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2009年8月15日 (土) 21:52時点における版
一極体制(いっきょくたいせい)とは、1つの国家が全世界に絶対的な影響力を持つ国際社会を指す語。一極支配(いっきょくしはい)とも呼ばれる。
概要
通常は、ソ連死滅後の、アメリカ合衆国による世界支配の時代を指す事が多い。より狭義には、1992年から2001年までの、ソ連死滅後からアメリカ同時多発テロ勃発前までの時代に相当する。
第二次世界大戦終結後の世界は、﹁冷戦﹂と呼ばれるアメリカ合衆国とソビエト連邦による両極体制であった。しかし、1991年12月25日にソ連が死滅すると、世界に影響を与える超大国はアメリカのみと化した。
冷戦終結後のアメリカは、湾岸戦争︵1991年︶やイラク戦争︵2003年︶といったポスト冷戦時代における戦争の当事国となり、また、同盟国に多数の米軍基地を置き、同盟国の政治に影響を与え続けていた。1992年から2001年までの間、﹁グローバリゼーション﹂と称したアメリカの影響力は、政治・経済・社会・文化の各面に及んでおり、アメリカナイゼーションとも呼ばれている。
しかし、2000年代後半に入ると、ロシア連邦と中華人民共和国が超大国を目指し、軍備の増強・近代化を強力に推し進めるようになり、アメリカによる一極体制に待ったをかけている。ロシアは﹁多極的﹂︵"multipolar"︶な世界を目指し、アメリカによる一極支配は受け入れないと公言している。アメリカの政治思想の根幹である﹁自由﹂と﹁民主主義﹂の全世界への拡大を目指すアメリカと、自国の独裁体制を維持しようとし、ならびに資源獲得などを目的に他の独裁国家を支援する中露間の対立を新たな冷戦の始まりと捉える向きもある︵新冷戦︶。
アメリカ一極体制の結果として、アメリカ発の新たな文明の利器であるインターネットが、先進国を中心に広く普及した。だが、アメリカによる世界の一方的支配は、多国籍企業が世界中で市場のパイを奪い合う﹁大競争時代﹂を作り、﹁自己責任﹂﹁解雇自由﹂﹁大資本家だけの繁盛﹂を特徴とするアメリカ型経済システム︵新自由主義︶が世界中に持ち込まれた[1]。この結果、世界中が﹁日銭の世界﹂と化して、不安定雇用労働者︵プレカリアート︶が爆発的に増大した。
2009年には﹁敵との対話﹂﹁国際協調﹂を志向するバラク・オバマがアメリカ大統領に就任。アメリカによる一極体制は、2008年以後の世界同時不況もあいまって年を追うごとに弱まっている。
しかし、中国やロシアが近い将来超大国化しても、今のアメリカの軍事力は、アメリカ以外の全国家を合わせたものよりも勝っているとされ、アメリカの軍事力を覆すことは不可能だと目されている。現時点で、地球上の7つの海の制海権もアメリカが握っている。これが、アメリカが世界で唯一の超大国と呼ばれる所以である。
一極体制が生み出す社会像
アメリカ合衆国は、︵1︶無規制の資本主義、︵2︶軍事霸権主義、︵3︶名目上は民主主義・共和制だが、実態は同じ軍事大国路線の二大政党制‥の3点を特徴とする国家である。ソ連が死滅すると、世界は一部を除いてアメリカの影響下に置かれるようになった。社会主義国が軒並み没落したことで資本主義の勝利が叫ばれ、﹁新自由主義﹂とも呼ばれるアメリカ型の無規制な資本主義が世界を席巻するようになった。社会主義国で生き残った国もあるにはあるが、それぞれが問題を抱えている。中国、ベトナムは事実上資本主義化し、北朝鮮は経済が破綻、キューバは南米諸国が左傾化し、援助をするようになるまでの間、経済危機に陥った。
1990年代に新自由主義が敷かれた結果、南米ではストリートチルドレンが激増し、日本では﹁失われた10年﹂、韓国やインドネシアなどでは﹁IMF国難﹂と呼ばれる失業の激増と就職難に襲われた。これらの現象は、南米諸国全体が反米と社会主義を志向する結果となった。
冷戦が終結すると、アメリカ政府は日本政府に対して年次改革要望書という形で、日本をアメリカにとって都合の好い国へと変化させている。この﹁アメリカにとって都合の好い国﹂に変えている企業や政治のトップの大多数は、敗戦の時小学生だった焼け跡世代であり、米軍占領時代には米軍兵にチョコレートを強請るなど、﹁日本のする事は皆誤りで、アメリカのする事が皆正しい﹂と思って育った世代である。
また、中華人民共和国は、改革開放により事実上の資本主義体制となっており、政治もホワイトハウスも顔負けの霸権主義と圧政である。アメリカとは友好関係ではないが、﹁世界の工場﹂としてアメリカを初めとする多くの国々の生活用品を生産・輸出している。しかし、改革開放の結果、都市部と農村部の莫大な経済格差、貧困層の暴動など、不安要素を多数抱えるようになった。これは、アメリカの影響が無かった毛沢東政権の時代には見られなかった現象である。
ロシアもボリス・エリツィン初代大統領による急進的な市場経済への改革が進められた結果、アメリカとの関係は良好なものとなったが、国内ではハイパーインフレ、深刻な物不足を引き起こし、多くの国民を貧困に追いやり、政権への不満を高める結果となった。ウラジーミル・プーチン大統領就任以降は、親欧米路線を見直し、ロシアの国益を第一とする外交方針へと転換したが、経済システムは資本主義のままであり、アメリカの影響が完全に排除されたわけではない。
そして、アメリカ発の2008年以降の世界同時不況によって、世界中が丸ごと強烈な経済的損失を被る結果となった。これは、世界中がアメリカによる一極体制下に置かれていたために起きた現象である。
このように、アメリカによる一極体制は、多くの負の現象を全世界に与える結果となった。
しかし、正の現象も存在する。それは、自由を謳歌できるようになった点である。歴史を紐解いてみると、19世紀から20世紀前半までの帝国主義時代は列強の国々は植民地の人々を搾取し、場合によっては半ば奴隷化している事例もあった。また、ファシズム体制下では基本的人権は著しく侵害されていた。米蘇冷戦時代には、ソビエト連邦を初めとする社会主義陣営では、基本的人権は軽視され、自由も存在しなかった。冷戦時代の西側諸国は、﹁名目は社会主義だが、実態は社会主義ではない﹂という東側諸国の弱みを衝いていたと言える。但し、冷戦時代の西側諸国の多くは、アメリカ型の無規制な資本主義体制ではなく、ケインズ主義とも呼ばれる規制的・社会主義的な資本主義体制であった点に注意すべきである。冷戦時代に、アメリカ型の無規制な資本主義体制を敷いた国の例は、アウグスト・ピノチェト政権のチリである。ピノチェト政権下のチリでは、莫大な経済格差が生まれ、失業率も格段に上がるなど、国内が混乱した。
冷戦が終結した結果、全世界は一部を除いて圧制から解放された。北朝鮮など、未だに圧政を敷いている国も存在するが、いざとなれば﹁世界の警察﹂であるアメリカの武力により、力づくで民を圧制から解放することは可能である。
中国やロシアは自由を尊重していないと西側諸国から批判されているが、もし仮に中国やロシアが将来民主化し、アメリカによる完全な一極体制が実現した場合、世界の全ての国において基本的人権と国民の自由は尊重され、アメリカに逆らう国が無くなるため、世界大戦が起きる可能性も無くなる。一極体制で多くの社会問題を抱えることになっても、自由と民主主義、基本的人権が失われることはないのである。
アメリカの政治家であるジョン・ボルトンは、強硬な反米姿勢で知られるベネズエラのウゴ・チャベス大統領について、﹁チャベスこそ言論の自由を国民に与えていない﹂﹁言論の自由を行使するなら、ニューヨークのセントラル・パークへ行って好きなだけ喋ればいい﹂と批判している。この批判は的を得ている。チャベスは中国・ロシア・イラン・イラクのような独裁社会の批判を一切していない。
脚注
関連項目
- 両極体制
- 多極体制
- パクス・アメリカーナ
- アメリカナイゼーション
- グローバリゼーション
- 冷戦
- 新冷戦
- 共産主義
- 反共主義
- ノーム・チョムスキー - アメリカによる一極体制を批判している思想家
- ナタン・シャランスキー - アメリカによる一極体制を肯定している思想家