展示販売されている薪ストーブ
環境保護団体や医学者、医師団体は政府に薪ストーブへの対策を求めており、また大気質に対し責任を持つ政府の環境関連部署は下記に挙げるような種々の規制を実施している。
低品質の薪の使用の禁止 - 乾燥が十分でない薪の使用を禁止する
情報提供 - 薪ストーブ利用者に対し、薪ストーブの有害性や環境負荷についての教育啓発を行う
低品質の薪ストーブの新規販売、使用禁止 - 認証団体が薪ストーブの性能規格を策定する
薪ストーブの全面禁止 - 薪を含む固形燃料を使用した暖房をすべて禁止する。特に大気汚染がひどいエリアで実施される
薪ストーブの排気中に含まれる汚染物質の量をテストし、基準を満たさないものは新規販売、使用を禁止するというもの。
アメリカのEPA が実施するものが標準となっている。
米国北東部における大気質監視団体であるNESCAUM(Northeast States for Coordinated Air Use Management)による報告書は、EPAの認証プロセスには重大な欠陥があり、実際に薪ストーブを使用した場合とは異なる実験室でのテストによるものであると批判している。
米国肺協会(en:American Lung Association )で副会長を務めるローラ・ケイト・ベンダーは、短期的に排出量を減らすことは有益ではあっても科学的に安全な粒子状物質への暴露などというものはなく、長期的な解決策は薪ストーブを完全に廃止することであるとしている[22] 。
行政による大気改善計画に対し科学的アドバイスを行っている団体であるC40都市気候リーダーシップグループ (C40 Citiesの大気質担当のChafe氏は「ユーザーがテストの手順通りに薪ストーブを扱う(扱える)保証はない」という
[33] 。
薪ストーブを廃棄し、よりクリーンな暖房器具へと交換することを促進するための資金援助プログラム(補助金)が実施されている。
米国肺協会はこれを推奨しており[21] 、アラスカ州 ・フェアバンクス は米国肺協会から2021年の「State of the Air」の粒子状物質汚染部門で「最も汚染された都市」に認定されたが、その後、薪ストーブの交換プログラムを実施し、大半の人が石油、ガス暖房に切り替えた結果、汚染度を半分に減少させることに成功している[22] 。
アメリカ・ポートランド の非営利団体ベルデは特に低所得世帯を対象に薪ストーブを電気ヒートポンプに置き換えるためのプログラムに資金を提供するよう州に要請した。
State of Washington Department of Ecologyは、薪ストーブによる汚染を低減するため、環境基準に適合したものに買い換える費用として低品質な薪ストーブを300ドルで買い取るキャンペーンを行なっている[34] 。
トンプソンリバーズ大学の地理・環境学教授であるMichael Mehtaは、多くの薪ストーブ交換プログラムは古い薪ストーブの代わりとしてクリーンな電気暖房器具ではなく新たな薪ストーブに買い替えることを許しており、薪ストーブがクリーンであるという印象を人々に与えてしまうと批判している。
薪は家庭で使用可能なエネルギー源の中で最もエネルギー密度が低く、最も汚染度が大きいものであり、薪ストーブは停電などの非常時のための二次的な熱源になりうるが、日常的に使うなら汚染が少ない電気式の暖房を使うべきであるという。
カナダ・ブリティッシュコロンビア州の環境・気候変動戦略省に所属するMarkus Kellerhalsは、薪ストーブ交換プログラムの意図は薪ストーブを代替暖房に切り替えることを奨励することであると述べている。
しかし、低所得者層はヒートポンプなどのクリーン暖房器具にアクセスできず、そのため薪を使わざるをえない人たちにとっては、古い薪ストーブよりは「クリーンな薪ストーブ」のほうがまだマシであるという。
[35]
住宅密集地に設置された薪ストーブ
国 は 地 球 温 暖 化 対 策 の 名 目 で 薪 ス ト ー ブ を 推 進 す る 姿 勢 を 見 せ て お り 、 地 方 自 治 体 も 追 随 し て い る 。
環 境 省 は 薪 ス ト ー ブ 導 入 の た め に ﹁ 木 質 バ イ オ マ ス ス ト ー ブ 環 境 ガ イ ド ブ ッ ク ﹂ を 作 成 、 農 林 水 産 省 で は 、 林 野 庁 が 木 材 利 用 ポ イ ン ト 事 業 と 名 付 け た 補 助 金 事 業 を 行 っ て お り 、 薪 ス ト ー ブ の 購 入 な ど が そ の 対 象 に 含 ま れ た 。 国 内 林 業 の 振 興 策 と し て 木 材 利 用 ポ イ ン ト 制 度 を 実 施 し 、 薪 ス ト ー ブ を 含 む 木 材 利 用 品 の 購 入 に 際 し ポ イ ン ト ( 補 助 金 ) を 与 え る も の で あ る 。 PR 大 使 と し て 日 本 の ア イ ド ル グ ル ー プ で あ る 乃 木 坂 46 を 採 用 し 、 ﹁ 木 と ス ト ー ブ の あ る 暮 ら し 展 ﹂ を 開 催 、 庁 舎 ( 8 階 建 て ) の 屋 上 ま で 煙 突 を 伸 ば し た 巨 大 な 薪 ス ト ー ブ を 庁 舎 の 一 階 に あ る ﹁ 消 費 者 の 部 屋 ﹂ に 設 置 し 、 そ の 火 入 れ 式 で は 乃 木 坂 46 に 薪 ス ト ー ブ を PR さ せ る な ど 大 規 模 な キ ャ ン ペ ー ン を 行 い 薪 ス ト ー ブ の 普 及 を 強 く 推 進 し て い た [ 37 ] [ 38 ] [ 39 ] [ 40 ] [ 37 ] [ 41 ] [ 42 ] [ 43 ] 。
地 方 自 治 体 で も 薪 ス ト ー ブ の 購 入 に 補 助 金 が 設 定 さ れ 、 公 共 施 設 や 小 学 校 へ の 設 置 が 行 わ れ た 例 も あ る [ 44 ] [ 45 ] [ 46 ] [ 47 ] 。
林 業 、 建 築 業 、 造 園 業 界 な ど の 関 連 団 体 は こ う し た 動 き を 歓 迎 し 、 国 や 自 治 体 と 連 携 し た ビ ジ ネ ス を 模 索 し て い る 。
一 例 と し て は 岡 崎 建 設 と N P O 法 人 里 山 環 境 サ ポ ー ト セ ン タ ー [ 1 ] が 共 同 で 、 ナ ラ 枯 れ が 広 が っ て い る 里 山 の ナ ラ 、 雑 木 を 薪 ス ト ー ブ 用 の 燃 料 と し て 消 費 す る こ と で 里 山 再 生 に つ な げ る こ と を 試 み 、 安 芸 高 田 市 に 事 業 化 を 働 き か け る な ど の 活 動 を 行 っ て い る [ 48 ] 。
ま た 伊 那 市 で は 、 木 質 バ イ オ マ ス の 利 用 を 政 策 と し て 推 進 し て お り 、 薪 ス ト ー ブ 導 入 に 補 助 金 を 出 し て い る 他 、 同 市 で は 2 0 0 7 年 11 月 か ら ﹁ 薪 の 宅 配 サ ー ビ ス ﹂ を 始 め る 業 者 も 現 れ た 。 2 0 1 2 年 度 に は ﹁ 長 野 県 ふ る さ と の 森 林 づ く り 賞 信 州 の 木 利 用 推 進 の 部 ﹂ 長 野 県 知 事 賞 を 、 2 0 1 4 年 度 に は ﹁ グ リ ー ン 購 入 大 賞 ︵ 農 林 水 産 大 臣 賞 ︶ ﹂ を 受 賞 し て い る [ 49 ] 。
一 般 市 民 の 間 で も 、 コ ロ ナ 禍 で 在 宅 時 間 が 増 え た こ と や 、 テ レ ワ ー ク の 普 及 に よ り 薪 ス ト ー ブ の 人 気 が 上 昇 し て い る と い う [ 50 ] 。 住 宅 販 売 で も 薪 ス ト ー ブ を 備 え た 家 が ﹁ 自 然 ﹂ や ﹁ エ コ ﹂ で あ る な ど と し て 販 売 さ れ て い る [ 51 ] [ 52 ] 。
ま た N H K や 朝 日 新 聞 な ど の 大 手 メ デ ィ ア も ﹁ カ ー ボ ン ニ ュ ー ト ラ ル で 環 境 に 優 し い ﹂ と し て 好 意 的 に 取 り 上 げ て い る 。 ﹁ 家 を 取 り 壊 し た 際 の ネ ジ や ク ギ が 付 い た 廃 材 で も 気 に せ ず 燃 や せ る ﹂ と し て ゴ ミ 焼 却 炉 を 兼 ね た 使 い 方 を エ コ で あ る と 紹 介 し て い る [ 53 ]
[ 54 ] 。
薪 ス ト ー ブ は 田 舎 暮 ら し ( ス ロ ー ラ イ フ ) と 結 び 付 け ら れ 、 ま た ロ グ ハ ウ ス と の 相 性 が 良 い と ロ グ ハ ウ ス メ ー カ ー に よ り 主 張 さ れ る な ど 、 こ う し た イ メ ー ジ が セ ー ル ス ポ イ ン ト と さ れ る [ 55 ] [ 56 ] [ 57 ] 。
そ の 他 、 農 家 ( 農 業 法 人 ) で も 熱 源 と し て 薪 ス ト ー ブ を 採 用 し 、 石 油 ス ト ー ブ と 比 較 し て 二 酸 化 炭 素 と 燃 料 コ ス ト の 大 幅 な 削 減 を 実 現 し た と 報 道 さ れ る [ 58 ] [ 58 ] 。
キ ャ ン プ を す る 人 達 の 間 で は 冬 期 に 屋 外 で 薪 ス ト ー ブ を 使 う 人 も お り 、 可 搬 性 を 高 め た ミ ニ チ ュ ア サ イ ズ の 薪 ス ト ー ブ も 存 在 す る [ 59 ] [ 60 ] 。
サ ウ ナ の 熱 源 と し て も 使 わ れ て い る [ 61 ] [ 62 ] 。
テント内で薪ストーブを使っている人
ミニチュアの薪ストーブ
業 界 団 体 と し て 日 本 暖 炉 ス ト ー ブ 協 会 ( J a p a n F i r e p l a c e & S t o v e A s s o c i a t i o n : J F S A ) が 設 立 さ れ て い る 。 薪 ス ト ー ブ を ﹁ 人 や 環 境 に 優 し い ﹂ と し て 、 普 及 を 図 っ て い る 一 般 社 団 法 人 で あ る 。 安 全 講 習 会 の 開 催 や 、 技 術 者 の 認 定 制 度 な ど を 主 催 し て い る [ 63 ] 。 農 林 水 産 省 の 庁 舎 に あ る 施 設 で あ る ﹁ 消 費 者 の 部 屋 ﹂ へ の 薪 ス ト ー ブ の 設 置 を 請 け 負 い 、 ま た 環 境 省 発 行 の ﹁ 薪 ・ ペ レ ッ ト ス ト ー ブ の 環 境 に や さ し い 使 い 方 ﹂ 、 ﹁ 木 質 バ イ オ マ ス ス ト ー ブ 環 境 ガ イ ド ラ イ ン ﹂ の 策 定 に 際 し 監 修 を 務 め る な ど 、 行 政 と の 関 わ り を 持 っ て い る [ 64 ] 。
理 事 長 の 高 橋 英 輔 は 薪 ス ト ー ブ 関 連 の ト ラ ブ ル に つ い て 、 メ ン テ ナ ン ス や 薪 の 乾 燥 を 行 え ば 不 完 全 燃 焼 と 悪 臭 は 低 減 で き る と 主 張 し て い る [ 65 ] 。
2023年現在、日本では薪ストーブの製造販売、購入、設置、使用のいずれにおいても法律や地方条例による規制および基準は全く存在していない。機器認証制度による排煙規制や、Smoke Control Areaの設定、薪などの燃料の品質規制も行われていない。
古 紙 、 廃 材 な ど の ゴ ミ が 燃 や さ れ て い る 薪 ス ト ー ブ
環 境 省 が 制 作 し た ﹁ 木 質 バ イ オ マ ス ス ト ー ブ 環 境 ガ イ ド ラ イ ン ﹂ で の ア ン ケ ー ト 調 査 か ら 、 次 の よ う な ト ラ ブ ル 例 が 紹 介 さ れ て い る 。
● 乾 燥 し た 薪 を 使 い 煙 突 も 十 分 高 く し た つ も り だ っ た が 隣 人 か ら 悪 臭 と 息 苦 し さ の ク レ ー ム が 付 き 、 さ ら に 1 メ ー ト ル 煙 突 を 高 く し た が 改 善 さ れ な か っ た
● 薪 ス ト ー ブ に よ る 煙 の 被 害 に 対 し 被 害 者 が 訴 訟 を 起 こ し た 。 薪 ス ト ー ブ 利 用 者 側 が 敗 訴 し 使 用 禁 止 を 命 じ る 判 決 が 下 っ た
● 近 所 か ら ク レ ー ム が 付 き 、 市 役 所 に 相 談 し た ら 住 民 同 士 で 解 決 し て く れ と 言 わ れ た 。 近 所 の 人 に 年 間 10 回 ほ ど だ け 使 用 す る 許 可 を 求 め た が 拒 否 さ れ 、 近 所 に 不 快 な 思 い を さ せ た く は な い の で 自 主 的 に 使 用 を や め た
● 薪 ス ト ー ブ 利 用 者 が ゴ ミ や プ ラ ス チ ッ ク 、 生 木 を 燃 や し た
● 煙 が 逆 流 し 、 火 災 報 知 器 が 作 動 し た
● 薪 ス ト ー ブ か ら 出 火 、 火 災 を 起 こ し 家 が 全 焼 、 火 傷 し た
[ 27 ]
長野県により2011年に行われた薪ストーブ使用者への実態調査によると、80%以上の人が30m以内に人家があるにもかかわらず薪ストーブを導入しており、さらに27%の人が郊外の住宅地で、11%の人が市街地で使用していた[66] 。
法律及び条例による規制が存在しないため、自治体は以下のような注意喚起は行うが薪ストーブ関連の個別のトラブル事案には一切関与できず、住民同士で解決するしかないという立場を取っている[67] 。
薪ストーブと屋外で雨ざらしになっている薪
薪 ス ト ー ブ に よ る 大 気 汚 染 で 近 隣 住 民 と の ト ラ ブ ル の 多 発 や 苦 情 の 投 書 が 寄 せ ら れ て い る 事 態 を 受 け 、 多 く の 自 治 体 か ら 注 意 喚 起 が 行 わ れ て い る [ 68 ] [ 67 ] [ 69 ] が 、 法 整 備 が 追 い つ い て い な い た め 強 制 力 は な い 。 自 治 体 か ら 発 せ ら れ た 注 意 と し て は 、 次 の よ う な も の が あ る 。
● 家 庭 ご み の 焼 却 は し な い こ と ( 廃 棄 物 処 理 法 に よ り 禁 止 さ れ て い る )
● 接 着 剤 、 塗 料 が 使 用 さ れ て い る 合 板 な ど 科 学 処 理 さ れ た 木 材 お よ び 建 設 廃 材 等 は 燃 や さ な い こ と
● 薪 は 十 分 に 乾 燥 さ せ る こ と ( 果 樹 な ど の 剪 定 枝 の 場 合 も 同 様 。 針 葉 樹 は 半 年 以 上 、 広 葉 樹 は 1 年 以 上 乾 燥 さ せ る こ と 。 薪 が 湿 っ て い る と 燃 焼 温 度 が 低 下 し 多 量 の 煙 や ス ス 、 タ ー ル を 発 生 さ せ る 。 乾 燥 し た 薪 は 叩 く と カ ン カ ン と 乾 い た 音 が す る )
● 薪 を 屋 外 に 保 管 す る 場 合 は 地 面 か ら 離 し 濡 れ な い よ う に 覆 い を 掛 け る こ と
● 薪 割 り の 騒 音 に も 気 を つ け る こ と
● 薪 を 一 度 に た く さ ん 入 れ 過 ぎ な い こ と
● 炉 内 へ の 空 気 ( 酸 素 ) の 吸 入 量 を 適 正 に し 、 炉 内 温 度 を 高 く 保 つ こ と ( 不 完 全 燃 焼 を 避 け る )
● こ ま め な メ ン テ ナ ン ス を 行 う こ と ( シ ー ズ ン 前 後 、 シ ー ズ ン 中 の 清 掃 、 数 年 に 一 度 専 門 業 者 に よ る フ ル メ ン テ ナ ン ス の 実 施 )
● 設 置 前 に 、 煙 突 の 位 置 、 高 さ 等 に つ い て 専 門 家 と 工 務 店 を 交 え て 十 分 検 討 、 考 慮 す る こ と 。 次 の よ う な 場 合 は 避 け る
● 煙 突 が 隣 家 に 近 い
● 煙 突 が 隣 の 家 よ り も 低 い
● 設 置 前 に 、 専 門 家 を 伴 い 近 隣 へ の 事 前 説 明 を し 了 解 を 得 る こ と 。 次 の よ う な 場 合 は 避 け る
● 近 所 に 呼 吸 器 疾 患 を 持 っ て い る 住 民 が い る
● 定 期 的 に 近 隣 住 民 に ﹁ 煙 で 迷 惑 が か か っ て い な い か ﹂ う か が い 、 問 題 が あ れ ば あ ら た め る こ と
[ 70 ] [ 71 ] [ 72 ] [ 73 ] [ 74 ]
煙突が低い住宅地の薪ストーブ
低い煙突
住宅密集地の薪ストーブ
アメリカ・カルフォルニア州のロサンゼルス。機内から見たスモッグ
アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)により、薪ストーブへの厳しい認証制度が設けられている。米国では薪ストーブの販売にはEPA認証をクリアすることが義務付けられている。2020年、EPAは排煙中の汚染物質(粒子状物質 )の量の上限を2.0g/hに引き下げた[84] 。
カルフォルニア州 では冬期の汚染物質の30-90%が薪ストーブに由来しており、汚染を抑制するため州法により薪ストーブ規制法が制定されている。薪ストーブを使用してはいけない日(No Burn Day)が定められ、また汚染がひどい日は薪ストーブ禁止の警報(Spare the Air警報)が発せられる。
[85]
[86]
[87]
ワ シ ン ト ン 州 で は 州 の w e b サ イ ト で 薪 ス ト ー ブ 使 用 者 に 対 し 、 州 の 規 則 や 周 囲 に 迷 惑 を か け な い 使 用 方 法 を 説 明 し て い る 。
説 明 さ れ て い る 情 報 は 次 の よ う な も の で あ る 。
● 周 囲 に 害 を 与 え る 方 法 で 薪 ス ト ー ブ を 使 用 し て は な ら な い
● 薪 ス ト ー ブ が そ の 家 に あ る 唯 一 の 暖 房 で な い 限 り 、 薪 ス ト ー ブ を 使 用 し て は な ら な い
● E P A 認 証 を 受 け て い な い 薪 ス ト ー ブ は 使 用 し て は な ら な い
● 乾 い た 木 ( 薪 ) の み を 燃 や す こ と ( 薪 を 割 っ て 積 み 上 げ た 状 態 で 防 雨 カ バ ー を か け 、 1 年 間 乾 か す こ と )
● 空 気 ( 酸 素 ) を 十 分 取 り 入 れ て 燃 焼 さ せ る こ と
● ゴ ミ 、 塗 装 や 防 腐 剤 で 処 理 さ れ て い る 木 材 、 プ ラ ス チ ッ ク 、 ゴ ム 、 動 物 の 死 体 、 そ の 他 煙 や 悪 臭 の 原 因 に な る も の を 燃 や し て は な ら な い
● 古 い 薪 ス ト ー ブ を 販 売 、 譲 渡 し て は な ら な い
● 目 で 見 え る 煙 を 6 分 以 上 連 続 で 出 し て は な ら な い
ま た ワ シ ン ト ン 州 で は 新 た に 建 設 さ れ る 住 居 に は 電 気 ヒ ー ト ポ ン プ 式 の 暖 房 の 設 置 が 義 務 付 け ら れ る
[ 88 ] 。
● オ レ ゴ ン 州 環 境 局 は 住 宅 の 売 却 時 に 未 認 証 の 薪 ス ト ー ブ を 撤 去 す る こ と を 求 め て お り 、 ま た そ の 際 に ヒ ー ト ポ ン プ を 設 置 す る こ と を 推 奨 し て い る 。 ま た 、 保 健 当 局 は マ ル ト ノ マ 郡 で 秋 、 冬 に 汚 染 の 高 ま り に 対 応 し て 燃 焼 禁 止 令 を 4 度 発 令 し た 。 そ の 後 、 通 年 で 禁 止 令 を 出 す 可 能 性 が あ る と 発 表 し て い る 。
● ポ ー ト ラ ン ド の マ ル ト ノ マ 郡 で は 2 0 2 1 年 に 木 煙 公 害 に 関 す る 会 議 が 開 か れ た 後 、 E P A 認 定 さ れ て い る 薪 ス ト ー ブ で あ っ て も 使 用 を 控 え る よ う 勧 告 が 出 さ れ た 。
● カ ル フ ォ ル ニ ア ・ バ ー ク レ ー 、 ベ イ エ リ ア 等 で は 厳 し い 規 制 が 敷 か れ 、 罰 金 は 初 犯 1 0 0 ド ル 、 再 犯 5 0 0 ド ル 以 上 と 設 定 さ れ て い る 。 ま た 、 薪 ス ト ー ブ 使 用 を 制 限 す る " 空 気 を 大 事 に せ よ ! " の 日 が 設 け ら れ て い る 。
● ユ タ 州 で は 環 境 局 ( t h e U t a h D e p a r t m e n t o f E n v i r o n m e n t a l Q u a l i t y ' s D i v i s i o n o f A i r Q u a l i t y ) に よ り 、 冬 期 の 薪 ス ト ー ブ 使 用 規 制 が 行 わ れ る 。 冬 は 大 気 中 に 逆 転 層 が 成 立 す る こ と に よ り 大 気 が 滞 留 し 、 薪 ス ト ー ブ の ば い 煙 に よ る 汚 染 が 深 刻 化 す る た め 。 規 制 は 任 意 で は な く 強 制 で あ り 、 違 反 し た 場 合 は 罰 金 が 課 せ ら れ る 。
[ 22 ] [ 89 ] [ 90 ] [ 91 ]
アボッツフォード の煙突からの煙
カ ナ ダ の 多 く の 自 治 体 で は 家 庭 で の 薪 ス ト ー ブ の 使 用 が 原 因 で 大 気 汚 染 が 発 生 し て お り 、 カ ナ ダ 肺 協 会 ( e n : C a n a d i a n L u n g A s s o c i a t i o n ) は 住 宅 地 で 薪 を 燃 や さ な い こ と を 推 奨 し た [ 20 ] 。
カ ナ ダ 政 府 の w e b サ イ ト で は 、 薪 ス ト ー ブ に つ い て 煙 の 健 康 へ の 悪 影 響 や 侵 入 経 路 、 事 故 の 危 険 性 、 適 切 な 取 り 扱 い に 関 し て 情 報 公 開 及 び 注 意 喚 起 が 行 わ れ て い る 。
特 に 重 要 な こ と と し て 薪 の 煙 は 山 火 事 の 煙 と 同 様 に 有 害 な 汚 染 物 質 を 多 く 含 み 危 険 で あ り 、 煙 探 知 機 と 一 酸 化 炭 素 ( CO ) 検 知 器 を 設 置 す る こ と を 勧 め て い る
[ 11 ] 。
カ ナ ダ 国 内 の 規 制 は 、 基 準 に 満 た な い 暖 炉 、 薪 ス ト ー ブ の 使 用 は 原 則 禁 止 さ れ 、 ま た 使 用 許 可 を 得 る に は 役 所 に 申 告 す る 必 要 が あ る 。 違 反 し た 場 合 、 罰 金 が 課 せ ら れ る 。
[ 92 ]
ブ リ テ ィ ッ シ ュ コ ロ ン ビ ア 州 で は 、 薪 ス ト ー ブ に よ る 煙 を 規 制 す る た め 迷 惑 防 止 条 例 の 改 正 が 採 択 さ れ た 。
修 正 案 で は 木 煙 が ﹁ 私 有 地 や 公 共 を 汚 染 し 、 そ の 使 用 を 妨 げ る ﹂ も の と し て い る 。
違 反 に 対 し て は 罰 則 が 設 け ら れ る 。
[ 93 ]
C O 2 排 出 削 減 の た め の 政 府 に よ る バ イ オ マ ス 燃 焼 切 り 替 え 補 助 金 プ ロ グ ラ ム が 広 く 行 わ れ て い た が 、 こ れ に つ い て 2 0 1 0 年 時 点 で 科 学 者 た ち に よ り ﹁ 薪 ス ト ー ブ や 暖 炉 を 使 っ た 家 庭 で の 薪 の 燃 焼 に つ な が る ﹂ 可 能 性 が 警 告 さ れ て い た 。 2 0 1 6 年 に は 家 庭 で の 薪 の 燃 焼 が ロ ン ド ン で 排 出 さ れ る 粒 子 状 汚 染 の 第 2 位 の 原 因 と な り 、 2 0 1 8 年 に は p m 2 . 5 の 総 排 出 量 の 45 % 以 上 を 占 め る ま で に な っ て い た 。 EU 内 に お け る 薪 エ ネ ル ギ ー の 割 合 は 、 全 エ ネ ル ギ ー の 内 わ ず か 約 2 . 7 % に 過 ぎ な い に も か か わ ら ず 、 EU 全 体 の 大 気 汚 染 物 質 の 約 半 分 が 薪 の 燃 焼 に よ り 放 出 さ れ て い る 計 算 と な る 。 そ の 後 、 EU は 2 0 2 2 年 に 大 気 汚 染 に 関 す る 規 制 を 強 化 し 、 基 準 に 満 た な い 暖 房 器 具 は 使 用 禁 止 と な っ た [ 94 ] [ 95 ] 。
欧 州 環 境 機 関 ( E u r o p e a n E n v i r o n m e n t A g e n c y : E E A ) は 、 ヨ ー ロ ッ パ の 大 気 汚 染 に つ い て の 報 告 書 で 、 わ ず か な が ら 改 善 さ れ つ つ あ る が 未 だ 危 険 な 水 準 に あ り 、 ま た 汚 染 物 質 の う ち ベ ン ゾ ピ レ ン は む し ろ 増 加 し て い る こ と を 指 摘 し た 。 ベ ン ゾ ピ レ ン は 薪 な ど の 木 質 燃 料 の 煙 に 多 く 含 ま れ る 汚 染 物 質 で あ る こ と か ら 、 薪 ス ト ー ブ と バ イ オ マ ス 燃 料 の 利 用 が 増 え て い る こ と が 原 因 と 見 ら れ て い る [ 96 ] 。
イギリス・ウォークハンプトン。19世紀から20世紀にかけての工業地帯 を思わせるような煙を噴出させており、さながらスモッグ のようになっている
薪 ス ト ー ブ 等 の 木 材 燃 焼 の 暖 房 機 器 を 使 用 し て い る の は イ ギ リ ス 人 全 体 の う ち わ ず か 8 % の 人 々 で あ る に も か か わ ら ず 、 薪 ス ト ー ブ や 暖 炉 は イ ギ リ ス の 大 気 汚 染 の 原 因 の う ち 1 7 % も の 割 合 を 占 め て お り 、 汚 染 源 と し て は 上 位 2 番 目 に 位 置 す る 。 こ れ は 道 路 交 通 が 占 め る 割 合 で あ る 1 3 % を 上 回 る 。
こ れ ま で 広 範 な 規 制 に よ り 石 炭 燃 焼 、 産 業 、 自 動 車 に よ る 大 気 汚 染 の 大 幅 な 減 少 が 達 成 さ れ た に も か か わ ら ず 、 そ の 減 少 分 と ほ ぼ 同 量 の 汚 染 が 家 庭 環 境 で の 木 材 燃 焼 木 質 バ イ オ マ ス の 燃 焼 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ て い る こ と が わ か っ て い る 。
喘 息 の 子 供 や 病 気 の 高 齢 者 を 家 族 に 抱 え る 人 々 か ら 、 不 安 の 声 が 寄 せ ら れ て い る と い う 。
イ ン ペ リ ア ル ・ カ レ ッ ジ ・ ロ ン ド ン の 研 究 者 は ﹁ 人 々 は 木 は 自 然 の も の で あ る か ら 木 を 燃 や す の は 無 害 で あ る 、 と 考 え が ち ﹂ と 指 摘 し た 。
[ 18 ]
イ ギ リ ス 国 内 の リ サ ー チ に お い て 、 薪 ス ト ー ブ が 年 間 10 億 ポ ン ド 相 当 の 健 康 被 害 を 引 き 起 こ し て お り 、 薪 ス ト ー ブ に よ る 社 会 的 損 失 は 他 暖 房 の 40 倍 と 試 算 さ れ た 。 同 リ サ ー チ は 、 イ ギ リ ス に お け る 大 気 汚 染 の 半 分 は が 屋 内 で の 木 質 燃 焼 に 起 因 し て い る こ と 、 E u r o p e a n P u b l i c H e a l t h A l l i a n c e ( E P H A ) が 暖 房 と 調 理 に よ る 大 気 汚 染 を 無 視 し て い る こ と 指 摘 し た 。 解 決 策 と し て 木 質 バ イ オ マ ス を 燃 料 と し て 使 う こ と を や め 、 太 陽 光 発 電 と ボ イ ラ ー の 組 み 合 わ せ に 移 行 す る こ と を 提 案 し て い る 。 他 の 研 究 デ ー タ で も 薪 ス ト ー ブ を 1 年 間 使 用 す る と 、 デ ィ ー ゼ ル 車 を 約 4 年 間 使 用 し た 場 合 と 同 程 度 の 社 会 的 損 失 を 引 き 起 こ す こ と が 示 さ れ た [ 94 ] 。 別 の 研 究 で は 基 準 適 合 の 薪 ス ト ー ブ で あ っ て も 、 最 新 式 の 輸 送 ト ラ ッ ク の 7 5 0 倍 の p m 2 . 5 汚 染 を 引 き 起 こ す 結 果 が 示 さ れ て お り 、 保 健 衛 生 の 科 学 者 は ﹁ 無 煙 燃 料 は 存 在 し な い た め 特 に 都 市 部 で は 燃 焼 式 暖 房 を 選 択 す る べ き で は な い ﹂ と 指 摘 し て い る 。 [ 97 ]
イ ギ リ ス の 環 境 保 護 団 体 C l e a n A i r i n L o n d o n の 調 査 に よ る と 2 0 1 0 年 か ら 2 0 2 0 年 の 間 に 薪 ス ト ー ブ の 利 用 が 急 増 し て お り 、 ﹁ 公 衆 衛 生 上 の 大 惨 事 で あ り 薪 ス ト ー ブ の 使 用 、 販 売 を 早 急 に 禁 止 す る 必 要 が あ る ﹂ と 述 べ る 。
ま た 、 別 の 研 究 で は 、 都 市 部 に お い て 発 が ん 性 物 質 へ の 暴 露 の う ち 5 0 % が 薪 ス ト ー ブ に よ る も の と い う 結 果 が 出 て お り 、 さ ら に 家 庭 内 の 空 気 質 汚 染 レ ベ ル を 3 倍 に 上 昇 さ せ て い る た め 、 薪 ス ト ー ブ の 販 売 に は 健 康 へ の 警 告 表 示 を 義 務 付 け る べ き と 結 論 し て い る [ 98 ] 。
ま た 、 同 団 体 は EU に よ る 2 0 2 2 年 の 薪 ス ト ー ブ の 規 制 強 化 を 評 価 し た が 、 最 終 的 に は 木 質 燃 焼 を 全 面 禁 止 す る べ き と し て い る [ 99 ] 。
イ ギ リ ス の 環 境 保 護 団 体 M u m s f o r L u n g s は 2 0 2 7 年 ま で に 薪 ス ト ー ブ を 禁 止 す る よ う 政 府 に 要 請 し て い る 。 英 国 で は 薪 ス ト ー ブ の 苦 情 が 6 年 間 で 1 9 0 0 0 件 以 上 あ る と い う 。 [ 1 0 0 ]
イ ギ リ ス 政 府 は 2 0 1 9 年 に ﹁ C l e a n A i r S t r a t e g y ( 大 気 正 常 化 戦 略 ) ﹂ を 策 定 し た 。
イ ギ リ ス で は 薪 用 に 未 乾 燥 木 材 ( 生 木 ) が 多 く 販 売 さ れ て い る が 、 2 0 2 0 年 か ら 石 炭 に 加 え 、 未 乾 燥 の 木 材 の 販 売 に 制 限 が 課 せ ら れ た 。
未 乾 燥 の 木 材 を 、 一 般 家 庭 向 け に 薪 と し て 小 売 す る こ と は 禁 止 さ れ た 。
ま た 2 立 法 メ ー ト ル を 超 え る 大 量 の 未 乾 燥 の 木 材 を 卸 売 す る 場 合 は 、 そ の 取 扱 に つ い て 乾 燥 方 法 な ど の 注 意 書 き を 添 え な け れ ば な ら な い 。
ウ ェ ー ル ズ と ス コ ッ ト ラ ン ド で も 同 様 の 制 限 の 実 施 が 検 討 さ れ て い る 。
[ 1 0 1 ] [ 1 0 2 ] [ 1 0 3 ]
煙 害 対 策 の 一 環 と し て S m o k e C o n t r o l A r e a が 設 定 さ れ て い る 。 指 定 さ れ た エ リ ア 内 で は 基 準 を 満 た さ な い 燃 焼 機 器 、 燃 料 の 使 用 が 制 限 さ れ る 。 違 反 し た 場 合 は 犯 罪 と し て 扱 わ れ 、 1 0 0 0 £ の 罰 金 が 課 せ ら れ る 。
ま た 自 治 体 は 強 制 措 置 を 取 る 権 限 を 持 つ 。
オ ッ ク ス フ ォ ー ド で は 23 の エ リ ア が 設 定 さ れ て い る
[ 1 0 4 ] [ 1 0 5 ] 。
ロンドンの大気汚染
木 質 燃 料 に よ る こ う し た 汚 染 の 対 策 と し て 、 ロ ン ド ン で は サ デ ィ ク ・ カ ー ン 市 長 は 環 境 ・ 食 糧 ・ 農 村 地 域 省 に 対 し 汚 染 地 域 で の 薪 や 石 炭 な ど の 非 精 製 固 体 燃 料 の 使 用 を 禁 止 す る よ う 求 め て い る 。
環 境 ・ 食 糧 ・ 農 村 地 域 省 は 大 気 質 改 善 計 画 の 策 定 を 予 定 し て お り 、 そ の 内 容 と し て 乾 燥 が 不 十 分 で ば い 煙 を 大 量 に 発 生 さ せ る 薪 の 使 用 に 対 し て 何 ら か の 措 置 を 行 う と し て い る 。
ま た 、 地 方 自 治 体 に 対 し て は 煙 害 を 取 り 締 ま る 権 限 を 新 た に 付 与 す る こ と な ど を 検 討 し て い る 。
[ 25 ]
● オ ッ ク ス フ ォ ー ド
オ ッ ク ス フ ォ ー ド で は エ ネ ル ギ ー 価 格 の 上 昇 に 伴 い 安 価 な 薪 ス ト ー ブ へ の 切 り 替 え が 進 ん で お り 、 2 0 2 2 年 度 に は 薪 ス ト ー ブ 販 売 台 数 が 前 年 比 で 4 0 % 増 加 し た 。
こ う し た 傾 向 を 受 け 、 オ ッ ク ス フ ォ ー ド 市 議 会 に よ り ﹁ D o Y o u F u e l G o o d ? ﹂ を 合 言 葉 に し た 薪 ス ト ー ブ 反 対 の キ ャ ン ペ ー ン が 行 わ れ て い る 。
キ ャ ン ペ ー ン の 内 容 は 、 薪 ス ト ー ブ や 暖 炉 の 使 用 者 に 対 し 、 そ れ ら の 環 境 お よ び 人 体 へ の 有 害 性 や 他 の ク リ ー ン 暖 房 へ 切 り 替 え る 意 義 を 教 育 す る こ と で あ る 。
強 調 さ れ る 内 容 は 以 下 の よ う な 物 が あ る 。
● オ ッ ク ス フ ォ ー ド 市 に お け る 微 小 粒 子 状 物 質 ︵ P M 2 . 5 ︶ 汚 染 の 66 % が 家 庭 内 の 薪 ス ト ー ブ 、 暖 炉 に よ る も の で あ る ( 交 通 機 関 に よ る も の は わ ず か 21 % に す ぎ な い )
● ば い 煙 に 含 ま れ る 微 粒 子 は 人 間 の 健 康 に 深 刻 な 影 響 を 及 ぼ す ( 特 に 子 ど も や 高 齢 者 、 喘 息 や 肺 気 腫 な ど の 病 気 や 症 状 を 持 つ 人 々 )
● オ ッ ク ス フ ォ ー ド で の 30 歳 以 上 の 人 の す べ て の 死 亡 ケ ー ス の う ち 5 . 5 2 % が 微 粒 子 ︵ P M 2 . 5 ︶ へ の 長 期 暴 露 が 原 因 で 起 こ っ て い る
● オ ッ ク ス フ ォ ー ド の ほ と ん ど の 家 庭 に は 、 薪 ス ト ー ブ よ り も ク リ ー ン で 安 全 な 代 替 手 段 が 存 在 す る
ま た 、 同 市 議 会 に よ り 2 0 2 1 年 か ら 2 0 2 5 年 ま で の ス ケ ジ ュ ー ル で 空 気 改 善 計 画 を 策 定 、 承 認 さ れ た 。
こ の 計 画 で は 、 薪 の 使 用 に 関 す る 問 題 と そ の 対 処 の た め の 具 体 的 な 対 策 が 盛 り 込 ま れ て お り 、 ﹁ D o Y o u F u e l G o o d ? ﹂ キ ャ ン ペ ー ン も そ の 一 環 で あ る 。
[ 1 0 5 ]
● レ ス タ ー シ ャ ー
レ ス タ ー シ ャ ー で は 薪 ス ト ー ブ か ら 放 出 さ れ る 汚 染 物 質 の モ ニ タ リ ン グ 装 置 が 設 置 さ れ た 。
こ の プ ロ ジ ェ ク ト は 、 環 境 ・ 食 料 ・ 農 村 地 域 省 の 資 金 提 供 に よ る 政 府 の キ ャ ン ペ ー ン の 一 環 で 、 公 害 低 減 を 目 的 と し て い る 。
ま た 、 固 形 燃 料 を 燃 焼 さ せ る と い う こ と に 対 し 人 々 が ど の よ う な 習 慣 、 認 識 を 持 っ て い る か の 調 査 も 併 せ て 行 わ れ る 。
薪 ス ト ー ブ の 利 用 者 に 対 し て よ り 優 れ た 機 器 へ の 交 換 や 煙 突 掃 除 、 燃 料 の 品 質 な ど に つ い て 啓 発 す る こ と を 目 的 と し て い る 。
地 区 の 空 気 環 境 担 当 者 は 、 こ れ ま で の 大 気 質 モ ニ タ リ ン グ は 交 通 関 連 の 汚 染 源 か ら 排 出 さ れ る 汚 染 物 質 ( 二 酸 化 窒 素 な ど ) に 重 点 が 置 か れ て い た が 、 今 回 行 わ れ る 新 た な 調 査 は 戦 略 の 変 化 を 表 し て い る と 述 べ て い る 。
ま た 、 そ れ に 併 せ て 自 治 体 に よ る 追 加 の 対 策 が 求 め ら れ る だ ろ う と し て い る 。
[ 1 0 6 ]
● リ ッ チ モ ン ド
イ ン ペ リ ア ル ・ カ レ ッ ジ ・ ロ ン ド ン で は 、 規 格 適 合 の 比 較 的 新 し い 薪 ス ト ー ブ に よ る 汚 染 の 実 態 を 確 か め る た め の 調 査 を 開 始 し て い る 。
[ 1 0 7 ]
薪ストーブを始めとする木質燃料の使用の増加が予想されており、それらの公衆衛生への影響を調査するため、約4年を費やす調査プロジェクトの実施が発表された。
[108]
パリの大気汚染
フ ラ ン ス ・ ア ル プ ス で は 子 供 が 外 で 走 る こ と が で き な い ほ ど に 広 く 大 気 が 汚 染 さ れ て い る 。 主 な 原 因 は ﹁ 木 を 燃 や す 習 慣 ﹂ で あ り 、 汚 染 の 6 ~ 8 割 が 薪 ス ト ー ブ や 暖 炉 が 原 因 だ と 示 さ れ て い る 。 住 民 た ち に よ り デ モ が 行 わ れ 、 薪 暖 房 禁 止 策 が 求 め ら れ た [ 1 0 9 ] 。
2 0 1 8 年 に は 、 薪 ス ト ー ブ は 国 全 体 の 粒 子 状 物 質 に よ る 汚 染 の う ち P M 2 . 5 で は 43 % 、 P M 1 . 0 で は 55 % を 占 め た 。 フ ラ ン ス 公 衆 衛 生 庁 ︵ f r : A g e n c e n a t i o n a l e d e s a n t é p u b l i q u e ︶ は こ れ ら に 起 因 す る 死 者 は 年 間 4 万 人 に 上 る と 述 べ る 。 こ れ ら 薪 ス ト ー ブ 、 暖 炉 に よ る 激 し い 汚 染 を 受 け 、 フ ラ ン ス 環 境 省 は 家 庭 用 薪 ス ト ー ブ 等 に よ る 大 気 汚 染 を 減 少 さ せ る た め の 計 画 を 以 下 の よ う に 発 表 し た 。
● 木 質 燃 料 の 使 用 が 大 気 に 及 ぼ す 悪 影 響 に つ い て の 教 育 啓 発
● よ り ク リ ー ン な 暖 房 装 置 へ の 買 替 え 促 進 制 度 の 強 化
● 暖 房 機 器 の 性 能 向 上 。 機 器 に 付 与 さ れ る 環 境 性 能 を 表 す ラ ベ ル に 、 空 気 質 を 考 慮 し た グ レ ー ド を 新 設 。
● 燃 料 の 品 質 の 向 上 。 低 含 水 率 で あ る こ と 、 持 続 可 能 な 森 林 管 理 に よ る も の で あ る こ と を 表 す ラ ベ ル を 新 設 。 含 水 率 の 上 限 の 設 定
● 汚 染 が 激 し い 地 域 に お け る 木 質 燃 料 暖 房 の 規 制 強 化
[ 1 1 0 ]
ドイツの薪ストーブの煙突と、褐色のばい煙
ド イ ツ で は 1 5 0 0 万 台 の 暖 炉 お よ び 薪 ス ト ー ブ が 設 置 さ れ て お り 、 公 害 の 原 因 と な っ て い る 。
ド イ ツ で は ド イ ツ 連 邦 排 出 規 制 法 に よ り 薪 ス ト ー ブ の 使 用 方 法 や 設 置 が 厳 し く 規 制 さ れ て お り 、 煙 突 掃 除 人 に よ る メ ン テ ナ ン ス お よ び 監 査 が 行 わ れ て い る が 、 ド イ ツ 西 部 の ア ー ヘ ン で 働 く 煙 突 掃 除 人 に よ る 証 言 で は 、 履 き 古 し た 靴 や 油 を 染 み 込 ま せ た 薪 、 解 体 し た ク ロ ー ゼ ッ ト な ど の ゴ ミ が 燃 や さ れ て い る と 報 告 さ れ て い る 。 こ れ ら 薬 剤 や 塗 料 で 処 理 さ れ た も の を 燃 焼 さ せ た 結 果 、 ダ イ オ キ シ ン が 発 生 し 大 気 や 土 壌 を 汚 染 し て い る 。
ま た 薪 の 品 質 に つ い て も 、 水 分 が ク リ ー ン バ ー ン ( 完 全 燃 焼 ) の 妨 げ に な る た め 、 含 水 率 25 % 以 上 の 薪 を 燃 や す こ と は 禁 止 さ れ て い る が 、 こ れ も 完 全 に は 遵 守 さ れ て い な い 。
ド イ ツ 国 内 に お い て 薪 ス ト ー ブ の 煙 突 か ら 排 出 さ れ る 汚 染 物 質 の 量 は 年 間 3 万 ト ン 以 上 に 達 し て お り 、 ア ー ヘ ン 市 環 境 保 護 局 は 公 害 原 因 を 薪 ス ト ー ブ と 定 め 、 薪 ス ト ー ブ の 規 制 を 初 め と す る 大 気 汚 染 防 止 プ ロ グ ラ ム を 制 定 し た 。
ド イ ツ 連 邦 環 境 庁 ( e n : U m w e l t b u n d e s a m t ) は 、 薪 は エ ネ ル ギ ー 効 率 が 非 常 に 悪 く 、 石 油 や 天 然 ガ ス な ど の 他 の 燃 料 と 比 較 し て 著 し く 大 量 の 汚 染 物 質 を 放 出 し 、 住 宅 地 に お け る 大 気 汚 染 の 原 因 で あ る こ と 、 室 内 の 空 気 も 著 し く 汚 染 す る こ と 、
ま た 火 災 の 危 険 も あ り 使 用 者 自 身 や 近 隣 住 民 の 健 康 に 悪 影 響 が あ る こ と を 警 告 し て い る 。
具 体 的 に は 呼 吸 器 疾 患 、 脳 卒 中 、 が ん 、 認 知 症 、 パ ー キ ン ソ ン 病 な ど の 神 経 疾 患 の 関 連 が 提 示 さ れ て い る 。
ま た 連 邦 排 出 規 制 を 守 ら な い 薪 ス ト ー ブ の 使 用 は 軽 犯 罪 で は な く 重 大 な 違 反 行 為 と し て 扱 う べ き で あ り 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 取 っ て 解 決 す る べ き と し て い る 。 具 体 的 に は 、 被 害 を 受 け た 場 合 は 行 為 者 に 対 し 薪 ス ト ー ブ 規 制 法 お よ び 薪 ス ト ー ブ の 危 険 性 や 、 薪 の 水 分 測 定 器 を 使 う べ き で あ る こ と 、 薪 ス ト ー ブ の 使 用 を 控 え る 必 要 が あ る こ と な ど を 苦 情 と し て 伝 え る こ と 、 そ の 上 で 苦 情 が 無 視 さ れ た の で あ れ ば 自 治 体 や 環 境 保 護 団 体 に 連 絡 す る こ と を 勧 め て い る 。
ま た 、 迷 惑 を か け て し ま い 苦 情 を 受 け た 行 為 者 に 対 し て は 、 正 直 に 近 所 と 話 し 合 い 解 決 に も っ て い く こ と を 勧 め て い る 。 [ 1 1 1 ] [ 1 1 2 ]
コ ペ ン ハ ー ゲ ン 市 長 は 薪 ス ト ー ブ の 使 用 を 禁 止 し 新 暖 房 へ の 切 り 替 え を 促 し て い る 。 [ 1 1 3 ]
イタリアの大気汚染はヨーロッパの中でもひどい部類に入ると認識されているが、中でもイタリアンピザ 発祥の地とされ、薪を使用する薪ストーブ型の石窯 (ピザ窯)が多いナポリ県 のサン・ヴィタリアーノ 市は特に汚染されており、2015年の大気汚染の観測データによる基準値超過回数の比較では、同じく汚染がひどいイタリアの都市ミラノ の86回に対しサン・ヴィタリアーノは114回であった。
大気汚染公害を低減するために薪ストーブ型の石窯を使った伝統的なピザ製法に対する禁止令が出された。
利用を再開するには汚染物質を低減するフィルタを設置することが求められる。
この禁止令は警察による巡回により精査され、違反した場合は最高1032ユーロ(1130ドル)の罰金を科せられる。
ナポリで発行されている日刊紙であるIl Mattino紙は、サン・ヴィタリアーノの大気は北京以上に汚染されており、(イタリア内において大気汚染がひどい都市である)ナポリの空気が「芳香で満たされた庭園」に思えると書いている。
禁止令の対象となった薪ストーブ型のピザ窯
[114]
[115]
デンマークでは大気汚染により毎年約4000人が早死している。デンマーク政府は大気汚染元の一つとして薪ストーブを挙げており、1億4900万デンマーク・クローネの予算を組んで「きれいな空気をデンマーク国民に」と銘した大気汚染浄化政策を実施し、またデンマーク議会は大気汚染対策のために、政府に対し2023年から旧式の薪ストーブを禁止する権限を与えた[116] [117] 。
デンマークの気候・エネルギー相であるDan Jørgensenは国民に向けて薪ストーブの使用を中止し、廃棄することを呼びかけた[118] 。
ギリシャ のアテネ の大気を1年間採取するリサーチを行った研究者は「薪を燃やすのをやめればよい。薪ストーブは欧州全域で使われており、EUが行動を起こすことは公衆衛生に大きな利益がある」と結論づけている[18] 。
ノルウェー では薪の使用による大気汚染が深刻化している[119] 。
ノルウェイ大気研究所によると、ノルウェーでは薪ストーブは二番目に普及している暖房器具であり、そのため大気汚染の主因となっている。ノルウェーの大気汚染の内、ほぼ全量が薪ストーブによる粒子状物質によっており、年間pm2.5の排出量は800トン以上にのぼる。
[120]
フィンランド の大気汚染を低減させる上で最も有効な政策を研究するリサーチでは、住宅用暖房での薪の使用を制限することが最も有効であるとしている。[121]
スウェーデン 環境保護庁(SEPA)は、古い薪ストーブは危険な公害の原因であるとして、段階的な廃止を提案した。控えめに見積もっても、毎年約1000人のスウェーデン人が木質燃料暖房による汚染が原因で早死にしているという。また、スウェーデン喘息・アレルギー 協会も、深刻な問題があることを確認している。スウェーデン環境研究所とウメオ大学の2018年の研究によると、同国では大気汚染に寄って年間約7600人の早期死亡が発生しており、死者一人につき少なくとも年間560億クローネ(53億ユーロ)の社会的コストがかかっている。[95]
ナイメーヘン 市では、薪ストーブの使用および汚染の抑制するための補助金制度が設置された。
薪ストーブの古い排ガス設備の撤去、排煙用の触媒フィルタの設置のために補助金を受け取れる。
また、補助金利用の条件として、市が主催する煙害防止の教育ワークショップを受講する義務が課せられる。
ナイメーヘンでは「トラブルメーカーにならないように」という薪ストーブ使用者を対象とした教育キャンペーンも併せて行われる。
「暖炉を1時間使用すると、ナイメーヘンからミラノまでトラックで移動した場合と同じだけ空気が汚染される」といった啓発情報を目的としたものである。
アムステルダム では薪ストーブの煙に対する苦情が増加傾向にある。苦情は冬期に集中している。窓を締めていても煙が侵入してくるという。通報者からは主に頭痛、目の痛み、喘息など呼吸器疾患の悪化が報告されるという[122] 。
ユトレヒト では、薪ストーブや暖炉による汚染のため、クリーン暖房への交換費用として最高2,000ユーロの補助金を提供すると発表した[18] 。
喘息 患者団体の「Asthma Australia」はオーストラリア政府に対し薪ストーブの禁止を要請している。
また薪ストーブに対する認識の調査が行われ、全オーストラリア国民の77%が都市、市街地では薪ストーブを使用すべきでないと考えており、また54%の人々が完全に禁止することに賛成という調査結果が発表された。
シドニー ではわずか4.4%の人達が薪ストーブを使用しているが、彼らの排出する汚染物質の量は冬の大気汚染全体の25%に相当するという[123] [124] 。
クイーンズランド州 ・ブリスベン では全ての薪ストーブは健康に有害であること、薪ストーブの使用者は隣人やコミュニティの煙害を防ぐ責任があることが明言され、薪ストーブ関連の苦情が申し立てられた場合は環境保護法のもと次のような手続きが行われる。
苦情の調査が開始される
薪ストーブの使用者に対し、より害の少ない使い方を書いた封書が送られる(乾燥していない薪は使わないなど)
煙害の事実関係の記録が保存される
その後も煙害が続いた場合は警告が発せられる
警告を無視した場合、強制措置が取られる
[125]
アーミデール での家庭の薪ストーブの健康コスト算出リサーチでは、薪ストーブによる大気汚染が毎年14人の早期死亡につながっていると推定した。
この問題は解決可能であり、すなわち薪を燃やすのをやめればよいと結論付けられ、タスマニア のロンセストン では薪ストーブからの切り替えプログラムが実施された。その結果、冬場の呼吸器系の死亡が28%、心臓系の死亡が20%減少する成果を上げた。この研究に関わったタスマニア大学の教授は「薪ストーブをより汚染度の低い暖房器具に置き換えることはすぐ採算が取れ、薪の煙に関連する病気や死亡を回避することが可能である」という。また、CO2を減らし、かつ大気汚染を低減するには、木質バイオマスを燃焼させることよりも断熱材を厚くすることが効果的とされる。[126]
ニュージーランド環境省 は、新たな大気汚染規制を発表し、その中には旧式の薪ストーブを規制することや置き換え支援制度の設置が含まれた。WHOが推奨する大気汚染レベルに対応するため。
これらの禁止措置により、10年間で9770万ドルの費用と引き換えに8億2000万ドルの医療費が削減できると見込まれている。大気汚染の原因であるPM2.5への暴露が低減されることで、早死、呼吸器疾患、心疾患、大気汚染による屋外活動の制限が減少することなどによる。[127] [128]