富内線
かつて日本の北海道に存在した鉄道路線
富内線(とみうちせん)は、かつて北海道勇払郡鵡川町(現・むかわ町)の鵡川駅から沙流郡日高町の日高町駅までを結んでいた、日本国有鉄道(国鉄)の鉄道路線(地方交通線)。
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基本情報 | |
現況 | 廃止 |
国 |
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所在地 | 北海道 |
起点 | 鵡川駅 |
終点 | 日高町駅 |
駅数 | 15駅 |
開業 | 1922年7月24日 |
廃止 | 1986年11月1日 |
所有者 | 日本国有鉄道 |
運営者 | 日本国有鉄道 |
路線諸元 | |
路線距離 | 82.5 km |
軌間 | 1,067 mm |
線路数 | 単線 |
電化方式 | 非電化 |
停車場・施設・接続路線 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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当初から占冠駅を経由して根室本線金山駅と結ぶ計画があり(詳細は「歴史」節で後述)、一部区間は石勝線として開通したものの、富内線は国鉄再建法の施行により1984年に第2次特定地方交通線に指定され、1986年11月1日に全線が廃止された。
路線データ(廃止時)
編集- 日本国有鉄道
- 区間(営業キロ):鵡川 - 日高町 82.5km
- 軌間:1067mm
- 駅数:15(起点駅を含む)
- 全線単線
- 電化方式:全線非電化
- 閉塞方式:タブレット閉塞式
- 交換可能駅:4(旭岡、穂別、富内、振内)
- 簡易委託駅:春日、旭岡、栄、豊田、富内
休止区間
編集- 沼ノ端 - 豊城 24.1km - 1943年11月1日休止
運行形態
編集一部の列車を除き、日高本線を経由して苫小牧駅まで直通していた。廃止直前は、全線通しの運転が4往復程度あったほか苫小牧・鵡川 - 富内・振内間の区間列車があった。
歴史
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沿線から産出されるクロム鉱や石炭、森林資源の開発のため、北海道鉱業鉄道が金山線︵沼ノ端 - 邊富内︶として1922年から翌年にかけて開業したもので、1924年に北海道鉄道︵2代︶と改称。1943年に同社の札幌線︵現在の千歳線︶とともに戦時買収され、富内線となった。
その際、日高本線と路線が近接していた沼ノ端 - 豊城間は不要不急線として休止︵事実上の廃止︶され、豊城 - 鵡川間に新線を建設して日高本線と接続させている。
富内まで完成後、富内以遠の工事は続けられていたが、戦時中の財政難や富内 - 振内間の日振トンネルの難工事︵蛇紋岩由来の膨張性地質︶によって完成は大きく遅れ、富内 - 振内間は1958年、全線開通は1964年となった[3]。
鵡川 - 富内間は、改正鉄道敷設法別表第134号に規定する予定線﹁膽振國鵡川ヨリ石狩國金山ニ至ル鐵道及﹁ペンケオロロツプナイ﹂附近ヨリ分岐シテ石狩國登川ニ至ル鐵道﹂の一部であり、本来、根室本線の金山駅や夕張線登川駅に接続するはずであった。予定線の後段部分の一部は﹁紅葉山から占冠を経て金山に至る鉄道︵紅葉山線︶﹂に変更し、その一部が石勝線︵新夕張駅 - 占冠駅︶として開業している。富内までは鵡川に沿って開通した区間であるが、そのまま北海道道610号占冠穂別線に沿って鵡川をさかのぼると清風山信号場で石勝線とぶつかり、ニニウを経て占冠へとたどり着く。占冠から金山へは国道237号が通じている。この、富内からそのまま鵡川沿いに北上し、占冠を通って金山に至るという経路が予定線の最初の計画だった[4]。
富内 - 日高町間については、同法別表第142号の2に規定する予定線﹁十勝國御影附近ヨリ日高國右左府ヲ經テ膽振國邊富内ニ至ル鐵道﹂の一部として開業し、残りの区間については、﹁新得より占冠を経て日高町に至る鉄道︵狩勝線︶﹂に変更され、その一部が石勝線︵占冠駅 - 上落合信号場︶として開業している。富内線は富内から南に進路を変え、トンネルを抜けて幌毛志からは再び北東に進路を戻し、沙流川と国道237号に沿って日高町へ向かう経路をとった。なお、そのまま国道237号を進むと占冠に至る。
年表
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●1922年︵大正11年︶7月24日 北海道鉱業鉄道が沼ノ端 - 生鼈︵いくべつ、後の旭岡︶間を金山線として開業。ニナルカ駅・上厚真駅・上鵡川駅・萠別駅・生鼈駅を新設[5]。
●1923年︵大正12年︶
●6月12日 生鼈 - 似湾︵後の栄︶間を延伸開業。芭呂沢駅・似湾駅を新設[6]。
●11月11日 似湾 - 邊富内︵後の富内︶間を延伸開業。杵臼駅・穂別駅・邊富内駅[7]・入鹿別駅[8]を新設。
●1924年︵大正13年︶
●3月3日 北海道鉱業鉄道が北海道鉄道に社名を変更。
●6月10日 ︵貨︶深牛駅を新設。
●1925年︵大正14年︶7月1日 上勇払駅を新設。
●1926年︵大正15年︶5月12日 上勇払駅を北松田駅に改称。
●1927年︵昭和2年︶9月8日 木金似駅を新設。
●1931年︵昭和6年︶5月31日 木金似駅を廃止。
●1943年︵昭和18年︶
●8月1日 北海道鉄道を買収し国有化。沼ノ端 - 富内間 (66.0km) に線路名称を制定し、富内線とする[9]。上鵡川駅を豊城駅に、萠別駅を春日駅に、生鼈駅を旭岡駅に、似湾駅を栄駅に、杵臼駅を豊田駅に、邊富内駅を富内駅に、上勇払駅を北松田駅に、ニナルカ駅を静川駅に改称。芭呂沢駅・深牛駅を廃止。
●11月1日 鵡川 - 豊城間 (3.6km) の連絡線を開業[10]。沼ノ端 - 豊城間 (24.1km) を休止し[11]、富内線を鵡川 - 富内 (45.5km) と改める。北松田駅・静川駅・上厚真駅・入鹿別駅を休止。
●1944年︵昭和19年︶2月25日 省営自動車千栄線︵富内-千栄間︶貨物運輸営業開始[12]
●1958年︵昭和33年︶11月15日 富内 - 振内間 (12.9km) を延伸開業[13]。幌毛志駅・振内駅を新設。
●1964年︵昭和39年︶11月5日 振内 - 日高町間 (24.1km) を延伸開業し、全通。仁世宇駅・岩知志駅・日高岩内駅・日高三岡駅・日高町駅を新設。
●1982年︵昭和57年︶11月15日 全線 (82.5km) の貨物営業を廃止[14]。
●1984年︵昭和59年︶6月22日 第2次特定地方交通線として、廃止承認。
●1986年︵昭和61年︶11月1日 全線 (82.5km) を廃止し[15]、道南バスのバス路線に転換[16]。
駅一覧及び接続路線
編集- 全駅北海道に所在。
- 駅・事業者・所在地などの名称は廃止時点のもの。
- 括弧書きの駅名は、1943年8月の買収時に改称または廃止された駅の旧称
駅名 | 駅間キロ | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
鵡川駅 | - | 0.0 | 日本国有鉄道:日高本線 | 勇払郡鵡川町(現・むかわ町) | |
豊城駅(上鵡川駅) | 3.6 | 3.6 | |||
春日駅(萠別駅) | 4.2 | 7.8 | |||
5.3 | 13.1 | ||||
旭岡駅(生鼈駅) | 2.7 | 15.8 | |||
栄駅(似湾駅) | 6.6 | 22.4 | 勇払郡穂別町(現・むかわ町) | ||
豊田駅(杵臼駅) | 8.6 | 31.0 | |||
穂別駅 | 6.3 | 37.3 | |||
5.1 | 42.4 | ||||
富内駅(邊富内駅) | 3.1 | 45.5 | |||
幌毛志駅 | 9.5 | 55.0 | 沙流郡平取町 | ||
振内駅 | 3.4 | 58.4 | |||
仁世宇駅 | 2.8 | 61.2 | |||
岩知志駅 | 7.4 | 68.6 | |||
日高岩内駅 | 4.8 | 73.4 | 沙流郡日高町 | ||
日高三岡駅 | 4.7 | 78.1 | |||
日高町駅 | 4.4 | 82.5 |
1943年廃止区間
編集駅名 | 駅間キロ | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 |
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沼ノ端駅 | - | 0.0 | 国有鉄道線(当時):室蘭本線・千歳線 | 勇払郡苫小牧町(現・苫小牧市) |
北松田駅(上勇払駅) | 4.8 | 4.8 | ||
静川駅(ニナルカ駅) | 4.0 | 8.8 | ||
上厚真駅 | 4.9 | 13.7 | 勇払郡厚真村(現・厚真町) | |
入鹿別駅 | 6.0 | 19.7 | 勇払郡鵡川村(現・むかわ町) | |
豊城駅 | 4.4 | 24.1 |
廃止後の状況
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廃止後は道南バスが鉄道代替路線の運行を開始した[16]。また、穂別 - 千歳空港︵当時。後に新千歳空港に移行︶を結ぶ路線も転換交付金の対象となり、代替路線として開業した[16]。しかしながら、2002年10月に富内・安住 - 日高町間の路線が廃止され[17]元の鉄道路線に沿うルートが分断された。また、2012年10月には穂別 - 富内・安住間も全便予約制︵むかわ町運行︶となった[18]。振内・日高町方面への路線は国道237号を通り、平取または富川で他路線に接続する形で運行されている[19]。
代替となる路線[19][20]
●鵡川駅前 - 穂別出張所
●2007年10月1日より、むかわ町営バスが一律200円になったのに合わせ、距離にかかわらず1乗車の最大運賃が200円となっている[20]。
●穂別出張所 - 富内・安住︵予約制︶
●新千歳空港 - 穂別出張所︵予約制︶
●︵苫小牧駅前 - ︶富川高校前 - 平取 - 振内案内所 - 日高ターミナル
富内駅は駅舎や駅構内のホーム、線路等の施設が保存されており、国の登録有形文化財となっている[21]。また、振内駅跡地には振内鉄道記念館が設置され関係資料が展示されている他、ホームや線路が残っており、D51形蒸気機関車や客車が展示されている[22]。
脚注
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(一)^ abc﹁トンネル一覧﹂﹃トンネル譲渡のお知らせ﹄、鉄道建設・運輸施設整備支援機構。2017年10月9日閲覧。
(二)^ abcde北海道鉄道百年史 下巻 日本国有鉄道北海道総局編1981年発行 p15-16
(三)^ 吉井久﹃穂別高齢者の語り聞き史︵昭和編︶大地を踏みしめて 下 冨内駅・物流拠点としての役割﹄穂別高齢者の語りを聞く会、2014年、p163頁。
(四)^ 冨山房﹁新日本地図﹂︵1929年︵昭和4年︶発行︶より。
(五)^ ﹁地方鉄道運輸開始﹂﹃官報﹄1922年7月28日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(六)^ ﹁地方鉄道停車場設置並運輸開始﹂﹃官報﹄1923年6月18日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶﹁…萌別生鼈間ニ芭呂沢停車場設置ヲ 又本月十一日生鼈似湾間運輸営業開始ヲ認可シタルニ孰モ本月十二日営業開始ノ旨…﹂とあり
(七)^ ﹁地方鉄道運輸開始﹂﹃官報﹄1923年11月20日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(八)^ ﹁地方鉄道駅設置並営業哩程変更﹂﹃官報﹄1923年11月26日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(九)^ ﹁鉄道省告示第204号﹂﹃官報﹄1943年7月26日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(十)^ ﹁鉄道省告示第300号﹂﹃官報﹄1943年10月6日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(11)^ ﹁鉄道省告示第299号﹂﹃官報﹄1943年10月6日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(12)^ ﹁運輸通信省告示第46号﹂﹃官報﹄1944年2月22日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(13)^ “日勝線の一部 富内から振内間︵13キロ︶18年ぶりで開通”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (1958年11月16日)
(14)^ “日本国有鉄道公示第166号”. 官報. (1982年11月13日)
(15)^ “31日廃止の富内、胆振線”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (1986年10月31日)
(16)^ abc﹃鉄道ジャーナル﹄第21巻第2号、鉄道ジャーナル社、1987年2月、78-81頁。
(17)^ “バス時刻表”. 穂別町. 2002年10月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月18日閲覧。
(18)^ “穂別地区路線”. むかわ町. 2016年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月18日閲覧。
(19)^ ab“日高地域公共交通バス時刻表 2021年4月1日改正”. 道南バス. 2021年4月18日閲覧。
(20)^ ab“穂別地区路線”. むかわ町. 2021年4月18日閲覧。
(21)^ “むかわ町内の指定文化財”. むかわ町. 2021年4月18日閲覧。
(22)^ “振内鉄道記念館”. 平取町. 2021年4月18日閲覧。
関連項目
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●早来駅#その他 - 金山線敷設計画時は沼ノ端駅ではなく、早来駅が起点とされていた。
●沙流鉄道 - かつて富川から平取を結んでいた鉄道。岩知志まで路線を延長する計画があったが実現に至らないまま廃止されている。
外部リンク
編集- 国鉄&JR北海道の廃線路線シリーズ「富内線」Japan's Abandoned Rail (The Tomiuchi Line ) - YouTube - 鉄道チャンネルHTB
- 国土地理院 治水地形分類図 鵡川 - 1976年(昭和51年)測量なので、廃止前の富内線が鵡川沿いに描かれている