アンモナイト

頭足綱に属する動物の分類群のひとつ

アンモナイト分類名:アンモナイト亜綱学名subclassis Ammonoidea)は、古生代シルル紀末期(もしくは[注 1]デボン紀中期)から中生代白亜紀末までのおよそ3億5000万年前後の間を、海洋に広く分布し繁栄した、頭足類分類群の一つ。多くの種が平らな巻き貝のような形をした殻を持っているのが特徴である。

アンモナイト亜綱
Ammonoidea
生息年代: 425.0–65.5 Ma

アンモナイトの化石標本(裁断面)

保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
約4億2500万年前 - 約6550万年前
古生代シルル紀末期(もしくはデボン紀中期)- 中生代白亜紀末(K-Pg境界
分類
: 動物界 Animalia
亜界 : 真正後生動物亜界 Eumetazoa
階級なし : 左右相称動物 Bilateria
旧口動物超門 Protostomia
上門 : 冠輪動物上門 Lophotrochozoa
: 軟体動物門 Mollusca
: 頭足綱 Cephalopoda
亜綱 : アンモナイト亜綱 Ammonoidea Zittel1884
学名
Ammonoidea Zittel1884
和名
アンモナイト亜綱
英名
Ammonite
下位分類(

K-Pg姿

呼称

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アンモーンのレリーフ、バラッコ古代彫刻美術館イタリア語版蔵。

: μμων ; Ammōn[2]: cornu Ammonis Hammonis cornu[3][1]Ammon  -ite  ammonite 18[2]

[3]

[4]

2[5]

等角螺旋

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アンモナイトの殻(螺環)の外観は一見しただけでは巻き貝のそれと同じようにみえるが、注意深く観察するとそうではない。一般的なアンモナイトの殻は、巻き貝のそれと共通点の多い等角螺旋(対数螺旋、ベルヌーイ螺旋)構造を持っていることは確かであるが、螺旋の伸張が平面的特徴を持つ点で、下へ下へと伸びていき全体に立体化していく巻き貝の殻とは異なり、巻かれたぜんまいばねと同じような形で外側へ成長していくものであった。これは現生オウムガイ類も同様である[6][7]

また、殻の表面には成長する方向に対して垂直に節くれ状の段差が多数形成されていることが多い。

内部構造

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[8]︿ genus Nautilus[4][9]調[4]

調1970姿[10]

沿[9]

殻の成長

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また、螺環の巻き始めの部分に初期室という丸い空間が存在している点も、これを持たないオウムガイと異なる[5]。卵の中で発生したアンモナイトの殻は初期室とそれを取り巻く1/3から1巻き程度の螺環で構成されている。この小さな殻はアンモニテラと呼ばれるもので、卵から孵化した後、あるくびれを経て異なるから構造の螺環が続けて形成されていく。通常巻きのアンモナイトではより外側を次の螺環が取り巻くように成長していき、内側の螺環は真珠層で被覆を受ける[4]

縫合線

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H[9][4]

軟体部

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ハインリヒ・ハルダー (Heinrich Harder) の筆による、アンモナイトの生態復元想像図。cf. The Wonderful Paleo Art of Heinrich Harder.

90CT810[11]2[11]

1[5]7[11]42[11]

2[11]

進化史と系統分類

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ドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルによって著された" Kunstformen der Natur (自然の芸術的形態)"(1904年)に見るアンモナイトの図説。
 
Discoscaphites iris.

la:la:Sphaerorthoceras

P-T[5]P-T姿[5]

[5][4]6600K-Pg姿[5][12]

20[11]



姿

上位分類

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頭足綱の分類は非常に流動的で、統一見解が無い。諸説ある中の有力な3説に基づく、アンモナイト亜綱の上位分類、および、近縁の分類群をここに示す。

分類 (1)

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頭足綱をオウムガイ亜綱・アンモナイト亜綱・鞘形亜綱の3亜綱に大別する。

分類 (2)

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2

分類 (3)

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頭足綱を四鰓亜綱と二鰓亜綱の2亜綱に大別し、オウムガイ類とアンモナイト類と前者の下位に、現生を含む全ての鞘形類を後者の下位に置く。

  • 四鰓亜綱 Tetrabranchia :巻き貝類に似た殻を持つ。足は多数の触手になっている。
    • オウムガイ目 Nautiloida
    • †アンモナイト目 Ammonoida
  • 二鰓亜綱 Dibranchiata

下位分類(目・亜目)

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諸説ある中の有力な2説に基づく、アンモナイト亜綱の下位分類をここに示す。アンモノイド類は、狭義のアンモナイト類(アンモナイト目)と区別して言う場合のアンモナイト亜綱の呼称。なお、分類 (1) は分類 (2) より多くの目を含むがゆえ、先に記したに過ぎない。分類 (2) は多くの支持を集める分類法である。

略号の意味: †=絶滅(ここでは全て絶滅種)。la=ラテン語発音に準じた仮名転写(以下同様)。日本語による別の読みもあるが、ここでは省略する。

分類 (1)

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74

 Ammonoidea
 Bactritida - -la:la:Sphaerorthoceras

la: Anarcestida (Agoniatitida) - 

 Goniatitida - 

 Clymeniida - 

 Prolecanitida - 

 Ceratitida - 

 Ammonitida - 
la: Phylloceratina - 

 Ammonitina - 

la: Lytoceratina - 

la: Ancyloceratina - 

分類 (2)

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バクトリテス目をアンモナイト亜綱に先行するものとして除外し、オウムガイ亜綱に分類する説に基づく。アナルセステス類をもってアンモナイト亜綱の出現とする。このほかにも、アンモナイト亜目をアンモナイト亜目とペリスフィンクタス亜目 (Perisphinctina) に二分する説もある。

生態

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[4][11]

[11][11]

化石としての特徴

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生層序

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同一層から発見される化石であれば、アンモナイトの種別を基に年代の特定が可能。

化石の産出数が多いことに加え、年代によって形に差異が見られ、なおかつ、その特徴が信用に足る規則性を持っているため、示準化石として地質学上有用なものとなっている。すなわち、アンモナイトの化石は多くの年代地層で見出されるが、その種類は限定的・規則的であるので、各種のアンモナイト化石が発見される地層の相対的な年代をアンモナイトで特定できる、ということである[13][14]

主な化石産地

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世界

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日本

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日本では北海道が世界的産地の一つとして知られており、これまでに600種類以上が発見されている。特にアンキロセラス類の産地として有名。

 
北海道、三笠市立博物館におけるアンモナイト化石の展示

主な展示場

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日本

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 [15]

 宿宿使

利用

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化石、ときに宝石

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en
 
 
 

[6]7000 (Piegan Blackfeet) 1970la:Placenticeras1

 (Ammonite pyrite) 

芸術的モチーフ

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バチカン美術館二重螺旋階段[注 7]

アンモナイトの優れた造形は多分野の芸術家に愛され、多くの創作物がこれをモチーフとしている(右列上の画像の街灯は一例[注 8])。対数螺旋はレオナルド・ダ・ヴィンチアントニ・ガウディの建築様式にも見られるが、ガウディの螺旋階段などは上から見ると段差の一つ一つがアンモナイトの連室を想起させ、巻き貝の殻とは違うアンモナイトの殻がモチーフであったとする話を説得力あるものとしている。右列下の画像は別のものであるが、これも対数螺旋の階段の一例。

脚注

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注釈

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(一)^ 

(二)^ /Jupiter Ammon / Ζευς Αμμων 

(三)^ Hammon  Ammon  cornu 

(四)^  (Allonautilus) 2

(五)^ 

(六)^ 

(七)^ 

(八)^ 

出典

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(一)^ 3760167

(二)^ ammonite. Online Etymology Dictionary. 20211031

(三)^ . . . 20211031

(四)^ abcdef74200385-88doi:10.14825/kaseki.74.0_85  

(五)^ abcdefNEO 2004122070-71ISBN 4-09-217212-5 

(六)^  (2018330). . Kondo Labo. . 2021125

(七)^ Ouroboros 2422020519 

(八)^ . . 20211031

(九)^ abc201472232-39ISBN 978-4-416-11456-8 

(十)^ (4) (2)The Chemical Times2082008 

(11)^ abcdefghi(4) (3)The Chemical Times2092008 

(12)^ Landman, Neil H.; Goolaerts, Stijn; Jagt, John W.M.; Jagt-Yazykova, Elena A.; Machalski, Marcin (2015), Klug, Christian; Korn, Dieter, eds. (), Ammonites on the Brink of Extinction: Diversity, Abundance, and Ecology of the Order Ammonoidea at the Cretaceous/Paleogene (K/Pg) Boundary, Springer Netherlands, pp. 497553, doi:10.1007/978-94-017-9633-0_19, ISBN 978-94-017-9633-0, https://doi.org/10.1007/978-94-017-9633-0_19 2024527 

(13)^ 2200612513-19ISBN 978-4-320-04682-5 

(14)^ . . 20211031

(15)^  - 

関連項目

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外部リンク

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日本語による
外国語による