◆マスメディアの大半は、いまの菅直人政権下の政治について﹁大震災の復旧・復興が急がれている時期に、政局にすべきではない﹂と唱えている。野党自民党などが﹁菅直人内閣不信任決議案﹂を提出して、政権交代をようとしとていたり、民主党内野党である小沢一郎元代表をはじめ﹁反菅グループ﹂が﹁菅降ろし﹂をしていたりしているのをとらえて、﹁政局﹂にしようとしていると決め付けているのである。
しかし、このいずれの動きも、元はといえば、菅直人首相が自ら招いた結果であることを正確に見なければならない。
野党自民党が政権を取り返したいと考え、ありとあらゆる手段を尽くすのは、当たり前のことである。にもかかわらず、今回は、大震災対応という緊急事態に直面して、菅直人政権に全面協力の姿勢を示して、事実、与野党連絡協議会で全面協力している。
◆この良好ムードをぶち壊したのは、菅直人首相自身だった。まともな人間ならば、物を頼むのに、電話一本で、ぶしつけに頼むことはしない。ましてや人事をめぐる頼み事なら、﹁三顧の礼﹂を尽くす。それを菅直人首相は、谷垣禎一総裁に﹁副総理として入閣し、復興担当相に就任して欲しい﹂と電話で依頼した。いきなりの依頼に谷垣禎一総裁はやんわりと断った。大連立政権を組むことになると即断したからである。こんなことをいかに総裁と言えど、勝手には決められない。党議に図る必要がある。すると、菅直人首相は逆切れして﹁あなたには責任を共有するつもりはないのか﹂と怒鳴り散らしたというのである。
読売新聞は4月30日付け朝刊﹁政治面﹂︵3面︶で、﹁電話で入閣要請に渡部氏﹃経験浅い﹄﹂という見出しをつけて、以下のように報じている。
﹁﹁電話で﹁入閣してくれ﹂と言うのは、やっぱり政治の経験が浅い﹂。民主党の渡部恒三最高顧問は29日の衆院予算委員会で、菅首相が東日本大震災後の先月19日、自民党の総裁に電話で入閣要請したことに苦言を呈した。渡部氏は、﹁谷垣氏に連立を求めたのは
間違いなかったが、やり方が違う﹂とし、﹃私なら自民党本部に行き、手をついて谷垣氏に︿国のために、あなたが首相になってください。私は副総理でお仕えします﹀と言っただろう。そうしたら谷垣氏も断れなかった﹂と語った。神妙な表情で聞き入っていた首相は、答弁で﹁色々な面で私の態度が不十分だったことをおわび申し上げたい﹄と陳謝した﹂
自民党など野党は、非礼で無礼極まりない菅直人首相に向けて﹁菅直人内閣不信任決議案﹂を提出するタイミング計っている。ただし、野党だけでは、可決成立させることは難しい。過半数には、73議席不足してからである。
◆次に、民主党内野党である小沢一郎元代表ら﹁反菅グループ﹂が﹁菅降ろし﹂を進めているのは、菅直人首相が強い﹁反小沢意識﹂に固執し、小沢一郎元代表を排除し続けていることに、すべての原因がある。小沢一郎元代表が協力を申し出ているのを頑迷固陋に拒否していることが招いた結果である。つまり、挙党一致体制を築かず、それどころか、民主党の政敵に協力を求めようとしている。それも、民主党内での熟議も経ず、党議決定という手続きも経ずにである。まさに、ムチャクチャである。この罪は、渡部恒三最高顧問にしても、同じである。当選以来42年もの付き合いのある小沢一郎元代表を排除して、挙党一致態勢を築かせない張本人の1人でもあるからだ。民主党内をかき乱しているうえに、衆院予算委員会で野党党首ヘッドハントの指南をするなど、精神異常としか思えない。
読売新聞は同じ面で、﹁政治の現場﹂-﹁混迷民主 1﹂というワッペン付きの特集において﹁﹁反小沢﹂意識で政権固執﹂という見出しをつけて、次のように述べている。
﹁26日の衆院予算委員会で、菅は仮設住宅への入居について、﹁遅くともお盆の頃までには希望者全員に入っていただけるよう全力を挙げる﹂と表明した。しかし、開かれた政府と各党の実務者協議で、国土交通省の官僚は﹁首相の思いを大切にしたい﹂と述べただけで、野党側は﹁あれだけ首相が明確に答弁したことが、内閣の方針にならない。がくぜんとした﹂︵石田祝稔公明党衆院議員︶と不信感を募らせている﹂
官僚たちは官僚嫌いの菅直人首相をハナから相手にしていない。だから菅直人首相が、国民に向けて何を約束しようとも、これを実行しようとは、ちっとも思っていない菅直人
首相の言ったことは、まったく実現されることなく、結果としては、﹁ウソ﹂ということになって終わる。
◆こんな異常で歪な政治状況を自らつくっておきながら、これを自民党など野党ばかりか、民主党内野党のせいにして、責任を転嫁しているのだ。この尻馬に乗っているのが、マスメディアであり、大変間違った報道をし続けている。
菅直人首相とマスメディアが生み出している﹁不条理﹂は、被災地の瓦礫の山の撤去を
遅らせ、夏の訪れとともにゴミのなかの蛆虫を繁殖させ、腐臭を募らせて、不衛生状態を進行させ、感染症を蔓延させていく。何よりも早く行わなければならないのは、被災地の
瓦礫の山の消毒である。これが遅れれば遅れるほど、第3次被害による死者が間違いなく続出する。復旧は、時間との勝負である。復興という﹁夢物語﹂は、どこか別室でゆっくり構想すればよい。
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