コンテンツにスキップ

カルタン幾何学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学 > 幾何学 > 多様体論 > 微分幾何学 > カルタン幾何学


[ 1]: Cartan geometry

C

概要[編集]


使

GHGXH



[1]
ユークリッド幾何学 一般化  クラインの幾何学
 → 
 
   ↓一般化    ↓一般化
リーマン幾何学 一般化 カルタン幾何学
 → 
 

MGH

MM



mm

使mm

[]


[2]22使

M2MxyM

M-M[ 2]

MMu




Mu

M-


uω



[]



[]


GNGG-P

 ()  


NAN: fundamental vector field on Nassociated to A[3][4]

なお、NG-主バンドルの全空間Pの場合にはは垂直部分空間の元である事が容易に示せる。

随伴表現[編集]


 ()  GG





AdG: adjoint representation[5]

well-defnined

[]


調

 ()  GGgG1-


ωGgGg[6][ 3]


モーレー・カルタン形式は以下を満たす[6]

定理 ―  


-1-αβ

2[7]: Maurer-Cartan equationG[8]: structure equation

[]

[]


G: model geometry[9][10]

GH

 ()   M: Cartan geomerty of type over MMH-P-1-


[11][12][13]

(一)

(二)
(三)

ωH-: Cartan connectionM[12]

3

1M

2ω2

3

M



主接続との関係[編集]


H-HGMH-


G--1-


[14]G-[14]G-QH-ωTPP[15]


[]


HGHMGG

G[ 4]GG

G使

  []: infinitesimal Klein geometry[16][]: Klein pair[16]

H


HH[ 5]

[17]

[ 6]GHK[18]

 ()   M

H-

ωP-1-

HM: Cartan geometry on Mmodeled on with H[12]

カルタン幾何学としてのクライン幾何学[編集]


調Ge


H-G

[]


G[ 7]GGM: locally Klein geometry[20]

M


H-[ 8]G


-1-well-defined[20]

[]


2

  M1M2M1M2







: local geometric isomorphism[21]f: geometric isomorphism[21]

定数ベクトル場と普遍共変微分[編集]


TPω


TP

ωTpPTP

定義 (定数ベクトル場) ― に対し、を各点を対応させるベクトル場とする。

このベクトル場を定数ベクトル場[訳語疑問点]: constant vector field)という[22][注 9]

定数ベクトル場を用いると、以下の「普遍共変微分」を定義できる:

定義 (普遍共変微分) ―  Vをベクトル空間とし、を(滑らかな)写像とする。このとき、fにベクトル場(は接ベクトル空間の元なので自然に微分作用素とみなしたもの)を作用させた

fAによる普遍共変微分[訳語疑問点]: universal covariant derivative)という[23]



[]


調

MHHHH-P



定理 (接バンドルと無限小クライン幾何学の関係) ― ベクトルバンドルとしての同型

が成立する[24]





well-defined[24]

[]

[]


ωG



定義 (曲率) ―  カルタン接続ωを持つ多様体M上のカルタン幾何学に対し、P上の-値2-形式

をカルタン幾何学曲率: curvature)という[12]

Ωは(局所)クライン幾何学からのズレを表す量であると解釈でき、明らかにクライン幾何学や局所クライン幾何学の曲率は恒等的に0である。

曲率は以下を満たす:

定理 (カルタン接続のビアンキ恒等式) ― カルタン接続ωとその曲率Ωは下記の恒等式(ビアンキ恒等式: Bianchi identity)を満たす[25]


PuHfixHPuTPuωHωHPuωH

  ΩTPuTPuωH

なお、実はvwの少なくとも一方がTpPuに属していれば、である事が知られている[26]。よって特に次が成立する:

定理 ― M上の-値2-形式Ω'が存在し、任意のと任意のに対し、以下が成立する[26]


Ω'

[]





vwTpPu[26]well-defined

定義 ―  上に誘導する写像

をカルタン幾何学曲率関数: curvature function)という[27]


M-2-Ω'Ω'使

[]



定義 (捩率) ―  曲率Ωを商写像

と合成したP上の-値2-形式となる。をカルタン幾何学捩率: torsion)といい[注 10][12]P上恒等的に0になるカルタン幾何学捩れなし: torsion free)であるという[12]



[]








定理 (の特徴づけ) ― は下記を可換にする唯一の写像である:

ここでを対応させる写像である。



fix




FMTM[28]





定義 ―  随伴表現

が忠実なとき、クライン幾何学(およびをモデルに持つカルタン幾何学)は一階[訳語疑問点]: first order)であるといい、そうでないとき高階[訳語疑問点]: higher order)であるという[29]

以上の準備のもと、を幾何学的に意味付ける:


 ()  


1-[28][ 11]

上記のような、となるを対応させる-値1-形式をフレームバンドル上の標準形式: canonical form)という[30]。上述の定理はカルタン幾何学が一階であればは標準形式として意味づけられる事を保証する。

簡約可能なモデル幾何学に対するカルタン幾何学[編集]

本節ではモデル幾何学が「簡約可能」という性質を満たす場合にが対するカルタン幾何学の性質を見る。具体的にはモデル幾何学がユークリッド幾何学やアフィン幾何学の場合には簡約可能になる。

定義[編集]

まず簡約可能性を定義する:

定義 ―  モデル幾何学簡約可能[訳語疑問点]: reductive)であるとは、作用により不変な部分ベクトル空間が存在し、を満たす事を言う[31][32][33][注 12]




G2GHB[33]


[]


M




 ()  MH-

Pω P[34]










 ()  MTMPH-F γP=FθF




P=F[34][ 13]

11[34]

Koszul[]


ωH-PVHKoszulMKoszul[35]




TMKoszul



G

[]


VHMKoszul

EsfsPV

定理 ― M上の任意のベクトル場Eの任意の切断sに対し、以下が成立する:

ここでとなるPの接ベクトルである[35][注 14] [注 15]

上記のようにはKoszul接続と関係するが、それに対しの方は自明なものになってしまう:

定理 ― M上の任意のベクトル場Eの任意の切断sに対し、以下が成立する[36]

ここでγ*Eを定義する線形表現が誘導する写像上の線形写像である。

曲率の分解[編集]







G2BB




Ω








[]





使

定理 (分解した場合の構造方程式) ― 


1

2θ2


TM

[]






定理 (分解した場合のビアンキ恒等式) ― 


1

2



曲線の発展[編集]

P上の発展[編集]

をモデルとするM上のカルタン幾何学とし、を区間上定義されたP上の曲線とするt[a,b]上の点とすると、にはカルタン接続ωによりの元が対応している。次の事実が知られている:


  gGG


[37]G

gω(: development)[37][ 16]

GGG

G

MTpPvp

沿G

MM

M上の発展[編集]

補題 ― M上の曲線とし、を曲線とする。このとき、の発展の発展は以下を満たす[38]

Gからへの商写像とすると、上記の補題から次が成立する:


  MxPg


gwell-defined

xω: development[39]

ホロノミー[編集]


Mfixu0MPp0

  u0


G

cu0p0: holonomy with respect to p0[39]p0M:  holonomy group of with respect to p0[39][ 17]

u0p0p0h, where [39]u0u1[39]

0-[39]: restricted holonomy group[39]




well-defined: monodromy representation of [39]

一般化円と測地線[編集]


  [ 9]MM[]: generarized circle[39]

MM: geodesic

1-[ 18][ 19][39][ 20]

G1-[ 18]: straight line

使

   M

M: geodesic[39]

TM2

定理 ―  と簡約可能であるとし、カルタン接続ωと分解したときPの主接続(の接続形式)TMに誘導するアフィン接続をとする。

このとき、M上の曲線上述したカルタン幾何学における測地線である必要十分条件は、以下が成立する事である:

クライン幾何学との関係[編集]


: flat0





  MM

Mω




[42]

MuU[43]

M

M

[]



[]


MMG[ 21]


adGwell-defined


[44]ad



定義 ― 記号を上と同様に取り、を取る。クライン幾何学に対し、が基点に関して幾何学的な向きを保つ: geometrically orientation preserving with respect to the base point p)とは、pphを結ぶP上の曲線で以下の条件を満たすものが存在する事を言う[45][注 22]

に関する単位元からの発展の終点がになる

定理・定義 ― Pが連結であれば幾何学的向き付けの定義はpに依存しない[45]Pが連結なとき、幾何学的向き付け可能なHの元全体の集合をと書く[45]


adPeH




HorHePHorH[45]

  MMP[ 23]

H-PHor-: geometrically orientable[46]

PHor-P: geometrically orientation[46]

M: geometrically orientation cover[46]

: geometrically oriented[46]

次が成立する:

定義 ― 局所クライン幾何学(に定まるクライン幾何学)は、Gが連結なら幾何学的向き付け可能である[46][注 24]

完備性[編集]

Mを多様体とし、をモデル幾何学とするM上のカルタン幾何学とする。

定義 ― が以下を満たすとき、完備: complete)であるという[12][注 25]

任意のに対し、定数ベクトル場(定義は前述の積分曲線は任意のおよび任意のに対して定義可能である。

定理 ― 局所クライン幾何学(に対応するカルタン幾何学)は完備である。

定式化[編集]

完備かつ平坦で幾何学的に向き付可能なカルタン幾何学は局所クライン幾何学と幾何学的同型になる:


  MM

GHGΓM[48][ 21]

GG GΓ

  2

M1M2M1M2g[49]

ユークリッド幾何学をモデルとするカルタン幾何学[編集]

本章ではモデル幾何学がユークリッド幾何学の場合を考える。すなわち、モデルとするクライン幾何学がユークリッド空間上の等長変換群と直交群の組である場合の、多様体M上のカルタン幾何学を考える。

標準的な計量[編集]

本節では以下の定理を示す:

定理 ― ユークリッド幾何学をモデルとするカルタン幾何学には、Mに標準的なリーマン計量が定数倍を除いて一意に定まる[50][注 26]


調Ad






TuM

 for 
well-defined[50]Mg

[]


使

ωPω

TM

  g


MXYZ

0[51]0[ 27]

0

[]




mM沿Mm[ 28]


定理 ―  記号を上述のように取る。このとき、等質空間への発展に一致する[52]


Mmt


使M

定理 ―  に沿ったM上のベクトル場とすると、以下が成立する[52]

すなわち、曲線に沿ったの共変微分をに移したものは、を移したものを通常の意味で微分したものに一致する。

よって特に以下が成立する:

 ―  における接ベクトルM上曲線に沿って(レヴィ・チヴィタ接続の意味で)平行移動したものをとするとき、におけるベクトルまで通常の意味で平行移動したものはに等しい[52]

脚注[編集]

出典[編集]



(一)^ #Sharpe p.61.

(二)^ #Erickson 4.1

(三)^ #Tu p.247.

(四)^ #Wendl3 p.89.

(五)^ #Tu p.123.

(六)^ ab#Tu p.198.

(七)^   . p. 50. 2023627

(八)^ # p.59.

(九)^ #Erickson-2 p.3.

(十)^ #Sharpe p.151.

(11)^ #Erickson-2 p.7.

(12)^ abcdefg#Sharpe p.184.

(13)^ #Kobayashi p.127-128.

(14)^ ab#Kobayashi p. 128.

(15)^ #Sharpe p.365.

(16)^ ab#Sharpe pp.156.

(17)^ ab#Sharpe p.174.

(18)^ #Sharpe p.157, 166.

(19)^ #Sharpe p.154.

(20)^ ab#Sharpe pp.154, 207, 213.

(21)^ ab#Sharpe p.185.

(22)^ #Alexandre p.65.

(23)^ #Sharpe p.194.

(24)^ ab#Sharpe p.188.

(25)^ #Sharpe p.193.

(26)^ abc#Sharpe p.187

(27)^ #Sharpe p.191.

(28)^ ab#Sharpe p.191.

(29)^ #Sharpe pp.164, 191.

(30)^ #Kobayashi-Nomizu-1 p.118.

(31)^ abc#Sharpe pp.151, 197.

(32)^ #Erickson p.35.

(33)^ ab#Alexandre p.39.

(34)^ abc#Sharpe pp.362-364.

(35)^ abc#Sharpe p.199.

(36)^ #Sharpe pp.196-197.p.197ρXρ*

(37)^ ab#Sharpe p.119.

(38)^ #Sharpe pp.208.

(39)^ abcdefghijklm#Sharpe pp.209-211.

(40)^ #Alexandre p.69.

(41)^ #Sharpe-2 p.67.

(42)^ #Alexandre p.68.

(43)^ #Sharpe p.212.

(44)^ #Sharpe p.111.

(45)^ abcd#Sharpe pp.203-205.

(46)^ abcdefg#Sharpe p.207.

(47)^ #Sharpe-2 p.66

(48)^ #Sharpe p.213.

(49)^ #Sharpe p.216.

(50)^ ab#Sharpe p.238.

(51)^ #Sharpe p.234.0

(52)^ abc#Sharpe pp.386-387.

注釈[編集]



(一)^ 

(二)^ M""

(三)^ eG

(四)^ GG

(五)^ [17]AdAdGGwell-defined

(六)^ #Sharpe p.174

(七)^ [19]

(八)^ H-

(九)^ abM[41]

(十)^ 2

(11)^ 

(12)^ [31][31]

(13)^ #Sharpe pp.364-365.#Sharpep.362.#Sharpep.362.

(14)^ [35]XY ()Y

(15)^  p pp

(16)^ #Sharpe p.209.p.119.: development of ω along starting at g

(17)^ [39][40]

(18)^ abAGg1-

(19)^ [39]G1-1-1-

(20)^ 

(21)^ ab Ad G

(22)^ ω1-

(23)^ [46]PPHor

(24)^ [46]GG使

(25)^ #Sharpe1-ωωP1-ω#Sharpe pp.69. 129PXωfor [47]A

(26)^ 2gg'Muk

(27)^ Koszul

(28)^ torsiontwist

[]

[]


Richard Sharpe (1997/6/12). Differential Geometry: Cartan's Generalization of Klein's Erlangen Program. Graduate Texts in Mathematics. 166. Sprinver. ISBN 978-0387947327 

Richard Sharpe (2002). An introduction to Cartan Geometries. Proceedings of the 21st Winter School "Geometry and Physics". pp. 61-75 

Jacob W. Erickson. A Visual Invitation to Cartan Geometries.  University of Maryland. 20231113

Jacob W. Erickson (202352). A method for determining Cartan geometries from the local behavior of automorphisms.  arXiv. 20231113

Raphaël Alexandre and Elisha Falbel (2023217). Introduction to Cartan geometry. 20231113

Shoshichi Kobayashi (1994/12/1). Transformation Groups in Differential Geometry. Classics in Mathematics. Springer. ISBN 978-3540586593 

[]


Chris Wendl. Chapter 3: Connections. 2023824

Loring W. Tu (2017/6/P15). Differential Geometry: Connections, Curvature, and Characteristic Classes. Graduate Texts in Mathematics. 275. Springer. ISBN 978-3319550824 

1989515ISBN 978-4785310585 

Shishichi Kobayashi; Katsumi Nomizu (2009). Foundations of Differential Geometry Volume I. Wiley Classics Library. Wiley. ISBN 978-0-471-15733-5. Zbl 0119.37502