ルーシ
ルーシとは、以下のようなものに用いられた名称である。
民族[編集]
ルーシを称した民族。 ●ルーシ族 - かつてスラヴ人がノルマン人に対して用いたとされる呼称。真偽については議論がある。 ●ルーシ人 - キエフ・ルーシの人民。11世紀から20世紀半ばにかけてウクライナ人とベラルーシ人の自称。ラテン語で﹁ルテニア人﹂と呼ばれる。 ●ルシン人 -ルシン語を母語とする現代のルーシ人の一派。自称は﹁ルーシ人﹂。国名[編集]
●ルーシ‥中世時代におけるキエフ大公国の正式な国号。キエフ・ルーシとも[1]。 ●ルーシ‥キエフ大公国のもとで誕生したキエフ大公国・チェルニーヒウ公国・ペレヤースラウ公国を中心とするリューリク朝の三国。広義でハールィチ・ヴォルィーニ大公国、ヴラジーミル大公国、ノヴゴロド共和国などの東欧の諸国を含むことがある。 ●ルーシ・カガン国‥8世紀後半から9世紀の半ばにかけて、現在のロシア北西部にあったとされる国家または都市国家群︵仮説︶。 ●ロシア帝国・ロシア連邦の通称。地名[編集]
ルーシと呼ばれた地域名。各国語については#国名参照。
●ルーシ - 本来、現代の北ウクライナのキーウ、チェルニーヒウ、ペレヤスラウを中心とする地域の名称。キエフ・ルーシの本土[2][3]。キエフ・ルーシの滅亡以降、中世後期・近世前期においてルーシ人︵ウクライナ人・ベラルーシ人[4]︶、あるいは東スラヴ人︵ウクライナ人・ベラルーシ人・ロシア人︶が居住する東ヨーロッパの広地域の名称。
●小ルーシ‥ルーシの地域名。﹁小﹂は文明の中心地アテネからの距離が小さいということで、﹁本土のルーシ﹂という意味合いになる。ドイプロ川の中流域、現在のウクライナの北部・中部を指す。後には、現在のロシアと比べて﹁小さなウクライナ﹂という意味でも用いられる。
●大ルーシ‥ルーシの地域名。﹁大﹂は文明の中心地アテネからの距離が大きいということで、﹁辺境のルーシ﹂という意味合いになる。主に、現在のヨーロッパ・ロシアに当たる地域を指す。ロシアの強大化に連れ、﹁偉大なロシア﹂という意味で使用されるようになった。
●黒ルーシ‥東欧の地域名。リトアニア大公国内のノヴォグルデク県ならびにミンスク県の領域、ネマン川の上流域。現在はベラルーシの北西部。
●白ルーシ‥東欧の地域名。キエフ大公国内の領土で、キエフから北方に広がる地域にあたる。﹁ベラルーシ﹂とも。ベラルーシの語源。
●紅ルーシ‥東欧の地域名。ポーランド王国内のルーシ県の領域、あるいは旧ハールィチ・ルーシの領域。ガリツィア地方の別称。赤ルーシとも。
雅号[編集]
●ルーシ - キエフ大公国を祖国とする現代のウクライナ・ベラルーシ・ロシアの別称、あるいは雅称。 ●キエフ・ルーシ - キエフ大公国のこと。本来の﹁ルーシ﹂。研究史上の人工的な用語。 ●ハールィチ・ルーシ - ハールィチ・ヴォルィーニ大公国のこと。研究史上の人工的な用語。 ●ヴラジーミル・ルーシ - ヴラジーミル大公国のこと。研究史上の人工的な用語。 ●モスクワ・ルーシ - キエフ・ルーシの後継であることを主張したモスコーヴィヤ、モスクワ大公国の自称。研究史上の人工的な用語。 ●ルーシ・ウクライナ - ウクライナがキエフ・ルーシの後継であることを主張した近代ウクライナ歴史学の概念。言語[編集]
●古ルーシ語 - ルーシ︵キエフ大公国︶の文語。古キエフ語とも。 ●ルーシ語 - キエフ大公国滅亡後のルーシ人の文語。ルテニア語とも[5]その他[編集]
●ルースキエ・ヴィーチャズィ︵Русские Витязи︶ - ロシア空軍の展示飛行チーム。 ●ルーシ (バラキレフ) - ロシアの作曲家、バラキレフの交響詩。 ●ルーシ (貨客船) - ロシア・ウラジオストクと富山県高岡市伏木を結んだ定期船。脚注[編集]
(一)^ ウクライナ語、ベラルーシ語、ロシア語ではРусь︵ルースィ︶、ラテン語ではRuthenia︵ルテニア︶、ギリシャ語ではΡως︵ロース︶またはΡωσία︵ローシア︶と呼ばれた。ギリシャ語名が﹁ロシア﹂の語源。
(二)^ Б. А. Рыбаков ПРОИСХОЖДЕНИЕ РУСИ//Киевская Русь и русские княжества XII-XIII вв.М., 1982. (B・A・ルィーバコフ﹃ルーシの起源﹄﹁12-13世紀におけるキエフ・ルーシとルーシ系の諸公国﹂モスクワ、1982年) — с. 55-67, 73, 85-90. ︵ロシア語︶
(三)^ А.Н.Насонов.﹃Русская земля﹄и образование территории древнерусского государства. Санкт-Петербург, 2002. ︵A・N・ナソノフ﹃<ルーシの地>と古代ルーシ国家の地域の形成﹄サンクトペテルブルク、2002年︶- Глава II. - С. 27-44. ︵ロシア語︶
(四)^ 場合によってロシア人を含むことがある。
(五)^ 但し、日本語文献では中世の東スラヴ語あるいは﹁ルテニア語﹂と呼ばれるのが普通でルーシ語という呼び方はあまり用いられていない。