気動車

人員・荷物等の積載空間を有し、熱機関で自走する鉄道車輛

気動車(きどうしゃ)とは、人員・荷物もしくは貨物を積載する空間を有し、動力源として内燃機関蒸気機関などの熱機関を搭載して自走する鉄道車両である。


(Diesel Car, DC) [1] DMU(Diesel Multiple-Unit) [2](Railcar) 

概要

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電車と同様に動力分散方式の鉄道車両に分類される。一両ごとに蒸気もしくは内燃機関を搭載し、単独または複数両の車両で運行される。複数両の車両を連ねる場合には、かつては動力車一両ごとに運転手が乗務してそれぞれの車両を操作していたが、現在では先頭車の運転台から一括して制御する総括制御方式が一般化している。気動車の構造はその種類により異なる。

機関・燃料の種類による分類

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蒸気動車

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使

 184718471023[1]使[2]

内燃動車

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ガソリン動車、ディーゼル動車、天然ガス動車、ガス発生炉搭載動車(発生炉ガス動車)、ガスタービン動車など内燃機関を搭載した気動車を内燃動車と呼ぶこともある。この他、動力を持たない気動車として付随車(気動付随車)と制御車(気動制御車)があり、動力を持つ気動車とともに使用される。

ガソリン動車

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大正時代から1950年代までは、燃料にガソリンを使用したガソリンエンジンを動力とする「ガソリン動車」(「ガソリンカー」とも)が存在し、取り扱いの簡易さから特に1930年代には盛んに用いられた。1940年西成線列車脱線火災事故とその後のディーゼルエンジン技術の改良がきっかけとなり、安全性と経済性に劣るガソリン動車は戦後すぐに置き換えが進み、日本においては1969年磐梯急行電鉄廃止に伴い営業用車両は全廃されている。

ディーゼル動車

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4[3]2[4]

3645010

使JR

ガス発生炉搭載動車・天然ガス動車

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1940使

[5][6] 

ガスタービン動車

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ガスタービンエンジンを搭載した「ガスタービン動車」(「ターボトレイン」とも)も研究され、1960年代以降アメリカカナダフランス・革命前のイラン(フランスより輸入)などで実用化されたが、日本では燃費の悪さと甲高い騒音、故障の頻発が嫌われ、さらにオイルショックにも見舞われたため、キハ07 901キハ391-1の2両が試作されたのみで、実用化されなかった。

日本国外ではマイクロガスタービンを使用した新世代ガスタービン-エレクトリック式気動車が開発されつつある。

動力伝達方式による分類

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機械式気動車

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自動車のマニュアルトランスミッション車同様に、多段変速機とクラッチを用いる原始的方式だが、伝達効率は良い。過去においてはそれぞれ手動操作であり、日本では1950年代前半まで主流だったが、クラッチ容量の限界による出力向上の制約や、当時の日本ではこの方式による総括制御の研究が進まなかったため、1960年代までにほぼ廃れた。欧州では総括制御技術が開発されたこともあり採用例が多く、特にイギリスでは1980年代初頭の統計では電気式、液体式の合計よりも車輌数が多く[3] 気動車の主流となっていた。

ただし昨今の技術向上に伴い、電子制御による総括制御が可能になったこともあり、次項の流体式との差は小さくなってきている。デンマークでは機械式気動車を用いた200 km/h運転の試験が行われているが、これは多段変速液体式のトルクコンバータ(略称・トルコン)を省略して摩擦クラッチのみの装備に置換したものである。

液体式気動車

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起動から低中速域にかけてトルクコンバータを使用することで総括制御を可能とした変速方式。流体式・液圧式とも。比較的軽量なことが特徴。戦後の日本における主流。かつてはトルクコンバータに依存する領域が広く、動力伝達時のロスを生じがちだったが、1990年代以降多段式の遊星歯車変速機を電子制御してトルクコンバータと組み合わせることで、広い速度域に適応させつつトルクコンバータへの依存領域を小さくする手法(2速以降はトルクコンバータを介さない)が普及し、伝達効率を向上させている。その為、現在の流体式と電子制御化された機械式との違いは、実質的に「起動の方法の違い」のみとなっている。

電気式気動車

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193019502000EDC2017 - 202020198GV-E400[4]

JR40JRGV-E400H100[5]JR2201931[6]JR西DEC700[7] JR27002025

運転方式による分類

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単端式気動車

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[8]Single ended car1931使[8][8]使[9]

19201920

両運転台式気動車

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[9]1[8]

1927111,067 mm[10]

固定編成・総括制御気動車

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19322[11][12][13]19351193743000[14]

RDCRail Diesel Car[15]19534500010[16]

気動車の電動化

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2000年代以降はパワーエレクトロニクス技術の向上により、エンジンで発生した動力をそのまま使わずに、発電機や蓄電池、電動機と組み合わせた電動化が進められている。

ハイブリッド気動車

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JRE2002007[17]HB-E300HB-E210使

160ITTJR285JR2014910[18][19]

JR西TWILIGHT EXPRESS 使87JRYC1JR85HC8520191220227[20]

電気・ディーゼル両用車両

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電気・ディーゼル両用車両は、電動機で駆動するが、駆動用電源は発電機による発電と外部(架線第三軌条)からの給電の両方に対応する。端的に言えば電気式ディーゼルに対して架線などから電力を得る回路を付加した形である。デュアルモード車両、バイモード車両、重複動力装備車輌[21]などとも呼ばれる。

日本ではJR東日本2017年5月1日に運行を開始したクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」用のE001形がこれに該当する[22][23][24]

蓄電池動車・燃料電池動車

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蓄電池燃料電池車両は、電源機構が一般的な熱機関に該当しない電気動力車であるため、正確には気動車の範疇に含まれない。ただし、非電化路線での気動車を代替する運用の想定や、在来型気動車およびハイブリッド気動車との開発研究上の兼ね合いから、気動車を解説する文脈で併せて取り上げられることが多い。

近年の蓄電池容量の向上により、特定の条件(電化区間と非電化区間を直通する列車で、非電化区間を走行する距離が比較的短く、普通列車程度の速度の場合)であれば、電化区間で満充電した蓄電池を電源として非電化区間を運行する蓄電池電車への置き換えも可能になっており、JR東日本では烏山線EV-E301系男鹿線EV-E801系[25]が導入され、JR九州でも同様に筑豊本線などで蓄電池電車のBEC819系を導入し、電車への置き換えが行われている。

特殊用途・設計

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レールバス

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富士重工業製レールバスLE-Car樽見鉄道ハイモ180-200

西1950[26]203001101102

1980JR[27]LE-CarLE-DCNDC198019901990

1940-1950鹿

路面気動車

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192019581967[28]

[29]

車体傾斜式気動車

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JR四国の振り子式気動車2000系



1989JR200019902[7]6JR283

JR201261[30]201731調[30]

デュアル・モード・ビークル(DMV)

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JR北海道のDMV(2008年)

JR2002DMV19301950西1960[31]

JRDMVDMV20211225[32]

運用・性能特性

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運用特性

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[8]1

1
 
5820
 
583519872

使4058[9]JR

East i-D

[10] -  - 2015530HB-E210使

ATSCTC使使

192019301980JR

調JR

JR[33][34][35]

走行性能の特性

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5838 t, 360 PS=270 kW11711744 t480 kW[11]JR283142 t, 710 PS=530 kW789920 kW

使調使

1



VVVF調

=

+EF6672 km/h - 108 km/h108 km/h110 km/h使



214使1234使

日本の気動車の略史

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1872519051910

192119301928

19371940西退 194411[36]

19501953

1960

19705,000退使1980

JR[12]便JR退21[13]

JRDKJRC 西JR西 - 西西西 - 西 - 西KABCDE

気動車の体制変化

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メーカーの寡占化

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196019702

2002退IHI2819702012[37]2010JRJRJRJR

JRJR西

環境対策

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[38]

200517482009[39][35]

2014[40]DPF尿SCR[41]

脚注

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注釈

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(一)^ 使

(二)^ DMU(Diesel Multiple-Unit) Self-propelled Railway VehicleSelf-propelled Car

(三)^ 1930

(四)^ 19302213p43-44 19351

(五)^ 使

(六)^ 使

(七)^ 

(八)^ 2010JREV-E301

(九)^ 1119501970

(十)^ --201210 - 

(11)^ MT54375 V1120 kWx4=480 kW500 V1150 kWx4=600 kW

(12)^ 2010使

(13)^ 34

出典

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(一)^ Rush 1971, pp. 1618.

(二)^ p.1

(三)^ 519849281

(四)^  (PDF) - JR 2015519

(五)^ JR. RM .  (2015611). 201747

(六)^ ()PDF2015610 2015615https://web.archive.org/web/20150615183250/http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2015/150610-2.pdf2017210 

(七)^ DEC700 (PDF) - 西 (2021625)

(八)^ abcdp.9

(九)^ abp.10

(十)^ p.18

(11)^ p.77

(12)^   PART 1 20144

(13)^ p.78

(14)^ p.79

(15)^ p.103

(16)^ p.102

(17)^   (2016617). . . . 2016616201747

(18)^ PDF2014910http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2014/140910-1.pdf20141128 

(19)^ JR - 261. . (2014910). https://news.mynavi.jp/article/20140910-a557/ 20141128 

(20)^ . railway.jr-central.co.jp. 2023119

(21)^ 2013

(22)^ JR.  . 202013

(23)^    PDF201364 2013613https://web.archive.org/web/20130612162543/http://www.jreast.co.jp/press/2013/20130603.pdf2017210 

(24)^ JR2016JR E001TRAIN SUITE56667201611 pp. 58-67

(25)^  (2016125). JREV-E801.  (). 2016126. https://web.archive.org/web/20161206132810/http://news.mynavi.jp/news/2016/12/05/264/ 201747 

(26)^ p.147

(27)^ p.152

(28)^ p.163

(29)^ p.166

(30)^ abp.132

(31)^ p.167

(32)^ 20201724

(33)^ PPTPDF2016729 20161215https://web.archive.org/web/20161215232032/http://www.jrhokkaido.co.jp/pdf/161215-7.pdf201749 

(34)^   (201547). . . 201747201747

(35)^ ab (PDF).  (20006). 2003415201747

(36)^ 19114 8 17/20p607  1994

(37)^ 30.  (). (2012329). 2017210. https://megalodon.jp/2017-0210-1653-26/www.nikkei.com/article/DGXNZO39961660Y2A320C1TJ1000/ 2017210 

(38)^ 15 (PDF).  (2012). 201747201747

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(40)^ .  (20141217). 2018715

(41)^ 55 . .  (2014110). 201747201747

参考文献

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  • 湯口徹『日本の内燃動車』成山堂書店、2013年
  • Rush, R.W (1971). British Steam Railcars. Oakwood Press. ISBN 0-85361-144-0 

関連項目

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