寺井知高

寺井 知高︵てらい ともたか、1891年︵明治24年︶3月3日 - 1975年︵昭和50年︶5月17日︶は、日本の剣道家、居合道家。流派は神道無念流、長谷川英信流。

経歴

旧大村藩藩士寺井市太郎の次男として長崎県彼杵郡千綿村︵現東彼杵町︶に生まれる。大村藩は幕末に江戸から斎藤歓之助を剣術師範に招き、神道無念流を藩士に教授した。歓之助の私邸に設けられた道場微神堂から柴江運八郎や渡辺昇を輩出している。廃藩後、微神堂は柴江が受け継いだ。市太郎は巡査となり、佐賀の乱で首領逮捕に貢献した。

知高は幼少から父に剣の手ほどきを受け、14歳で柴江運八郎に入門する。21歳で長崎県巡査に任官し、長崎警察署に勤務する。

1914年︵大正3年︶、第一次世界大戦勃発により陸軍第18師団に召集され中国大陸に渡る。約1年で召集を解除され警察に復職する。

1915年︵大正4年︶8月20日、剣道研究のため警視庁に出向を命じられる。警視庁では神道無念流の中山博道が剣道師範を務めており、知高は同年12月31日、中山の道場有信館に入門し、剣道・居合を学ぶ。

1917年︵大正6年︶、日本大学法科専門部二部に入学。

1918年︵大正7年︶、警視庁剣道助手となり、本所相生警察署に勤務。

1919年︵大正8年︶、警視庁から巡査精勤証を授与。8月、中山博道から神道無念流目録を授与。10月、警視庁から剣道四級上を授与。

1920年︵大正9年︶7月、家事︵結婚︶の都合により大学を退学。

1922年︵大正11年︶、大日本武徳会から剣道精錬証を授与。中山博道から剣道五段の免状を授与。

1923年︵大正12年︶、朝鮮総督府警察に巡査部長として異動、慶尚南道の各警察署で剣道を指導する。

1925年︵大正14年︶7月、大日本武徳会から居合術精錬証を授与。

1927年︵昭和2年︶4月、江原道警察部に異動。

1929年︵昭和4年︶2月、警察を依願退職し、郷里長崎に戻る。長崎刑務所、県立農学校の嘱託剣道教師、大日本武徳会長崎支部諫早支所剣道教師を務める。

1931年︵昭和6年︶、大日本武徳会から居合術教士、剣道五段を授与。

1934年︵昭和9年︶7月、検定で師範学校・中等学校の教員資格を与えられる。県立農学校の正式な剣道教員となる。

1937年︵昭和12年︶、大日本武徳会から剣道教士号を授与。

1938年︵昭和13年︶、県立農学校剣道部を県大会優勝に導く。

1952年︵昭和27年︶、微神堂の剣道師範となる。

1953年︵昭和28年︶11月、﹃居合術の研究﹄を刊行。長谷川英信流、神道無念流、試し斬りを解説。

1954年︵昭和29年︶、全日本居合道連盟が発足し、加盟する。同連盟から範士号を授与。

1960年︵昭和35年︶、全日本剣道連盟から居合道範士号を授与。

居合の流儀名は神道無念流または英信流、大森流、長谷川英信流を名乗り、夢想神伝流を名乗ることはなかった。﹁私が中山先生から教えていただいた居合は大森流と長谷川英信流です。夢想神伝流は知りません﹂と主張した。

80歳を過ぎても剣道の稽古を続け、少年に剣道を教えた。

1975年︵昭和50年︶5月17日、死去。享年85歳。

参考文献

• 池田清代『居合道名人伝 上巻』(剣道日本プレミアム)、スキージャーナル