アンソロジー
アンソロジー︵英: anthology、仏: anthologie︶は、異なる作者による作品を集めたもの、または、同一作家による作品集[1]。詩撰、歌撰、詞華集。詩以外を扱う場合は選集。
概要[編集]
通例、特定のジャンル︵文学分野︶から複数の作品をひとつの作品集としてまとめたものを指す。多くの場合、主題や時代など特定の基準に沿ったものが複数の作家の作品から集められる。俳句・短歌・詩を集めた句集や歌集・詩集のみならず、小説や漫画などの同人による作品を収めた同人誌︵合同誌︶、更には卒業文集もアンソロジーである。また、同一著者個人の作品集を指す場合にも用いられる。 より広義には、映画や歌曲、絵画など文学以外の芸術作品のでも、一つの作品集としてまとめられアンソロジーと呼ばれることがある。そのため発表形態は書籍とは限らない。ただし、音楽作品をレコードやCDにまとめた場合は﹁コンピレーション﹂と表現されることが多くなっている。語源[編集]
英語の anthology で、古典ギリシア語の ἀνθολογία (anthologia) に遡る[2]。﹁花﹂を意味する ἄνθος (anthos) と ﹁集めること﹂を意味する λογία (logia) との複合語で[3][4]、﹁花集め﹂、﹁花摘み﹂の意味であった。 日本語では単に選集とされるほか、名詩選︵集︶、詞華集、詩文選[5]などと訳される。歴史的経緯[編集]
元々は、古典ギリシアにおける警句集を指していた。紀元前1世紀、50人の詩人の警句を集めたガダラのメレアグロスのものが最初であるという。紀元後2世紀に、ギリシアの文法家ディオゲニアノスがアンソロジーに当たる ﹁アントロギア﹂ἀνθολογία の語を用いた。10世紀になると、コンスタンティノス・ケファラスが紀元前7世紀から紀元後10世紀までの300人の詩人から6,000の短い詩を編んだ。これが、今日に﹃ギリシア詞華集﹄ (Greek Anthology) として伝わっているもので、アンソロジーの代名詞的存在であった。近代になると、短い叙事詩を集めたものがアンソロジーとして作成されるようになった[6]。 中国の﹃唐詩選﹄など、漢詩の選集もアンソロジーである。日本では和歌が伝統的にアンソロジーとして編まれたジャンルで、近代以降では短編小説や随筆、最近では漫画など詩歌に限らず他の文学作品も対象にされている。異色のものでは、弔辞を編集した弔辞のアンソロジー﹃弔辞大全﹄がある[7]。代表的なアンソロジー[編集]
- 抒情詩
- Tottel's Miscellany (1557年、イギリス)
- Le Parnasse contemporain (1866年、フランス)
- 詩選(漢詩)
- 歌選(勅撰)
- 歌集(私撰)
- 連歌
- 聖典・法典
出典[編集]
(一)^ “アンソロジー︵anthology︶”. コトバンク. デジタル大辞泉︵小学館︶. 朝日新聞社. 2018年8月11日閲覧。
(二)^ 寺澤芳雄︵編︶、1997、﹃英語語源辞典﹄、研究社 ISBN 978-4-7674-3103-1
(三)^ 古川晴風︵編︶、1989、﹃ギリシャ語辞典﹄、大学書林 ISBN 978-4-475-00120-5
(四)^ アウグスチン・シュタウブ︵編︶、2010、﹃シュタウブ希和辞典﹄、リトン ISBN 978-4-86376-013-4
(五)^ ﹁アンソロジー﹂﹃新グローバル英和辞典﹄︵三省堂︶ - Yahoo!辞書
(六)^ 船戸英夫﹁アンソロジー﹂﹃日本大百科全書﹄︵小学館︶ - Yahoo!百科事典[リンク切れ]
(七)^ 開高健 編 ﹃弔辞大全 - レクイエム57﹄ 青銅社、1982年︵﹃弔辞大全 1 - 友よ、さらば﹄ 新潮社︿新潮社文庫﹀、1986年、﹃弔辞大全 2 - 神とともに行け﹄ 新潮社︿新潮社文庫﹀、1986年︶。倫書房編集部 編 ﹃弔辞大全﹄ 倫書房、1998年。
関連項目[編集]
- アンソロジー映画
- アンソロジーコミック
- コンピレーション・アルバム
- 編纂
- 歌合せ - 連歌
- オムニバス
- ザ・ビートルズ・アンソロジー
- 私花集 (さだまさしのアルバム) - アルバム名の読み仮名は「アンソロジィ」とされている。