裁判管轄

国家の司法権・裁判権の存在を前提として、その裁判権の裁判所間における分担に関する管轄
民事裁判管轄から転送)

裁判管轄(さいばんかんかつ)または司法管轄(しほうかんかつ、: jurisdiction)とは、国家司法権・裁判権の存在を前提として、その裁判権の裁判所間における分担に関する管轄をいう。管轄のある裁判所を管轄裁判所という。

裁判管轄の歴史

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使



Reichskammergericht

裁判権

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条約による制限

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418574







使

31113713112371
使





使372

使373

32132232413242

323


国際慣習法による制限

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詳細については主権免除の項を参照のこと









188619031976

3122871128187216062542

国内法上の裁判権規定

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112043101160


民事裁判管轄

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民事裁判管轄(みんじさいばんかんかつ)とは、民事訴訟において、特定の事件について、どの裁判所が裁判権を行使するかという分担(管轄)の定めのことをいう。

国内裁判管轄(日本)

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今日の日本法の民事訴訟においては、国際裁判管轄・職分管轄・審級管轄・事物管轄・土地管轄のすべてが揃った裁判所が、事件を管轄する。職分管轄、審級管轄、事物管轄、土地管轄については法律で定められているが、土地管轄については一定の場合に合意管轄応訴管轄も認められている。

内容による分類

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法律の規定により直接定まる管轄のことを、法定管轄という。

職分管轄
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取り扱う事務について定める管轄のこと。訴訟する事件の内容によって、裁判所は変わる。例えば、訴訟事件を処理する権限と民事執行事件を処理する権限は別々の職分権である。

事物管轄
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事件の性質の違いに基づいて定められる管轄のこと。訴額(訴訟物の価額)が140万円以下の場合(不動産に関する訴訟を除く)は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所が第一審の裁判権を有する(例外的に高等裁判所が第一審の裁判権を担当する場合もある)。

土地管轄
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 - 5

1

2


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4

4

8

8

8

8

14

14

14

15


9

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5

7


3

6

強行性の有無による分類

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任意管轄
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 - 
専属管轄
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法定管轄のうち、公益的要請から裁判権が特定の裁判所に専属し、当事者の意思により変更することのできない管轄をいう。反対は任意管轄。
専属管轄の例 会社法835条(但し、著しい遅滞等を避けるのに必要と認められる場合、申立により移送が可能(第3項))、民事執行法19条、特許法178条

国内裁判管轄(アメリカ合衆国)

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32[1]In Personam Jurisdiction調

ペノイヤー判決

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アメリカ連邦最高裁の1877年のペノイヤー判決(Pennoyer v.Neff)は州裁判所の管轄権の基本原則に関する解釈をまとまった形で出した初めての判決となった[2]。ペノイヤー判決では州裁判所の非居住者に対する管轄権は州内で直接に送達を行ったときまたは州内でその所有する財産を差し押さえたときに限って裁判管轄権を有すると判断した[2]

人的裁判管轄権・物的裁判管轄権の拡張

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アメリカ連邦最高裁の1945年のインターナショナルシュー判決では州裁判所の管轄権について法廷地との間で最小限度の接触(minimum contact)があるのと同時に訴訟の提起が伝統的な公明正大で実質的正義という概念に矛盾しないことを要件とし州裁判所の人的裁判管轄権を拡張した[3]。1977年のアメリカ連邦最高裁判決(Shaffer v.Heitner)でインターナショナルシュー判決の基準は州裁判所の物的裁判管轄権にも拡張された[4]

国際裁判管轄

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合意による国際裁判管轄

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PrivatautonomieParteiautonomie2011[5]




 

 

54731018221916


















4

111(a) (b) 2

1975Supreme CourtBremenZapata[6]

法定の国際裁判管轄

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使2011





5610163571224

245815







41(a) (b) (c) 42(c)

5

exorbitant jurisdictionRechtsverweigerung32

3231211

応訴管轄

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応訴管轄とは、民事につき訴えの提起のあった当該裁判所において、相手方が管轄を問題とせずに訴訟に応じた場合、専属管轄外でない限りは当該裁判所に管轄が発生することをいう(民事訴訟法12条)。当事者間の裁判所へのアクセス負担の公平化という管轄の趣旨からは、相手方が応訴することで管轄に合意しているのであれば、あえて管轄を問題とすることがないという、民事訴訟法における私的自治の一表象であるといえる。

補論:forum (non) conveniensの法理

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英米法においては、国際裁判管轄が肯定されるような場合でも、forum conveniensでないとして裁判を拒絶する法理があり、これをforum (non) conveniensの法理という。

脚注

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  1. ^ 合衆国憲法第3条第2節 Wikiresource アメリカ合衆国憲法
  2. ^ a b 藤倉皓一郎木下毅高橋一修樋口範雄 『英米判例百選 第3版』 有斐閣 1996年 p160-161
  3. ^ 藤倉皓一郎木下毅高橋一修樋口範雄 『英米判例百選 第3版』 有斐閣 1996年 p162-163
  4. ^ 藤倉皓一郎木下毅高橋一修樋口範雄 『英米判例百選 第3版』 有斐閣 1996年 p165
  5. ^ 最高裁判所昭和50年11月28日判決、民集29巻10号1554頁
  6. ^ The Bremen v. Zapata Off-Shore Co., 407 U.S. 1、1972年