第43回
南極条約協議会議時でのスピーチ
2021年6月24日録音
仏国立行政学院(École nationale d'administration)
2008年9月、マクロンは監査官を辞めロスチャイルド&Cie銀行︵英語︶に勤めた。ニコラ・サルコジが大統領に選出されたために政府関係の職から離れたといわれる。同行での最初の仕事はCréditMutuel Nord Europe︵北欧信用保証協会︶の消費者金融会社コフィディス買収支援だった[16]。
マクロンは﹃ル・モンド﹄紙の監督委員を務める実業家アラン・マンク︵英語版︶と関係を結んだ[17]。2010年、マクロンは同紙の資本増強とアトス社によるシーメンスITソリューション&サービスの買収に関わった後、ロスチャイルド&Cie銀行と提携するようマンクに促した。同年、マクロンはマネージングディレクターに任命され、ネスレを支援しファイザーから乳幼児飲料系の最大子会社を買収した。この取引は総額90億ユーロにのぼり、分担金を得たマクロンは億万長者となった[18]。
マクロンは2010年12月から2012年5月の間に200万ユーロを稼いだと述べた[19][リンク切れ][20]。公式文書によれば2009年から2013年の間にマクロンの収入はおよそ300万ユーロにのぼるとされる[要出典]。
2012年5月から大統領府副事務総長としてフランス大統領オランドの側近を務めるようになる。
2014年8月、ドイツ主導の緊縮財政政策を批判して更迭されたアルノー・モントブール︵フランス語版︶の後を引き継ぎ、第2次マニュエル・ヴァルス内閣の経済・産業・デジタル大臣に就任した[21]。1962年1月就任のヴァレリー・ジスカール・デスタン以来、最年少の大臣登用であった。前職のモントブールがユーロ懐疑派で左翼であったのに対し、マクロンは親EU︵欧州連合︶であり、メディアはマクロンを﹁アンチ・モントブール﹂と称し、大臣職として実業家の目線から改革推進の最前線に立った。
マクロンはフランスを代表する自動車メーカーであるルノーの自社持ち株比率を15パーセントから20パーセントに引き上げたのちにフロランジュ法︵the Florange law ︶を施行、2年以上の長期株主に対して二重議決権を付与し3分の2の株主が反対表明をしない限り、覆せないと決めた[22][23]。これはフランス国家の少数株を意味するが、のちにマクロンは政府の権限をルノー社内で制限すると述べている[24]。
大臣時代にはまた、イゼール県にあるエコポラ工場の閉鎖を防ぐことができないと広く批判された[25][要文献特定詳細情報]。
2015年8月、もはや社会主義党員ではなく、自分は独立していると語った[26]。
2014年12月、オランド政権が目指す主要な経済改革政策を盛り込んだ﹁経済の成長と活性のための法律案﹂︵通称﹁マクロン法﹂︶を国会に提出する。100条を超えるこの法案では、商店の日曜日営業の規制を年間5回から同12回に緩和することや、長距離バス路線の自由化など多種多様な規制緩和策が提案されたが、多くの反対意見を呼び、与党である社会党からも反発の声が上がった。
2015年2月17日、法案の成立を急いだマニュエル・ヴァルス首相は、年に1度しか行使できない憲法49条3項︵英語︶の特別処置に訴え、国民議会の票決を経ることなく法案を採択させた[27][28]。同年8月7日に憲法評議会での審議を終えて法案は発効した。
2016年4月、﹁左派右派のあらゆる良き意思を結集﹂して﹁左派でも右派でもない政治﹂を目指すと宣言し、中立の政治団体﹁アン・マルシュ!︵日本語‥前進!、フランス語: En Marche !︶﹂を結成した[29]。2017年6月、党は﹁共和国前進!﹂︵LREM︶へと改称した。
大統領選挙への出馬が噂される中、同年8月30日に経済相を辞任した[30]。その理由については﹁フランスの景気低迷や社会的な格差拡大に対し、独自の解決策を打ち出せるようにするためだ﹂と説明[31]。苦境に陥ったフランスに﹁変革﹂をもたらすという決意を述べたものの、取り沙汰されていた次期大統領選への出馬を表明するには至らなかった[32]。しかし、経済界からも厚い支持を集める左派閣僚として注目され[33]、経済相辞任は大統領選出馬を見据えた動きとみなされた[34]。
2016年11月16日に2017年フランス大統領選挙への立候補を正式に表明する[35]。2017年3月18日、自身が率いる﹁前進!﹂の支持を受け、独立系候補として立候補を届け出た。4月23日の第1回投票で852万8585票︵得票率23.86パーセント︶を獲得して首位に立ったが、得票数が有効票の過半数に満たなかったため、5月7日に決選投票が実施されることになった[36]。決選投票ではマリーヌ・ル・ペンを降して2075万3797票︵得票率66.06パーセント︶を獲得し当選[37]、5月14日に大統領に就任した[38]。なお、就任時年齢の39歳は、1848年に40歳で大統領の座についたナポレオン3世の年齢を更新し、史上最年少となった[39]。
6月11日と18日に実施されたフランス国民議会選挙の結果、マクロン与党﹁共和国前進!﹂陣営が6割を超える350議席を獲得し、政権基盤を固めた[40]。
2018年11月17日より蛍光色の安全ベストを着た市民が軽油・ガソリン値上げや燃料税の引き上げに対する抗議活動を開始し、フランス全土でマクロン退陣を求める激しいデモ、暴動、略奪に拡大した︵黄色いベスト運動︶。道路網の封鎖をメインとし、都市部では自動車や市庁舎への放火、店舗略奪、破壊行為に発展した。暴動としては1968年の五月危機以来の規模となった[41]。12月5日、マクロン政権のフィリップ首相は燃料税引き上げ断念を発表した[42]。
2019年4月25日、マクロンは大統領になって初の記者会見を行い、黄色いベスト運動の説得も兼ねて全国規模で行われていた大討論大会の統括と、運動への対策案を発表した。このなかで大統領は低所得者や平均的な所得者へ総額50億ユーロ規模の所得税削減と年金の増額を約束した。さらに、貧困家庭出身の学生を受け付けないため数十年来、批判にさらされた[43]フランスのエリート校で自らの母校でもあるフランス国立行政学院︵ENA︶の閉鎖を約束し、フランスの統治システムは変わるべきだと述べた。マクロンは自らの施政を﹁後悔﹂しているとも言い、より﹁ヒューマン﹂な政治を誓い、運動のなかで起きたユダヤ人や同性愛に対する憎悪や暴力を﹁道徳﹂と﹁教育﹂の衰退だと表現し、全力で戦うとした[44]。
2020年12月17日に新型コロナウイルス感染症の初期症状を自覚したためPCR検査を受けたところ、陽性であると判明し、その後も隔離状態で公務を続けたが、7日後の12月24日には咳や倦怠感、頭痛などの症状が消失したため、隔離生活を終了した[45][46][47]。
2022年1月6日、新型コロナのワクチン接種を拒否する人々について、"emmerder" ︵くそくらえ︶と粗野なスラングを使い厳しく非難して国会を紛糾させ、ワクチン未接種者を公の場の大部分から締め出す法案の審議が一時中断された[48][49]。
2022年4月24日の2022年フランス大統領選挙において得票率58.55%で前回と同様にマリーヌ・ル・ペンを破り再選した[50][51]。
2023年1月、大統領選の公約で掲げてきた年金改革法案を議会に提出。受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げるもので、約2カ月にわたって議論が伯仲したが、同年3月16日の法案の採決予定日においても、過半数を得る見込みは立たなかった。このためエリザベット・ボルヌ首相は、投票開始の数分前に憲法49条3項を適用すると表明して強行採択を行った。パリではコンコルド広場などで数千名規模の市民デモに発展、抗議は夜間に及び約120人が逮捕された[52]。
2024年6月9日に執行された欧州議会議員選挙で与党連合が国民連合に得票率で倍以上の差をつけられるなど惨敗したことを受け、1997年のジャック・シラク以来となる大統領による議会の解散と総選挙を表明した[53]。
財政改革では財政赤字の対GDP比率の引き下げを﹁マクロ数値目標﹂として設定している。税制問題では増税措置が先行しており、社会保障費を賄う一般社会税︵CSG︶を積み増した。減税措置は2022年までに段階的に実施予定で、法人税中心の施策を押し出し33パーセントから25パーセントまで下げることが計画されている。また富裕税︵ISF︶の減税は課税対象を不動産に限定、キャピタル・ゲイン減税には30パーセントのフラット・タックス導入など、2019年までの実現を目指した。家庭向けの減税としては全世帯の80パーセントを対象に2022年までに地方住民税廃止を実現する計画であった。公務員12万人の削減も計画し[54]、またグローバリズムを支持している。
雇用と賃金の両面で労働市場の調整力を高めることを目指し、労働市場改革を訴えてきた。2018年1月時点で実現済みの施策は解雇補償額の上限引き下げ、グローバル企業の解雇要件の緩和、解雇不服申し立て期間を2年から1年に短縮するなどであった[54]。
2001年以来フランスでは徴兵制度が廃止されていたが[55]、マクロンは徴兵制復活を大統領選挙の公約に掲げた。マクロンは徴兵制について﹁軍や憲兵隊の下で行う。1ヵ月間若い国民が体験を分かちあい、国の結束を強める機会になる。危機に際し、国防の支えになる﹂と述べ[56]、﹁若者の国民としての義務感や団結感を強める﹂と論じている[57]。
マクロンが掲げていた徴兵制度とは、18歳から21歳の男女を対象に約1ヵ月の兵役を課すとして、2018年1月19日までに徴兵制を復活させたい考えを示していた。しかしこれに対し、約1月という短期間では兵役を課す意味合いが乏しいとの指摘や、予算がかかりすぎるとの批判が出た[55]。大学や青年団体も10の組織が徴兵制に反対する声明を出し、その中で﹁押し付けには反対。奉仕活動は国民が選べるようにすべきだ﹂と訴えた[56]。
そうした批判のため、徴兵制ではなく公共奉仕活動の義務化に変更された[56]。2018年6月27日に閣議決定された﹁普遍的国民奉仕﹂計画は、16歳の国民全員に対して4ヵ月から1年あまりの期間に、警察や消防や軍の奉仕活動、あるいは慈善活動を課すとしている[57]。これら活動の義務期間1ヵ月は共同生活を送る。その後、第2段階として16歳から25歳の若者が3ヵ月から1年にわたり、任意で奉仕活動に参加する。奉仕期間の一部に夏休みを充てて、軍の役割・人命救助を学ぶ。任意参加の第2段階は職業訓練に近いものを軍・消防・公共機関で施すと想定している[56]。
大統領就任後の移民・難民政策では規制強化の方向が目立つ[58]。2018年4月に移民法を可決させたが、難民申請の期限を早めたり、不法移民の勾留期限を倍にしたり、不法入国に対して禁錮1年の処罰を導入するなど実質は移民規制を内容としているため、人権擁護団体などから批判を受けている[59]。
就任後は2040年までにガソリン車の販売を禁止する目標を打ち出すなど他国と一線を画す環境政策を推進してきた[60]。しかしながら2020年6月の統一地方選では、環境政党の躍進に押され与党の共和国前進党が惨敗した。選挙後の演説で地球温暖化対策を憲法に盛り込む方針を発表した[61]。
向かって左からマクロン、アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ、カナダの首相ジャスティン・トルドー(2018年6月9日)。
2012年のバラク・オバマ政権においてフランスの親米組織フレンチ-アメリカン財団︵フランス語版︶のリーダーを務めたものの、2017年1月に大統領に就任したドナルド・トランプに対してはそのアメリカ第一主義・保護主義的な態度を批判している[62]。2018年4月のアメリカ訪問の際には、アメリカ合衆国議会においてアメリカ政府のパリ協定離脱やイラン核合意離脱などの単独主義を批判し、﹁多国間主義を作り出したのはアメリカであり、これを維持して再生させる役割を担うのもアメリカだ﹂と論じた[63]。
2018年10月にアメリカが中距離核戦力全廃条約︵INF︶から離脱を表明した際にもトランプと電話会談を行い、﹁この条約は、とりわけヨーロッパの安全保障と我々の戦略的安定にとって重要だ﹂と伝えて再考を促した[64]。同年11月11日にパリで開かれた第一次世界大戦終結100周年記念式典では﹁﹃我々の利益が第一で、ほかはどうでもいい﹄という考えは、国家にとってもっとも大切な精神的価値を失うこと﹂とし、地球温暖化などの諸課題に国際社会がともに取り組むべきであると主張した。この演説はトランプ大統領の一国主義への当てこすりと報じられた[65]。
2019年6月6日に戦後の民主主義同盟の礎ともなった第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦75周年式典に際して、トランプ大統領がそれまでに環境問題の合意もイランの核合意も放棄した点、米欧が参加する北大西洋条約機構︵NATO︶をも去ると脅した点を振り返り﹁親愛なるアメリカは、他人の自由のために戦ったときほど偉大なことはなかった﹂と指摘し、自由主義体制の根本である﹁ノルマンディーの約束﹂を守るようにと呼びかけた。また両者はオマハ・ビーチのアメリカ軍戦没者の墓地を訪れ、参加した退役軍人らに勲章を贈った[66]。
マクロンとドイツの首相アンゲラ・メルケル
欧州連合︵EU︶の統合強化を推進することを基本的立場とする[67]。
アメリカのトランプ大統領がNATOへの脅しに近い発言を繰り返すことを受け、ヨーロッパの安全保障をアメリカ依存からの脱却させ、EUによる安全保障強化を訴えている。2018年8月27日には﹁ヨーロッパはもはや、自らの安全保障をアメリカに依存できない。ヨーロッパの安全保障は私たち次第だ﹂と述べた[67]。2018年11月5日にラジオ番組の中で﹁真の欧州軍﹂の創設が必要であるとの認識を示した。それについて﹁我々は中国とロシア、さらにはアメリカに対しても自衛しなければならない﹂﹁1980年代にヨーロッパを襲ったミサイル危機後に締結された重要な軍縮条約から、トランプ大統領が離脱すると発表するのを目にする時、主たる犠牲者は誰になるだろうか。それはヨーロッパとその安全保障だ﹂﹁真の欧州軍を持つと決意しない限り、我々は欧州市民を守ることにならない﹂と論じた[68]。
マクロンの﹁欧州軍﹂構想について、アメリカのトランプ大統領は﹁侮辱的な話だ﹂﹁ヨーロッパはNATOに公平な分担(金)を支払うことが先決だ﹂と反論した[69]。逆にロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンは﹁欧州軍﹂構想について﹁ヨーロッパが安全保障の独立を目指すのは当然。世界の多極化の為に良い﹂と発言し、アメリカとヨーロッパの分断を煽っている[65]。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は﹁欧州軍﹂構想について2018年11月13日の欧州議会で﹁我々は真の欧州軍をいつか創設するためビジョンを話し合うべきだ﹂﹁ヨーロッパ各国の間で2度と戦争をしないというメッセージになる﹂と賛意を示したうえで﹁欧州軍はNATOに敵対するものではなく、むしろよい、そして無駄のない補完になる﹂としてトランプ大統領の懸念は当たらないとの見解を示した[70][71]。
イギリスのEU加盟時に強硬な態度を取ったド・ゴール仏大統領よろしく、EU統合保持の立場からイギリスの欧州連合離脱(ブレクジット)には強硬な態度で臨んでいる。スペインの『エル・パイス』紙は、ドイツのメルケル首相の「よい警察官」に対し、「悪い警察官」の役割を演じているのだと評した。他のEU指導者たちがおしなべてメッセージを外交的な綿で包み込み調停的であるのに対して、条件を定め、できるだけ早い解決を望んでいる。またメイ首相とEU間の交渉も「正直なところ、現実的に対応しているとは思えない」と批判している[72]。
2019年2月、アンチエスタブリッシュ(五つ星運動)で知られるイタリアのルイジ・ディマイオ副首相が黄色いベスト運動のリーダーと面談したことを受け、在イタリア大使の召還を発表した。これにより両国関係は第二次大戦以後最悪なものとなった。ディマイオは「新しいヨーロッパは黄色いベストから生まれる」と述べ、フランス政府はこれは「挑発」であり、受け入れることはできないとした[73][74]。欧米を席巻するポピュリズムと右傾化とは一線を画した姿勢を保っている。
第48回先進国首脳会議に参加しロシアによるウクライナ侵攻への対応について協議する。
2022年ロシアのウクライナ侵攻開始に前後してプーチン大統領と電話を中心に十数回会談しているが、侵攻の阻止や早期撤退を説得することはできなかった。ウクライナには兵器も供与しており、同年6月16日にはウクライナの首都キーウを訪問して﹁ウクライナは勝利しなければならない﹂と語った。だが、それ以前は﹁ロシアとウクライナは兄弟の国民﹂︵2022年4月︶などロシア寄りと受け取られる発言を度々しているため、ウクライナでは﹁心配するふりをして何も行動しない﹂という意味で﹁マクロンする︵マクローニッティ︶﹂という新語が使われるようになっている[80]。
中華人民共和国︵以下は中国︶の報道機関はマクロンが大統領に当選した際、2014年12月に当時経済相だったマクロンが、フランス政府が保有するトゥールーズ・ブラニャック空港の株式60パーセントのうち49.99パーセントを中国企業に売却することを支持し、売却に反対する政治家を批判し、インタビューで毛沢東や鄧小平の語録を引用して﹁フランスと中国は非常に重要な歴史的関係を持っている。現在の中国は経済や外交、軍事の強国で、フランスが中国の存在を認めることで両国の関係には大きな力が生まれる。中国とは正常な関係を維持していきたい﹂と発言したとして中国を重要な盟友と見ている政治家だと報じた[81]。
他方、就任直後のマクロンは中国への警戒感を表している。2018年2月、中国企業がフランス国内において投機的な農地買収を行っている件について﹁フランスの農地は我が国の主権が関わる戦略的な投資だと私は考えている。よって購入の目的も把握しないまま、何百ヘクタールもの土地が外資によって買い上げられるのを許す訳にはいかない﹂と述べ、中国企業の農地買収を封じる規制予防策を講じることを言明した[82]。
2019年3月22日のベルギーのブリュッセルで開かれた欧州連合加盟国首脳会議で中国に対する新たな戦略が協議され、貿易の不均衡是正などに向けた対応を進めることで合意した。これを受けてマクロンは﹁中国に甘い考えを抱く時代は終わった﹂と宣言した[83]。
2019年3月26日の中国の習近平国家主席のフランス訪問に際して、ドイツのメルケル首相やジャン=クロード・ユンケル欧州委員長も招待して四者会談を行った[注釈3]。マクロンは我々︵ヨーロッパと中国︶には、考え方の違いがある﹂として両者が競合関係にあることを強調する一方、﹁共に多国間主義を推進したい。中国と協力し、対話する用意がある﹂とも述べた。25日の共同記者会見では﹁中国とヨーロッパは相互に利益を尊重し、バランスのとれた関係であるべきだ﹂と主張して中国の投資攻勢を牽制したが、同時に航空・エネルギー・造船分野など約400億ユーロの経済協力に合意している[84]。
2020年4月、マクロンは﹃フィナンシャル・タイムズ﹄のインタビューで、中国政府がパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症の流行に上手く対処していると﹁馬鹿正直﹂に信じてはいけないと警告し、﹁独裁的な国では私たちの知らないことが起きる。中国武漢でのコロナウイルスへの中国政府の対応に疑問があることは明らかだ﹂と中国政府を批判した[85]。
2023年4月、マクロンは訪中して習近平主席と会談。帰国の途中で﹁台湾の危機はわれわれの危機ではない﹂との発言を行い[86]、台湾有事を許容する可能性を示唆した。
日本の安倍晋三首相と(2017年5月26日)
2018年7月、日本の自衛隊とフランス軍とが物資・役務を融通し合う物品役務相互提供協定︵ACSA︶を締結し、両国の海洋対話を本格化させた。同年10月にフランスを訪問した日本の安倍晋三首相と首脳会談を開催し、両国の連携をアピールした。また海洋進出を強行する中国および保護主義的なアメリカを牽制した[87]。
2019年4月23日にはG20の大阪サミットを前にした安倍首相が意見調整のためフランスを訪問して会談した。安倍はノートルダム火災へのお見舞いを述べ、両者はスリランカ連続爆破テロ事件への非難や自由貿易の推進などについて意見を一致させた[88]。会談後にマクロンは日本語で﹁日本と共に我々は多極主義への信頼を再構築するという同じ野心を有する。幾多の障害や緊張や閉塞状況が存在することは分かっているが、日本もフランスもそれで諦めてしまうような習性は持っていない。﹂とTwitterに投稿した[89]。
同会談でマクロンは﹁いい時も悪い時もパートナー以上の友好国だ﹂と述べ、中国の強引な海洋進出の強行を念頭に、防衛・経済両面でフランスと日本との関係を深めることで両首脳は一致した。近く行われるフランス海軍空母﹁シャルル・ド・ゴール﹂と海上自衛隊の共同訓練を踏まえ﹁自由で開かれたインド太平洋﹂実現のための防衛協力加速を申し合わせた。また北朝鮮に完全かつ検証可能で不可逆的な非核化︵CVID︶を実現させるまでは経済制裁を維持することが重要との認識でも一致した[90]。
2021年7月、東京オリンピックの開会式に出席するため日本を訪問し、同国の菅義偉首相と会談・会食を行った。両首脳は同オリンピックが﹁新型コロナウイルス︵COVID-19︶に打ち勝つ世界の団結の強力な象徴﹂であるとし、その経験を次回のパリオリンピックへ共有することを確認した。また両者は﹁自由で開かれたインド太平洋﹂の実現に向けて連携することや、香港やウイグルの人権状況について深刻な懸念を表明した[91]。
朝鮮民主主義人民共和国︵北朝鮮︶の非核化を支持する立場である[92]。2018年10月に大韓民国の文在寅大統領がフランスを訪問した際に北朝鮮への経済制裁の緩和を求められても﹁フランスは北朝鮮がCVID︵完全かつ不可逆的で検証可能な核廃棄︶によるプロセスを始めることを期待する﹂としつつも﹁そのときまで国連制裁を継続しなければならない﹂として断っており[93]、制裁緩和に賛成する中露とは異なる立場を示した[94]。なお、フランスと北朝鮮には国交はない。
マクロンは「最悪なのは、アメリカや中国に追随しなければいけないと考えることだ」と述べ、米中の対立から一定の距離を保つべきだと主張した。大手欧米メディアはこの発言に「中国への抑止力を損ねる」等の批判が出ている[95]。
●2013年3月に施行された富裕税を﹁これではフランスは太陽の無いキューバになってしまう﹂と批判した。富裕税は施行の2年後に廃止されている[98][99][リンク切れ]。
●2016年6月に実施されたイギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票に関して、イギリスが欧州連合を離脱すれば、イギリスは国際社会からジャージーとガーンジー︵のように小さい島々︶のように扱われるだろう﹂と述べた[100]。マクロンは﹁EUは初のグローバルな国内市場である﹂と述べており、イギリスが今日の強さを保っているのはEUに加盟しているからで、イギリスの鉄鋼産業について中華人民共和国と議論するときにイギリスが信用されるのはイギリスがEUの一部であるからだと主張した。マクロンはさらに、﹁中華人民共和国の国内市場と比較してイギリスの国内市場は中国人たちにとって関心が無く、︵EUを離脱した場合には︶イギリスは中国と1対1で交渉できなくなるだろう﹂とも述べている[100]。
妻のブリジットと(2017年5月26日)
京都駅に到着したエマニュエル・マクロン仏大統領夫妻
2007年10月、24歳年上の女性ブリジット︵英語版︶と結婚した。マクロンは29歳でブリジットは54歳であった[注釈4][108]。
ブリジットとの出会いはマクロンが15歳︵10年生︶のときに遡る。ブリジットは当時40歳で、マクロンの通う学校の国語︵フランス文学︶教師であった。またブリジットは既婚者で子供も3人おり、うち長女のローランスはマクロンと同級であった[108][109]。マクロンは天才少年として知られており、ローランスは自宅で母のブリジットに﹁なんでも知っているクレイジーな少年がいる﹂とマクロンのことを紹介していた[108]。
ブリジットとマクロンが初めて会ったのは、15歳のマクロンが学校劇﹃Jacques and his Master︵英語版︶﹄の主演を務めたときであった。ブリジットは演劇部の顧問でもあり、マクロンは演劇の脚本を書き直したいとブリジットに相談した[108]。二人は脚本を書くために毎週金曜日に会うようになり、親密になっていった[110]。ブリジットは﹁マクロンは10代の子供らしい話し方や行動をせず、大人と対等に接していた﹂[109]﹁私は少しずつ彼の知性に魅了されていった﹂﹁私は自分が落ちていくのを感じた。彼もそうだった﹂とのちに語っている[108]。
マクロンの両親は当初、マクロンが恋愛をしていることに気づいてはいたが、その相手はブリジットの娘のローランスだと考えていたという。ところが恋の相手がその母親であると知った両親は、ブリジットに﹁マクロンが18歳になるまで近づかない﹂ことを求めた[109]。両親とブリジットは苦悩し、両親は17歳のマクロンに﹁ブリジットと別れ、アミアンからも離れて、パリの名門学校アンリ4世校へ転校する﹂ことを命じた。だが、マクロンはブリジットに﹁あなたが何をしようと、私は必ず戻ってきて、あなたと結婚する﹂と約束し[108][110]、二人はキスを交わしたという[111]。
パリとアミアンとの遠距離恋愛となったが、マクロンからの長電話によってブリジットの抵抗は少しずつ打ち破られた。ついにブリジットは離婚してパリで暮らすことを選んだ。﹁そうしなければ私の人生は失われてしまう﹂とブリジットは自分に言い聞かせたという[110]。﹁愛はすべてを運んできて、私を離婚に導いた﹂とも語っている[108]。
結婚後、2017年4月に実施された大統領選挙の期間中も至る所でハグやキスを交わし、話題となった[111]。
(一)^ “Unconvinced by Macron's promises, Yellow Vests keep up the pressure” (英語). France 24 (2019年4月27日). 2019年5月14日閲覧。
(二)^ Média, Prisma. “Qui sont le frère et la sœur d'Emmanuel Macron? - Gala” (フランス語). Gala.fr. 2018年12月10日閲覧。
(三)^ “La jeunesse très catholique des candidats à la présidentielle” (フランス語). La Croix. (2017年4月10日). ISSN 0242-6056. https://www.la-croix.com/Religion/Laicite/La-jeunesse-tres-catholique-candidats-presidentielle-2017-04-10-1200838526 2023年12月16日閲覧。
(四)^ “Présidentielle 2017 - Sur les traces de l'arrière-grand-père d'Emmanuel Macron entre Amiens et Arras” (フランス語). La Voix du Nord. 2018年12月10日閲覧。
(五)^ Amiens, Lara Marlowe in. “Le Big Mac: Emmanuel Macron's rise and rise” (英語). The Irish Times. 2018年12月10日閲覧。
(六)^ “Emmanuel Macron en meeting à Pau devant 5 500 personnes” (フランス語). SudOuest.fr. 2018年12月10日閲覧。
(七)^ “À La Providence d'Amiens, un lycéen nommé Emmanuel Macron” (フランス語). ル・フィガロ. (2017-05-30). http://www.lefigaro.fr/politique/2017/05/30/01002-20170530ARTFIG00307-emmanuel-macron-une-adolescence-a-la-providence.php.
(八)^ “Emmanuel Macron a raté son concours à Normal Sup'à cause de sa femme” (フランス語). CLOSER. (2017-02-16). http://www.closermag.fr/article/emmanuel-macron-a-rate-son-concours-a-normal-sup-a-cause-de-sa-femme-704629.
(九)^ ポール・リクール﹃記憶、歴史、忘却﹄上巻。新曜社から邦訳が刊行されている。
(十)^ “Emmanuel Macron, un banquier d'affaires nommé secrétaire général adjoint de l'Elysée” (フランス語). Le Monde.fr. (2012年5月16日). https://www.lemonde.fr/politique/article/2012/05/16/emmanuel-macron-un-banquier-d-affaires-nomme-secretaire-general-adjoint-de-l-elysee_1702135_823448.html 2018年12月10日閲覧。
(11)^ “Ipesup, la prépa chérie des CSP+, est à vendre” (フランス語). Challenges. https://www.challenges.fr/challenges-soir/ipesup-la-prepa-cherie-des-csp-est-a-vendre_13182 2018年12月10日閲覧。
(12)^ “Ipesup change de main pour grandir” (フランス語). Challenges. 2018年12月10日閲覧。
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