死 刑 存 廃 問 題 ︵ し け い そ ん ぱ い も ん だ い ︶ は 、 死 刑 制 度 の 是 非 に 関 し て 存 在 す る 倫 理 、 法 律 ︵ 憲 法 ︶ 、 刑 事 政 策 、 そ し て 国 際 外 交 に か か わ る 諸 問 題 で あ る 。
死 刑 制 度 の 是 非 を め ぐ っ て は 、 死 刑 制 度 を 維 持 す る 国 で は 存 続 に 賛 成 す る 存 置 論 ︵ 存 続 論 ︶ 、 死 刑 制 度 の 廃 止 を 主 張 す る 廃 止 論 ︵ 反 対 論 ︶ 、 死 刑 制 度 を 廃 止 し た 国 で は 制 度 の 復 活 に 賛 成 す る 復 活 論 と そ れ に 反 対 す る 廃 止 維 持 論 が 存 在 す る 。 死 刑 制 度 は 宗 教 、 哲 学 お よ び 社 会 感 情 が 複 雑 に 絡 む テ ー マ で あ り 、 存 置 派 と 廃 止 派 と は 、 古 代 か ら 現 在 に 至 る ま で 、 様 々 な 論 点 を め ぐ っ て 様 々 な 対 立 を し て き た 。
死 刑 是 非 の 論 争 の 背 後 に は 、 犯 罪 者 に 対 す る 処 遇 を 扱 う 刑 事 政 策 問 題 の 範 疇 に お さ ま ら ず 、 刑 罰 論 や 生 命 論 と い っ た 法 哲 学 の 広 く 深 い 対 立 の 溝 が あ り 、 合 意 に は 至 っ て い な い 。 こ う し た 状 況 の た め 、 死 刑 存 廃 の 議 論 は 、 し ば し ば ﹁ 不 毛 の 論 議 ﹂ と な る ( 中 嶋 2 0 0 4 , p . 1 8 9 ) 。
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下記の表は双方の立場から提示された様々な論争の論点の一部を書物[1] から、列挙したものである。この図でも判るように双方とも鋭く対立している。
なお前述のとおりこれらの論争は無数にある死刑存廃論議のほんの一部であり、このような二項対立的な議論が常になされているわけでもない。また双方の主張者がすべて同一であるわけではない。
論点
死刑廃止論側の主張
死刑存置論側の主張
社会契約説
法学者であり啓蒙思想家のベッカリーア は、人が社会契約 を結ぶ際、その生命に対する権利まで主権者に預託してはいけないとする。生命はあらゆる人間の利益の中で最大のものであり、国民が自らの生命をあらかじめ放棄することはあり得ないとして、少なくとも国家の正常な状態においては死刑は廃止されなければならない。廃止論者のベッカリーアは、死刑よりも終身隷役刑の方が受刑者をして全生涯を奴隷状態と苦しみの中に過ぎさせるので、みせしめ刑として効果的であると論じており、これは死刑以上に「残虐」な刑罰と考えられる。
社会契約説を最初に確立したトマス・ホッブズ 、ジョン・ロック やカント などの啓蒙思想家は、三大人権(自然権)である生命権と自由権と財産権の社会契約の違反(自然権 の侵害)に相対する懲罰・応報として死刑・懲役・罰金を提示している。死刑は殺人に対する社会契約説の合理的な帰結である(下記の「死刑存置論の系譜」参照)。
人権
近代社会において人権 を尊重することは、その対象が犯罪者が入るとしても、悪ではない。すなわち死刑による人権の制限が他刑によるそれに勝るとされるのであれば、それを是正することは社会的に否定されるべきことではないのであり、それが社会に与える影響(凶悪犯罪の増加可能性や費用の問題など)は別途考慮されるべきだが、それ自体は社会に責任が帰せられるものであり国家による人権の更なる尊重を否定するものではない。
人権 を守るために法の下に行われる懲罰行為は犯罪者の人権を侵害するものであるがこれは法治国家に必要なのであり、国連の人権宣言でも法の下に行われる罰金刑、禁固刑、身体刑、死刑を否定してはいない。殺人(生命権の侵害)に対して執行される死刑は応報であり人権を軽んじていることには当たらない。特に大量殺人を行った犯人を死刑にしないことは不条理であるだけでなく被害者の生命権を侮蔑するものであり法の正義の精神に著しく反する。
誤判の可能性 後述の冤罪もしくは誤判 も参照
死刑がその「取り返しの付かなさ」を一つの理由として極刑とされるのであれば寿命という人間の限界を無視した死刑による誤判可能性は無視できない。また冤罪 の責任は、原則的に(つまり寿命という限界を除いて)その被冤罪者本人(=政府権力や裁判官やけ検察や警察など公務員)が負うべきであるが、死刑はその性質上本来的にその責任を負うということを放棄しているのではないかという問題がある。また、死刑と長期間の懲役を同じと考えるのは間違っている、後者は拘束であり死とは比べ物にならない上に残りの人生の自由の可能性もある。新幹線、飛行機、および自動車による事故と、この問題を関連付けることもまた不適切である。さらに罰金や懲役の冤罪は、恐喝や、監禁ではないかという存置論者の意見は直接生命をはく奪されるという最悪の人権侵害を回避したかたちの人権制約の結果とみなすことができるので、否定される。つまり多くの人々に、あなたが冤罪で有罪が確定するときに、死刑で確定するのと、終身刑で確定するのとどちらがよいか、という
世 論 調 査 を す れ ば 、 ほ と ん ど す べ て の 人 々 が 後 者 と 答 え る の は 、 当 然 で あ る 。 誤 判 が 生 じ る の は 、 な に も 死 刑 に 限 っ た こ と で は な く 、 刑 罰 全 体 に そ の 可 能 性 は 存 在 す る か ら 、 死 刑 を 存 置 せ よ と い う 主 張 は 通 じ な い 。 問 題 は 、 誤 判 が 生 じ る の は 、 な に も 死 刑 に 限 っ た こ と で は な く 、 刑 罰 全 体 に そ の 可 能 性 は 存 在 す る な ら ば 、 自 分 が 冤 罪 被 害 者 に な っ た 場 合 に 、 最 悪 の 被 害 だ け で も 回 避 で き る よ う に す べ き だ 、 と い う 主 張 で あ る 。 ど う せ 被 害 が あ る の だ か ら 、 最 悪 の 被 害 ︵ = 冤 罪 に よ る 死 刑 ︶ で も 良 い な ど と は 、 主 張 で き な い 。
な お 、 認 識 あ る 過 失 で は な い か と い う 反 論 は 通 じ な い 。 な ぜ な ら 、 冤 罪 は な く せ な い と い う こ と は 、 存 置 論 も ま た 認 め ざ る を 得 な い こ と で あ る か ら で あ る 。 ま た 、 手 続 き が 法 律 に よ っ て い る の だ か ら 、 そ の よ う な 執 行 も 問 題 な い と い う 主 張 に つ い て は 、 形 式 的 法 治 主 義 と 法 の 支 配 の 違 い が 理 解 で き て い な い 虚 論 で あ る 。 さ ら に 、 公 共 の 福 祉 を 持 ち 出 し て も 正 当 化 す る こ と は で き な い 。 な ぜ な ら 、 公 共 の 福 祉 に お い て 外 在 的 な 人 権 制 約 を 認 め な い の は 近 代 立 憲 主 義 で は 当 た り 前 の こ と で あ り ︵ 中 国 や 北 朝 鮮 や イ ラ ン で も な い か ぎ り は ︶ 、 内 在 的 な 人 権 制 約 論 理 に よ る 公 共 の 福 祉 を 適 用 す る 限 り に お い て は 、 最 小 限 の 人 権 制 約 を 実 行 し な け れ ば な ら な い と い う 原 理 が 存 在 す る た め に 、 無 辜 の 生 命 の 保 護 の た め に 有 罪 が あ き ら か な 犯 人 で あ っ て も 刑 法 体 系 に お い て 終 身 刑 な ど に お き か え る こ と は 、 無 辜 の 保 護 と い う 一 点 の み で 正 当 化 さ れ る 。 終 身 刑 に し て も 冤 罪 に よ っ て 刑 務 所 で 生 涯 を 絶 望 の も と に 終 え る の は 死 刑 よ り も む ご い と 論 じ る こ と は 、 存 置 論 の 意 味 が な く な っ て し ま う 詭 弁 に 過 ぎ な い 。 長 期 間 の 懲 役 後 に 冤 罪 と な っ て も 謝 罪 金 で は 失 っ た 人 生 と 寿 命 が 取 り 返 し が つ か な い こ と と 同 一 視 す る こ と が で き な い の は 、 自 明 で あ る 。 同 じ だ と い う 存 置 論 者 は 、 確 定 冤 罪 死 刑 囚 と 同 じ 体 験 を し て み た も の が い な い こ と か ら も 、 た だ の 詭 弁 論 者 に す ぎ な い 。 最 後 に 以 上 の 議 論 を も と に 、 存 置 論 ︵ 特 に 日 本 に お い て ︶ に よ く 見 受 け ら れ る ﹁ 自 動 車 で 交 通 事 故 で 死 人 が 出 て い る か ら 、 自 動 車 を 廃 止 し ろ と い う の か ? ﹂ は 、 2 つ の 理 由 で 例 え に な っ て い な い 。 ま ず 、 民 間 企 業 の 生 産 す る 自 動 車 は 国 家 主 権 が 及 ぶ 領 土 で 無 条 件 に 適 用 さ れ る 刑 罰 の 作 用 と は 異 な り 、 可 能 性 と し て は 自 宅 に い る 間 は 自 動 車 の 事 故 に 会 う こ と は 無 い よ う に で き る が 、 冤 罪 被 害 に あ っ て し ま っ た ら 回 避 は 無 理 で あ る 。 次 に 自 動 車 の 事 故 死 は 公 権 力 に よ る 計 画 的 他 殺 で は な い 。 つ ま り 、 こ の ﹁ 例 え ﹂ こ そ が 、 憲 法 が 1 次 的 に は 政 府 に 対 す る 規 範 で あ る 趣 旨 の 近 代 憲 法 を 理 解 し て い な い 虚 論 に す ぎ な い 。 ま た 、 ﹁ 冤 罪 ﹂ は 、 裁 判 や 取 り 調 べ の 問 題 で あ り 死 刑 制 度 は 刑 法 と い う 法 体 系 の 問 題 で あ り 、 二 つ の 問 題 を 分 け て 考 え る べ き だ と い う 存 置 論 の 意 見 も 意 味 を な さ な い 。 刑 法 と い う 法 体 系 は 、 取 り 調 べ て の 容 疑 者 の 特 定 や 、 検 察 に よ る 起 訴 、 そ し て 裁 判 に よ る 事 実 認 定 ・ 量 刑 判 断 と い っ た 、 一 連 の ﹁ 実 務 作 業 ﹂ に よ っ て ﹁ 実 装 可 能 ﹂ で な け れ ば 意 味 を な さ な い 。 つ ま り 、 理 論 的 に 正 当 性 を 持 っ て い て も 、 具 体 的 ﹁ シ ス テ ム ﹂ [ 2 ] と し て 実 現 で き な い 法 に 、 そ の 存 在 価 値 は な い 。
誤判が生じるのは、なにも死刑に限ったことではなく、刑罰全体にその可能性は存在する[3] 。誤判の発生により、その生涯を刑務所において絶望と無念に苛まれながら終えるのは、「長期間に渡る精神的拷問後の死」と論じることもできる。さらに誤判に起因する長期間の懲役自体、後の謝罪や謝罪金で回復できるとは言い切れない。例えば、60歳まで無実の罪で投獄された後に「1億円」が渡されるという取引に事前に合意するような一般人がいるだろうか。この影響は投獄される当人のみならず、本人の年齢が60歳ならばその親は大抵の場合は他界、家族も離散、そしてその家族も人殺しの近親者というレッテルを数十年背負うことになるなど、本人の周囲へも甚大な影響を与える場合が多い。このように、事情はどうであれ法制度上の刑罰を受けることは、本人の失われた人生や寿命、またその周辺人物への名誉に、程度の差こそあれ大きな損害を与えるのは自明である。
ま た 、 懲 役 刑 を 伴 わ な い 痴 漢 や 万 引 き な ど の 軽 い 犯 罪 に お い て も 、 冤 罪 被 害 を 受 け た 一 般 人 は 社 会 的 信 用 を 完 全 に 喪 失 す る こ と も あ る 訳 で あ る か ら 、 裁 判 に お け る 誤 判 は 、 そ の 多 く が 取 り 返 し が つ か な い と 言 え る し 、 最 後 ま で 冤 罪 が 判 明 し な い 判 決 が 少 な か ら ず 存 在 す る 可 能 性 す ら も あ る 。 こ の よ う に 、 誤 判 ・ 冤 罪 を 全 て の 判 決 か ら 無 く す た め 、 た ゆ ま ぬ 努 力 が 必 要 で あ る と い う 主 張 は 正 論 で あ る し 、 死 刑 判 決 に 際 し て は 特 に 、 そ の 刑 の 重 さ か ら そ の 判 断 に 万 全 を 尽 く す の は 当 然 で あ る 。 な ぜ な ら 死 刑 執 行 は 、 そ れ 自 体 が 刑 罰 で あ る と 同 時 に 、 執 行 の 前 後 で は 、 誤 判 ・ 冤 罪 の 被 害 、 名 誉 回 復 に 致 命 的 で 甚 大 な 、 も し く は 一 切 回 復 不 可 能 な 影 響 を 与 え る た め で あ る 。
し か し 一 方 で 、 こ う し た 誤 判 ・ 冤 罪 の 可 能 性 を 完 全 に 排 除 す る た め に 、 死 刑 そ の も の を 廃 す べ き だ と の 意 見 は 、 論 の 体 を な さ な い 主 張 で あ る 。
犯罪被害者
刑罰の目的が被害者や家族の処罰要求に応えるためという論理は、全ての犯罪事例に適用できない場合があり、論理として不完全で刑法や刑事裁判の根本的論理にはならない。なぜなら、被害者の家族が存在しない、被害者の家族が存在するが所在も連絡先も不明、被害者の家族が存在し所在も連絡先も明らかだが被害者と絶縁状態で関わりを拒否、被害者の家族が死刑反対論者、被害者の家族が当該事件に関しては死刑を求めない、被害者や家族が刑罰を求めず赦しと和解を求める、加害者=被害者の家族、前記の諸事例の場合はこの論理は適用できない。つまり、前記のような事例の場合は論理としては、不起訴、不処罰、罪や判例に対して著しく軽い罰にする必要が生じる。加害者を死刑にすることが、被害者の家族にとってどの程度の問題解決となるのか客観的な証明はない。刑法や刑事裁判の目的とは、個別的には、犯罪者に対して犯した罪に応じた処罰をするとともに、犯罪の原因を矯正し改革するための教育や訓練により更生を求める、国や社会全体としては個別的目的の集合体としての社会秩序の維持である。刑事裁判は被害者や家族の処罰感情のために行うものではないので、結果としての被害者や家族の処罰感情を満足させることはあっても、被害者や家族の処罰要求を満たすための処罰は刑事裁判の目的に反する。
仮に、存置論の被害者遺族についての主張を認めたとすると「死刑による冤罪被害者遺族の死刑賛成派への報復権」を担保しなければ、法の公正を著しく損なうというべきである。
殺人に対して執行される死刑は応報であり人権を軽んじていることには当たらないや、遺族が明確に死刑を望んでいる場合に死刑を適用しないのは被害者の生命権と遺族の心情を侮蔑するものであるなどと、存置論は主張するが、死刑による冤罪被害者遺族の心情こそが最も侮辱されていることを無視している。
罪に対してあまりにも軽すぎる刑が適用された場合、その不条理が被害者にとって第二のトラウマになるのは周知の事実である。情状酌量の余地のない殺人を行った犯人が終身刑で生き続ける不条理は遺族にとっては終わりのない苦痛であり、死刑在廃の議論において殺人の被害者遺族は大抵死刑賛成である。殺人に対して執行される死刑は応報であり人権を軽んじていることには当たらない。イスラム法のように被害者遺族が個人的に死刑を望まない場合は死刑が適用されないなどの制度改正には理はあるが、遺族が明確に死刑を望んでいる場合に死刑を適用しないのは被害者の生命権と遺族の心情を侮蔑するものである。応報そのものを否定することは法の公正を著しく損なう。
犯罪抑止力 存廃論を論じる際抑止力を考慮すべきか、という議論もある。
まず現状における死刑の犯罪抑止力肯定論は科学的な論拠に基づいたものであるとは到底言えないものである。例えば、1988年に国連犯罪防止・犯罪統制委員会のために行なわれ2002年に改訂された、死刑と殺人発生率の関係についての最新の調査結果報告書は「死刑のもたらす脅威やその適用が、終身刑のもたらす脅威やその適用よりもわずかでも殺人に対する抑止力が大きいという仮説を受け入れるのは妥当ではない」と結論付けているし、ニュー・ジャージー州 では「死刑に抑止力があるという見解が説得的とは言えない」という見地から死刑廃止の一つの根拠としている。対して抑止力肯定論が科学者側から提出された場合もあるという意見もある。それ自体はその通りであるのだが、そのような主張が国際科学学会等で認められたという事例はいまだ存在しないのである。犯罪抑止力なるものが死刑と無期刑との間にその抑止力の優位性の差異があるという意見があるが、現状において死刑廃止国と存置国の犯罪率の推移に死刑廃止を契機とした明らかな違いが全体として特に見られない以上説得的ではない。
死刑の代替としての無期刑や長期の懲役にしても、統計的には明確な抑止効果は証明されていない。社会的全体での犯罪統計の変化の原因は多くの要因が複雑に相関しているため、個別の刑の犯罪抑止力の統計による実証はもともと不可能である[4] [要ページ番号 ] 犯罪の重大さに応じて刑を重くするという刑事政策は元々統計論に基づくものではなく、あくまでも被害に対する応報という法の正義という観点と、刑罰が厳重であれば犯罪を起こす動機が軽減するという「常識論」に基づくものである。よって死刑の抑止力が統計的に証明されていないから同じように統計的に抑止力が証明されていない無期刑に替えるべきとの論そのものに根拠がない。また法哲学においては効用主義を刑法に適用すること自体が正義に反すると指摘されている。例えば詐欺罪に無期刑や死刑にすれば社会全体の詐欺の犯罪数は軽減するかもしれないがこれは法の公正を損なう行為である。同じように殺人に対する罰を社会的効用を理由に無期刑に減らすのは、法によって尊厳を回復するという犯罪被害者の権利を著しく損なうものである。社会統計を理由に死刑の廃止や復活を主張すること自体が論外である。
世界の趨勢(すうせい)
自由権規約第2選択議定書 (死刑廃止議定書)が1989年12月に国連総会 で採択されて以後、世界の多くの国々が死刑制度を廃止ないし死刑執行を停止している。ここ20年(1991-2010)で死刑執行を行った国が1995年の41ヵ国をピークに漸減し、現在20ヶ国前後で推移しているのに対し、死刑制度を全面廃止した国の数は、1991年の48ヵ国から2010年の96ヵ国まで一度も減少せず推移している。即ちひとたび廃止された死刑制度が再導入されることは滅多にない[5] 。こうした世界的趨勢の中、2007年5月国連拷問禁止委員会は日本に対し死刑執行停止を求める勧告[6] を行っている。これは内政干渉を理由に無視できるものではなく、国際人権規約を批准し、国連人権理事会理事国をつとめる国として、日本は死刑制度のあり方を再考すべきである[7] [8] 。右存置論における「死刑の是非はあくまで法の正義の観点からのみ論じられるべきである。」との主張も、法の正義の観点からいっても反論し難いくらいに否定されているから、独裁・専制国家以外の立憲主義国家においては廃止されてつづけているのであることを無視している。
自由権規約第2選択議定書(死刑廃止議定書)の採択における賛成国(59ヶ国)は国連加盟国(当時)の37.1%にすぎず、これを国際的潮流の根拠とするには疑問がある(中野 2001 , p. 102)。また、当該条約は戦時犯罪への死刑を容認する部分的死刑存置条約であり、現状多くの国はこの点から部分的死刑存置国と言うべきである(中野 2001 , p. 13,50)。冷戦中は先進国=死刑廃止、途上・独裁国家=死刑維持の傾向が存在したが冷戦後の民主化後もアジアとアフリカの民主国家の多くが死刑制度を維持しており、死刑廃止の潮流と言われているものは、むしろ全面的廃止国の多い欧州と南米の地域的慣行と言ってよい(中野 2001 , p. 124)。
死刑反対派の国の意見、および国際機関の提言には真摯に耳を傾けるべきではあるが、そもそも刑法は国の基本制度であるため、世界全体で見た時の廃止国数や、それに基づいた国際潮流論にとらわれるべきではなく、死刑の是非はあくまで法の正義の観点からのみ論じられるべきである。
コスト(金銭的、人的など)
死刑囚を収容する独房の看守や死刑を執行する職員の精神的負担が大きい。また、死刑は無期刑に比べ経費が安く済むという主張は一概には言えない[9] 。
死 刑 に 関 わ る 問 題 に は 厳 格 性 が 要 求 さ れ る 。 刑 法 で は 、 有 罪 無 罪 の 事 実 認 定 だ け で な く い か な る 疑 い が あ る 場 合 に も そ れ は 常 に 被 告 人 に 有 利 に 解 釈 さ れ な け れ ば な ら な い と い う 前 提 が あ る 。 こ の 厳 格 性 が あ る が ゆ え に 死 刑 制 度 は き わ め て 高 く つ く と の 見 方 が あ る [ 10 ] 。
厳 格 性 の ゆ え に 死 刑 は 高 く つ く と い う こ と で あ れ ば 、 存 置 論 者 は ﹁ も っ と 早 く や っ て し ま え ば い い だ ろ う ﹂ と い う で あ ろ う が 、 無 実 の 人 が 処 刑 さ れ る 危 険 性 を 増 す と い う こ と に な る 。 現 行 犯 な ど 明 確 な 事 案 な ら 、 時 間 が か か ら な い だ ろ う と い う 主 張 も 意 味 が な い 、 全 死 刑 囚 の う ち 現 行 犯 で 逮 捕 さ れ る 割 は 極 め て 少 数 な の で 、 結 局 コ ス ト は 高 く つ い て し ま う 。
被告人が「死刑の早期執行を」などの意思を示すことにより、比較的短い期間(1年~数年程度)で死刑が執行されることはある。しかし、こうした例は稀であり、場合によっては収監期間がおよそ半世紀に及ぶ場合(袴田事件 など)もある。こうした長期に渡る強制的に自由を抑圧された生活で、死刑囚は拘禁反応 を示す場合も見られるし、他方で収監された刑事施設内で病死、または自然死する場合もある。さらに、こうした死刑囚は「死刑」が刑罰であり、他の懲役囚と同じ様に刑務作業を行う義務を負わず、その分収監のための経費が累積し、社会への負担が高くつきがちである。
死刑の是非の論争は学術的には哲学・倫理学において政策や法の是非を論じる規範倫理学や応用倫理学に属する。この観点において死刑の是非の論争は義務論 と帰結主義 と徳倫理学 の3つに大別される。「人の命を奪う死刑は悪」(人権論)や「死刑の冤罪は取り返しがつかない」などの死刑反対論や、「死刑は応報である」(応報論)や「生命権、自由権、財産権の侵害は死刑、懲役、罰金で償うべき」(社会契約説)などの死刑賛成論は義務論に属する。死刑や終身刑の犯罪抑止効果およびその制度の経済的採算性の比較は帰結主義(論)に属する。徳倫理学においては、死刑という刑罰が残虐であるか、あるいは死刑によって被害者や遺族の救済が達成されるのかという徳に関する考察や、被害者と加害者、捜査に関わる警察や裁判に関わる法曹(検察官、弁護士、裁判官)および死刑を実際に執行する看守などに実際にどのような精神的および道徳的影響が及ぼされるのかが議論される。一般論として反対派は「血を血で贖う」死刑制度は社会を残虐化するとの論を展開し、賛成派は、死刑で罪が償われることにより法の正義および生命の尊厳が再確認されるとの論を展開する。
死刑廃止を主張する重要な論拠の一つとして誤認による逮捕・起訴・死刑判決・死刑執行が主張される。死刑執行後に冤罪が判明した場合は、その被害は重大であり、被害の回復は不可能である。
冤 罪 を 理 由 に 死 刑 廃 止 を 主 張 す る 人 々 は 、 下 記 の 理 由 で 冤 罪 を 論 拠 と す る 死 刑 廃 止 を 主 張 し て い る 。
● 完 全 無 欠 ・ 全 知 全 能 の 人 は 存 在 せ ず 、 全 て の 人 は 誤 認 ・ 誤 解 ・ 誤 判 断 を す る 可 能 性 が あ る か ら 、 死 刑 と い う 特 定 の 刑 罰 を 廃 止 す る 理 由 に な る 。
● 警 察 ・ 検 察 ・ 裁 判 所 ・ 法 務 省 も 人 の 集 団 に よ る 組 織 で あ る の だ か ら 、 誤 認 ・ 誤 解 ・ 誤 判 断 で 逮 捕 ・ 起 訴 ・ 有 罪 判 決 ・ 刑 の 執 行 を す る 可 能 性 が あ る か ら 、 死 刑 と い う 特 定 の 刑 罰 を 廃 止 す る 理 由 に な る 。
● 冤 罪 で 死 刑 を 執 行 し た ら 、 そ の 被 害 は 死 刑 以 外 の 刑 罰 と 比 較 し て 重 大 で あ り 、 被 害 の 回 復 は 不 可 能 で あ る か ら 、 死 刑 と い う 特 定 の 刑 罰 を 廃 止 す る 理 由 に な る 。
● 冤 罪 で 死 刑 以 外 の 刑 罰 を 執 行 さ れ て も 、 そ の 被 害 は 死 刑 と 比 較 し て 軽 少 で あ り 、 被 害 の 回 復 は 可 能 で あ る か ら 、 死 刑 と い う 特 定 の 刑 罰 を 廃 止 す る 理 由 に な る 。
● 冤 罪 で 死 刑 以 外 の 刑 罰 を 執 行 さ れ て も 、 本 人 の 存 命 中 に 再 審 請 求 し 、 再 審 で 無 罪 判 決 を 受 け れ ば 、 名 誉 の 回 復 は 可 能 で あ り 、 金 銭 に よ る 被 害 賠 償 を 受 け れ ば 被 害 の 回 復 は 可 能 で あ る か ら 、 死 刑 と い う 特 定 の 刑 罰 を 廃 止 す る 理 由 に な る 。
● ︵ 冤 罪 は 死 刑 廃 止 の 理 由 と な ら な い と の 反 論 に 対 し て ︶ 他 の 刑 種 で も 同 様 に 回 復 不 可 能 な 損 害 を 生 じ る と い う の で あ れ ば 、 そ れ は 生 命 刑 で あ る 死 刑 の 特 別 性 を 否 定 す る 見 解 で あ っ て 、 死 刑 と い う も の の 存 在 意 義 を 失 わ せ る 自 己 矛 盾 を 含 む 立 論 で あ る 。
冤 罪 は 死 刑 廃 止 の 理 由 に は な ら な い と 主 張 す る 人 々 は 、 下 記 の 理 由 で 冤 罪 は 死 刑 廃 止 の 理 由 に は な ら な い と 主 張 し て い る 。
● 死 刑 冤 罪 の 執 行 は 取 り 返 し が つ か な い が 終 身 刑 や 懲 役 の 冤 罪 の 執 行 は 取 り 返 し が つ く と い う 考 え は 誤 り で あ る 。 ま ず 、 冤 罪 の 終 身 刑 や 懲 役 も 被 害 者 が 冤 罪 が 判 明 す る 前 に 死 亡 し た 時 点 で 修 復 不 能 で あ る 。 ま た 、 法 治 制 度 が 人 の 執 行 す る 制 度 で あ る 限 り は で は 誤 審 が 最 後 ま で 判 明 し な い 場 合 は 終 身 刑 や 懲 役 で も 必 ず あ る は ず で あ る 。 冤 罪 に よ っ て 刑 務 所 で 生 涯 を 絶 望 と 無 念 に 終 え る の は 長 期 間 に 渡 る 精 神 的 拷 問 後 の 死 で あ り 死 刑 よ り も 惨 い と 論 じ る こ と も で き る 。
● 懲 役 に よ り 失 わ れ た 寿 命 や 人 生 が 金 銭 で 回 復 さ れ る と い う 主 張 は 誤 り で あ る 。 例 え ば 60 歳 ま で 無 実 の 罪 で 投 獄 さ れ た 後 に 生 涯 年 収 の 例 え ば 2 倍 の お 金 が 渡 さ れ る と い う 取 引 に 事 前 に 合 意 す る よ う な 一 般 人 が い る だ ろ う か 。 本 人 が 60 歳 な ら 、 親 は 大 抵 の 場 合 は 亡 く な っ て お り 、 家 族 も 離 散 あ る い は 家 族 は 人 殺 し の 近 親 者 の レ ッ テ ル を 数 十 年 背 負 う わ け で あ る か ら 、 こ れ ら の 、 失 わ れ た 人 生 や 寿 命 が 取 り 返 し が つ か な い の は 自 明 の 理 で あ る 。 ま た 、 懲 役 を 伴 わ な い 痴 漢 や 万 引 き な ど の 軽 い 犯 罪 に お い て も 前 科 が あ れ ば 一 般 人 は 社 会 的 信 用 を 完 全 に 喪 失 す る わ け で あ る か ら 、 刑 罰 の 大 多 数 の 誤 判 は 多 く の 場 合 は 取 り 返 し が つ か な い 。 冤 罪 が 判 明 し な い 、 あ る い は そ の 判 明 が 遅 す ぎ る と い う こ と は 避 け ら れ な い 、 取 り 返 し が つ か な い 誤 審 が あ る か ら 刑 を 執 行 で き な い と い う の な ら 死 刑 や 懲 役 ど こ ろ か 法 制 度 や 政 治 そ の も の が 成 り 立 た な い 。 死 刑 の 誤 審 は 取 り 返 し が つ か な い の で 廃 止 す べ き だ が 禁 固 刑 の 誤 審 は 取 り 返 し が つ く の で 許 容 で き る と い う の は 論 の 体 を な さ な い 。
● 冤 罪 が 発 生 す る こ と は 死 刑 に 固 有 の 問 題 で は な く 、 捜 査 ま た は 裁 判 の 過 程 で 、 被 疑 者 や 被 告 人 の 権 利 を 保 護 す る 法 律 の 規 定 が 脆 弱 で 、 警 察 官 ・ 検 察 官 ・ 裁 判 官 が 被 疑 者 や 被 告 人 の 権 利 を 軽 視 す る こ と が 原 因 で 発 生 す る 。 死 刑 の 廃 止 で は な く 、 法 体 制 の 強 化 に 注 意 が 向 け ら れ る べ き で あ る 。
● 冤 罪 の 発 生 を で き る だ け 少 な く す る こ と は 、 死 刑 に 固 有 の 問 題 で は な く 、 捜 査 ま た は 裁 判 の 過 程 で 、 被 疑 者 や 被 告 人 の 権 利 を 保 護 す る 法 律 の 規 定 を 拡 大 ・ 強 化 し 、 警 察 官 ・ 検 察 官 ・ 裁 判 官 が 被 疑 者 や 被 告 人 の 権 利 を 重 視 す る 必 要 が あ る 。
● 冤 罪 で 刑 罰 を 執 行 さ れ て も 、 再 審 請 求 を す る こ と も 、 再 審 請 求 が 受 理 さ れ る こ と も 、 再 審 で 無 罪 判 決 を う け る こ と も 、 金 銭 と い う 代 替 手 段 に よ る 被 害 賠 償 を 受 け る こ と も 、 本 人 で も 代 理 人 で も 、 本 人 の 存 命 中 で も 死 後 で も 、 刑 罰 の 種 類 に 関 係 な く 可 能 で あ り 、 死 刑 と い う 特 定 の 刑 罰 を 廃 止 す る 理 由 に は な ら な い 。
● 1 9 4 9 年 に 刑 事 訴 訟 法 が 施 行 さ れ て 以 後 、 法 務 省 は 冤 罪 の 可 能 性 が 高 い 死 刑 囚 に 対 し て は 、 執 行 対 象 外 に し て 、 再 審 に よ る 無 罪 判 決 で 釈 放 す る か 、 再 審 に よ る 無 罪 判 決 が 得 ら れ な け れ ば 、 死 刑 囚 が 死 ぬ ま で 収 監 し 続 け 、 仮 釈 放 を 許 可 さ れ な か っ た 無 期 受 刑 者 と 同 じ 処 遇 に し て い る の で 、 冤 罪 に よ る 死 刑 執 行 の 可 能 性 は 少 な く 、 死 刑 と い う 特 定 の 刑 罰 を 廃 止 す る 理 由 に は な ら な い 。
日本においては、1949年に第二次世界大戦以前の刑事訴訟法に代わって現行の刑事訴訟法が施行されて以後、死刑判決を受けて死刑囚になったが、再審で無罪判決を受けて釈放された、免田事件 、松山事件 、島田事件 、財田川事件 。
死 刑 廃 止 論 者 は 、 殺 人 事 件 で 起 訴 さ れ た 被 告 人 の う ち 、 死 刑 判 決 が 確 定 す る 被 告 人 が 実 際 に は 少 な い ︵ 日 本 国 内 で は 1 9 9 0 年 代 以 後 は 毎 年 6 0 0 ~ 7 0 0 人 前 後 が 殺 害 さ れ 、 殺 人 犯 の 9 0 % 以 上 が 検 挙 さ れ て い る が 、 年 に よ っ て 上 下 す る が 十 数 人 程 度 し か 死 刑 が 確 定 し な い ︶ こ と か ら 、 現 制 度 で は 殺 人 被 害 者 の 遺 族 の う ち 、 死 刑 存 置 論 者 が 主 張 す る 死 刑 に よ る 感 情 回 復 が で き な い の は お ろ か 、 加 害 者 の 贖 罪 す ら 受 け る こ と の 出 来 る 者 が 少 な い と 批 判 し て い る 。 一 方 で 、 殺 人 事 件 の 被 害 者 遺 族 の 大 半 は 死 刑 を 望 ん で お り 、 日 本 も 含 め て 死 刑 制 度 の 存 在 す る 国 の 被 害 者 遺 族 の 団 体 の 殆 ど が 死 刑 賛 成 の 立 場 を と っ て い る 。 し か し 、 こ れ ら の 被 害 者 遺 族 団 体 も ﹁ 目 に は 目 ﹂ の よ う に 殺 人 罪 全 て に 死 刑 適 用 を 要 求 し て い る の で は な く 、 あ く ま で 情 状 酌 量 の 余 地 の な い 殺 人 に お い て の み 死 刑 の 適 用 を 要 求 し て い る 。
日 本 に お い て は 死 刑 囚 に 対 し て 被 害 者 の 遺 族 が 死 刑 を 執 行 し な い よ う 法 務 省 に 求 め た 場 合 [ 注 釈 1 ] で も 死 刑 は 執 行 さ れ て お り 、 こ れ は 被 害 者 遺 族 の 感 情 を 回 復 す る ど こ ろ か 傷 つ け て い る の で は な い か 、 と い う 批 判 が あ る 。 一 方 、 外 国 で は 、 例 え ば ア メ リ カ で は 被 害 者 遺 族 が 死 刑 を 望 ま な い 場 合 は 、 知 事 が 死 刑 を 終 身 刑 に 減 刑 す る こ と が で き た り 、 イ ス ラ ム 法 国 家 で は 、 被 害 者 遺 族 が 死 刑 を 望 ま な い 場 合 は 遺 族 の 要 望 で 死 刑 の 恩 赦 が 可 能 で あ る 。 こ れ は 日 本 で は 終 身 刑 が 存 在 し な い た め 、 外 国 の よ う に 死 刑 を 終 身 刑 に 減 刑 す る こ と が で き な い か ら で あ る と い え る 。
他 方 被 害 者 遺 族 は 、 犯 罪 被 害 者 の 被 害 と し て 、 家 族 を 殺 害 さ れ た と い う 直 接 的 被 害 に と ど ま ら ず 、 報 道 機 関 や 司 法 関 係 者 な ど か ら 心 無 い 干 渉 を 受 け た り 、 逆 に 国 や 社 会 か ら 見 離 さ れ 孤 立 化 す る こ と で 二 次 的 被 害 を 受 け る こ と が 多 い 事 か ら 、 被 害 感 情 を 一 層 つ の ら せ る こ と に な り 、 加 害 者 で あ る 犯 人 に 対 し 極 刑 を 求 め る 感 情 が 生 じ て い る と も 云 わ れ る 。 そ こ で 、 犯 罪 者 を 死 刑 に す れ ば 犯 罪 被 害 者 遺 族 の 問 題 が 全 て 解 決 す る わ け で は な い と し て 、 死 刑 存 置 だ け で な く 犯 罪 被 害 者 遺 族 に 対 す る 司 法 的 対 策 を 充 実 す べ き で あ り 、 そ の こ と が 被 害 者 遺 族 の 報 復 感 情 と 復 讐 心 を 緩 和 さ せ る と の 主 張 [ 11 ] も あ る 。
犯 罪 被 害 者 救 済 の た め に 犯 罪 者 に 対 す る 附 帯 私 訴 の 復 活 を 主 張 す る 作 家 で 弁 護 士 の 中 嶋 博 行 は 、 国 が 被 害 者 遺 族 に 給 付 金 を 与 え る 制 度 が あ る が 、 こ れ ら の 予 算 は 税 金 で あ る の で 犯 罪 者 に 償 い を さ せ る べ き で あ り 、 死 刑 相 当 の 凶 悪 犯 は 死 ぬ ま で 働 か せ て 損 害 賠 償 を さ せ る べ き だ と 主 張 し て い る ( 中 嶋 2 0 0 4 , p p . 1 9 0 – 1 9 1 ) 。
被 害 者 遺 族 の 応 報 感 情 の た め に 死 刑 制 度 は 必 要 だ と 主 張 す る 藤 井 誠 二 は 、 ﹃ 少 年 に 奪 わ れ た 人 生 ― 犯 罪 被 害 者 遺 族 の 闘 い ﹄ の な か で ﹁ 加 害 者 が こ の 世 に い な い と 思 う だ け で 、 前 向 き に 生 き る 力 が わ い て く る ﹂ と い う 遺 族 の 言 葉 を 私 は 聞 い た こ と が あ る 。 被 害 者 遺 族 に と っ て の ﹁ 償 い ﹂ が 加 害 者 の ﹁ 死 ﹂ で あ る と 言 い 換 え る こ と だ っ て で き る の だ 。 私 ︵ 藤 井 ︶ は そ う 考 え て い る ﹂ ﹁ 加 害 者 の 死 は 被 害 者 遺 族 に と っ て は 償 い で あ る ﹂ と 主 張 し て い る 。 た だ し 、 こ の 藤 井 の 事 件 被 害 者 へ の 一 方 的 な 肯 定 論 に 立 っ た 言 論 に 対 す る 批 判 も 少 な く な い 。 ま た 、 被 害 者 と 加 害 者 の 家 族 が 一 緒 の 家 庭 内 の 殺 人 ︵ か つ て 特 に 尊 属 殺 は 厳 罰 [ 注 釈 2 ] に な っ た ︶ の 場 合 に つ い て は 対 応 で き て い な い と い え る 。 ま た 彼 は ﹃ 重 罰 化 は 悪 い こ と な の か 罪 と 罰 を め ぐ る 対 話 ﹄ に お い て 、
﹁ 人 間 の 尊 厳 を 無 残 な か た ち で 奪 い 取 っ た 者 に 対 す る 罰 と し て の 死 刑 を や め て し ま う と 、 人 は 何 人 殺 し た と し て も 国 家 が 命 を 保 証 す る こ と に な る 。 そ れ が 殺 さ れ た 側 の 尊 厳 に 対 し て の 人 道 な の か 。 こ の よ う な 、 ど う し て も 譲 れ な い 一 線 が 、 僕 を ふ く め た 死 刑 存 置 派 に は あ り ま す 。 死 刑 に 反 対 す る 理 由 を ひ と つ ず つ 削 い で い く と い う か 、 慎 重 に 消 去 法 で や っ て い っ て 、 苦 渋 の 選 択 と し て 死 刑 は 存 置 す る べ き だ と い う 立 場 を と る に い た っ て い ま す 。 ﹂ ︵ P 1 2 1 - 1 2 2 ︶ と 述 べ て い る 。
ア メ リ カ 合 衆 国 連 邦 最 高 裁 は ﹁ 被 害 者 感 情 は 客 観 的 に 証 明 で き る も の で は な い 、 よ っ て 死 刑 の 理 由 に す る の は 憲 法 違 反 ﹂ と の 判 決 を 出 し て い る 。 ア メ リ カ 合 衆 国 や そ の 他 の 先 進 国 で は 、 殺 人 被 害 者 家 族 に よ る 死 刑 制 度 賛 成 団 体 も あ る が 、 殺 人 被 害 者 家 族 と 加 害 者 が 対 話 し て 、 加 害 者 が 家 族 に 対 し て 謝 罪 ・ 贖 罪 ・ 賠 償 ・ 更 生 の 意 思 ち を 表 す こ と に よ り す る こ と に よ り 、 家 族 の 被 害 感 情 を 少 し で も 緩 和 と 加 害 者 と の 和 解 や 赦 し を 提 案 す る 運 動 が あ り [ 12 ] [ 13 ] [ 14 ] 、 英 語 で は R e s t o r a t i v e J u s t i c e 、 日 本 語 で は 修 復 的 司 法 と 表 現 す る 。 被 害 者 と 加 害 者 の 対 話 と 謝 罪 ・ 贖 罪 ・ 賠 償 ・ 更 生 の 意 思 の 表 現 に よ る 赦 し と 和 解 の 提 案 は 殺 人 だ け で は な く 他 の 暴 力 犯 罪 や 非 暴 力 犯 罪 で も 提 案 さ れ 実 施 さ れ 、 対 話 の 結 果 と し て 、 被 害 者 や 被 害 者 の 家 族 が 加 害 者 に 許 し の 感 情 と 和 解 を 表 明 す る 事 例 も あ り 、 あ る 程 度 の 成 果 に な っ て い る 。 た だ し 、 被 害 者 と 加 害 者 の 対 話 の 提 案 は 、 刑 事 裁 判 と 刑 事 司 法 制 度 や 、 少 年 審 判 と 少 年 保 護 処 分 の よ う に 公 権 力 が 強 制 的 に 行 う 制 度 で は な く 、 被 害 者 ま た は 被 害 者 の 家 族 と 加 害 者 の 両 者 に 提 案 し て 両 者 の 合 意 に よ り 成 り 立 つ 任 意 の 試 み で あ る 。 犯 罪 の 被 害 が 重 大 で あ る ほ ど 、 被 害 の 回 復 が 不 可 能 や 困 難 で あ る ほ ど 、 加 害 者 に 対 す る 被 害 者 や 被 害 者 の 家 族 の 怒 り ・ 恨 み ・ 憎 し み ・ 嫌 悪 ・ 拒 絶 の 感 情 や 処 罰 感 情 は 大 き く 強 く な る 傾 向 が 著 し い の で 、 犯 罪 の 被 害 が 重 大 で あ る ほ ど 、 被 害 の 回 復 が 不 可 能 や 困 難 で あ る ほ ど 、 被 害 者 側 の 拒 否 に よ り 実 現 さ れ る 可 能 性 が 低 い と い う 現 実 が あ る 。 加 害 者 に お い て も 、 全 て の 加 害 者 が 被 害 者 や 被 害 者 に 家 族 に 対 し て 謝 罪 ・ 贖 罪 ・ 賠 償 ・ 更 生 の 意 思 を 持 つ の で は な く 、 謝 罪 ・ 贖 罪 ・ 賠 償 ・ 更 生 の 意 思 が 無 く 被 害 者 や 被 害 者 の 家 族 と の 対 話 を 拒 否 す る 加 害 者 も 存 在 す る の で 、 加 害 者 の 意 思 に よ り 実 現 さ れ る 可 能 性 が 低 い と い う 現 実 も あ る 。
死 刑 を 廃 止 し た 国 に 見 ら れ る 思 想 と し て 、 ﹁ 環 境 要 因 論 ﹂ が あ る 。
こ れ は 、 死 刑 に 値 す る 凶 悪 犯 罪 の 背 景 に 、 家 庭 環 境 や 社 会 情 勢 と い う 本 人 の 努 力 で は 変 え ら れ な い 環 境 が 必 ず 存 在 し て い る と い う 見 方 で あ る 。 こ の 環 境 要 因 論 は 、 加 害 者 が 優 良 な 環 境 に 恵 ま れ て い れ ば 、 そ の 加 害 者 は 死 刑 に 値 す る 凶 悪 犯 罪 を 起 こ さ な か っ た 、 と す る 内 容 で あ り ‥ こ れ を 裏 返 せ ば 、 被 害 者 で あ っ て も 、 加 害 者 が 被 っ た 劣 悪 な 家 庭 環 境 や 社 会 情 勢 に 置 か れ て い れ ば 、 死 刑 に 値 す る 凶 悪 犯 罪 を 起 こ す 可 能 性 を 持 っ て い る 、 と も 言 え る 。
つ ま り 、 加 害 者 を 死 刑 に 処 し て も 凶 悪 犯 罪 が 根 絶 さ れ な い と い う 観 点 か ら 、 犯 罪 に 駆 り 立 て た ﹁ 環 境 ﹂ を 絶 つ こ と が 犯 罪 の 根 絶 に 必 要 で あ る と 説 く 内 容 で あ る 。
一 部 の 死 刑 廃 止 論 者 [ 誰 ? ] は 、 死 刑 は 懲 役 と 比 較 し て 有 効 な 予 防 手 段 で は な い と し て い る 。
ま た 、 他 の 一 部 の 死 刑 廃 止 論 者 [ 誰 ? ] は 、 死 刑 の 抑 止 効 果 が 仮 に 存 在 す る と し て も 、 他 の 刑 と の 抑 止 効 果 の 差 は さ ら に 小 さ い 、 な い し は 均 等 で あ る と す る 。 ま た 、 そ も そ も 、 抑 止 力 な ど と い う も の は 将 来 に わ た っ て 確 認 ・ 検 出 不 能 で あ る と 考 え ら れ る と し て 、 明 確 な 抑 止 効 果 、 な い し は そ の 差 異 が 証 明 さ れ な い 以 上 、 重 大 な 権 利 制 限 を 行 う 生 命 刑 が 、 現 代 的 な 憲 法 判 断 に よ り 承 認 さ れ る こ と は な い と し て い る 。 実 際 に 死 刑 を 廃 止 し た フ ラ ン ス で は 死 刑 制 度 が 存 置 さ れ て い た 時 代 よ り も 統 計 的 に は 凶 悪 犯 罪 が 減 少 し て い る こ と な ど も あ り 、 犯 罪 抑 止 効 果 な ど と い う 概 念 自 体 科 学 的 に 疑 わ し い と い わ ざ る を 得 ず 、 ま た 死 刑 に 相 当 す る 犯 罪 行 為 の 目 撃 者 を 死 刑 逃 れ の た め ﹁ 口 封 じ ﹂ す る こ と さ え あ る と し て 、 犯 罪 抑 止 効 果 に 対 す る 懐 疑 性 の 理 由 と し て い る 。
そ れ に 対 し 、 一 部 の 死 刑 存 置 論 者 [ 誰 ? ] は 、 終 身 刑 や 有 期 刑 に し て も 統 計 的 に は 明 確 な 抑 止 効 果 は 証 明 さ れ て お ら ず 、 終 身 刑 や 有 期 刑 が 死 刑 と 同 等 の 抑 止 効 果 を 持 つ こ と が 証 明 さ れ な い 限 り 、 死 刑 を 廃 止 す べ き で は な い と す る 。 ま た 、 個 別 の 事 件 を 見 る と 、 闇 の 職 業 安 定 所 で 知 り 合 っ た 3 人 が 女 性 一 人 を 殺 害 し た 後 に も 犯 行 を 続 行 し よ う と し た が 、 犯 人 の う ち 一 人 が 死 刑 に な る こ と の 恐 怖 か ら 自 首 し た と い う 例 も あ り 、 死 刑 制 度 の 存 在 が 犯 罪 抑 止 に 効 果 が あ る と の 主 張 も 根 強 く あ る 。 こ の よ う な 認 識 は 少 な か ら ざ る 人 々 の 間 で 語 ら れ る が 、 数 的 根 拠 は な い 。 死 刑 制 度 存 続 を 必 要 と す る 理 論 的 理 由 は 後 述 の よ う に 犯 罪 被 害 者 遺 族 の た め に 必 要 と す る な ど 複 数 存 在 し て い る 。 ま た 、 死 刑 制 度 の 代 替 と 主 張 さ れ る 終 身 刑 ︵ 無 期 懲 役 ︶ な ど の 刑 罰 が 、 死 刑 と 比 べ 相 対 的 な 犯 罪 抑 止 効 果 が あ る か を 示 す 統 計 も 出 て い な い の も 事 実 で あ る 。 す な わ ち 、 死 刑 と 長 期 の 懲 役 の う ち ど ち ら が 犯 罪 を 抑 止 す る 効 果 が 優 れ て い る か ど う か は 誰 も 検 証 で き て い な い 。 こ れ に 対 し て は そ も そ も ﹁ 抑 止 力 ﹂ と い う 概 念 を あ て は め る こ と 自 体 不 適 当 で は な い か と い う 問 題 も あ る と さ れ る 。
死 刑 の 犯 罪 抑 止 効 果 に つ い て 、 統 計 的 に 抑 止 効 果 が あ る と 主 張 す る 論 文 は 、 ア メ リ カ 合 衆 国 で い く つ か 発 表 さ れ て い る が 、 そ の 分 析 と 称 さ れ る そ れ に 対 し て は 多 く に 批 判 が 存 在 し て お り 、 全 米 科 学 ア カ デ ミ ー の 審 査 に よ る と ﹁ ど の 論 文 も 死 刑 の 犯 罪 抑 止 力 の 有 効 性 を 証 明 で き る 基 準 に は 遠 く 及 ば な い ﹂ と し て い る [ 15 ] 。
個 別 の 刑 罰 の 特 別 抑 止 ︵ 再 犯 抑 止 ︶ 効 果 を 除 い た 一 般 抑 止 効 果 は 、 死 刑 、 終 身 刑 お よ び ほ か の 懲 役 刑 も 含 め て 、 統 計 上 効 果 が 実 証 さ れ て い な い 。 一 般 論 と し て 、 死 刑 反 対 派 は ﹁ 死 刑 に よ る 犯 罪 の 一 般 抑 止 効 果 の 統 計 的 証 拠 が な い こ と ﹂ 、 死 刑 賛 成 派 は ﹁ 死 刑 代 替 刑 に よ る 威 嚇 効 果 が 十 分 で な い こ と ﹂ を 指 摘 す る 。 抑 止 効 果 の 分 析 方 法 に は 地 域 比 較 と 歴 史 的 比 較 が あ る 。 地 域 比 較 で は 国 や 州 の 制 度 の 違 い に よ っ て 比 較 が 行 わ れ る 。
地 域 比 較 と し て は 、 ア メ リ カ 合 衆 国 の 1 9 6 0 年 か ら 2 0 1 0 年 ま で の 、 死 刑 制 度 が 無 い 州 や 地 域 と 、 死 刑 制 度 が 有 る 州 の 殺 人 発 生 率 を 比 較 ︵ 死 刑 が 無 い 州 地 域 と 有 る 州 の 数 は 時 代 の 進 展 と と も に 変 化 し て い る ︶ す る と 、 死 刑 制 度 が 無 い 州 や 地 域 の 殺 人 率 の 平 均 値 は 、 死 刑 制 度 が 有 る 3 州 の 殺 人 率 の 平 均 値 は 死 刑 制 度 が 無 い 州 や 地 域 と 死 刑 制 度 が 有 る 州 を 比 較 し て 、 い ず れ の 年 度 も 近 似 値 で あ り 統 計 上 有 意 な 差 異 は 確 認 さ れ て い な い [ 16 ] [ 17 ] [ 18 ] [ 19 ] [ 20 ] [ 21 ] [ 22 ] [ 23 ] 。
主 要 工 業 国 ( 先 進 国 ・ 準 先 進 国 ) で 死 刑 を 実 施 し て い る 国 と し て は 、 日 本 、 ア メ リ カ 合 衆 国 、 シ ン ガ ポ ー ル 、 台 湾 な ど が あ る が 、 ア メ リ カ 合 衆 国 の 殺 人 率 は 先 進 国 の 中 で は 高 く 他 国 の 殺 人 率 は 低 い [ 24 ] [ 25 ] [ 26 ] [ 27 ] [ 28 ]
の で 、 個 々 の 国 の 殺 人 率 は 死 刑 制 度 の 有 無 や 刑 罰 制 度 の 重 軽 に よ り 決 定 さ れ る わ け で は な く 、 殺 人 に 対 す る 死 刑 の 一 般 抑 止 効 果 と し て は 、 国 や 州 や 地 域 別 の 比 較 に は 意 味 が な い と の 指 摘 も あ る 。
時 代 的 比 較 で は 、 死 刑 が 廃 止 さ れ た 国 で の 廃 止 前 ・ 廃 止 後 を 比 較 す る 試 み が さ れ る 。 し か し 様 々 な 制 度 や 文 化 、 教 育 、 経 済 な ど 様 々 な 社 会 環 境 の 変 化 も 伴 う た め 、 分 析 者 に よ っ て さ ま ざ ま な 結 論 が 導 き 出 さ れ て お り 、 そ れ だ け を 取 り 出 し て 検 討 す る の は 困 難 で あ る 。 た だ し 現 段 階 に お い て は 、 廃 止 後 に 劇 的 に 犯 罪 が 増 加 ・ 凶 悪 化 し た 典 型 的 ケ ー ス は こ れ ま で に は な く 、 ま た 劇 的 に 犯 罪 が 減 少 し た ケ ー ス も な い 。
廃 止 派 団 体 で あ る ア ム ネ ス テ ィ ・ イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル は カ ナ ダ な ど に お け る 犯 罪 統 計 に お い て 死 刑 廃 止 後 も 殺 人 発 生 率 が 増 加 し て い な い こ と を 挙 げ ﹁ 死 刑 廃 止 国 に お け る 最 近 の 犯 罪 件 数 は 、 死 刑 廃 止 が 悪 影 響 を 持 つ と い う こ と を 示 し て い な い ﹂ と 主 張 し て い る [ 29 ] 。 こ れ に 対 し ﹁ ア ム ネ ス テ ィ の 数 値 解 釈 は 指 標 の 選 択 や 前 後 比 較 の 期 間 設 定 が 恣 意 的 で あ り 、 公 正 に デ ー タ を 読 め ば む し ろ 死 刑 廃 止 後 に 殺 人 発 生 率 が 増 加 し た こ と が 読 み 取 れ る ﹂ と い う 反 論 [ 30 ] が な さ れ て い る 。 こ の よ う な 主 張 の 正 否 は と も か く と し て 、 い ず れ の 議 論 に お い て も 、 死 刑 制 度 お よ び 無 期 懲 役 と 凶 悪 犯 罪 発 生 率 の 間 の 因 果 関 係 の 有 無 が 立 証 さ れ て い な い 点 で は 共 通 し て い る と い え る 。
死 刑 お よ び 終 身 刑 に 相 当 す る 凶 悪 犯 罪 が 近 代 国 家 で は 少 な く な い た め 、 統 計 で 犯 罪 抑 止 力 に い ず れ の 刑 罰 が 有 効 で あ る か 否 か の 因 果 関 係 を 明 示 す る こ と が で き な い こ と か ら 、 統 計 的 に 結 論 を 出 す の は 難 し い 。 特 に 日 本 で は ﹁ 犯 罪 が 増 加 し た ﹂ と の 指 摘 も あ っ た が 、 そ れ で も な お 他 の 先 進 諸 国 と 比 較 し て も 低 い 。 た と え ば 犯 罪 白 書 に よ れ ば 、 2 0 0 0 年 に 発 生 し た 殺 人 の 発 生 率 及 び 検 挙 率 の 表 [ 31 ] で は 、 日 仏 独 英 米 の 5 カ 国 で は 発 生 率 は 一 番 低 く ︵ 1 . 2 ︶ 、 検 挙 率 も ド イ ツ に つ い で 2 番 目 に よ い ︵ 9 4 . 3 % ︶ 。 こ の 数 値 を 見 れ ば 死 刑 制 度 の 存 在 が 有 効 に 働 い て い る と の 主 張 も 可 能 で あ る か の よ う に い え る 。 し か し 、 も う 一 つ の 死 刑 存 置 国 で あ る ア メ リ カ 合 衆 国 の 数 値 は 、 発 生 率 が 5 . 5 で 最 悪 、 検 挙 率 も 6 3 . 1 % と 最 低 で あ る 。 そ の た め 死 刑 制 度 の 存 置 が 犯 罪 抑 止 に 全 く 効 果 が な い と の 主 張 も 可 能 で あ る 。 ア メ リ カ が 日 本 と 違 い 殺 人 の 手 段 と し て 容 易 に 用 い る こ と が 可 能 な 銃 社 会 で あ る な ど 、 社 会 条 件 に 相 違 点 が あ る と し て も 、 こ の よ う に 統 計 の み で は 死 刑 の 犯 罪 抑 止 効 果 を 見 出 す こ と が で き な い と い え る 。
死 刑 廃 止 国 で は 凶 悪 犯 が 警 察 官 に 射 殺 さ れ る こ と が 多 い と い う 指 摘 が あ る [ 32 ] [ 33 ] 。 元 参 議 院 議 員 の 佐 々 木 知 子 は 死 刑 廃 止 国 で 警 察 官 に よ る 簡 易 死 刑 執 行 ︵ 英 語 版 ︶ が お こ な わ れ て い る と 指 摘 し て い る 。 こ れ は 危 険 な 犯 人 を 射 殺 し て し ま え ば 将 来 の 危 険 性 は 永 久 に 除 去 さ れ 刑 務 所 に 収 容 し て 税 金 で や し な う 必 要 が な い と い う 方 法 論 か ら き て い る [ 34 ] 。
し か し 、 欧 米 で は 銃 規 制 が 日 本 に 比 べ て は る か に 緩 い の で 、 警 察 官 と 銃 を 使 用 し た 犯 人 へ の 争 い の 結 果 と し て 、 警 察 官 の 正 当 防 衛 ・ 業 務 行 為 と し て の 発 砲 が 増 え る の は 必 然 的 で あ り 、 そ れ を ﹁ 簡 易 死 刑 執 行 ﹂ と い う 言 葉 で い い か え る の は 、 ご 都 合 な 詭 弁 と い う 意 見 [ 注 釈 3 ] が あ る 。 ま た 日 本 で も 警 察 官 の 業 務 行 為 と し て の 正 当 性 が 認 め ら れ た 判 例 が ︵ [ 35 ] ︶ 存 在 す る こ と か ら も 、 ﹁ 日 本 で は 、 警 察 官 は 何 も で き ず に 死 刑 を な く し た ら 理 不 尽 だ ﹂ と い う 存 置 論 は 根 拠 を も た な い 。 そ も そ も 、 簡 易 死 刑 執 行 は 、 軍 隊 に お い て つ か わ れ て い た 用 語 に も か か わ ら ず 、 な ぜ 日 本 だ け こ の 言 葉 の 意 味 を 曲 解 し て も ち い る の か が 意 味 不 明 と い う 指 摘 が あ る [ 注 釈 4 ] 。 ま た 、 フ ラ ン ス は 死 刑 廃 止 と 同 時 に 刑 法 を 全 面 改 正 し て 懲 役 を 長 く し た と い う 指 摘 も あ る [ 32 ] 。
﹁ 簡 易 死 刑 執 行 ﹂ は 本 来 は 戦 時 下 に お け る 軍 に よ る 軍 法 上 、 あ る い は 司 法 手 続 に 依 ら な い 超 法 規 的 処 罰 ︵ 英 語 版 ︶ を 指 す も の で あ り 、 司 法 警 察 な ど 一 般 の 法 執 行 機 関 に よ る も の は 超 法 規 的 処 刑 と 呼 ば れ て い る 。 メ キ シ コ 、 ブ ラ ジ ル 、 ロ シ ア な ど 一 部 の 死 刑 廃 止 ・ 凍 結 国 で は 麻 薬 密 売 組 織 や テ ロ 組 織 を 対 象 に 秘 密 警 察 や 死 の 部 隊 に よ る 超 法 規 的 処 刑 が 行 わ れ て い る 例 が あ る が 、 超 法 規 的 処 刑 が 国 際 問 題 に ま で 発 展 し て い る 国 の 多 く は 死 刑 残 置 国 で あ り 、 犯 罪 組 織 の 撲 滅 と い う よ り も 、 国 内 に お け る 反 体 制 派 の 弾 圧 を 目 的 に 超 法 規 的 処 刑 が 正 当 化 さ れ て い る 例 が ほ と ん ど で あ る 。 死 刑 残 置 国 で あ る イ ン ド で は 警 察 官 が 麻 薬 密 売 組 織 な ど の 構 成 員 と 遭 遇 し た 際 に 即 座 に 射 殺 に 及 ん で し ま う 事 態 が 多 数 発 生 し て お り 、 こ れ を 記 述 す る 法 的 用 語 と し て 遭 遇 殺 害 ︵ 英 語 版 ︶ と 呼 ば れ る 概 念 が 存 在 す る が 、 冤 罪 の 可 能 性 も 否 定 で き な い と し て 人 権 団 体 か ら は 批 難 の 対 象 と な っ て い る 。 一 方 で 死 刑 廃 止 国 で あ る フ ィ リ ピ ン で は ロ ド リ ゴ ・ ド ゥ テ ル テ が ダ バ オ 市 長 、 後 に フ ィ リ ピ ン 大 統 領 に 就 任 し て 以 来 、 犯 罪 者 に 対 す る 組 織 的 な 超 法 規 的 処 刑 を 常 態 化 さ せ て お り [ 36 ] [ 37 ] 、 人 権 団 体 は 批 判 し て い る も の の こ れ に よ り ダ バ オ 市 及 び フ ィ リ ピ ン の 治 安 が 顕 著 に 改 善 さ れ た こ と が 確 認 さ れ て い る [ 36 ] [ 38 ] [ 39 ] [ 40 ] 。
な お 、 犯 罪 者 、 法 執 行 機 関 の 双 方 が 銃 器 を 持 ち 、 正 当 防 衛 ・ 業 務 行 為 と し て の 発 砲 が 発 生 し や す い 国 で は 、 自 殺 ( 拡 大 自 殺 ) の 一 手 法 と し て 警 察 官 か ら の 発 砲 を 意 図 的 に 誘 発 さ せ る 間 接 自 殺 ︵ 英 語 版 ︶ と 呼 ば れ る 行 為 が し ば し ば 発 生 す る と い う 負 の 側 面 も 抱 え て い る 。
死 刑 の 存 廃 が 社 会 に 影 響 を も た ら す の か ど う か は 、 法 学 者 の 間 で も 決 着 は つ い て い な い 。
死 刑 制 度 の 存 在 が 、 国 民 の 一 部 の 残 虐 的 性 質 を 有 す る も の に 対 し 、 殺 人 を 鼓 舞 す る 残 忍 化 効 果 を 与 え て い る と の 指 摘 や 、 自 暴 自 棄 に な っ た 者 が 死 刑 制 度 を 悪 用 す る 拡 大 自 殺 ( e x t e n d e d s u i c i d e ) に 走 る と の 指 摘 も あ る 。 こ の よ う な 拡 大 自 殺 に 走 る 者 は 少 な い と い わ れ る が 、 実 例 と し て は 2 0 0 1 年 に 発 生 し た 附 属 池 田 小 事 件 で 死 刑 が 確 定 し た 宅 間 守 ︵ 2 0 0 4 年 に 死 刑 執 行 ︶ の 最 大 の 犯 行 動 機 が 自 殺 願 望 で あ り 、 1 9 7 4 年 に 発 生 し た ピ ア ノ 騒 音 殺 人 事 件 ︵ 近 隣 騒 音 殺 人 事 件 ︶ で は 、 犯 人 が 自 殺 も し く は 処 刑 に よ る 死 を 望 ん だ 事 が あ き ら か に な っ て い る [ 注 釈 5 ] 。 明 治 以 降 の 日 本 の 凶 悪 犯 罪 史 を 見 渡 し て も こ の よ う な 者 は 極 少 数 で あ る が 、 確 実 な 死 刑 を 望 む た め 大 量 殺 人 を 意 図 し た 者 は 存 在 し て い る 。 ま た 前 述 の 2 人 の 死 刑 囚 の よ う に 、 上 級 審 で 争 う 意 思 を 持 た ず 、 弁 護 人 が し た 控 訴 を 自 身 の 意 思 で 取 り 下 げ 、 1 審 の 死 刑 判 決 を 確 定 さ せ た 事 例 も 散 発 的 に 発 生 し て い る 。
た と え 凶 悪 犯 罪 者 と い え ど も 死 刑 を 強 く 求 め る 言 論 が 、 生 命 を 軽 視 す る 風 潮 を 巻 き 起 こ す 事 に な り 、 よ っ て 逆 に 殺 伐 と し た 世 情 を 煽 る 側 面 も あ る の で は な い か と す る 懐 疑 的 な 主 張 が あ る 一 方 、 凶 悪 な 殺 人 行 為 に 対 し て は 司 法 が 厳 格 な 対 処 、 す な わ ち 死 刑 を も っ て 処 断 す る こ と こ そ が 人 命 の 尊 重 に つ な が る と の 主 張 も あ る 。
他 方 で は 、 死 刑 制 度 の 廃 止 が 成 立 し た 場 合 の 懸 念 を 訴 え る 者 も 少 な く な い 。 代 表 的 な と こ ろ と し て は 、 人 を 殺 し て も 死 刑 制 度 が 無 い た め に 死 刑 に な ら な い な ら ば 、 復 讐 の た め に そ の 殺 人 者 を 殺 し て も 同 様 に 死 刑 に は な ら な い と い う 理 論 も 成 り 立 つ た め 、 敵 討 の 風 習 の 復 活 に 繋 が る の で は な い か 、 と い う 問 題 で あ る 。 ち な み に 、 こ の 種 の 懸 念 は 日 本 に お い て は 死 刑 制 度 の 存 廃 論 議 と 平 行 す る 形 で 古 く か ら 存 在 し て い る も の で あ り 、 た と え ば 、 1 9 6 0 年 代 に 星 新 一 は 、 ハ ヤ カ ワ ・ ミ ス テ リ ・ マ ガ ジ ン で 連 載 し て い た エ ッ セ イ ﹃ 進 化 し た 猿 た ち ﹄ の 中 で 、 あ る 高 名 な 司 法 関 係 者 に ﹁ わ が 国 で な ぜ 死 刑 廃 止 が 実 現 し に く い の か ? ﹂ と い う 質 問 を し た と こ ろ 、 理 由 の 1 つ と し て ま ず 敵 討 復 活 の 懸 念 と い う も の を 挙 げ ら れ た と 記 し て い る [ 41 ] 。 な お 、 江 戸 時 代 の 敵 討 ち 、 す な わ ち 仇 討 ち で あ る が 、 認 め ら れ る の は 武 士 階 級 の み で 、 対 象 は 尊 属 を 殺 害 さ れ た も の に 限 定 さ れ 、 子 息 の 殺 害 に 対 し て 適 用 さ れ ず 、 ま た ﹁ 決 闘 ﹂ で あ っ た た め 、 返 り 討 ち さ れ る 危 険 性 も あ っ た 。
2 0 1 5 年 の ア メ リ カ の 銃 乱 射 事 件 の 総 数 は 過 去 最 大 で あ り 、 乱 射 事 件 が 起 き な か っ た の は わ ず か 五 州 [ 42 ] で あ る 。 乱 射 事 件 の 発 生 し た ほ と ん ど の 米 国 州 は 死 刑 が 廃 止 さ れ て い る 。 ﹁ 銃 乱 射 す る 人 物 の 性 格 に 問 題 [ 注 釈 6 ] が あ る ﹂ と さ れ て い た 従 来 の 理 論 で は 、 説 明 不 可 能 な 事 件 が 増 加 し て い る 。
死 刑 制 度 を 維 持 し て い る 国 で は 長 年 に 渡 っ て 刑 罰 の 一 つ と し て 死 刑 を 存 続 さ せ る 死 刑 存 置 論 と 死 刑 制 度 を 廃 止 さ せ る ほ う が 適 切 で あ る と す る 死 刑 廃 止 論 と の 議 論 が 繰 り 返 さ れ て き た 。 死 刑 の 適 用 範 囲 は 厳 罰 化 で 拡 張 さ れ る 場 合 も 、 寛 容 化 で 縮 小 さ れ る 場 合 も あ り え る た め 、 必 ず し も 存 続 派 が 現 状 維 持 派 と は 言 い 切 れ な い 。 な お 死 刑 制 度 が 廃 止 さ れ て い る 国 の 場 合 に は 死 刑 復 活 問 題 と な る 。 実 際 に ア メ リ カ 合 衆 国 の い く つ か の 州 で は 死 刑 を 廃 止 ま た は 執 行 の 停 止 を し た 後 に 復 活 し て い る し 、 イ ギ リ ス や フ ラ ン ス で は 否 決 さ れ た も の の 議 会 で 検 討 さ れ た 事 も あ る 。 20 世 紀 後 半 以 降 一 度 死 刑 が 廃 止 さ れ た 後 に 復 活 し た 国 は 少 な く 、 ま た 復 活 さ せ た 場 合 で も 国 際 世 論 の 動 向 を 警 戒 し 実 際 に 執 行 さ れ た 国 は さ ら に 少 な い 。
論 点 と し て は 凶 悪 犯 罪 に 対 す る 抑 止 力 、 冤 罪 の 可 能 性 、 殺 人 に 対 す る 応 報 が 議 論 さ れ て い る 。 近 代 社 会 に お い て 、 死 刑 の 適 用 が 除 外 さ れ た も の に 政 治 犯 に 対 す る 刑 罰 が あ る 。 古 代 よ り 政 権 を 握 っ た も の が 反 対 者 を 反 乱 者 と し て 処 刑 す る 事 は 珍 し く な か っ た 。 革 命 や ク ー デ タ ー と い っ た 政 変 に よ る 、 例 え ば 外 国 の 軍 隊 を 日 本 に 侵 攻 さ せ る 外 患 誘 致 罪 は 死 刑 し か 規 定 さ れ て い な い 。 ま た 、 現 在 で も イ ス ラ エ ル に よ る パ レ ス チ ナ 人 な ど へ の 暗 殺 の よ う に 、 名 目 上 死 刑 廃 止 国 で あ っ て も 、 裁 判 と い う 形 を 取 ら ず に 人 を 殺 す 国 家 も あ る 。 ま た ミ ャ ン マ ー の よ う に 死 刑 が 停 止 さ れ て い て も 人 権 侵 害 に よ る 犠 牲 者 を 出 し て い る 国 も あ る 。
1 9 8 9 年 12 月 、 国 連 総 会 で 採 択 さ れ た 市 民 的 及 び 政 治 的 権 利 に 関 す る 国 際 規 約 の 第 2 選 択 議 定 書 ︵ 死 刑 廃 止 条 約 ︶ に は 、 随 意 項 目 と し て 死 刑 廃 止 が 存 在 す る 。 こ れ を 加 え て 廃 止 を 選 択 す る 国 は 、 国 際 条 約 に 基 づ き ﹁ 戦 時 中 に 犯 さ れ た 軍 事 的 性 格 を 有 す る 極 め て 重 大 な 犯 罪 に 対 す る 有 罪 判 決 に よ っ て 、 戦 時 に 適 用 す る こ と を 規 定 ﹂ ︵ 第 2 条 1 項 ︶ さ れ て い る 戦 時 犯 罪 を 除 き 平 時 全 て の 死 刑 を 廃 止 す る こ と に な る 。 な お 、 戦 争 犯 罪 も 裁 く こ と が あ る 国 際 刑 事 裁 判 所 は 、 大 虐 殺 を 指 導 し た 国 家 元 首 で あ っ て も 死 刑 は 適 用 さ れ ず 、 言 い 渡 せ る 刑 は 終 身 刑 ︵ 服 役 し て 25 年 以 上 経 過 後 に 仮 釈 放 の 可 能 性 が あ る ︶ と 有 期 30 年 以 下 ︵ 刑 期 の 3 分 の 2 以 上 経 過 後 に 仮 釈 放 の 可 能 性 が あ る ︶ の 禁 固 刑 で あ る 。
1 9 9 0 年 ご ろ ま で は 、 死 刑 維 持 国 が 大 多 数 を 占 め た が 、 一 党 独 裁 な い し 軍 事 独 裁 政 権 で あ っ た 国 家 が 民 主 化 し た 直 後 に 東 欧 や 南 米 の 諸 国 が 死 刑 を 廃 止 し 、 死 刑 廃 止 国 の 数 が 増 加 し た 。 一 方 で 、 ア ジ ア ・ ア フ リ カ ・ 中 東 に お い て は 、 民 主 化 の 後 も 死 刑 を 維 持 す る 国 が 多 い 。 1 9 9 0 年 代 以 降 、 国 際 社 会 で は 死 刑 制 度 の 廃 止 に 踏 み 切 る 国 家 が 増 加 し て い る 。 特 に 死 刑 の 廃 止 を 主 張 す る 欧 州 連 合 加 盟 国 の 強 い ヨ ー ロ ッ パ で は 、 死 刑 存 置 国 も 死 刑 の 執 行 停 止 を せ ざ る を 得 な く な っ て お り 、 唯 一 死 刑 の 執 行 を 続 け て い た ベ ラ ル ー シ が ﹁ 人 権 抑 圧 国 ﹂ と し て 糾 弾 さ れ て い る [ 注 釈 7 ] 。 ま た 国 際 連 合 も 死 刑 廃 止 条 約 を 推 進 す る こ と な ど か ら 、 外 交 の 一 環 と し て 死 刑 制 度 に 対 す る 国 際 的 圧 力 は 増 大 し て い る と い う 考 え 方 も あ る 。 な お 一 部 の 死 刑 存 置 派 [ 誰 ? ] は 一 連 の 動 き に 対 し 、 国 内 状 況 が 死 刑 制 度 の 廃 止 が で き な い 状 態 で あ れ ば 死 刑 は 維 持 す べ き で あ る と し て い る 。
2 0 0 7 年 12 月 18 日 、 欧 州 連 合 な ど の 提 案 で 、 国 連 総 会 で 初 め て 死 刑 モ ラ ト リ ア ム 決 議 が 可 決 し た が 、 こ れ に 対 し 日 本 の 神 余 隆 博 大 使 は ﹁ 国 民 の 大 半 が 死 刑 を 支 持 し て お り 制 度 廃 止 に 踏 み 出 す こ と は 困 難 [ 43 ] ﹂ と 述 べ 、 ま た ﹁ 決 議 に 賛 成 す る と 憲 法 違 反 に な る ﹂ と 表 明 [ 44 ] し て お り 、 ﹁ 日 本 の 内 政 問 題 で あ る か ら 世 界 の 大 勢 に 従 う べ き で な い ﹂ と し て い る 。 こ れ に 対 し 欧 州 連 合 は 国 際 連 合 の 人 権 委 員 会 で ﹁ 日 本 の 人 権 問 題 ﹂ と し て ﹁ 死 刑 制 度 の 廃 止 も し く は 停 止 ﹂ を 求 め る 勧 告 を 出 さ せ て い る 。 2 0 0 8 年 も 欧 州 連 合 は 同 様 の 決 議 を 提 出 す る 予 定 で 、 10 月 28 日 、 日 本 で 同 日 行 わ れ た 2 名 の 死 刑 執 行 に 議 長 国 フ ラ ン ス は ﹁ 深 く 憂 慮 し て い る ﹂ と 表 明 し た 。
国 連 の 死 刑 廃 止 条 約 や 、 EU の 死 刑 廃 止 ガ イ ド ラ イ ン は 、 通 常 犯 罪 に 対 し て は 死 刑 を 禁 止 し て い る が 、 戦 時 の 死 刑 に つ い て は 国 家 の 権 利 と し て 認 め て い る 。 死 刑 廃 止 論 の 祖 で あ る チ ェ ー ザ レ ・ ベ ッ カ リ ー ア を 始 め 、 過 去 の 死 刑 廃 止 論 者 ・ 団 体 は 、 平 時 の 通 常 犯 罪 に 限 定 し て 死 刑 廃 止 を 主 張 し て お り 、 戦 時 下 な ど 国 家 の 危 機 に お け る 死 刑 に つ い て は 対 象 と し な い こ と が 多 か っ た が 、 近 年 で は 戦 時 も 含 め て あ ら ゆ る 死 刑 に 反 対 す る 考 え 方 が 広 ま っ て い る 。
死刑制度の世界地図
世 界 1 9 5 ヶ 国 の 色 分 け は 次 の 通 り 。 ︵ 2 0 2 4 年 現 在 ︶
● 青 ‥ あ ら ゆ る 犯 罪 に 対 す る 死 刑 を 廃 止 ︵ 1 0 9 ヶ 国 ︶
● 緑 ‥ 戦 時 の 逃 走 、 反 逆 罪 な ど の 犯 罪 は 死 刑 あ り 。 そ れ 以 外 は 死 刑 を 廃 止 ︵ 10 ヶ 国 ︶
● 橙 ‥ 法 律 上 は 死 刑 制 度 を 維 持 。 た だ し 、 死 刑 を 過 去 10 年 以 上 実 施 し て い な い 死 刑 執 行 モ ラ ト リ ア ム 国 。 も し く は 、 死 刑 を 執 行 し な い と い う 公 約 を し て い る 国 。 ︵ 23 ヶ 国 ︶
● 赤 ‥ 過 去 10 年 の 間 に 死 刑 の 執 行 を 行 っ た こ と の あ る 国 ︵ 53 ヶ 国 ︶
と な っ て い る 。
死 刑 廃 止 は 世 界 の 趨 勢 ︵ す う せ い ︶ で あ る と 主 張 す る 、 死 刑 廃 止 派 で あ る ア ム ネ ス テ ィ ・ イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル の 調 べ に よ る と 、 2 0 2 2 年 現 在 、 1 0 9 ヵ 国 が 死 刑 を 全 面 的 に 廃 止 し 、 7 ヵ 国 が 通 常 犯 罪 に の み 死 刑 を 廃 止 し て い る 。 た だ し 、 人 口 の 多 い 中 国 、 イ ン ド 、 ア メ リ カ 、 イ ン ド ネ シ ア 、 日 本 と い っ た 国 で は 依 然 と し て 死 刑 が 存 続 し て い る の で 、 人 口 比 で は ﹁ 世 界 の 趨 勢 ﹂ と は な っ て い な い 。 他 に 、 通 常 犯 罪 に 対 す る 死 刑 制 度 は 存 置 し て い る が 10 年 以 上 死 刑 を 執 行 し て い な い 国 が 25 ヵ 国 あ り 、 こ れ ら の 国 に は 死 刑 を 行 わ な い 政 策 な い し 確 立 さ れ た 慣 例 が あ る と 認 め ら れ る 。 2 0 1 0 年 に 新 た に 死 刑 を 全 面 的 に 廃 止 し た 国 と し て ガ ボ ン 共 和 国 が あ げ ら れ る [ 45 ] 。
2 0 2 2 年 現 在 、 54 ヵ 国 が 死 刑 制 度 を 存 置 し て い る 。 こ れ ら の う ち 日 本 を 含 む 23 ヵ 国 が 2 0 1 0 年 に 死 刑 を 執 行 し 、 少 な く と も 5 2 7 名 に 対 す る 執 行 が 確 認 さ れ て い る 。 こ こ に は 、 中 国 で 行 わ れ た と み ら れ る 数 千 件 の 執 行 は 含 ま れ て い な い 。 中 国 で は 死 刑 執 行 に 関 す る 統 計 は 国 家 機 密 に な っ て い る と 考 え ら れ 、 ア ム ネ ス テ ィ ・ イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル は 中 国 に つ い て は 2 0 0 9 年 よ り 、 死 刑 執 行 ︵ 最 低 ︶ 件 数 の 報 告 を 止 め て い る 。 他 に ベ ラ ル ー シ 、 モ ン ゴ ル で も 死 刑 執 行 は 国 家 機 密 と し て 扱 わ れ 、 マ レ ー シ ア 、 北 朝 鮮 、 シ ン ガ ポ ー ル に つ い て は 情 報 が 入 手 困 難 で あ る 。 ベ ト ナ ム で は 死 刑 執 行 件 数 の 公 表 は 法 律 で 禁 止 さ れ て い る 。
2 0 1 0 年 の 死 刑 宣 告 は 、 67 ヵ 国 で 少 な く と も 2 , 0 2 4 人 に 対 し て 行 わ れ て い る 。 現 在 、 少 な く と も 1 7 , 8 3 3 人 が 死 刑 宣 告 下 に あ る [ 5 ] 。
死 刑 は 、 受 刑 者 の 生 命 を 何 ら か の 方 法 に よ っ て 奪 う 刑 罰 で 、 そ の 受 刑 者 の 社 会 的 存 在 を 抹 殺 す る 刑 罰 で あ り 、 人 類 の 刑 罰 史 上 最 も 古 く か ら あ る 刑 罰 で あ る と い わ れ 、 有 史 以 前 に 人 類 社 会 が 形 成 さ れ た 頃 か ら あ っ た と さ れ る [ 46 ] 。 し か し 、 原 始 社 会 で は 殺 人 は ほ と ん ど の 場 合 は 同 族 内 で の い ざ こ ざ で お こ る 衝 動 犯 罪 で あ り 、 加 害 者 も 被 害 者 も 親 戚 関 係 で あ る こ と が 多 か っ た た め 、 死 刑 は は ば か ら れ 、 代 わ り に 村 八 分 や 部 族 か ら の 追 放 な ど の 措 置 が と ら れ る こ と が 多 か っ た 。 実 際 に 死 刑 と な る の は 、 こ れ ら の 部 族 社 会 に お け る 別 の 部 族 と の 争 い に お け る 復 讐 で あ る 。 他 部 族 の 者 が 自 分 の 部 族 の 一 員 を 殺 し た 場 合 は 、 賠 償 が 行 わ れ る 場 合 も あ れ ば 、 報 復 措 置 と し て 殺 し 合 い が 行 わ れ る こ と も あ っ た 。 さ ら に 人 類 に 都 市 文 明 が 生 ま れ る と 、 み せ し め の 手 段 と し て 死 刑 を 残 酷 に 演 出 す る た め に 、 車 裂 き 、 鋸 挽 き 、 釜 茹 、 火 刑 、 溺 死 刑 、 石 打 ち な ど 、 そ の 執 行 方 法 は 多 種 に 及 ん だ 。 ま た 、 犯 罪 行 為 に 対 す る も の に 限 ら ず 社 会 規 範 を 破 っ た こ と に 対 す る 制 裁 [ 注 釈 8 ] と し て 死 刑 が 行 わ れ て い た 時 代 も あ っ た [ 注 釈 9 ] 。
上 記 の よ う な 執 行 方 法 は あ ま り に も 残 虐 に 過 ぎ 、 近 代 以 降 あ ま り 受 け 入 れ ら れ な く な り つ つ あ る 。 時 代 が 進 む に つ れ 、 残 虐 性 の あ る 執 行 方 法 を 用 い る 国 は 減 少 し て い く が 、 こ れ は 人 道 上 許 容 で き な い と い う 理 由 に よ る も の が 多 い と 思 わ れ る [ 注 釈 10 ] 。
完 全 な 形 で 残 っ て い る 、 世 界 で 2 番 目 に 古 い 法 典 で あ る ハ ン ム ラ ビ 法 典 は ﹁ 目 に は 目 を 、 歯 に は 歯 を ︵ タ リ オ の 法 ︶ ﹂ が あ る た め 、 応 報 刑 が 採 用 さ れ て い た よ う で あ る 。 た だ し 加 害 者 の 身 分 が 被 害 者 よ り 下 で あ れ ば 厳 罰 に 処 せ ら れ て お り 、 応 報 刑 が 成 立 す る の は あ く ま で 対 等 な 身 分 同 士 の 者 だ け で あ っ た 。 ま た 場 合 に よ っ て は 罰 金 の 納 付 も 認 め ら れ て い た 。 そ の た め 、 基 本 的 に ﹁ 何 が 犯 罪 行 為 で あ る か を 明 ら か に し て 、 そ の 行 為 に 対 し て 刑 罰 を 加 え る ﹂ と い っ た 現 代 の 罪 刑 法 定 主 義 が 採 用 さ れ て い た も の で あ り 、 復 讐 を 認 め る 野 蛮 な 規 定 の 典 型 で は な く ﹁ 倍 返 し の よ う な 過 剰 な 報 復 を 禁 じ 、 同 等 の 懲 罰 に と ど め て 報 復 合 戦 の 拡 大 を 防 ぐ ﹂ も の で あ っ た 。
し か し 、 ユ ダ ヤ 人 と キ リ ス ト 教 徒 は こ れ ら を 宗 教 的 教 義 に 反 す る 政 治 思 想 ・ 司 法 制 度 と し て 批 判 し 続 け た た め 、 近 代 に 至 る ま で 罪 刑 法 定 主 義 的 な 処 罰 が 行 わ れ る こ と は な か っ た 。 そ の た め 、 近 世 に な る ま で 現 在 か ら 見 る と 釣 り 合 い が 取 れ な い ほ ど 軽 い 罪 や 反 道 徳 的 な 行 為 が 、 死 刑 に な る 犯 罪 行 為 と さ れ て い た 。 こ の よ う な 不 文 律 に よ る 処 罰 を 罪 刑 擅 断 ( 専 断 ) 主 義 と い う 。
ユ ダ ヤ 教 と キ リ ス ト 教 の 聖 典 で あ る モ ー ゼ の 十 戒 の 日 本 語 訳 は 古 い 訳 で は ﹁ 汝 殺 す な か れ ﹂ と な っ て お り 、 仏 教 と 同 じ よ う に 不 殺 の 戒 が 定 め ら れ て い る と 誤 解 さ れ る が 、 実 際 に は ﹁ 殺 人 を 犯 す な か れ ﹂ と い う 意 味 あ い で あ り 、 死 刑 の 執 行 に 関 す る 記 述 や 、 神 の 民 で あ る ユ ダ ヤ 人 の 起 こ す 戦 争 を 肯 定 す る 記 述 ︵ ダ ビ デ に よ る ゴ リ ア テ の 殺 害 な ど ︶ が あ る な ど 、 あ く ま で も 犯 罪 と し て の 殺 人 を 禁 じ る も の で あ り 、 死 刑 そ の も の を 否 定 す る も の で は な い 。 し か し 、 キ リ ス ト 教 は 罪 に 対 す る 許 し と 贖 罪 を 強 調 し た た め 、 教 義 に お い て 応 報 を 理 由 に 死 刑 を 正 当 化 す る こ と が で き な か っ た 。 ロ ー マ 帝 国 の 国 教 に な る 以 前 に も そ の 正 当 性 は 議 論 さ れ て い た 。 中 世 ヨ ー ロ ッ パ 社 会 で 死 刑 制 度 を 肯 定 す る 思 想 と し て 、 ス コ ラ 哲 学 者 で も あ っ た 神 学 者 の ト マ ス ・ ア ク ィ ナ ス は 、 刑 罰 に 応 報 的 な 性 格 が あ る こ と を 認 め た が 、 そ の 正 当 性 を 否 定 す る 一 方 で ﹁ わ ず か の 酸 は 麹 の 全 体 を 膨 ら ま す ﹂ ︵ コ リ ン ト 前 書 5 章 16 節 ︶ の 文 言 を 根 拠 に 、 あ る 人 が 犯 罪 に よ っ て 社 会 全 体 に 危 険 を 撒 き 散 ら し 、 し か も 伝 染 的 な も の で あ る な ら 、 公 共 の 福 祉 を 守 る た め に こ れ を 殺 す こ と は 有 益 で 賞 賛 に 値 す る と し 、 死 刑 が さ ら な る 殺 人 に 対 す る 予 防 論 と し て 肯 定 し た 。 ま た 、 宗 教 改 革 の 指 導 者 で あ る マ ル テ ィ ン ・ ル タ ー は 、 死 刑 を 執 行 す る 剣 は 神 に 対 す る 奉 仕 を 意 味 し 、 人 間 の 手 で な く 神 の 手 が 殺 戮 す る の だ 、 と し て 肯 定 す る と 共 に 、 国 家 の 為 政 者 が 凶 悪 な 人 間 を 死 刑 に す る の は 正 当 な 行 為 で あ り 罪 で な い 、 と 主 張 し て い た 。
さ ら に 、 近 世 に お い て 啓 蒙 主 義 が お こ り 、 ジ ョ ン ・ ロ ッ ク や イ マ ヌ エ ル ・ カ ン ト な ど が 社 会 契 約 説 な ど に よ っ て 法 の 根 拠 を 再 定 義 し た と き 、 応 報 論 を 死 刑 の 正 当 理 由 と し て 復 活 さ せ た が 、 彼 ら の 提 示 す る 応 報 論 は あ く ま で も 社 会 全 体 あ る い は 自 然 法 に 対 す る 侵 害 に 対 す る 応 報 で あ り 、 被 害 者 個 人 に た い す る 対 価 と し て の 応 報 で な い 。 現 代 に お い て 、 世 俗 主 義 に 基 づ く 欧 米 各 国 の 裁 判 所 が 実 際 の 刑 の 正 当 性 を 論 ず る 判 例 に お い て 、 被 害 者 の 立 場 を 回 復 す る と い う 意 味 で の 応 報 論 を ほ と ん ど 認 め な い の は 、 応 報 = 復 讐 = 悪 と み な す 宗 教 的 、 さ ら に 歴 史 的 背 景 が 存 在 す る と 指 摘 さ れ て い る 。 応 報 論 を 刑 罰 の 根 拠 と し て 認 め ら れ な い 結 果 と し て 、 死 刑 は そ の 正 当 性 を 予 防 論 お よ び 効 用 論 に 頼 る ざ る を 得 な い 状 況 に あ る が 、 予 防 論 は 近 代 に お い て は 刑 務 所 の 出 現 に よ っ て 完 全 に そ の 有 効 性 を 失 っ て お り 、 こ れ に よ り カ ト リ ッ ク 教 会 は そ れ ま で の 立 場 を 改 め 、 死 刑 反 対 の 立 場 を 宣 言 し て い る 。 ま た 、 死 刑 が 殺 人 の 発 生 を 未 然 に 防 ぐ と の 効 用 論 も 社 会 統 計 上 そ の 根 拠 が ほ と ん ど な く 、 欧 米 社 会 に お い て は 死 刑 賛 成 派 は 非 常 に 弱 い 立 場 に あ る 。 死 刑 を 実 際 に 執 行 し て い る ア メ リ カ に お い て も 、 最 高 裁 判 所 の 判 例 で 応 報 論 を 根 拠 と す る 死 刑 の 正 当 性 は 明 確 に 否 定 さ れ て い る 。 ま た 、 ア メ リ カ で の 死 刑 肯 定 派 を 担 う 保 守 あ る い は 右 派 が 応 報 論 を 展 開 し な い の は 、 彼 ら が 同 時 に 保 守 的 キ リ ス ト 教 徒 で あ り 、 応 報 論 は キ リ ス ト 教 の 教 義 と あ ま り に も 明 確 に 矛 盾 す る こ と が 挙 げ ら れ る 。 こ れ は 、 死 刑 の 根 本 的 根 拠 を 応 報 論 に 置 く 日 本 な ど の 東 洋 社 会 や 、 殺 人 に お け る 裁 判 の 役 割 を あ く ま で も 加 害 者 と 被 害 者 ︵ 遺 族 ︶ 間 の 調 停 と 見 な し 、 加 害 者 が 被 害 者 遺 族 を 補 償 金 な ど で 納 得 さ せ た 場 合 は 裁 判 官 が 死 刑 が 減 刑 す る こ と が 許 さ れ て い る イ ス ラ ム 社 会 と は 対 照 的 で あ る 。
キ リ ス ト 教 国 は 報 復 論 を 否 定 す る 一 方 、 予 防 論 に よ っ て 死 刑 の 正 当 性 を 位 置 づ け た こ と で 教 義 上 の 結 論 を 見 た が 、 見 せ し め の た め に 前 述 の よ う な 残 虐 な 処 刑 方 法 が 行 わ れ 、 教 会 自 体 、 宗 教 裁 判 な ど に よ っ て 異 端 者 ・ 魔 女 で あ る と し た 者 を 大 量 に 処 刑 し た [ 注 釈 11 ] そ の 根 拠 と さ れ た の は 、 旧 約 聖 書 の ﹃ 出 エ ジ プ ト 記 ﹄ 22 章 18 節 律 法 ﹁ 呪 術 を 使 う 女 ︵ ヘ ブ ラ イ 語 で メ ハ シ ェ フ ァ ︶ は 生 か し て お い て は な ら な い ﹂ と い う 記 述 で あ る が 、 本 来 は 意 味 不 明 で あ っ た も の が 、 中 世 欧 州 社 会 で は ﹁ 魔 術 を 行 う も の ﹂ 次 に ﹁ キ リ ス ト 教 的 教 養 の 持 た な い 者 ﹂ を 社 会 秩 序 維 持 の た め に 排 除 す べ き と な り 、 集 団 ヒ ス テ リ ー の 産 物 と し て の 魔 女 の 極 刑 が 横 行 し た 、 と 言 わ れ て い る 。
政 治 的 権 力 者 な い し 宗 教 指 導 者 へ の 反 逆 は 悲 惨 な 死 に 至 る 、 と い う よ う な ﹁ 威 嚇 ﹂ を 狙 っ た 目 的 も あ り 、 歴 史 的 に は ︵ 異 論 も あ る が ︶ ロ ー マ 帝 国 お よ び ユ ダ ヤ 教 に 対 す る 反 逆 者 と さ れ 死 刑 が 執 行 さ れ た イ エ ス ・ キ リ ス ト の 磔 刑 、 魔 女 狩 り な ど 宗 教 異 端 者 に 対 す る 過 酷 な 処 刑 、 イ ン グ ラ ン ド の ウ ィ リ ア ム ・ ウ ォ レ ス に 対 す る 四 つ 裂 き の 刑 な ど が 有 名 で あ る 。 こ れ ら の 処 刑 は い ず れ も 公 開 で 行 わ れ て お り 、 死 刑 執 行 を 公 開 す る こ と で 犯 罪 を 予 防 し よ う と す る 目 的 [ 47 ] か ら 、 生 き な が ら 焼 き 殺 す 、 蒸 し 殺 す 、 受 刑 者 の 身 体 を 公 共 の 場 で 切 り 刻 ん だ り 引 き ち ぎ っ た り す る 、 な ど と い っ た 極 め て 凄 惨 な 公 開 処 刑 が 行 わ れ た 。 し か し 中 世 フ ラ ン ス な ど に お け る 公 開 処 刑 の 実 情 を 見 て も 、 そ れ が 必 ず し も 威 嚇 と な っ て い た の か は 疑 問 の 残 る と こ ろ で あ る [ 注 釈 12 ] 。 な お 、 公 開 処 刑 は 現 在 も 一 部 の 国 で は 行 わ れ て い る 。
フランス・恐怖政治 の指導者マクシミリアン・ロベスピエール の公開処刑を描いた絵画(1794年 )
人 類 社 会 で 古 く か ら 脈 々 と 続 け ら れ て き た 死 刑 制 度 で あ る が 、 日 本 で は 死 刑 が 事 実 上 廃 止 さ れ て い た 時 代 が あ り [ 注 釈 13 ] 、 前 近 代 社 会 で は 極 め て ま れ な 事 例 で あ る [ 注 釈 14 ] 。
近 代 に な り 、 人 権 の 保 障 と し て ﹁ 法 無 く ば 罪 無 く 、 法 無 く ば 罰 無 し ﹂ と い う 罪 刑 法 定 主 義 の 原 則 が 取 り 入 れ ら れ る よ う に な っ た が 、 犯 罪 者 に 対 し 国 家 が 科 す べ き 刑 罰 に 関 し て 、 旧 派 刑 法 学 ︵ 客 観 主 義 刑 法 理 論 ︶ と 新 派 刑 法 主 義 ︵ 主 観 主 義 刑 法 理 論 ︶ の 新 旧 刑 法 学 派 の 対 立 が 生 じ た 。 こ の よ う な 、 刑 罰 の 本 質 に 対 す る 論 争 の ひ と つ と し て 、 死 刑 制 度 の 位 置 づ け に よ っ て 制 度 の 存 否 を め ぐ る 議 論 が 生 ま れ た 。 こ れ に お い て 、 死 刑 が 適 用 さ れ る 犯 罪 を 戦 争 犯 罪 の み に 限 定 も し く は 完 全 に 撤 廃 し よ う と す る 主 張 が 死 刑 廃 止 論 で あ り 、 そ れ に 対 し て 死 刑 制 度 を 存 続 す べ き と い う 主 張 が 死 刑 存 置 論 で あ る 。
欧州連合基本権憲章 のうち、死刑の禁止を明記した箇所
フ ラ ン ス で 1 7 8 9 年 に 勃 発 し た フ ラ ン ス 革 命 を 契 機 と し て 、 死 刑 執 行 方 法 は ギ ロ チ ン に よ る 斬 首 刑 に 単 一 化 さ れ る よ う に な り [ 47 ] 、 文 化 の 変 化 に 伴 っ て 死 刑 の 意 義 が な く な っ て い っ た た め 、 適 用 範 囲 が 次 第 に 制 限 さ れ る よ う に な っ た 。 フ ラ ン ス 革 命 で は マ ク シ ミ リ ア ン ・ ロ ベ ス ピ エ ー ル の 恐 怖 政 治 に よ っ て 大 量 の 政 治 犯 が 処 刑 さ れ た こ と か ら 、 死 刑 制 度 が 廃 止 す る か に 思 わ れ た が 、 最 終 的 に ナ ポ レ オ ン ・ ボ ナ パ ル ト に よ っ て 退 け ら れ た 。
欧 米 の 政 治 革 命 の 結 果 と し て 、 死 刑 が 適 用 さ れ る 範 囲 は 次 第 に 制 限 さ れ る よ う に な っ た 。 た と え ば 建 国 間 も な い ア メ リ カ 合 衆 国 で は 、 ト マ ス ・ ジ ェ フ ァ ー ソ ン が 死 刑 執 行 の 範 囲 を 制 限 す べ き と 主 張 し て い た 。 州 レ ベ ル で は ペ ン シ ル ベ ニ ア 州 が 1 7 9 4 年 に 、 死 刑 を 適 用 で き る の は 第 一 級 殺 人 罪 の み と 限 定 し た 。 ま た 1 8 4 7 年 に ミ シ ガ ン 州 が 殺 人 犯 に 対 す る 死 刑 を 禁 止 し 、 事 実 上 死 刑 制 度 を 廃 止 し た 。 こ れ は 国 家 が 国 民 の 生 命 与 奪 権 ま で 与 え る こ と に 疑 問 が 提 示 さ れ た 結 果 と も い え る 。 特 に 権 力 者 に 対 す る 政 治 的 反 逆 を 行 っ た 政 治 犯 に 対 す る 死 刑 は 、 一 部 の 国 を 除 き 忌 避 さ れ る よ う に な っ た 。
20 世 紀 末 か ら 欧 州 諸 国 が 死 刑 制 度 を 廃 止 し 、 国 際 連 合 も 死 刑 廃 止 条 約 を 打 ち 出 し た た め 、 21 世 紀 初 頭 の 国 際 社 会 は 死 刑 制 度 が 廃 止 さ れ た 国 が 半 数 と な っ て い る 。 一 方 で 死 刑 制 度 を 護 持 す る 国 も 依 然 と し て 残 っ て い る が 、 死 刑 制 度 を 存 置 す る 国 に お い て も 、 死 刑 が 適 用 さ れ る 犯 罪 は お お む ね ﹁ 他 人 の 生 命 を 奪 っ た 犯 罪 ﹂ に 制 限 さ れ る よ う に な っ て い っ た 。 た だ し 、 前 述 の よ う に 厳 罰 主 義 な い し 宗 教 観 に よ る 差 異 の た め に 、 ﹁ 人 の 生 命 が 奪 わ れ て い な い 犯 罪 ﹂ [ 注 釈 15 ] で も 死 刑 が 適 用 さ れ て い る 国 家 が あ る 。
日 本 で 死 刑 が 適 用 さ れ る 犯 罪 は 法 律 上 17 種 類 あ る が 、 起 訴 さ れ た 事 例 が な い 罪 種 が 大 部 分 で あ り 、 実 際 に は 殺 人 ま た は 強 盗 殺 人 な ど ﹁ 人 を 殺 害 し た 犯 罪 ﹂ で あ る [ 注 釈 16 ] 。 そ の た め 、 人 を 殺 害 し た 犯 罪 者 の う ち 、 特 に 悪 質 な 場 合 に お い て 、 犯 罪 者 の 生 命 を も っ て 償 わ せ る べ き と 裁 判 官 に 判 断 さ れ た 者 に 死 刑 が 適 用 さ れ て い る 。
先 進 国 の 多 く が 死 刑 制 度 を 廃 止 し て い る が 、 ア メ リ カ 、 日 本 、 シ ン ガ ポ ー ル 、 台 湾 な ど の 幾 つ か の 国 で は 現 在 で も 死 刑 制 度 を 維 持 し て い る 。 凶 悪 犯 罪 者 に 対 す る 社 会 的 制 裁 や 犯 罪 抑 止 、 犯 罪 被 害 者 遺 族 の 応 報 感 情 な ど を 理 由 に 死 刑 を 維 持 す べ き と い う 国 内 世 論 も 根 強 い 。 例 え ば 、 死 刑 存 置 論 者 で あ る 刑 法 学 者 が 死 刑 廃 止 運 動 に 対 す る 批 判 ( 中 嶋 2 0 0 4 , p . 1 8 9 ) と し て ﹁ 死 刑 制 度 に は ﹃ 私 は あ な た を 殺 さ な い と 約 束 す る 。 も し 、 こ の 約 束 に 違 反 し て あ な た を 殺 す こ と が あ れ ば 、 私 自 身 の 命 を 差 し 出 す ﹄ と い う 正 義 に か な っ た 約 束 事 が あ る 。 と こ ろ が 、 死 刑 を 廃 止 し よ う と す る 人 々 は ﹃ 私 は あ な た を 殺 さ な い と 一 応 約 束 す る 。 し か し 、 こ の 約 束 に 違 反 し て あ な た を 殺 す こ と が あ っ て も 、 あ な た た ち は 私 を 殺 さ な い と 約 束 せ よ ﹄ と 要 求 し て い る に 等 し い 。 こ れ は 実 に 理 不 尽 で あ る ﹂ と 発 言 し て い る 。
現 在 先 進 国 の う ち 、 実 質 的 な 死 刑 存 置 国 は ア メ リ カ 合 衆 国 ・ 日 本 ・ シ ン ガ ポ ー ル と 台 湾 の 4 か 国 で あ る 。 以 前 は 非 先 進 国 の ほ と ん ど が 非 民 主 国 家 で あ っ た た め 、 経 済 的 な 区 分 で 死 刑 の 維 持 派 と 廃 止 派 を 分 け る こ と が 多 か っ た が 、 近 年 で は 途 上 国 で も 民 主 国 家 の 数 が 急 増 し 、 人 権 問 題 と し て は 民 主 主 義 と 非 民 主 主 義 の 国 家 で の 区 分 が 有 意 義 な も の と な っ て い る 。 こ の 場 合 、 民 主 主 義 の 国 で は 欧 米 文 化 の 系 列 で あ る ヨ ー ロ ッ パ と 南 米 な ど の 国 の ほ と ん ど で 死 刑 が 廃 止 、 ア ジ ア 、 中 東 、 ア フ リ カ の 民 主 主 義 の 国 で は ほ と ん ど が は 死 刑 を 維 持 す る と い う 文 化 的 な 対 立 が 鮮 明 と な っ て い る 。 ま た ア メ リ カ 合 衆 国 で は 2 0 1 3 年 10 月 時 点 で 、 18 州 が 死 刑 を 廃 止 ・ 2 州 と 軍 は 執 行 を 停 止 と い う 状 況 で 、 死 刑 制 度 が あ る 32 州 と 連 邦 も 毎 年 執 行 し て い る 地 域 は テ キ サ ス 州 の み で あ る 。 欧 州 議 会 の 欧 州 審 議 会 議 員 会 議 は 2 0 0 1 年 6 月 25 日 に 、 死 刑 執 行 を 継 続 し て い る 日 本 と ア メ リ カ 合 衆 国 に 対 し て 死 刑 囚 の 待 遇 改 善 お よ び 適 用 改 善 を 要 求 す る 1 2 5 3 決 議 [ 注 釈 17 ] を 可 決 し て い る 。 ま た 、 国 連 総 会 も 死 刑 執 行 の モ ラ ト リ ア ム 決 議 ︵ 2 0 0 7 年 12 月 18 日 ︶ を 可 決 し て い る 。 さ ら に 、 国 連 の B 規 約 人 権 委 員 会 は 日 本 を 名 指 し し て 死 刑 制 度 廃 止 を 勧 告 し て い る [ 48 ] 。 2 0 0 8 年 10 月 30 日 [ 49 ] に は 、 日 本 の 捜 査 機 関 の 手 続 き の 改 善 [ 注 釈 18 ] や 、 死 刑 制 度 に つ い て も ﹁ 死 刑 執 行 数 が 増 加 し て お り 、 ま た 本 人 へ の 告 知 が 執 行 当 日 で あ る こ と ﹂ な ど が 問 題 で あ り 、 死 刑 囚 本 人 と そ の 家 族 が 死 刑 執 行 に 向 け て 心 の 準 備 が で き る よ う ﹁ 適 切 な 時 間 的 余 裕 を 持 っ て 執 行 日 時 を 事 前 通 知 す べ き だ ﹂ と 批 判 し て い る 。
死 刑 を 肯 定 す る 思 想 は 、 古 く は イ タ リ ア の 中 世 カ ト リ ッ ク 教 会 最 大 の 神 学 者 で 、 ス コ ラ 学 者 で も あ っ た ト マ ス ・ ア ク ィ ナ ス に よ っ て も 主 張 さ れ た こ と で 知 ら れ る 。 彼 は 、 ア リ ス ト テ レ ス の 思 想 体 系 を カ ト リ ッ ク 神 学 に 結 び つ け て 発 展 さ せ 、 刑 罰 を 科 す る こ と で 犯 罪 に よ っ て 失 わ れ た 利 益 が 回 復 さ れ る と し 、 そ の 意 味 で 刑 罰 に 応 報 的 性 格 を み と め た と さ れ る 。 ま た 、 社 会 の 秩 序 を 防 衛 す る た め に は 為 政 者 の 行 う 死 刑 は 有 益 か つ 正 当 で あ る と 主 張 し た と さ れ る [ 50 ] 。
カ ト リ ッ ク 教 会 は そ の 伝 統 に お い て 、 お お む ね 死 刑 に 好 意 的 で あ っ た [ 51 ] 。 神 学 者 の フ ラ ン シ ス コ ・ ス ア レ ス は 、 国 民 に は 他 の 国 民 の 命 を 奪 う 権 利 は な い の だ か ら 、 そ う し た 権 利 を 含 む 国 家 の 権 力 と は 神 が 授 け た も の で あ る と し 、 死 刑 の 存 在 が 、 国 家 権 力 が 神 に 由 来 す る こ と の 証 明 と 考 え た [ 52 ] 。 宗 教 改 革 の 時 代 に お い て 指 導 的 神 学 者 で あ っ た マ ル テ ィ ン ・ ル タ ー も 、 死 刑 を 神 事 と し て 肯 定 し た と 言 わ れ る 。 ま た 初 期 啓 蒙 思 想 家 の フ ー ゴ ー ・ グ ロ テ ィ ウ ス 、 そ の 系 統 を ひ く 自 然 法 学 者 プ ー フ ェ ン ド ル フ も 死 刑 を 合 理 的 な も の と し て 肯 定 し た [ 53 ] 。
啓 蒙 主 義 の 時 代 に お い て は 、 自 然 権 と 社 会 契 約 説 を 唱 え た ト マ ス ・ ホ ッ ブ ズ 、 ジ ョ ン ・ ロ ッ ク や イ マ ヌ エ ル ・ カ ン ト な ど が 、 世 俗 的 理 論 の も と に 、 社 会 秩 序 の 維 持 や 自 然 権 ︵ 生 命 権 ︶ の 侵 害 に 対 す る 報 復 な ど を も っ て 、 死 刑 の 必 要 性 を 再 定 義 し た 。 そ の ほ か 、 モ ン テ ス キ ュ ー 、 ル ソ ー 、 ヘ ー ゲ ル ら の 近 代 思 想 家 も 死 刑 存 置 論 を 主 張 し た [ 54 ] 。
ロ ッ ク は ﹃ 市 民 政 府 論 ﹄ の 冒 頭 で 、 政 治 権 力 と は 所 有 権 の 規 制 と 維 持 の た め に 、 死 刑 を ふ く む 法 を 作 る 権 利 だ と 定 義 し て い る [ 55 ] 。 ロ ッ ク に よ れ ば 、 自 然 状 態 で は 、 他 人 の 生 命 や 財 産 を 侵 害 す る 者 に 対 し て 誰 も が 処 罰 の 権 利 を も っ て い る [ 56 ] 。 自 然 法 の も と で は 誰 も が 自 由 で 平 等 で あ り 、 肥 沃 な 自 然 を 共 有 財 産 と し 、 そ こ か ら 労 働 に よ っ て 私 有 財 産 を 得 る [ 57 ] 。 ロ ッ ク は 生 命 ・ 自 由 ・ 資 産 を ま と め て 所 有 と 呼 び [ 58 ] 、 こ れ を 侵 害 す る 者 は 全 人 類 へ の 敵 対 者 と な っ て 自 然 権 を 喪 失 す る た め 、 万 人 が 自 然 法 の 執 行 者 と し て 処 罰 権 を ふ る い 、 必 要 な ら ば 殺 す 権 利 が あ る と 述 べ る [ 59 ] 。 こ う し た 自 然 状 態 か ら 、 人 々 は 所 有 権 の 保 障 を 得 る た め に 社 会 契 約 を 結 ん で 協 同 体 ︵ 市 民 社 会 、 国 家 ︶ に 加 わ る こ と に 同 意 す る が 、 そ れ に と も な い 個 々 人 が も つ 処 罰 権 も 移 譲 さ れ る [ 60 ] 。 た だ し 、 処 罰 権 は あ く ま で 一 般 的 な も の な の で 、 国 家 に と っ て 、 死 刑 に か ん す る 権 利 や 義 務 が そ こ か ら ﹁ 明 示 的 に ﹂ 発 生 す る 訳 で は な い [ 61 ] 。 し か し 殺 人 者 や 侵 略 者 に か ぎ れ ば 、 自 ら の 行 為 に よ っ て 権 利 を 喪 失 し て い る の で 、 自 然 状 態 で は 万 人 に 彼 ら を 殺 す 権 利 が あ っ た の と 同 じ く 、 国 家 は 彼 ら に 恣 意 的 で 専 制 的 な 権 力 を ふ る う こ と が 正 当 化 さ れ る [ 62 ] 。 す な わ ち こ の 権 力 は 、 殺 人 者 や 侵 略 者 の ﹁ 生 命 を 奪 い 、 欲 す る な ら ば こ れ を 有 害 な 動 物 と し て 破 滅 さ せ る 権 利 ﹂ [ 63 ] を も 含 ん で い る の で あ る [ 62 ] 。 ロ ッ ク の 考 え で は 、 殺 人 者 や 侵 略 者 は 死 に 値 し 、 死 に 値 す る と い う 事 実 は 死 刑 を 十 分 に 正 当 化 す る も の で あ っ た [ 64 ] 。
三 権 分 立 の 提 唱 者 と し て 知 ら れ る モ ン テ ス キ ュ ー は 、 死 刑 に つ い て こ う 主 張 す る 。 ﹁ こ れ は 一 種 の 同 害 報 復 権 で あ る 。 こ れ に よ っ て 社 会 の 安 全 を 奪 っ た 、 あ る い は 、 他 の 公 民 の 安 全 を 奪 お う と し た 公 民 に 対 し 、 社 会 が 安 全 を 拒 否 す る の で あ る 。 こ の 刑 罰 は 事 物 の 本 性 か ら 引 き だ さ れ 、 理 性 か ら 、 ま た 善 悪 の 源 泉 か ら 取 り 出 さ れ る 。 公 民 が 生 命 を 奪 い 、 あ る い は 生 命 を 奪 お う と 企 て る ほ ど 安 全 を 侵 害 し た 場 合 は 、 彼 は 死 に 値 す る 。 ﹂ [ 65 ]
ル ソ ー は 死 刑 に つ い て ロ ッ ク の 発 想 を 踏 襲 し 発 展 さ せ た と 言 わ れ る [ 66 ] [ 67 ] 。 彼 は グ ロ テ ィ ウ ス 、 プ ー フ ェ ン ド ル フ ら に よ る 統 治 契 約 説 ︵ 服 従 契 約 ︶ を 否 定 し 、 社 会 契 約 を 自 由 な 個 人 に よ る 同 意 と 考 え た 。 国 家 に よ っ て 守 ら れ る 契 約 当 事 者 の 生 命 は 、 そ の 国 家 の た め の 犠 牲 を 求 め ら れ る こ と も あ る と し 、 ﹁ 犯 罪 人 に 課 せ ら れ る 死 刑 も ほ と ん ど 同 じ 観 点 の 下 に 考 察 さ れ う る 。 刺 客 の 犠 牲 に な ら な い た め に こ そ 、 わ れ わ れ は 刺 客 に な っ た 場 合 に は 死 刑 に な る こ と を 承 諾 し て い る の だ 。 ﹂ と 述 べ る [ 68 ] 。 ま た 彼 の 言 う と こ ろ で は 、 ﹁ 社 会 的 権 利 を 侵 害 す る 悪 人 は 、 … 祖 国 の 一 員 で あ る こ と を や め 、 さ ら に 祖 国 に た い し て 戦 争 を す る こ と に さ え な る 。 … そ し て 罪 人 を 殺 す の は 、 市 民 と し て よ り も 、 む し ろ 敵 と し て だ 。 彼 を 裁 判 す る こ と 、 お よ び 判 決 を く だ す こ と は 、 彼 が 社 会 契 約 を 破 っ た と い う こ と 、 従 っ て 、 彼 が も は や 国 家 の 一 員 で は な い こ と の 証 明 お よ び 宣 告 ﹂ で あ り [ 69 ] 、 す な わ ち 法 律 違 反 者 は 公 民 た る 資 格 を 失 う こ と に な り 、 国 家 は 自 己 防 衛 の 必 要 が あ れ ば 、 こ れ を 殺 し て も よ い と さ れ る 。 そ の 他 方 で ル ソ ー は ﹁ な に か の こ と に 役 立 つ よ う に で き な い と い う ほ ど の 悪 人 は 、 決 し て い な い 。 生 か し て お く だ け で も 危 険 だ と い う 人 を 別 と す れ ば 、 み せ し め の た め に し て も 、 殺 し た り す る 権 利 を 、 誰 も も た な い 。 ﹂ と 述 べ て い る [ 70 ] 。
プ ロ イ セ ン 出 身 で ド イ ツ 観 念 論 の 祖 で あ る イ マ ヌ エ ル ・ カ ン ト は 、 死 刑 に つ い て 、 ﹁ も し 彼 が 人 を 殺 害 し た の で あ れ ば 、 彼 は 死 な ね ば な ら な い 。 こ の 際 に は 正 義 を 満 足 さ せ る に 足 る ど ん な 代 替 物 も な い ﹂ と 語 っ た こ と で 知 ら れ る [ 71 ] 。 カ ン ト は ホ ッ ブ ズ 、 ロ ッ ク 、 ル ソ ー か ら 社 会 契 約 説 の 発 想 を 継 承 し つ つ 、 そ こ か ら 歴 史 性 を 完 全 に 捨 象 し 、 こ れ を 市 民 社 会 ︵ 国 家 ︶ が も と づ く べ き 理 念 と し て 考 え た [ 72 ] 。 そ う し た 国 家 に お い て 刑 法 と は 定 言 命 法 で あ り 、 す な わ ち 裁 判 所 の く だ す 刑 罰 は 、 犯 罪 者 の 社 会 復 帰 や 犯 罪 の 予 防 と い っ た 他 の 目 的 の 手 段 で あ っ て は な ら ず 、 無 条 件 で 犯 罪 者 を 罰 す る も の で な け れ ば な ら な い [ 73 ] 。 ル ソ ー が 犯 罪 者 を 国 家 の 敵 と す る の に 対 し 、 カ ン ト は 犯 罪 者 も 人 格 と し て 扱 わ ね ば な ら な い が 故 に 、 刑 罰 も 彼 を 目 的 と し て 扱 わ な け れ ば な ら な い ︵ が 故 に 定 言 命 法 の 対 象 と な る ︶ と 考 え る 。 そ し て 刑 罰 の 種 類 や 程 度 を 定 め る に あ た っ て 、 司 法 的 正 義 が 規 準 と す る の は 、 均 等 の 原 理 す な わ ち 同 害 報 復 権 ︵ タ リ オ の 法 ︶ の み だ と カ ン ト は 言 う [ 74 ] 。 し た が っ て 殺 人 の ば あ い 、 犯 罪 者 の 死 だ け が 司 法 的 正 義 に 適 う と さ れ 、 ﹁ 刑 罰 の こ の 均 等 は 、 裁 判 官 が 厳 格 な 同 害 報 復 の 法 理 に し た が っ て 死 刑 の 宣 告 を 下 す こ と に よ っ て だ け 可 能 に な る ﹂ と さ れ る [ 75 ] 。 こ の よ う に 主 張 し た こ と で 、 カ ン ト は 絶 対 的 応 報 刑 論 の 見 地 か ら 死 刑 を 正 当 化 し た と 言 わ れ る 。 ち な み に 、 こ こ で の 被 害 者 は 公 民 的 社 会 ︵ 国 家 ︶ で あ り 、 個 人 対 個 人 で の 補 償 や 配 慮 は 考 え ら れ て い な い と 言 わ れ る [ 76 ] 。 ま た カ ン ト は 、 ベ ッ カ リ ー ア が 死 刑 廃 止 の 主 張 の さ い に 論 拠 と し た 、 社 会 契 約 に お い て 当 事 者 が 予 め 死 刑 に 同 意 す る こ と は あ り え な い と い う 議 論 に 対 し 、 人 が 刑 罰 を 受 け る の は 刑 罰 を 望 ん だ か ら で は な く 罰 せ ら れ る べ き 行 為 を 望 ん だ か ら だ と 反 論 し た [ 77 ] 。
ヘ ー ゲ ル は 刑 罰 の 考 え 方 を め ぐ っ て カ ン ト の 応 報 刑 論 を 批 判 し た が 、 殺 人 罪 に つ い て は 、 生 命 は い か な る も の に よ っ て も 置 き 換 え ら れ な い と い う 理 由 か ら 、 死 刑 し か あ り え な い と 考 え る [ 78 ] 。 ま た ベ ッ カ リ ー ア の 死 刑 廃 止 論 を 、 社 会 契 約 に も と づ く 国 家 創 設 と い う 発 想 そ の も の を 否 定 す る こ と で 斥 け て い る [ 79 ] 。 た し か に 国 家 は 、 王 権 神 授 説 の 言 う よ う な 与 え ら れ る も の で は な く 、 人 々 に よ っ て 造 ら れ る も の で は あ る 。 し か し ヘ ー ゲ ル の 考 え で は 、 い か な る タ イ プ の 社 会 契 約 も し ょ せ ん 恣 意 的 で 偶 発 的 な も の に す ぎ ず 、 そ う し た レ ベ ル の 合 意 が 国 家 の よ う な 統 一 体 に 発 展 す る こ と は な い [ 80 ] 。 も と も と 人 々 は 、 共 同 体 の 制 度 ・ 慣 習 ・ 文 化 の 複 雑 な 網 の 目 の な か で 生 き て お り 、 契 約 の 義 務 と い う 観 念 も そ れ ら を 前 提 に 生 じ 、 共 同 体 の な か で は じ め て 現 実 性 を も つ も の で あ る 。 と こ ろ が 社 会 契 約 論 は こ う し た 関 係 を 転 倒 さ せ 、 こ れ ら 諸 々 の 前 提 を 契 約 の 所 産 の よ う に 勘 違 い し て い る の で あ る [ 81 ] 。 す な わ ち ﹁ 国 家 は そ も そ も 契 約 な ど で は な く 、 な お 、 ま た 個 々 の も の と し て の 諸 個 人 の 生 命 お よ び 所 有 の 保 護 と 保 全 も 、 け っ し て 無 条 件 に 国 家 の 実 体 的 な 本 質 で は な い ﹂ と ヘ ー ゲ ル は 言 う [ 79 ] 。 こ の よ う に ベ ッ カ リ ー ア を 批 判 す る 他 方 で 、 彼 の 著 作 に よ っ て ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 が 死 刑 に 慎 重 な 姿 勢 を と る よ う に な っ た 事 を ヘ ー ゲ ル は 評 価 し て い る [ 82 ] 。
19 世 紀 に は 、 社 会 進 化 論 的 観 点 か ら 死 刑 を 肯 定 す る 思 想 が あ ら わ れ た 。 イ タ リ ア の 医 学 者 ロ ン ブ ロ ー ゾ は 、 犯 罪 者 の 頭 蓋 骨 解 剖 ・ 体 格 調 査 の 研 究 に よ り 、 隔 世 遺 伝 に よ る 生 来 的 犯 罪 者 と い う 考 え 方 を 発 表 し 、 人 為 淘 汰 の 思 想 に も と づ く 死 刑 の 正 当 性 を 主 張 し た 。 彼 に よ れ ば 、 ﹁ 社 会 の な か に は た く さ ん の 悪 い 人 間 が 散 在 し て お り 、 犯 罪 に よ っ て そ の 性 が 現 れ て く る と い う の で あ る 。 す な わ ち 、 そ う い う 悪 人 の 子 孫 が 繁 殖 す る と い う と 、 遺 伝 に よ っ て 将 来 は 犯 罪 人 を も っ て 充 さ れ る よ う に な る か ら 、 社 会 を 廓 清 し 立 派 な 人 間 ば か り に す る た め に 、 人 口 淘 汰 に よ っ て こ れ 等 の 悪 人 を 除 く こ と が 必 要 で あ る 。 こ れ を 実 行 す る た め に は 、 死 刑 は よ い 刑 罰 で あ っ て 廃 止 す べ き も の で は な い ﹂ [ 83 ] 。 ま た 、 ロ ン ブ ロ ー ゾ の 弟 子 で あ っ た エ ン リ コ ・ フ ェ リ も 、 人 為 淘 汰 と し て 死 刑 は 社 会 の 権 利 で あ り 、 生 物 進 化 の 自 然 法 則 に 合 致 す る と 主 張 す る 。 彼 に よ れ ば 、 ﹁ 進 化 の 宇 宙 的 法 則 が わ れ わ れ に し め す と こ ろ に 従 え ば 、 各 種 生 物 の 進 歩 は 生 存 競 争 に 不 適 当 な も の の 死 と い う 不 断 の 淘 汰 に よ る の で あ る 。 … ゆ え に 社 会 が そ の 内 部 に 於 て 、 人 為 的 淘 汰 を 行 い そ の 生 存 に 有 害 な 要 素 、 即 ち 反 社 会 的 個 人 、 同 化 不 可 能 者 、 有 害 者 を 除 く と い う こ と は 、 た だ に そ の 権 利 で あ る ば か り で な く 、 自 然 の 法 則 に 一 致 し て い る の で あ る ﹂ [ 84 ] 。 刑 法 学 に お け る ﹁ イ タ リ ア 学 派 ﹂ へ と 発 展 し た 彼 ら の 主 張 は 多 く の 批 判 を 受 け た が 、 従 来 の 刑 法 学 に 実 証 主 義 的 な 手 法 を 導 入 し た 点 で は 高 く 評 価 さ れ て い る 。
20 世 紀 初 頭 、 ド イ ツ ・ ベ ル リ ン 大 学 の ヴ ィ ル ヘ ル ム ・ カ ー ル 教 授 は 法 曹 会 議 の な か で ﹃ 死 刑 は 刑 罰 体 系 の 重 要 な 要 素 で あ り ﹄ と し て 人 を 殺 し た る 者 は そ の 生 命 を 奪 わ れ る と い う の は ﹃ 多 数 国 民 の 法 的 核 心 で あ る ﹄ と 主 張 し た 。 ま た ア メ リ カ 合 衆 国 の ケ ン ダ ル は 、 ル ソ ー の 社 会 契 約 説 に も と づ き 、 政 治 犯 な ど と 凶 悪 犯 罪 者 と を 区 別 す る こ と で 死 刑 制 度 を 肯 定 で き る と 主 張 し た [ 85 ] 。
『犯罪と刑罰』(1764) ヨーロッパ各地で翻訳され、死刑廃止論の先駆けとなった。
死 刑 が 正 当 な 刑 罰 か と い う 問 題 は 16 世 紀 以 降 論 争 と な り 、 ト マ ス ・ モ ア の ﹃ ユ ー ト ピ ア ﹄ ︵ 1 5 1 6 年 ︶ や 、 ト ー サ ン の ﹃ 道 徳 論 ﹄ ︵ 1 7 4 8 年 ︶ な ど に 死 刑 反 対 の 考 え が 現 れ て い る 。 し か し 社 会 思 想 と し て の 死 刑 廃 止 論 の 嚆 矢 と な っ た の は 、 イ タ リ ア の 啓 蒙 思 想 家 チ ェ ー ザ レ ・ ベ ッ カ リ ー ア で あ り 、 彼 は ル ソ ー の 影 響 の も と 、 社 会 契 約 を 根 拠 に 死 刑 を 否 定 し た こ と で 知 ら れ る [ 86 ] 。
ベ ッ カ リ ー ア は ﹃ 犯 罪 と 刑 罰 ﹄ ︵ 1 7 6 4 年 ︶ に お い て 、 ﹁ ど う し て 各 人 の さ し 出 し た 最 小 の 自 由 の 割 前 の 中 に 、 生 命 の 自 由 - あ ら ゆ る 財 産 の 中 で も っ と も 大 き な 財 産 で あ る 生 命 の 自 由 も ふ く ま れ る と い う 解 釈 が で き る の だ ろ う か ? … 人 間 が み ず か ら を 殺 す 権 利 が な い の な ら 、 そ の 権 利 を 他 人 に 、 - た と え そ れ が 社 会 に で あ っ た と し て も - ゆ ず り 渡 す こ と は で き な い は ず だ 。 ﹂ と 述 べ て い る [ 87 ] 。 す な わ ち 、 社 会 契 約 の 当 事 者 で あ る 国 民 は 、 自 分 の 生 命 を 放 棄 す る よ う な 約 束 を 予 め 結 ぶ と い う こ と は あ り え な い の だ か ら 、 死 刑 制 度 は 無 効 で あ り 、 ︵ 国 家 の 平 時 に お い て は ︶ 廃 止 す べ き と い う の が そ の 趣 旨 で あ る 。 ま た 彼 は 、 刑 事 政 策 上 の 理 由 か ら も 反 対 論 を 述 べ 、 死 刑 が 抑 止 効 果 に お い て 終 身 刑 に 劣 る も の だ と 主 張 し た 。 ﹁ 刑 罰 が 正 当 で あ る た め に は 、 人 々 に 犯 罪 を 思 い 止 ま ら せ る に 十 分 な だ け の 厳 格 さ を も て ば い い の だ 。 そ し て 犯 罪 か ら 期 待 す る い く ら か の 利 得 と 、 永 久 に 自 由 を 失 う こ と と を 比 較 判 断 で き な い よ う な 人 間 は い な い だ ろ う ﹂ [ 88 ] 。 さ ら に 彼 は 、 死 刑 が 残 酷 な 行 為 の 手 本 と な り 社 会 的 に 有 害 で も あ る と も 述 べ て い る [ 89 ] 。
﹃ 犯 罪 と 刑 罰 ﹄ は 当 初 匿 名 で 出 版 さ れ た が 、 た だ ち に 大 き な 論 議 を 巻 き 起 こ し た 。 そ の 背 景 に は 、 当 時 の ヨ ー ロ ッ パ に お け る 刑 事 法 が 一 般 に 抑 圧 的 で あ り 、 そ の 運 用 も 恣 意 的 だ っ た こ と が あ る と 考 え ら れ て い る 。 司 法 原 則 と し て の 法 の 下 の 平 等 は 事 実 上 存 在 せ ず 、 犯 罪 者 の 社 会 的 地 位 や 縁 故 ・ 人 間 関 係 が も っ と も 処 遇 を 左 右 し た と 言 わ れ る [ 90 ] 。 こ う し た 状 況 一 般 へ の 人 々 の 不 満 も あ り 、 ﹃ 犯 罪 と 刑 罰 ﹄ は 翻 訳 さ れ て ヨ ー ロ ッ パ 各 地 で 読 ま れ 、 の ち の 立 法 と 刑 法 思 想 に 多 大 な 影 響 を 与 え た 。 ち な み に 、 ベ ッ カ リ ー ア の 思 想 を 最 初 に 実 現 し た の は 、 ト ス カ ー ナ 大 公 国 の 啓 蒙 専 制 君 主 レ オ ポ ル ド 1 世 大 公 ︵ 後 の 神 聖 ロ ー マ 皇 帝 レ オ ポ ル ト 2 世 ︶ で あ る 。 レ オ ポ ル ド は 即 位 し た 1 7 6 5 年 に 死 刑 の 執 行 を 停 止 し 、 1 7 8 6 年 に は 死 刑 そ の も の を 完 全 に 廃 止 し た [ 91 ] 。
こ の 時 代 に は 他 に も 、 デ ィ ド ロ ﹃ 自 然 の 法 典 ﹄ ︵ 1 7 5 5 年 ︶ 、 ゾ ン ネ ン フ ェ ル ス ︵ 1 7 6 4 年 の 論 文 ︶ 、 ト マ ソ ・ ナ タ レ ﹃ 刑 罰 の 効 果 及 び 必 要 に 関 す る 政 策 的 研 究 ﹄ ︵ 1 7 7 2 年 ︶ 等 が 死 刑 の 刑 罰 と し て の 有 効 性 に 疑 問 を 述 べ 、 廃 止 を 主 張 し て い る 。
19 世 紀 に は 文 学 の 領 域 で 死 刑 廃 止 の 声 が あ が り は じ め 、 ヴ ィ ク ト ル ・ ユ ゴ ー の ﹃ 死 刑 囚 最 後 の 日 ﹄ ︵ 1 8 2 9 年 ︶ が 反 響 を 呼 ん だ 。 ま た ロ マ ン 派 の 詩 人 で 政 治 家 の ラ マ ル テ ィ ー ヌ が 廃 止 を 主 張 し 、 ド ス ト エ フ ス キ ー の ﹃ 白 痴 ﹄ ︵ 1 8 6 8 年 ︶ 、 ト ル ス ト イ ︵ ﹃ 戦 争 と 平 和 ﹄ 1 8 6 5 年 - 1 8 6 9 年 ︶ な ど も 作 品 中 に 死 刑 を 取 り あ げ て 、 廃 止 論 に 影 響 を 与 え た 。
イ ギ リ ス の 社 会 改 革 主 義 者 で あ っ た ベ ン サ ム は 、 刑 罰 学 に お い て は パ ノ プ テ ィ コ ン の 考 案 者 と し て 知 ら れ る 。 彼 は 死 刑 に 関 し て 、 功 利 主 義 的 立 場 か ら プ ラ ス 面 と マ イ ナ ス 面 と を 比 較 検 討 し た 。 ベ ン サ ム に よ れ ば 、 死 刑 の 戒 め と し て の 効 果 や 人 々 に よ る 支 持 と い っ た プ ラ ス 面 よ り も 、 死 刑 が 犯 罪 者 に よ る 被 害 者 へ の 賠 償 を 不 可 能 に す る こ と や 、 誤 判 に よ る 死 刑 の 回 復 不 可 能 性 と い っ た マ イ ナ ス 面 の 方 が 大 き い と さ れ る 。 ベ ン サ ム は こ う し た 比 較 に よ り 、 死 刑 よ り 終 身 労 役 刑 の 方 が 社 会 に と っ て の 利 益 が 大 き い と 結 論 づ け 、 死 刑 廃 止 を 主 張 し た [ 92 ] 。
ド イ ツ の フ ラ ン ツ ・ フ ォ ン ・ リ ス ト は 、 ロ ン ブ ロ ー ゾ ら ﹁ イ タ リ ア 学 派 ﹂ の と な え る 生 物 学 的 観 点 の み に よ る 犯 罪 原 因 説 を 否 認 し 、 そ こ に 社 会 学 的 視 点 を 加 え 、 さ ら に 刑 法 に お け る 目 的 思 想 を 重 要 視 し た 。 す な わ ち 応 報 刑 で は 犯 罪 を 抑 止 で き な い と 考 え 、 法 益 保 護 と 法 秩 序 の 維 持 を 目 的 と し 、 社 会 を 犯 罪 行 為 か ら 防 衛 し な が ら 犯 罪 者 に よ る 再 度 の 犯 罪 を 予 防 す る こ と を 重 視 す る 。 リ ス ト と そ の 弟 子 達 は こ こ か ら 目 的 刑 と い う 新 し い 刑 法 学 の 体 系 を 生 み 出 し 、 近 代 学 派 ︵ 新 派 ︶ の 理 論 を 完 成 さ せ た 。 応 報 刑 の 旧 派 と 目 的 刑 の 新 派 の 対 立 は 現 代 ま で 続 い て い る が 、 目 的 刑 を 取 る 刑 法 学 者 は 通 常 は 死 刑 廃 止 を 主 張 し て い る 。
20 世 紀 に な る と 、 ま た リ ス ト に 学 ん だ モ リ ッ ツ ・ リ ー プ マ ン と ロ イ ・ カ ル バ ー ト が 死 刑 廃 止 を 主 張 し た 。 リ ー プ マ ン は カ ー ル 、 フ ィ ン ガ ー ら と 死 刑 存 廃 を め ぐ っ て 論 争 し 、 死 刑 は 犯 人 を 法 の 主 体 と し て 認 め ず 、 単 に 破 壊 の 客 体 と し て 扱 う こ と を 問 題 と し て 指 摘 し た 。 エ ド ウ ィ ン ・ H ・ サ ザ ー ラ ン ド や ﹃ 合 衆 国 に お け る 死 刑 ﹄ ︵ 1 9 1 9 年 ︶ を 書 い た レ イ モ ン ド ・ T ・ ブ イ も 死 刑 廃 止 を 唱 え た 。 作 家 の カ ミ ュ ︵ ﹃ ギ ロ チ ン ﹄ 1 9 5 7 年 ︶ も 死 刑 に 反 対 し て い る [ 93 ] 。
キ リ ス ト 教 的 な 立 場 か ら は 、 19 世 紀 初 頭 に フ リ ー ド リ ヒ ・ シ ュ ラ イ ア マ ハ ー ︵ シ ュ ラ イ ア ー マ ッ ハ ー ︶ が 、 20 世 紀 に は カ ー ル ・ バ ル ト ら の 神 学 者 が 国 家 の 役 割 を 限 定 す る と い う 立 場 か ら 死 刑 廃 止 を 主 張 し た 。 バ ル ト に よ れ ば 、 刑 罰 を 基 礎 づ け る 理 論 は 通 常 、 犯 罪 者 の 更 生 、 犯 罪 行 為 の 償 い 、 社 会 の 安 全 保 障 、 の 何 れ か に 収 ま る が 、 死 刑 は 何 れ と も 齟 齬 を き た す [ 94 ] 。 死 刑 は ま ず ﹁ 犯 罪 者 の 更 生 ﹂ を 放 棄 す る が 、 社 会 に は 、 そ の 構 成 員 を 秩 序 へ と 呼 び 戻 す 努 力 を す る 義 務 が あ る と バ ル ト は 言 う [ 95 ] 。 第 二 に 、 ﹁ 犯 罪 行 為 の 償 い ﹂ と は 、 神 の 応 報 的 正 義 の 地 上 的 ・ 人 間 的 表 現 で あ る 。 し か し あ ら ゆ る 人 間 の 過 ち に 対 す る 神 の 応 報 的 正 義 は 、 バ ル ト に よ れ ば 、 キ リ ス ト 教 で は イ エ ス の 死 を も っ て 終 わ っ て お り 、 刑 罰 は 生 を 否 定 し な い も の で な け れ ば な ら な い [ 96 ] 。 そ し て ﹁ 社 会 の 安 全 保 障 ﹂ に つ い て は 、 犯 罪 者 の 抹 殺 は 社 会 を 自 己 矛 盾 に 陥 れ る と バ ル ト は 述 べ る 。 す な わ ち 、 社 会 制 度 は つ ね に 暫 定 的 ・ 相 対 的 な も の と し て 修 正 可 能 性 を 担 保 す べ き で あ り 、 死 刑 に お い て は そ う し た 可 能 性 が 排 除 さ れ る た め 、 社 会 は む し ろ 市 民 の 安 全 を 侵 害 す る 可 能 性 を 常 に は ら む こ と に な る [ 97 ] 。 こ う し て バ ル ト は 一 国 の 制 度 と し て の 死 刑 に は 反 対 す る が 、 そ の 他 方 で 特 殊 な 条 件 下 で の 死 刑 を 擁 護 し て い る 。 バ ル ト の 主 張 に よ れ ば 、 戦 時 下 で の 売 国 行 為 と 国 家 を 危 機 に 陥 れ る 独 裁 者 ︵ ヒ ト ラ ー を 念 頭 に 置 い て い る ︶ の 二 者 に 関 し て は 、 限 界 状 況 に あ る 国 家 の 正 当 防 衛 と い う 理 由 か ら 、 死 刑 ︵ 犯 罪 者 の 殺 害 ︶ は ﹁ 神 の 誡 め で あ り う る ﹂ と さ れ る [ 98 ] 。
近 年 で は 、 ジ ャ ッ ク ・ デ リ ダ が 死 刑 廃 止 論 の 思 想 的 検 討 を し て い る 。 デ リ ダ に よ れ ば 、 死 刑 と は 刑 法 の 一 項 目 に と ど ま ら ず 、 法 そ の も の を 基 礎 づ け る 条 件 で も あ る 。 そ れ は 死 刑 が 元 々 、 主 権 の 概 念 と 深 い 関 わ り を も っ て い る か ら で あ る 。 シ ュ ミ ッ ト に よ れ ば 、 主 権 は か つ て の 宗 教 的 権 威 か ら 国 家 へ と 受 け 継 が れ た が 、 こ れ は 法 の 上 位 に あ っ て 例 外 状 態 を 決 定 し 、 ︵ 恩 赦 の よ う に ︶ 法 を 一 時 停 止 す る 権 限 で あ り 、 生 殺 与 奪 の 最 高 の 権 限 で も あ る 。 廃 止 論 に 立 つ に は 、 こ う し た 主 権 そ の も の を 問 題 に す る 必 要 が あ る と 、 デ リ ダ は 言 う 。 現 在 の 死 刑 廃 止 論 は 、 彼 に よ れ ば 政 治 的 に 脆 弱 で あ る 。 ま ず ベ ッ カ リ ー ア に な ら っ て 戦 時 の 例 外 を 認 め る タ イ プ の 廃 止 論 は 、 今 日 的 な 状 況 に 太 刀 打 ち で き な い 。 何 故 な ら 、 た と え ば 戦 争 と テ ロ と の 境 目 が あ ら か じ め 明 確 で な い よ う な 状 況 で は 、 緊 急 時 と 平 常 時 の 境 界 線 も 恣 意 的 に 引 け る か ら で あ る 。 同 じ く ベ ッ カ リ ー ア 由 来 の 、 死 刑 は 抑 止 力 が な い か ら 廃 止 す べ き だ と い う 主 張 も 、 限 ら れ た 説 得 力 し か 持 た な い 。 こ う し た 功 利 主 義 的 な 主 張 は 、 ﹁ 法 を 犯 し た 者 は 罰 せ ら れ る べ き だ か ら 罰 せ ら れ る べ き な の だ ﹂ と い っ た 、 人 間 の 尊 厳 に 訴 え る カ ン ト 的 な 定 言 命 法 を 乗 り 越 え ら れ な い か ら で あ る 。 国 際 機 関 に よ る 決 議 や 提 言 も 、 上 記 の よ う な 国 家 の 主 権 原 理 や 例 外 問 題 の 前 で つ ね に 頓 挫 し て い る 。 こ う し た 点 か ら 、 こ れ ま で の 廃 止 論 の 言 説 は 大 幅 に 改 善 し て い く 余 地 が あ る と デ リ ダ は 述 べ て い る [ 99 ] 。
死 刑 制 度 の 存 続 賛 成 派 は 、 そ の 目 的 と し て 犯 罪 を 予 定 す る 者 へ の 威 嚇 効 果 、 つ ま り ︵ 殺 人 な ど の 凶 悪 事 件 ︶ 犯 罪 抑 止 な い し 犯 罪 抑 止 力 。 ま た は 人 権 を 剥 奪 さ れ た 被 害 者 な い し そ の 遺 族 の 救 済 ︵ つ ま る と こ ろ 報 復 の 代 行 ︶ な ど を 根 拠 に 死 刑 を 維 持 [ 注 釈 19 ] す べ き と す る 。 ま た 、 死 刑 制 度 の 廃 止 派 は た と え 人 命 を 奪 っ た 凶 悪 な 犯 罪 者 で あ っ て も 人 権 は あ り 、 死 刑 そ の も の 自 体 が 永 久 に こ の 世 か ら 存 在 を 抹 殺 す る 残 虐 な 刑 で あ り 、 国 家 に よ る 殺 人 を 合 法 的 に 行 う こ と で あ り 是 認 で き な い 、 刑 事 裁 判 の 誤 判 に よ る 冤 罪 に よ る 処 刑 を 完 全 に 防 ぎ き れ な い 、 な ど を 根 拠 に 廃 止 す べ き と 主 張 す る 。
現 在 に 至 る ま で 、 死 刑 存 置 論 と 死 刑 廃 止 論 を め ぐ っ て は 激 し く 対 立 し て い る が 、 ど ち ら の 主 張 が 正 し い か を 客 観 的 に 判 断 す る こ と は 誰 に も で き な い 問 題 で あ る 。 ま た 論 理 的 で な い 感 情 論 も 場 合 に よ っ て は 入 る た め 、 現 実 と し て 問 題 の 解 決 は あ り え な い か も し れ な い 。 そ の た め 、 死 刑 制 度 を 存 続 す る に し て も 廃 止 す る に し て も 、 法 学 の み な ら ず 、 死 刑 制 度 の 存 在 を ど の よ う に 見 る か で 大 き く 変 わ る も の で あ り 、 そ の た め 法 学 の み な ら ず 思 想 的 か つ 宗 教 的 な 問 題 や 哲 学 な ど 様 々 な 主 義 主 張 が 交 錯 し て お り 、 犯 罪 被 害 者 な い し 犯 罪 者 双 方 の 人 間 の 生 命 に つ い て ど う 考 え る か と い う 根 本 的 な 課 題 [ 1 0 0 ] で あ る と い え る 。
近 年 で は イ ス ラ ム 教 徒 に よ る テ ロ が 相 次 い だ こ と を 背 景 と し て 、 ﹁ 死 刑 復 活 論 ﹂ と い う 新 た な 運 動 が あ る [ 1 0 1 ] 。
以 下 の 項 目 は 、 日 本 に お け る 死 刑 制 度 廃 止 派 に よ る 主 な 廃 止 論 で あ る 。
● 人 権 の 更 な る 尊 重 を 推 奨 す べ き と い う 観 点 か ら の 廃 止 論
死 刑 制 度 は 最 高 裁 判 決 を 鑑 み て も 日 本 国 内 に お い て 最 も 人 権 を 尊 重 し て い な い 刑 罰 で あ る と 言 え る と し 、 近 代 社 会 に お い て 人 権 が 、 現 状 を 超 え て 尊 重 さ れ る こ と は 、 そ の 直 接 的 な 影 響 に よ っ て 他 者 の 人 権 が 侵 害 さ れ る 場 合 を 除 い て は 肯 定 ・ 推 奨 さ れ る と し た 上 で 、 死 刑 の 廃 止 が 直 接 的 な 原 因 で あ る 具 体 的 な 人 権 侵 害 の 危 険 性 が 確 認 で き な い 以 上 、 日 本 に お い て は 死 刑 廃 止 は 推 奨 さ れ る べ き も の で あ る 、 と い う 意 見 が あ る 。
● 誤 判 可 能 性 か ら の 廃 止 論
現 代 の 司 法 制 度 に お い て は 裁 判 官 も 人 間 で あ る と い う 考 え 方 で あ る 以 上 、 常 に 誤 判 の 可 能 性 が 存 在 し 、 生 命 を 剥 奪 す る と い う 性 質 を 持 つ 死 刑 に お い て は 、 他 の 刑 と 比 べ 特 に 取 り 返 し が つ か な い た め 、 廃 止 す べ き で あ る と い う 意 見 が あ る 。 元 最 高 裁 判 所 判 事 の 団 藤 重 光 は 、 自 身 が 判 決 を 下 し た 死 刑 事 件 の 事 実 認 定 に お い て ﹁ 一 抹 の 不 安 ︵ 誤 判 可 能 性 ) ﹂ が 拭 い 去 る こ と が で き な い と い う 経 験 か ら 、 死 刑 の 廃 止 を 訴 え て い る [ 1 0 2 ] 。 ま た 、 実 際 に 誤 判 の 可 能 性 が 示 さ れ た の が 、 後 述 の 1 9 8 0 年 代 に お け る 四 大 死 刑 冤 罪 事 件 ︵ 免 田 事 件 、 財 田 川 事 件 、 松 山 事 件 、 島 田 事 件 ︶ で あ る 。
● 国 際 情 勢 か ら の 廃 止 論
EU 諸 国 欧 州 協 議 会 や 国 連 な ど は 、 死 刑 廃 止 を 推 奨 ・ 推 進 し て お り 、 死 刑 執 行 を 継 続 し て い る 日 本 に 対 し て 非 難 決 議 も 出 さ れ て い る 以 上 、 国 家 政 策 上 不 利 益 で あ る と い う 点 か ら 廃 止 す べ き で あ る と い う 意 見 が あ る 。
ま た 、 死 刑 制 度 の 存 在 を 理 由 に 死 刑 廃 止 国 か ら 逃 亡 犯 罪 人 の 引 渡 を 拒 絶 さ れ る こ と が あ り 、 日 本 が ﹁ 犯 罪 人 引 渡 条 約 ﹂ を 締 結 す る 相 手 国 が 米 国 及 び 韓 国 の 2 カ 国 と 極 端 に 少 な い 理 由 の ひ と つ と も さ れ て い る [ 1 0 3 ] [ 1 0 4 ] 。
● 国 家 に よ る 死 刑 乱 用 の 可 能 性 か ら の 廃 止 論
時 の 権 力 者 の 恣 意 に よ り 死 刑 が 乱 用 さ れ 、 国 民 の 生 命 が 脅 か さ れ る 危 険 性 が あ る 。
● 犯 罪 誘 発 に つ な が る こ と か ら の 廃 止 論
﹁ 死 刑 に し て ほ し い か ら 犯 罪 を す る ﹂ と い う 者 が 相 当 数 い る た め 、 死 刑 が あ る と 逆 に 犯 罪 者 が 増 え る 。
社 会 民 主 党 は 、 ﹁ 死 刑 制 度 は ﹃ 見 直 す ﹄ べ き ﹂ と い う 見 解 を 提 示 し て い る 。 ﹁ 刑 罰 の あ り 方 に つ い て よ り 国 民 的 な 議 論 を 尽 く し 、 そ の 間 は 、 死 刑 執 行 を 停 止 す べ き ﹂ と い う 主 張 を 公 開 し て い る [ 1 0 5 ] 。
立 憲 民 主 党 は 死 刑 制 度 へ の 賛 否 を 明 確 に し て い な い が 、 一 部 の 議 員 が 死 刑 廃 止 を 推 進 す る 議 員 連 盟 に 所 属 し て い る 。
以 下 の 項 目 は 、 日 本 に お け る 死 刑 制 度 存 置 派 に よ る 存 置 論 で あ る 。
● 社 会 契 約 説 か ら の 存 置
前 述 の よ う に 、 啓 蒙 思 想 家 の ル ソ ー や カ ン ト は 社 会 契 約 説 か ら 死 刑 を 肯 定 し た と し て 、 刑 法 学 者 の 竹 田 直 平 は ﹁ 人 間 は 本 来 利 己 的 恣 意 的 な 行 動 を 為 す 傾 向 を 有 す る の で 、 他 人 か ら の 不 侵 害 の 約 束 と 、 そ の 約 束 の 遵 守 を 有 効 に 担 保 す る 方 法 と が 提 供 さ れ な い 限 り 、 何 人 も 自 己 の 生 命 や 自 由 、 幸 福 の 安 全 を 確 保 す る こ と が で き な い ﹂ と し て 社 会 契 約 の 必 要 を 説 い た 上 で 、 生 命 を 侵 害 し な い と い う 相 互 不 可 侵 の 約 束 を 有 効 か つ 正 義 に か な っ た 方 法 で 担 保 す る に は 、 違 約 者 す な わ ち 殺 人 者 の 生 命 を 提 供 さ せ る 約 束 を さ せ る こ と が 有 効 で あ る と 主 張 し 、 死 刑 の 存 置 を 肯 定 し た 。 な お 前 述 の ﹁ 死 刑 制 度 に は ﹃ 私 は あ な た を 殺 さ な い と 約 束 す る 。 も し 、 こ の 約 束 に 違 反 し て あ な た を 殺 す こ と が あ れ ば 、 私 自 身 の 命 を 差 し 出 す ﹄ と い う 正 義 に か な っ た 約 束 事 が あ る 。 と こ ろ が 、 死 刑 を 廃 止 し よ う と す る 人 々 は ﹃ 私 は あ な た を 殺 さ な い と 一 応 約 束 す る 。 し か し 、 こ の 約 束 に 違 反 し て あ な た を 殺 す こ と が あ っ て も 、 あ な た た ち は 私 を 殺 さ な い と 約 束 せ よ ﹄ と 要 求 し て い る に 等 し い 。 こ れ は 実 に 理 不 尽 で あ る ﹂ と い う 意 見 は 、 竹 田 が 主 張 し た も の で あ る 。
● 民 族 的 法 律 観 念 か ら の 存 置 論
最 高 検 察 庁 検 察 官 検 事 を 勤 め た 安 平 政 吉 は ﹁ 社 会 秩 序 を 維 持 す る 為 に は 、 悪 質 な 殺 人 等 を 犯 し た 犯 罪 者 に 対 し て は 死 刑 し か な く 他 の 刑 罰 は 考 え ら れ ず 、 そ れ に よ り 国 民 的 道 徳 観 も 満 足 さ れ る ﹂ と 主 張 し た 。
● 国 家 的 秩 序 ・ 人 倫 的 維 持 論 か ら の 存 置 論
刑 法 学 者 で 弁 護 士 の 小 野 清 一 郎 は ﹁ 死 刑 が 正 当 な も の で あ る か ど う か 、 抽 象 的 に 論 じ が た い ﹂ と し て 、 抽 象 的 に 死 刑 を 否 定 す る の は 浅 見 な 人 道 主 義 的 ま た は 個 人 主 義 的 啓 蒙 思 想 に 基 づ く 主 観 的 な 見 解 で あ り 、 日 本 の 政 治 思 想 は 仁 慈 を 旨 と し て お り 国 家 的 秩 序 と 人 倫 的 文 化 を 維 持 す る た め に 絶 対 に 必 要 な 場 合 に は 死 刑 を 廃 止 す べ き で あ る と し た 上 で 、 制 度 と し て 維 持 す る 場 合 に は 適 用 を 極 度 に 慎 重 に し な け れ ば な ら な い と し 、 死 刑 制 度 の 存 置 を 条 件 付 で 容 認 し た も の で あ る と い え る ( 三 原 2 0 0 8 , p . 4 4 ) 。
● 犯 罪 抑 止 論
死 刑 存 置 論 者 で あ る 植 松 正 は 、 死 刑 の 威 嚇 力 が 社 会 秩 序 維 持 の た め に 必 要 で あ る と 主 張 し た 。
● 特 別 予 防 論 か ら の 存 置 論
目 的 刑 論 と は 、 ﹁ 刑 罰 は 犯 罪 を 抑 止 す る 目 的 で 設 置 さ れ る 性 格 を 持 つ ﹂ と す る 理 論 で あ り 、 刑 罰 の 威 嚇 効 果 に よ っ て 犯 罪 抑 止 を 図 る 一 般 予 防 論 と 、 犯 罪 者 に 刑 罰 を 科 す こ と に よ っ て 再 犯 を 防 止 し よ う と す る 特 別 予 防 論 に 分 か れ る 。 後 者 の 特 別 予 防 論 に よ れ ば 死 刑 制 度 は ﹁ 大 抵 の 犯 罪 者 は 教 育 ・ 矯 正 を す る こ と で 再 犯 を あ る 程 度 抑 止 す る こ と が で き る 。 し か し 死 刑 が 適 用 さ れ る よ う な 凶 悪 犯 は 、 矯 正 不 可 能 で あ り 社 会 秩 序 維 持 の た め に 淘 汰 す る 必 要 が あ る 。 そ の た め 社 会 か ら 永 久 に 隔 絶 す る こ と で 再 犯 可 能 性 を 完 全 に 根 絶 す る 手 段 と し て 死 刑 は 有 用 で あ る ﹂ と な る 。 そ の た め 、 再 犯 さ せ な い 究 極 の 手 段 と し て 死 刑 は 容 認 さ れ る と い う も の で あ る 。 な お 日 本 の 死 刑 制 度 を 合 憲 と し た 最 高 裁 判 例 ︵ 最 大 判 昭 23 ・ 3 ・ 12 ︶ は 、 こ の 特 別 予 防 論 を 死 刑 制 度 の 根 拠 と し て い る が 、 永 山 事 件 判 決 は 一 般 予 防 の 見 地 か ら も 罪 刑 均 衡 の 見 地 か ら も 止 む を 得 な い 場 合 に 限 り 死 刑 適 用 が 許 さ れ る と し て お り 、 以 降 の 裁 判 例 や 検 察 官 の 論 告 で も こ の 表 現 が 引 用 さ れ る こ と が 多 い 。
● 被 害 者 感 情 に 応 じ る 為 に 必 要 と す る 存 置 論
日 本 に お い て 、 凶 悪 犯 罪 に 対 す る 世 論 の 厳 罰 化 傾 向 が 強 ま っ た 背 景 に は 、 従 来 な お ざ り に さ れ て き た 犯 罪 被 害 者 へ の 関 心 が 高 ま っ た こ と が 一 因 と さ れ 、 遺 族 の 応 報 感 情 を 満 た す こ と を 目 的 と し て 死 刑 存 置 論 が 主 張 さ れ る こ と が あ る 。 ま た 死 刑 が 執 行 さ れ な い と 私 刑 [ 注 釈 20 ] が 増 加 す る 危 険 性 が あ る と し た 上 で 、 被 害 者 の 遺 族 を 納 得 さ せ る た め に は 必 要 悪 で あ る と い う 主 張 が あ る 。 ま た 存 置 論 者 は 廃 止 論 者 に 対 し て 自 身 が 犯 罪 被 害 者 に な る こ と を 想 定 し て い る の か と 指 摘 す る こ と が あ る ︵ な お 、 1 9 5 6 年 の 銀 座 母 娘 殺 し 事 件 で は 廃 止 論 者 の 弁 護 士 磯 部 常 治 が 妻 子 を 殺 害 さ れ て も な お 死 刑 廃 止 の 立 場 を 変 え な か っ た 例 が あ る が 、 岡 村 勲 弁 護 士 の 事 件 に 比 べ て 、 メ デ ィ ア な ど で は 取 り 上 げ ら れ る こ と は な い ︶ 。
2 0 0 9 年 現 在 で は 、 法 務 省 は 冤 罪 の 疑 い が あ り 再 審 請 求 中 の 死 刑 囚 に つ い て は 、 死 刑 の 執 行 は 法 務 大 臣 の 決 裁 が 必 要 で あ る こ と 、 お よ び 、 冤 罪 で 死 刑 を 執 行 し た 場 合 は 無 期 刑 や 有 期 刑 を 執 行 し た 場 合 と 比 較 し て 、 非 難 が 大 き い の で 、 法 務 省 と し て 明 示 的 に 宣 言 は し て い な い が 、 現 実 の 運 用 と し て は 、 死 刑 囚 が 再 審 で 無 罪 判 決 を 受 け る か 、 ま た は 、 死 刑 囚 が 天 寿 を 全 う し て 死 ぬ ま で 執 行 し な い 運 用 を し て い る 。
1 9 4 0 年 代 後 半 か ら 1 9 6 0 年 代 に か け て 静 岡 県 内 で は 、 再 審 で 死 刑 判 決 が 破 棄 さ れ た 島 田 事 件 の ほ か 、 上 級 審 で 死 刑 破 棄 ・ 無 罪 に な っ た 幸 浦 事 件 や 二 俣 事 件 と い っ た 冤 罪 事 件 が 多 発 し た 。 ほ か に も 現 在 も 冤 罪 の 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る 袴 田 事 件 も す べ て 静 岡 県 で あ り 、 全 国 的 に 見 て も 冤 罪 が 多 発 し て い る 。 こ の 背 景 に は 静 岡 県 警 の 紅 林 麻 雄 警 部 ︵ 1 9 0 8 年 - 1 9 6 3 年 、 本 人 は 発 覚 直 後 に 病 死 し た た め 県 警 本 部 長 表 彰 は さ れ た が 、 刑 事 責 任 に は 問 わ れ て い な い ︶ が 拷 問 に よ る 尋 問 、 自 白 の 強 要 に よ っ て 得 ら れ た 供 述 調 書 の 作 成 に よ っ て ﹁ 事 件 解 決 ﹂ を 図 っ た た め で あ り 、 ま た ﹁ 自 白 ﹂ に 沿 っ た 証 拠 品 の 捏 造 ま で 行 っ た こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 こ の 手 法 が 同 県 警 内 部 で こ の よ う な 捜 査 手 法 が も て は や さ れ 、 他 の 警 察 署 で も 行 わ れ た の が 冤 罪 多 発 の 一 因 だ と い わ れ て い る 。 な お 、 強 要 に よ り 得 ら れ た 自 白 は 憲 法 38 条 2 項 及 び 刑 事 訴 訟 法 3 1 9 条 1 項 に よ り 証 拠 能 力 が 否 定 さ れ る と は い え 密 室 で の 取 調 べ に お け る 自 白 の 強 要 を 公 判 で 明 ら か に す る こ と は 必 ず し も 容 易 で は な く 、 思 い 込 み に よ る 捜 査 ミ ス に よ る 冤 罪 の 発 生 は 完 全 に は 否 定 で き な い と い わ れ て い る 。
実 際 に 21 世 紀 に 入 っ て も 死 刑 求 刑 に た い し 証 拠 不 十 分 で 無 罪 に な っ た 北 方 事 件 や 、 死 刑 適 用 事 件 で は な い が 、 被 告 人 が 抗 弁 を あ き ら め て 有 罪 に な り か か っ た 宇 和 島 事 件 や 、 捜 査 や 裁 判 当 時 の 科 学 鑑 定 の 精 度 の 低 さ に よ り 真 犯 人 と 誤 認 さ れ 有 罪 判 決 を 受 け た が 、 服 役 中 に 科 学 鑑 定 の 精 度 が 向 上 し 冤 罪 が 判 明 し た 足 利 事 件 や 、 服 役 後 に 真 犯 人 が 判 明 し た 氷 見 事 件 が 発 生 し て お り 、 科 学 的 捜 査 手 法 が 発 達 し た 現 在 も 人 が 犯 罪 捜 査 を 行 う 以 上 、 こ の よ う な 冤 罪 事 件 は 散 発 的 に 発 生 し て お り 、 冤 罪 に よ る 死 刑 執 行 あ る い は 獄 中 死 の 危 険 性 は 完 全 に 否 定 で き な い と い え る 。 た だ し 、 関 係 者 に 面 識 が な い 場 合 の 強 姦 殺 人 事 件 に お い て D N A の 照 合 な ど は 証 拠 と し て 決 定 的 で あ り 、 こ れ に よ っ て 無 実 が 証 明 さ れ 釈 放 さ れ た 例 が あ る だ け で な く 、 こ の 証 拠 に よ っ て 有 罪 が 確 定 し た 場 合 の 冤 罪 の 可 能 性 は 極 め て 低 い 。
ま た 冤 罪 で は な い に し て も 裁 判 の 事 実 認 定 に 誤 り が あ っ た た め に 、 主 犯 が 処 刑 を 免 れ 従 犯 を 処 刑 に し た 誤 判 は 実 際 に 存 在 す る 。 1 9 4 6 年 に 奈 良 県 内 で 発 生 し た 強 盗 殺 人 事 件 で は ﹁ 主 犯 ﹂ と さ れ た 者 が 処 刑 さ れ た が 、 懲 役 刑 で 服 役 し た ﹁ 従 犯 ﹂ が 1 9 5 8 年 に 実 業 家 と し て 成 功 し て い た 本 当 の 主 犯 を 恐 喝 し て 逮 捕 さ れ た た め に 、 た だ の 見 張 り を 主 犯 に で っ ち 上 げ て い た 真 相 が 発 覚 し た 実 例 [ 1 0 6 ] な ど が あ る と い う 。 古 谷 惣 吉 連 続 殺 人 事 件 で は 、 最 初 の 2 件 の 強 盗 殺 人 で は 共 犯 を ﹁ 主 犯 ﹂ と 誤 判 し て 死 刑 が 執 行 さ れ 、 ﹁ 従 犯 ﹂ と 誤 認 し た 古 谷 が 出 所 後 に 8 人 も 殺 害 し た 事 件 が あ っ た 。 古 谷 が こ の 事 件 で 逮 捕 起 訴 [ 注 釈 21 ] さ れ た の は ﹁ 主 犯 ﹂ 処 刑 後 で あ り 、 懲 役 10 年 の 刑 期 出 所 後 の 一 ヶ 月 で 8 人 も 殺 害 し て い た 。 そ の た め ﹁ 主 犯 ﹂ と 誤 判 さ れ た 者 の 死 刑 が 執 行 さ れ ず に 本 当 の 事 実 関 係 が 明 ら か に な っ て い れ ば 、 後 の 8 人 が 殺 害 さ れ る こ と も 防 げ た は ず だ と 批 判 さ れ た 。 ま た 1 9 4 6 年 に 発 生 し た 福 岡 事 件 で は 殺 害 さ れ た 中 国 人 被 害 者 の 関 係 者 に よ る 傍 聴 人 の 存 在 が 事 実 認 定 に 影 響 を 与 え 、 犯 行 現 場 に い な か っ た 第 三 者 を 主 犯 と し て 処 刑 に し た と の 批 判 も 現 在 も 根 強 く あ る 。
現 実 問 題 と し て 、 冤 罪 ︵ 傷 害 致 死 だ と し て 事 実 誤 認 を 理 由 に す る 場 合 も あ る ︶ の 疑 い が あ る と し て 再 審 請 求 し て い る 死 刑 囚 の 死 刑 執 行 [ 注 釈 22 ] が 避 け ら れ る 傾 向 に あ る 。
刑 事 訴 訟 法 の 4 7 5 条 は ﹁ 確 定 か ら 6 カ 月 以 内 に 法 務 大 臣 が 死 刑 の 執 行 を 命 令 し ﹂ と あ る た め 、 死 刑 執 行 は 死 刑 判 決 確 定 後 6 ヶ 月 以 内 に 執 り 行 わ な け れ ば な ら な い の に 現 実 は 違 う と の 批 判 も あ る が 、 実 際 に は 法 務 当 局 が 死 刑 執 行 命 令 の 検 討 を 慎 重 に 行 っ て い る 為 で あ る と さ れ る 。 ま た 同 法 4 7 5 条 2 項 但 し 書 に ﹁ 上 訴 権 回 復 若 し く は 再 審 の 請 求 、 非 常 上 告 又 は 恩 赦 の 出 願 若 し く は 申 出 が さ れ そ の 手 続 が 終 了 す る ま で の 期 間 及 び 共 同 被 告 人 で あ つ た 者 に 対 す る 判 決 が 確 定 す る ま で の 期 間 は 、 こ れ を そ の 期 間 に 算 入 し な い ﹂ と あ り 、 再 審 請 求 中 も し く は 恩 赦 出 願 中 ま た は 共 犯 が 逃 亡 中 の 死 刑 囚 は 、 死 刑 執 行 ま で の 半 年 間 に 算 入 し な い と の 規 定 が あ る た め 、 執 行 が 猶 予 さ れ る 傾 向 に あ る 。
2 0 0 0 年 ご ろ ま で 原 則 的 に は 死 刑 確 定 順 に 死 刑 が 執 行 さ れ て い た が 、 組 織 犯 罪 で は 共 犯 者 が 逃 亡 中 や 未 確 定 で あ る 事 例 ︵ 連 合 赤 軍 事 件 ・ 三 菱 重 工 爆 破 事 件 ︶ や 冤 罪 を 訴 え て 再 審 請 求 中 の 者 、 も し く は 闘 病 中 の 者 は 除 外 さ れ 、 事 実 関 係 に 争 い が な く 死 刑 判 決 を 受 け 入 れ 支 援 者 も な く 外 部 と の 連 絡 も な い ﹁ 模 範 死 刑 囚 ﹂ が 先 に 執 行 が 行 わ れ て い る と い う 指 摘 が あ る [ 1 0 7 ] 。 東 京 拘 置 所 の 収 監 さ れ て い た 死 刑 囚 ︵ 2 0 0 8 年 獄 死 ︶ の 著 書 [ 1 0 8 ] に よ れ ば 、 1 9 8 3 年 に 練 馬 一 家 5 人 殺 害 事 件 で 1 9 9 6 年 11 月 に 死 刑 が 確 定 し た 死 刑 囚 は 、 拘 置 所 側 か ら ﹁ 自 身 の た め ﹂ と 説 得 さ れ 、 支 援 者 へ の 面 会 を 一 切 拒 否 す る よ う に な り 、 看 守 に 対 し て 丁 寧 か つ 謙 虚 な 態 度 で 接 し て い た と い う 。 早 期 の 死 刑 執 行 を 望 ん だ た め か 、 は た ま た 死 刑 回 避 を 望 ん だ た め か は 今 と な っ て は わ か ら な い が 、 確 定 5 年 後 の 2 0 0 1 年 12 月 に 死 刑 執 行 が 行 わ れ た 。 な お 、 こ の 著 者 は 仲 間 と 一 緒 に 1 9 8 4 年 に 3 人 を 残 虐 な 手 口 で 殺 害 し た 元 警 察 官 で あ り 、 1 9 9 3 年 に 上 告 を 取 り 下 げ て 死 刑 が 確 定 し た が 、 前 述 の 練 馬 の 元 死 刑 囚 よ り も 早 く 死 刑 が 確 定 し て い な が ら 、 死 刑 執 行 さ れ る こ と な く [ 注 釈 23 ] 、 何 冊 か の 著 作 物 を 出 版 し て い る ほ ど で あ る 。 そ の た め 、 法 務 省 の 次 の 死 刑 執 行 対 象 者 の 選 定 基 準 に 公 開 さ れ て い な い 基 準 が あ る と 推 測 さ れ て い る 。 死 刑 執 行 が 行 わ れ な い 場 合 に は 事 実 上 の 仮 釈 放 の な い 終 身 刑 と な り 、 服 役 中 に 獄 死 し た 死 刑 囚 も 多 数 存 在 す る 。
な お 、 死 刑 執 行 後 に 冤 罪 が 明 ら か に な っ た 場 合 、 刑 事 補 償 法 第 3 条 第 3 項 は 被 執 行 者 遺 族 に 対 し て 3 , 0 0 0 万 円 以 内 の 補 償 を 行 う と 規 定 し て お り 、 さ ら に 本 人 の 死 亡 で 財 産 上 の 損 失 が 生 じ た 場 合 と 認 め ら れ る 場 合 に は ﹁ 損 失 額 + 3 , 0 0 0 万 円 ﹂ 以 内 の 額 と さ れ て い る が 、 こ の 金 額 は 犯 罪 被 害 者 遺 族 に 支 払 わ れ る 金 額 と 同 じ で あ る 。
過 去 に は 法 務 省 内 で も 死 刑 の 存 廃 や あ り 方 な ど を 議 論 し て き た 経 緯 が あ る 。 1 9 7 0 年 2 月 3 日 に は 、 法 制 審 議 会 、 刑 事 法 特 別 部 会 が 死 刑 の 存 続 に つ い て 審 議 を と り ま と め 、 死 刑 存 続 の 結 論 を 出 し た [ 1 0 9 ] 。 ま た 、 2 0 1 0 年 7 月 、 日 本 の 法 務 大 臣 の 下 に ﹁ 死 刑 の 在 り 方 に つ い て の 勉 強 会 ﹂ [ 1 ] が 設 け ら れ 、 2 0 1 2 年 3 月 、 そ の 取 り ま と め 報 告 が 公 表 さ れ た 。 当 初 は 、 死 刑 囚 に 死 刑 の 執 行 を ど の よ う に 知 ら せ る か 、 ま た 死 刑 の 執 行 の 情 報 を ど こ ま で 公 開 す る か も 議 論 さ れ る 予 定 で あ っ た が 、 議 論 は 尽 く さ れ た と す る 法 務 大 臣 小 川 敏 夫 に よ っ て 勉 強 会 は 10 回 の 会 合 を も っ て 打 ち 切 ら れ た 。
2 0 0 8 年 5 月 に は 国 際 連 合 の 国 連 人 権 理 事 会 が 日 本 の 人 権 状 況 に 対 す る 定 期 審 査 を 実 施 [ 1 1 0 ] し た が 、 こ の な か で 欧 州 を 中 心 に 12 ヶ 国 が 日 本 政 府 に 対 し 、 死 刑 執 行 停 止 や 死 刑 制 度 の 廃 止 な ど を 求 め た 。
こ れ は 前 述 の よ う に 国 連 総 会 で 死 刑 執 行 の 一 時 停 止 を 加 盟 国 に 求 め る 決 議 が 採 択 さ れ た に も か か わ ら ず 、 日 本 で 7 人 が 死 刑 執 行 さ れ た 状 況 を 踏 ま え 、 死 刑 制 度 廃 止 を 訴 え る 英 仏 な ど が 説 明 を 求 め た 。 こ れ に 対 し 、 日 本 代 表 は ﹁ 国 民 世 論 の 多 数 が 極 め て 悪 質 な 犯 罪 に つ い て は 死 刑 も や む を 得 な い と 考 え て い る ﹂ と 指 摘 し 、 ﹁ 国 連 総 会 決 議 の 採 択 を 受 け て 死 刑 執 行 の 猶 予 、 死 刑 の 廃 止 を 行 う こ と は 考 え て い な い ﹂ と の 立 場 を 表 明 し た 。 人 権 理 事 会 は 日 本 に 死 刑 制 度 の 廃 止 を 勧 告 す る 人 権 状 況 の 改 善 を 求 め た 審 査 報 告 を ま と め て い る 。
ま た 、 国 連 の 自 由 権 規 約 人 権 委 員 会 は 、 2 0 0 8 年 10 月 30 日 に 5 回 目 と な る 対 日 審 査 ・ 最 終 見 解 を 公 表 し た 。 そ の 中 で 、 国 民 世 論 の 支 持 を 死 刑 制 度 の 存 置 の 根 拠 と し て い る 点 に つ い て ﹁ 政 府 は 国 民 に 廃 止 が 望 ま し い こ と を 知 ら せ る べ き だ ﹂ と 主 張 。 さ ら に ﹁ 世 論 調 査 に 関 係 な く 死 刑 制 度 の 廃 止 を 検 討 す べ き だ ﹂ と の 改 善 勧 告 を 行 っ た [ 1 1 1 ] 。
2 0 0 9 年 9 月 、 ロ ン ド ン に 本 部 を 置 く 国 際 的 な 人 権 団 体 ア ム ネ ス テ ィ ・ イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル は 、 日 本 の 死 刑 囚 は 独 房 に 入 れ ら れ 精 神 病 に 追 い や ら れ る よ う な 非 人 間 的 な 扱 い を 受 け て お り 、 そ の た め に 重 い 精 神 病 を 患 っ た 死 刑 囚 に 対 し て 死 刑 執 行 を 行 う こ と は 国 際 法 に 反 し て い る 、 と 主 張 し て い る [ 1 1 2 ] 。 日 本 で 新 政 権 を 担 う こ と に な る 民 主 党 に 、 死 刑 囚 を 精 神 病 に 追 い 込 む よ う な 、 閉 ざ さ れ た 明 か り も 無 い 独 房 に 閉 じ 込 め る こ と が な い よ う 改 善 を 求 め て い る 。 2 0 1 8 年 7 月 6 日 に オ ウ ム 真 理 教 の 教 祖 麻 原 彰 晃 を は じ め と す る オ ウ ム 元 幹 部 13 人 が 死 刑 執 行 さ れ た と き に ﹁ 処 刑 は 正 義 の 実 現 に は な り え な い 。 [ 1 1 3 ] ﹂ と 声 明 を 出 し た 。 ア ム ネ ス テ ィ は 国 連 の よ う な ダ ブ ル ス タ ン ダ ー ド を 用 い ず 、 す べ て の 死 刑 執 行 に 対 し て 一 応 の 声 明 を 出 し て い る 。 た だ し 、 イ ギ リ ス は 死 刑 は な く と も 暗 殺 は 目 立 ち [ 1 1 4 ] 、 な お か つ 終 身 刑 が 下 さ れ る ﹁ テ ロ に 屈 す る ﹂ 国 の 一 つ で あ る こ と に 留 意 す る 必 要 が あ る 。
日 本 で は 、 政 府 の 総 理 府 ︵ 現 在 の 内 閣 府 ︶ が 5 年 毎 ︵ 平 成 時 代 以 前 は 不 定 期 ︶ に 実 施 し て い る 世 論 調 査 に お い て 死 刑 制 度 に 関 す る 調 査 が 行 わ れ て い る 。 以 下 は 2 0 1 9 年 の 調 査 結 果 で あ る 。
● ﹁ 死 刑 制 度 に 関 し て 、 こ の よ う な 意 見 が あ り ま す が 、 あ な た は ど ち ら の 意 見 に 賛 成 で す か ﹂ ︵ 2 0 1 9 年 11 月 内 閣 府 実 施 ﹁ 基 本 的 法 制 度 に 関 す る 世 論 調 査 ﹂ か ら 引 用 ︶
● ︵ ア ︶ 死 刑 は 廃 止 す べ き で あ る ‐ 9 . 0 %
● ︵ イ ︶ 死 刑 も や む を 得 な い ‐ 8 0 . 8 %
● わ か ら な い ・ 一 概 に 言 え な い ‐ 1 0 . 2 %
こ の う ち 、 ﹁ 死 刑 も や む を 得 な い ﹂ と 答 え た 者 に ﹁ 将 来 も 死 刑 を 廃 止 し な い 方 が よ い と 思 い ま す か 、 そ れ と も 、 状 況 が 変 わ れ ば 、 将 来 的 に は 、 死 刑 を 廃 止 し て も よ い と 思 い ま す か 。 ﹂ と の 設 問 を 設 け 、 以 下 の 結 果 と な っ た 。
● ︵ ア ︶ 将 来 も 死 刑 を 廃 止 し な い ‐ 5 4 . 4 %
● ︵ イ ︶ 状 況 が 変 わ れ ば 、 将 来 的 に は 、 死 刑 を 廃 止 し て も よ い ‐ 3 9 . 9 %
全 員 に ﹁ も し 、 仮 釈 放 の な い ﹁ 終 身 刑 ﹂ が 新 た に 導 入 さ れ る な ら ば 、 死 刑 を 廃 止 す る 方 が よ い と 思 い ま す か 、 そ れ と も 、 終 身 刑 が 導 入 さ れ て も 、 死 刑 を 廃 止 し な い 方 が よ い と 思 い ま す か 。 ﹂ と の 質 問 を 設 け 、 以 下 の 結 果 と な っ た 。
● ﹁ 廃 止 し な い 方 が よ い ﹂ - 5 2 . 0 %
● ﹁ 廃 止 す る 方 が よ い ﹂ - 3 5 . 1 %
● わ か ら な い ・ 一 概 に は 言 え な い - 1 2 . 8 %
以 上 の 結 果 か ら 、 法 務 省 は 世 論 調 査 で は 国 民 の 8 割 以 上 が 死 刑 存 置 に 賛 成 し て い る と 主 張 し て い る 。 過 去 に は 日 弁 連 な ど が 政 府 の 世 論 調 査 に は 設 問 の 表 現 に 偏 り が あ り 、 死 刑 賛 成 に 誘 導 さ れ や す い 世 論 調 査 と 強 く 非 難 し 、 情 報 公 開 が 進 め ば 死 刑 存 置 に 反 対 し て い る 国 民 が 多 く 存 在 す る は ず で あ る と 主 張 し て い た が [ 1 1 5 ] 、 批 判 を 受 け 設 問 を 単 純 化 し た 2 0 1 4 年 か ら の 調 査 で も 日 本 国 内 の 死 刑 容 認 論 の 根 強 さ が 浮 き 彫 り に な っ て い る [ 1 1 6 ] 。
以 後 、 日 弁 連 は ﹁ 死 刑 廃 止 が 必 ず し も 国 民 世 論 の 少 数 に な る と は 限 ら な い 。 ﹂ [ 1 1 7 ] と 現 状 の 世 論 に つ い て は 存 置 が 多 数 派 で あ る 事 を 程 度 認 め て る が 、 他 国 で は 世 論 で は 死 刑 支 持 率 が 高 い な か 死 刑 を 廃 止 し た の だ か ら 日 本 も 世 論 調 査 の 結 果 は 死 刑 存 置 の 理 由 に は な ら な い と 主 張 し て い る [ 1 1 8 ] 。
一 般 人 に 対 す る 世 論 調 査 で は 死 刑 に 対 し 支 持 す る 割 合 は 高 い が 、 刑 事 司 法 関 係 者 を 対 象 に し た 調 査 で は 法 学 研 究 者 や 弁 護 士 の 過 半 数 が 死 刑 反 対 で あ る 一 方 で 検 察 官 や 警 察 官 は 多 数 が 死 刑 賛 成 で あ る [ 1 1 9 ] と い う 。 こ れ は 弁 護 士 が 犯 罪 加 害 者 を 擁 護 す る 職 種 で あ る に た い し て 警 官 や 検 察 官 は 犯 罪 加 害 者 を 追 求 お よ び 糾 弾 す る 立 場 に あ る と と も に 、 弁 護 側 と 違 い 被 害 者 遺 族 の 立 場 を 取 る こ と を 考 え れ ば 当 然 で あ る 。 法 学 者 の 場 合 に は 死 刑 が 根 本 的 に は 人 権 の 侵 害 で あ る と い う 事 実 が あ る た め 死 刑 反 対 派 と な る 傾 向 が 高 い が 、 無 論 、 法 学 者 の な か に も 死 刑 制 度 を 存 置 す べ き だ と 主 張 す る 者 も 少 な く な い 。 ま た 死 刑 に 反 対 す る こ と を 理 由 に 検 察 官 を 止 め て 弁 護 士 に な っ た 元 検 事 [ 1 2 0 ] 、 死 刑 判 決 を し た く な い と い う 理 由 で 民 事 裁 判 の み を 希 望 す る 裁 判 官 [ 1 2 1 ] も 存 在 す る 。 そ の 一 方 で 死 刑 囚 処 遇 を 担 当 し て い た 刑 務 官 の 中 に は 死 刑 制 度 に 疑 問 を 呈 し て い る 者 も 少 な く な い [ 注 釈 24 ] 。
日本の国会議員に死刑存置の立場の議連はないが、これは日本は制度として死刑制度が存置されており、現状維持すればいいため、あらたに運動すべき必要がないためである。なお、昭和時代に検討されていた改正刑法草案では死刑の適用される犯罪を現行刑法よりも狭めることになっていた。
1 9 9 4 年 に 少 人 数 で は あ る が 超 党 派 の 議 員 連 盟 ﹁ 死 刑 廃 止 を 推 進 す る 議 員 連 盟 ﹂ ︵ 現 在 の 会 長 は 亀 井 静 香 ︶ が 発 足 し 、 日 本 に お け る 死 刑 廃 止 運 動 は 組 織 化 さ れ た 。 し か し 日 本 の 政 党 で 死 刑 制 度 廃 止 を 公 言 し て い る の は 日 本 共 産 党 だ け で あ る 。 そ の 一 方 で 死 刑 制 度 存 置 を 強 く 主 張 す る 政 治 家 は 、 検 察 官 な ど 法 務 官 僚 に 一 定 の 支 持 を 得 る 必 要 が あ る 現 職 の 法 務 大 臣 以 外 は 実 は ほ と ん ど い な い と の 指 摘 が あ る 。 た と え ば 、 イ ン タ ー ネ ッ ト 放 送 局 ﹁ ビ デ オ ニ ュ ー ス ・ ド ッ ト コ ム ﹂ で 死 刑 制 度 に 関 す る デ ィ ベ ー ト 番 組 が 制 作 さ れ た 際 、 東 京 拘 置 所 の 処 刑 設 備 を 見 学 し た こ と の あ る 保 坂 展 人 ︵ 当 時 衆 議 院 議 員 ︶ が ﹁ 死 刑 廃 止 論 者 ﹂ と し て 出 演 し た が 、 死 刑 存 置 派 の 国 会 議 員 を 放 送 局 で 探 し た と こ ろ 誰 も 出 演 し な か っ た た め 、 や む な く 刑 法 学 者 が 出 演 し た と い う 。 そ の た め 保 坂 は 死 刑 推 進 派 と い え る 国 会 議 員 は 実 際 に は 存 在 せ ず ﹃ 小 選 挙 区 制 に な っ た こ と か ら 、 多 く の 人 の 支 持 を 得 る 為 に は 死 刑 廃 止 と は い え な い 、 俗 論 に お も ね っ て い る だ け で あ る 。 そ の た め ︵ 欧 州 諸 国 と は 違 い 世 論 を 政 治 家 が 変 え よ う と い う リ ー ダ ー シ ッ プ が な い の で ︶ 日 本 は み ん な 横 並 び 意 識 が 働 い て い る ﹄ と 主 張 し て お り [ 1 2 2 ] 、 実 際 は 死 刑 制 度 を 存 置 す る の は 一 般 世 論 に 迎 合 し て い る 政 治 家 の 不 作 為 だ と し て い る 。
(一) ^ 実 際 に 1 9 8 0 年 代 に 起 き た 名 古 屋 保 険 金 殺 人 事 件 で は 従 犯 も 死 刑 に な っ た が 、 遺 族 が 従 犯 に つ い て は 死 刑 を 執 行 し な い よ う に と 運 動 し た 例 が あ り 、 結 局 主 犯 と と も に 死 刑 が 執 行 さ れ た 。
(二) ^ 刑 法 2 0 0 条 ︵ 1 9 9 7 年 削 除 廃 止 ︶ の 尊 属 殺 重 罰 規 定
(三) ^ ワ シ ン ト ン ア ン ド リ ー 大 学 に お け る ス ピ ー デ ィ ラ イ ス 教 授 の 講 演 会
(四) ^ ワ シ ン ト ン ア ン ド リ ー 大 学 に お け る ス ピ ー デ ィ ラ イ ス 教 授 の 講 演 会
(五) ^ こ の 死 刑 囚 は ノ イ ロ ー ゼ の た め 精 神 異 常 が 亢 進 し て い る と い わ れ 、 死 刑 確 定 か ら 30 年 以 上 経 過 し た 2 0 0 8 年 現 在 、 処 刑 さ れ て い な い 。
(六) ^ サ ン バ ー ナ デ ィ ー ノ で 2 0 1 5 年 12 月 2 日 に 起 き た 銃 乱 射 事 件 ﹁ 容 疑 者 は ﹃ 敬 虔 な イ ス ラ ム 教 徒 ﹄ ﹃ お と な し く て 礼 儀 正 し い ﹄ ﹂ で あ る 。
(七) ^ た だ し 実 際 に 政 治 体 制 も 政 府 批 判 を 許 さ な い 強 権 的 な も の で あ る と の 指 摘 も あ る 。
(八) ^ た と え ば 、 中 世 ヨ ー ロ ッ パ で は 姦 通 を 犯 し た 既 婚 者 女 性 は 原 則 的 に は 溺 死 刑 に 処 せ ら れ て い た 。
(九) ^ た だ し 、 現 在 で も イ ス ラ ム 法 を 重 要 視 し て い る 国 で は 、 不 倫 や 婚 前 性 交 渉 を 理 由 に 死 刑 に な る 場 合 も 存 在 す る 。
(十) ^ 例 え ば 斬 首 刑 の 執 行 具 の 一 つ で あ る ギ ロ チ ン は 、 斧 や 刀 に よ る 斬 首 で は 受 刑 者 に 必 要 以 上 の 苦 痛 を 与 え る と し て 導 入 さ れ た も の で あ っ た 。
(11) ^ た と え ば ド イ ツ の 17 世 紀 初 頭 の カ ロ リ ナ 法 時 代 に ラ イ プ ツ ィ ヒ の 刑 法 学 者 で あ っ た カ ル プ ツ ォ フ ︵ B e n e d i c t C a r p z o v ︶ は 裁 判 官 と し て 40 年 間 の 在 職 期 間 中 に 中 世 の 刑 法 を 推 奨 し 8 万 人 に 死 刑 を 言 い 渡 し 2 万 人 か ら 3 万 人 が 死 刑 執 行 さ れ た が 、 そ の 多 く は 魔 女 裁 判 で あ っ た 。
(12) ^ 当 時 の フ ラ ン ス 国 民 は 、 公 開 処 刑 を 興 奮 の た め の 娯 楽 と し て し か 見 て い な か っ た と 言 わ れ 、 死 刑 執 行 を 家 の 中 で 見 な が ら セ ッ ク ス を 行 っ て い た と い う 例 も 存 在 す る 。
(13) ^ 嵯 峨 天 皇 が 弘 仁 9 年 ︵ 8 1 8 年 ︶ に 死 刑 を 停 止 す る 宣 旨 ︵ 弘 仁 格 ︶ を 公 布 し て 死 刑 執 行 が 停 止 さ れ た 。
(14) ^ た だ し 朝 廷 へ の 反 逆 者 は 例 外 的 に 斬 首 さ れ て い た 。
(15) ^ 中 華 人 民 共 和 国 の 汚 職 ・ 経 済 犯 罪 や 、 シ ン ガ ポ ー ル の 麻 薬 犯 罪 、 一 部 中 東 諸 国 の イ ス ラ ー ム 法 に 基 づ く 宗 教 的 道 徳 観 違 反 な ど 。
(16) ^ 他 に も 、 内 乱 罪 や 外 患 誘 致 罪 の よ う に 、 た と え 人 命 が 奪 わ れ て い な く て も 、 ﹁ 祖 国 に 対 す る 裏 切 り 行 為 ﹂ は 死 刑 が 適 用 ︵ 後 者 は 死 刑 の み ︶ さ れ る が 、 刑 法 制 定 以 来 適 用 例 が 存 在 し な い た め 除 外 す る 。
(17) ^ こ の 決 議 で は 、 死 刑 の 密 行 主 義 と 過 酷 な 拘 禁 状 態 が 非 難 さ れ て い る 。
(18) ^ 代 用 監 獄 の 廃 止 、 虚 偽 の 自 白 を 防 ぐ た め の 取 り 調 べ 録 画 。
(19) ^ 廃 止 さ れ て い る 場 合 に は 復 活 。 明 確 な 意 味 で 復 活 し た の は イ タ リ ア な ど 少 数 で あ る 。
(20) ^ 19 世 紀 か ら 20 世 紀 の ア メ リ カ 合 衆 国 で は 裁 判 で 死 刑 に な ら な か っ た り 、 裁 判 を 受 け る 前 の 殺 人 犯 を 連 れ 出 し て 群 衆 が リ ン チ 殺 人 を お こ な う 事 例 が あ っ た と い わ れ て い る 。
(21) ^ こ れ は 古 谷 が 偽 名 で 他 の 刑 務 所 に 服 役 し て い た た め で あ る 。 な お 、 ど の よ う に 抗 弁 し た か は 不 明 で あ る が 、 死 人 に 口 な し の 幸 い が 自 己 の 責 任 を 軽 く し た た め 、 死 刑 相 当 の 犯 行 で あ る に も か か わ ら ず 比 較 的 軽 微 な 刑 事 処 分 と な っ て い る 。
(22) ^ 明 ら か に 死 刑 執 行 の 引 き 伸 ば し を 図 っ て い る 場 合 に は 、 再 審 棄 却 直 後 な い し 申 請 中 に 死 刑 執 行 が 行 わ れ る 場 合 も 少 な く は な い 。
(23) ^ 別 冊 宝 島 に よ れ ば 、 上 告 を 取 り 下 げ て 死 刑 を 確 定 さ せ た ほ う が 結 果 的 に 死 刑 が 先 送 り に な る と い う 法 則 を 実 践 し て い る 向 き が あ る と し て い る ほ か 、 共 犯 も 死 刑 判 決 を 受 け て い る た め 、 2 人 同 時 の 処 刑 が 必 要 で あ る た め と の 指 摘 も あ る 。
(24) ^ 別 冊 宝 島 ﹁ い の ち と は 何 か ? ﹂ の な か で 、 元 刑 務 官 で 著 述 業 の 阪 本 敏 夫 は 、 死 刑 囚 と の 交 流 体 験 を 述 べ た 上 で 、 近 年 に な っ て 法 務 大 臣 が 死 刑 執 行 の 自 動 化 や 死 刑 執 行 の 秘 密 裏 に 行 わ れ て い る 現 状 か ら 、 い の ち の 重 み が 軽 く な っ た と の 感 情 で あ る と し て い る 。
(一) ^ 正 木 亮 の ﹃ 刑 事 政 策 汎 論 ﹄ と 、 斉 藤 静 敬 の ﹃ 新 版 死 刑 再 考 論 ﹄ 、 藤 本 哲 也 の ﹃ 刑 事 政 策 概 論 ﹄ な ど
(二) ^ ﹃ 死 刑 廃 止 論 ﹄ ︵ 有 斐 閣 、 初 版 1 9 9 1 年 、 6 版 2 0 0 0 年 ︶ , 団 藤 重 光 .
(三) ^ 朝 日 新 聞 2 0 0 7 年 12 月 20 日
(四) ^ 森 下 忠 ﹃ 刑 事 政 策 大 綱 ﹄ ︵ 成 文 堂 ︶
(五) ^ a b A m n e s t y I n t e r n a t i o n a l , D e a t h S e n t e n c e s a n d E x c u t i o n s 2 0 1 0 .
(六) ^ 日 本 に 対 す る 国 連 拷 問 禁 止 委 員 会 の 結 論 及 び 勧 告
(七) ^ ﹁ 死 刑 廃 止 は 世 界 の 流 れ ﹂ 弁 護 士 小 川 原 優 之
(八) ^ ﹁ 死 刑 執 行 に 関 す る 会 長 声 明 ﹂ 東 京 弁 護 士 会 会 長 山 本 剛 嗣
(九) ^ “ 米 各 州 で 死 刑 制 度 廃 止 の 動 き 、 経 費 削 減 の た め ” . A F P B B N e w s . A F P 通 信 ( ク リ エ イ テ ィ ヴ ・ リ ン ク ) . ( 2 0 0 9 年 2 月 18 日 ) . https://www.afpbb.com/articles/-/2572851?pid=3819120 2 0 0 9 年 4 月 2 日 閲 覧 。 一 例 と し て
(十) ^ ス ピ ー デ ィ ー ・ ラ イ ス 教 授 の 講 義
(11) ^ 日 本 弁 護 士 連 合 会 ﹃ 死 刑 執 行 停 止 を 求 め る ﹄ 日 本 評 論 社 、 45 頁
(12) ^ M u r d e r V i c t i m s ' F a m i l i e s f o r R e c o n c l i a t i o n 2 0 0 9 年 9 月 18 日 閲 覧
(13) ^ R e s t o r a t i v e J u s t i c e O n l i n e , C e n t r e f o r J u s t i c e a n d R e c o n c i l i a t i o n 2 0 0 9 年 9 月 18 日 閲 覧
(14) ^ R e s t o r a t i v e J u s t i c e - O f f e r s a d d i t i o n a l i n f o r m a t i o n a b o u t r e s t o r a t i v e j u s t i c e a n d r e l a t i o n s h i p s 2 0 0 9 年 9 月 18 日 閲 覧
(15) ^ R o g e r H o o d “ T h e d e a t h p e n a l t y , a w o r l d w i d e p e r s p e c t i v e ” 3 r d . e d O x f o r d u n i v e r s i t y p r e s s , 2 0 0 2 , p . 2 0 9 - 2 3 1
(16) ^ D e a t h P e n a l t y I n f o r m a t i o n C e n t e r > S t a t e b y S t a t e > S o u r c e s a n d A d d i t i o n a l I n f o r m a t i o n > S t a t e s w i t h a n d w i t h o u t t h e D e a t h P e n a l t y > M u r d e r R a t e s b y S t a t 2 0 1 0 年 10 月 17 日 閲 覧
(17) ^ D e a t h P e n a l t y I n f o r m a t i o n C e n t e r > S t a t e b y S t a t e D a t a b a s e 2 0 1 0 年 10 月 17 日 閲 覧
(18) ^ F B I > S a t s a n d S e r v i c e > C r i m e S t a t i s t i c s / U C R > U n i f o r m C r i m e R e p o r t s 2 0 0 9 > V i o l e n t C r i m e > T a b l e 4 2 0 1 0 年 10 月 17 日 閲 覧
(19) ^ F B I > S a t s a n d S e r v i c e > C r i m e S t a t i s t i c s / U C R > U n i f o r m C r i m e R e p o r t s 2 0 0 8 > V i o l e n t C r i m e > T a b l e 4 2 0 1 0 年 10 月 17 日 閲 覧
(20) ^ F B I > S a t s a n d S e r v i c e > C r i m e S t a t i s t i c s / U C R > U n i f o r m C r i m e R e p o r t s 2 0 0 6 > V i o l e n t C r i m e > T a b l e 4 2 0 1 0 年 10 月 17 日 閲 覧
(21) ^ F B I > S a t s a n d S e r v i c e > C r i m e S t a t i s t i c s / U C R > U n i f o r m C r i m e R e p o r t s > m o r e > 2 0 0 4 > F u l l D o c u m e n t ( P D F と 文 書 の 76 〜 84 ペ ー ジ ) 2 0 1 0 年 10 月 17 日 閲 覧
(22) ^ F B I > S a t s a n d S e r v i c e > C r i m e S t a t i s t i c s / U C R > U n i f o r m C r i m e R e p o r t s / m o r e > 2 0 0 1 > S e c t i o n I I C r i m e I n d e x O f f e n s e s R e p o r t e d ( P D F と 文 書 の 66 〜 75 ペ ー ジ ) 2 0 1 0 年 10 月 17 日 閲 覧
(23) ^ U n i t e d S t a t e s : U n i f o r m C r i m e R e p o r t - - S t a t e S t a t i s t i c s f r o m 1 9 6 0 - 2 0 0 9 2 0 1 0 年 10 月 17 日 閲 覧
(24) ^ U N O D C > D a t a a n d A n a l y s i s > C r i m e s u r v e y s > T h e p e r i o d i c U n i t e d N a t i o n s S u r v e y s o f C r i m e T r e n d s a n d O p e r a t i o n s o f C r i m i n a l J u s t i c e S y s t e m s > F i f t h S u r v e y ( 1 9 9 0 - 1 9 9 4 ) 2 0 0 9 年 8 月 31 日 閲 覧
(25) ^ U N O D C > D a t a a n d A n a l y s i s > C r i m e s u r v e y s > T h e p e r i o d i c U n i t e d N a t i o n s S u r v e y s o f C r i m e T r e n d s a n d O p e r a t i o n s o f C r i m i n a l J u s t i c e S y s t e m s > S i x t h S u r v e y ( 1 9 9 5 - 1 9 9 7 ) > S o r t e d b y v a r i a b l e 2 0 0 9 年 8 月 31 日 閲 覧
(26) ^ U N O D C > D a t a a n d A n a l y s i s > C r i m e s u r v e y s > T h e p e r i o d i c U n i t e d N a t i o n s S u r v e y s o f C r i m e T r e n d s a n d O p e r a t i o n s o f C r i m i n a l J u s t i c e S y s t e m s > S e v e n t h S u r v e y ( 1 9 9 8 - 2 0 0 0 ) > S o r t e d b y v a r i a b l e 2 0 0 9 年 8 月 31 日 閲 覧
(27) ^ U N O D C > D a t a a n d A n a l y s i s > C r i m e s u r v e y s > T h e p e r i o d i c U n i t e d N a t i o n s S u r v e y s o f C r i m e T r e n d s a n d O p e r a t i o n s o f C r i m i n a l J u s t i c e S y s t e m s > E i g h t h S u r v e y ( 2 0 0 1 - 2 0 0 2 ) > S o r t e d b y v a r i a b l e 2 0 0 9 年 8 月 31 日 閲 覧
(28) ^ U N O D C > D a t a a n d A n a l y s i s > C r i m e s u r v e y s > T h e p e r i o d i c U n i t e d N a t i o n s S u r v e y s o f C r i m e T r e n d s a n d O p e r a t i o n s o f C r i m i n a l J u s t i c e S y s t e m s > N i n t h S u r v e y ( 2 0 0 3 - 2 0 0 4 ) > V a l u e s a n d R a t e s p e r 1 0 0 , 0 0 0 T o t a l P o p u l a t i o n L i s t e d b y C o u n t r y 2 0 0 9 年 8 月 31 日 閲 覧
(29) ^ ア ム ネ ス テ ィ 国 際 事 務 局 : 死 刑 に 関 す る 一 問 一 答 A m n e s t y I n t e r n a t i o n a l : D o c u m e n t - T h e D e a t h P e n a l t y , Q u e s t i o n s a n d A n s w e r s
(30) ^ A P H R O S 死 刑 廃 止 と 死 刑 存 置 の 考 察 世 界 各 国 の 死 刑 存 廃 状 況 カ ナ ダ
(31) ^ 平 成 18 年 度 犯 罪 白 書 38 頁
(32) ^ a b 藤 井 誠 二 ﹃ 殺 さ れ た 側 の 論 理 … 犯 罪 被 害 者 遺 族 が 望 む ﹁ 罰 ﹂ と ﹁ 権 利 ﹂ ﹄ そ の 他 の 人 名 ︵ 初 版 ︶ 、 講 談 社 ︵ 原 著 2 0 0 7 年 3 月 6 日 ︶ 、 p . 1 0 2 頁 。 I S B N 9 7 8 4 0 6 2 1 3 8 6 1 1 。
(33) ^ 森 , 2 0 0 8 & M O R I 2 0 0 8 , p . 2 9 2
(34) ^ 佐 々 木 知 子 . “ ﹃ 死 刑 廃 止 ﹄ に は 反 対 ” . 佐 々 木 知 子 の ホ ー ム ペ ー ジ . 2 0 1 0 年 8 月 9 日 閲 覧 。
(35) ^ 福 岡 高 裁 h t t p : / / w w w . h o u - n a t t o k u . c o m / p r e c e d e n t / 0 1 2 1 . p h p
(36) ^ a b T h e P u n i s h e r ︵ ウ ェ イ バ ッ ク マ シ ン ︶ - h t t p : / / w w w . t i m e . c o m / t i m e / a s i a / m a g a z i n e / a r t i c l e / 0 , 1 3 6 7 3 , 5 0 1 0 2 0 7 0 1 - 2 6 5 4 8 0 , 0 0 . h t m l /
(37) ^ “ 麻 薬 常 習 者 は ﹁ 人 間 で は な い ﹂ 比 大 統 領 、 超 法 規 的 殺 人 を 正 当 化 ” . A F P B B N e w s . 2 0 2 1 年 6 月 25 日 閲 覧 。
(38) ^ “ フ ィ リ ピ ン ‥ A S E A N 各 国 は フ ィ リ ピ ン で の 大 量 殺 人 に 非 難 を ” . ア ム ネ ス テ ィ ・ イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル . 2 0 2 1 年 6 月 25 日 閲 覧 。
(39) ^ “ フ ィ リ ピ ン ・ マ ニ ラ の 治 安 改 善 の 影 で 広 が る 貧 富 の 格 差 ” . ハ ー バ ー ・ ビ ジ ネ ス ・ オ ン ラ イ ン . 2 0 2 1 年 6 月 25 日 閲 覧 。
(40) ^ ド ゥ テ ル テ 支 持 率 79 % は 秩 序 へ の 評 価 ︵ ウ ェ イ バ ッ ク マ シ ン ︶ - h t t p s : / / w w w . k y o d o . c o . j p / i n t l - n e w s / 2 0 1 9 - 0 5 - 3 0 _ 2 0 2 4 2 6 0 /
(41) ^ 星 新 一 ﹃ 進 化 し た 猿 た ち ﹄ 新 潮 社 、 20 頁
(42) ^ 2 0 1 5 年 の ア メ リ カ の 銃 乱 射 事 件 の 総 数 2 0 1 5 年 12 月 14 日 更 新 2 0 1 5 年 12 月 17 日 閲 覧
(43) ^ 産 経 新 聞 2 0 0 7 年 12 月 17 日
(44) ^ 毎 日 新 聞 2 0 0 7 年 12 月 20 日 朝 刊
(45) ^ A m n e s t y I n t e r n a t i o n a l , A b o l i t i o n i s t a n d R e t e n t i o n i s t C o u n t r i e s .
(46) ^ 斎 藤 静 敬 ﹃ 刑 事 政 策 ﹄ 創 成 社 79 頁
(47) ^ a b 斎 藤 静 敬 ﹃ 刑 事 政 策 ﹄ 創 成 社 80 頁
(48) ^ “ 日 本 に 死 刑 廃 止 検 討 求 め る 国 連 委 、 慰 安 婦 で も 初 勧 告 ” . M S N 産 経 ニ ュ ー ス ( 産 経 デ ジ タ ル ) . ( 2 0 0 8 年 10 月 31 日 ) . オ リ ジ ナ ル の 2 0 0 8 年 12 月 9 日 時 点 に お け る ア ー カ イ ブ 。 . https://web.archive.org/web/20081209035752/http://sankei.jp.msn.com/world/europe/081031/erp0810310934003-n1.htm 2 0 1 0 年 1 月 31 日 閲 覧 。
(49) ^ “ < 国 連 人 権 委 > 死 刑 廃 止 へ 日 本 政 府 に ﹁ 最 終 見 解 ﹂ ” . Y a h o o ! ニ ュ ー ス . 毎 日 新 聞 ( Y a h o o J a p a n ) . ( 2 0 0 8 年 10 月 31 日 ) . オ リ ジ ナ ル の 2 0 0 8 年 11 月 3 日 時 点 に お け る ア ー カ イ ブ 。 . https://web.archive.org/web/20081103104351/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081031-00000025-mai-int
(50) ^ 三 原 憲 三 ﹃ 死 刑 存 廃 論 の 系 譜 ﹄ 成 文 堂 1 0 - 1 1 頁
(51) ^ カ ー ル ・ バ ル ト ﹃ 国 家 の 暴 力 に つ い て 死 刑 と 戦 争 を め ぐ る 創 造 論 の 倫 理 ﹄ 新 教 出 版 社 3 4 - 5 頁 。 ま た 、 J . デ リ ダ / E . ル デ ィ ネ ス コ ﹃ 来 る べ き 世 界 の た め に ﹄ 岩 波 書 店 2 0 3 頁
(52) ^ ホ セ ・ ヨ ン パ ル ト ﹃ 刑 法 の 七 不 思 議 ﹄ 成 文 堂 2 2 6 頁
(53) ^ 三 原 憲 三 前 掲 書 13 頁
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