てれすこ
﹃てれすこ﹄は、落語の演目のひとつ。
あらすじ [編集]
ある漁場で正体不明の魚が獲れ、どの漁師にも名前がわからなかった。困った漁師たちはその魚を持って奉行所を訪れる。役人たちも困り果て、議論のすえ、その魚の魚拓を貼り出して、魚の名前に懸賞金をつける。すると、ある男が名乗り出て、その魚の名は﹁てれすこ﹂だと言う。あまりに頓狂な名前を不審に思う役人だが、否定のしようもなく、男にしぶしぶ懸賞金を支払う。 その話を聞いた奉行はその魚を干物にすることを指示。干されて形の変わったその魚の魚拓を取り、ふたたび懸賞金をつけて貼り出す。すると同じ男が現れ、その魚の名は﹁すてれんきょう﹂だと言う。これを聞いた奉行は怒り、男はお上を偽ったとして死罪を申し渡される。 男は﹁死ぬ前に一目妻子に会わせて欲しい﹂と最後の望みをし、対面した妻へ﹁いいか、この子が大きくなってもイカを干したものを決してスルメと言わせるな﹂と告げる。これを聞いた奉行は、膝をぽんと叩いて男を無罪放免とする。 妻は夫が助かるように断食をしていたが、乳飲み児がいるため乳が出なくなっては困るので、そば粉を水に溶いたものだけを口にしていた。スルメの件で助かったのは、妻が干物︵火物=加熱調理をしたもの︶断ちをしたからだ、という落ち。 3代目三遊亭金馬は、さらに﹁してみりゃ、あたりめェ︵スルメの異名あたりめと当たり前をかけている︶の話﹂と加えて演じ、これを落ちとすることもある。 金馬のほか2代目三遊亭円歌、6代目三遊亭圓生、橘ノ圓都が得意としていた。上方の圓都の演出では舞台を長崎に設定していた。解説[編集]
鎌倉時代の﹃沙石集﹄巻八第十六話を素材に作られたとされている。﹃沙石集﹄では生を﹁くぐるくつ﹂、乾燥品を﹁ひひりひつ﹂と呼んでいる。江戸時代の笑話集﹃醒睡笑﹄では、生を﹁ほほら﹂、乾燥品を﹁くくら﹂と呼ぶ。吉四六噺にも全く同趣向の噺があり、そこでは生を﹁ばばくろう﹂、乾燥品を﹁おっきゃらまあ﹂と呼んでいる[1]。北海道江差町の繁次郎話では、生を﹁キンキラキンノキン﹂、乾燥品を﹁カンカラカンノカン﹂と呼ぶ。しかし、てれすこ、すてれんきょうの語源については、はっきりしない。 てれすこはオランダ語で望遠鏡を意味する﹁テレスコ﹂telesco︵複数形・英語の﹁テレスコープ﹂telescopesに相当︶、すてれんきょうは﹁ステレン鏡﹂であり、﹁ステレン﹂はオランダ語の﹁星々﹂de sterren、つまり同じく天体望遠鏡のことだとする説がある[2]。 英語由来の﹁ステレオ鏡﹂︵ステレオグラムを、平行法や交差法のように無理をしないで見ることができるビューア︶[要出典]、または、ロシア語の鱈︵トレスカ、露: Тресковые︶・コチョウザメ︵ステルリャジ、露: Стерлядь︶とする説もある。出典[編集]
関連項目[編集]
- やじきた道中 てれすこ(映画、2007年)