを落とす
●通電火災を防ぐ
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 内閣府の「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)」(2021年5月発表)において、目安として示された事項を記載している。
出典[編集]
(一)^ 新たな避難情報に関するポスター・チラシ︿英語版﹀ (PDF) - 内閣府﹁防災情報のページ﹂
(二)^ ab﹁避難情報に関するガイドラインの改定︵令和3年5月︶本文 (PDF) ﹂、2021年5月、8 - 18頁, 22 - 36頁。
(三)^ “避難準備情報︵ひなんじゅんびじょうほう︶とは - コトバンク”. 2017年1月23日閲覧。
(四)^ abc牛山素行、﹁特集 災害時の﹁避難﹂を考える -プロローグ 避難勧告等ガイドラインの変遷-﹂、日本災害情報学会、﹃災害情報﹄、18巻、2号、2020年 doi:10.24709/jasdis.18.2_115
(五)^ “避難準備情報の名称変更 ﹁高齢者等﹂追加”. 日本経済新聞. 2017年1月23日閲覧。
(六)^ ab“災害時の﹁避難勧告﹂廃止、﹁避難指示﹂に一本化…違い分かりにくく”. 読売新聞オンライン (2021年5月10日). 2021年5月10日閲覧。
(七)^ “﹁避難勧告﹂廃止し﹁避難指示﹂に一本化 法律改正案可決 成立”. NHKニュース (2021年4月28日). 2021年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月7日閲覧。
(八)^ ﹁噴火警報・予報の説明﹂、気象庁、2023年1月14日閲覧
(九)^ “5段階の大雨警戒レベル|災害 その時どうする|災害列島 命を守る情報サイト|NHK NEWS WEB”. 日本放送協会. 2021年4月20日閲覧。
(十)^ ﹁天気・災害トップ > 避難情報﹂、Yahoo! JAPAN、2021年5月23日閲覧︿Wayback Machineによる同日時点のアーカイブ﹀
(11)^ ﹁天気・災害トップ > 避難情報﹂、Yahoo! JAPAN、2021年4月22日閲覧︿Wayback Machineによる同日時点のアーカイブ﹀