ロイヤル・コレクション
ロイヤル・コレクション︵英: The Royal Collection︶またはイギリス王室コレクションはイギリス王室が所有する美術品コレクション。イギリス王室の私的財産で、王室の一部局である英国王立所蔵品協会の管理となっている[1]。英国王立所蔵品協会︵The Royal Collection Department︶はロイヤル・コレクションの分類、保存、洗浄、修復や、書物、絵画、彫刻などの展示に対して責任があるが、建築物については管轄外となっている。399人のスタッフがおり、2009年度には2,642万ポンド以上の収益があった[2]。
ロイヤル・コレクションには7,000点以上の絵画、40,000点以上の水彩画、ドローイング、150,000点以上の版画のほか、歴史的な価値がある写真、タペストリー、調度品、陶磁器、書物など、様々な美術品の一大コレクションとなっている。一般大衆に公開され、王族は住んでいないハンプトン・コート宮殿や、王族の邸宅ではあるが一般公開されているウィンザー城など、複数の場所に分散して収蔵されている。ロンドンのバッキンガム宮殿にあるクイーンズ・ギャラリー︵en:Queen's Gallery︶や、エディンバラのホリールード宮殿にあるエディンバラ・クイーンズ・ギャラリー︵en:Queen's Gallery, Edinburgh︶にも、ロイヤル・コレクションの美術品が数ヶ月間展示されることがある。ロイヤル・コレクションの金銭的価値は総額3,600億ポンドといわれている[3]。
バッキンガム宮殿クイーンズ・ギャラリーに展示される﹃菜食主義を唱 道するピタゴラス﹄︵1618年 - 1630年頃︶
ピーテル・パウル・ルーベンス
コレクションの中に16世紀のイングランド王ヘンリー8世以前の美術品はほとんど存在しない。ロイヤル・コレクションの発展に最も大きな寄与をしたのは、イタリア・ルネサンス絵画の熱心なコレクターで、アンソニー・ヴァン・ダイクらの芸術家を庇護したチャールズ1世だった。このコレクションはイングランド内戦による1649年のチャールズ1世の処刑後に売り払われてしまったが、1660年の王政復古で国王の座に就いたチャールズ2世が、コレクションのほとんどを取り戻している。また、ネーデルラント連邦共和国から28点のイタリア・ルネサンス絵画や12点の古代彫刻などを贈られ︵en:Dutch Gift︶、後にチャールズ2世も絵画や美術品を多数購入している。1760年に即位したジョージ3世は、王室図書館長フレデリック・オーガスタ・バーナード︵en:Frederick Augusta Barnard︶とともに非常に重要な版画と絵画をコレクションに加えており、1837年に即位したヴィクトリア女王と王配アルバートは、当時の現代絵画とオールド・マスターの絵画を熱心に収集した。ロイヤル・コレクションの所蔵美術品には美術館に贈与された作品もあり、歴代君主の中ではジョージ3世とヴィクトリア女王が多くの絵画を美術館に寄付している。特に王室図書館の収蔵品の大部分がジョージ3世によって大英博物館に寄付され、現在では大英図書館の所蔵となっている書物は現在でも﹁王室︵Royal︶﹂としてカタログに記載されている。ロイヤル・コレクションの中核となっているのは1603年にスコットランド王に加えイングランドなどの王に即位したジェームズ1世が購入したコレクションで、ウェールズの地図学者ハンフリー・ルイド︵en:Humphrey Llwyd︶、初代ラムリー男爵ジョン・ラムリー︵en:John Lumley, 1st Baron Lumley︶、第19代アランデル伯爵ヘンリー・フィッツアランらのコレクションと関連がある[4]。
1952年に即位した女王エリザベス2世のもとで重要な美術品がコレクションに加えられており、これらには購入や遺贈のほかに諸外国や公的機関からの贈与も含まれている[5]。イギリス連邦からの贈与が多く、一例として1985年から2001年にかけてカナダ水彩画協会︵CSPWC︶から75点の現代水彩画がコレクションに加えられたことがあげられる。
1962年、バッキンガム宮殿の一角にクイーンズギャラリーが開設され、ロイヤル・コレクションは一般に公開されるようになった。1993年にはロイヤル・コレクション・トラストが設立され、コレクション管理の他、ギャラリー運営、グッズ販売に至るまで、近代的なシステムにより経営されることとなった︵初代理事長には皇太子時代のチャールズ3世が就任︶。2002年にはクイーンズギャラリーが拡大されるとともにエディンバラにも新たなギャラリーが開設され、スコットランドでもロイヤル・コレクションの鑑賞が可能となった[6]。
﹃音楽の稽古﹄︵1612年 - 1617年︶ヨハネス・フェルメー ル
●ヘラルト・テル・ボルフ - 絵画2点
●アルベルト・カイプ - 絵画7点
●ヘラルト・ドウ - 絵画4点
●フランス・ハルス - 絵画1点
●メインデルト・ホッベマ - 絵画2点
●ピーテル・デ・ホーホ - 絵画3点
●ハブリエル・メツー - 絵画1点
●ダニエル・マイテンス - 絵画9点
●アドリアーン・ファン・オスターデ - 絵画5点
●レンブラント・ファン・レイン - 絵画6点
●サロモン・ファン・ロイスダール - 絵画1点
●ヤーコプ・ファン・ロイスダール - 絵画1点
●ヤン・ステーン - 絵画7点
●アドリアーン・ファン・デ・フェルデ - 絵画4点
●ウィレム・ファン・デ・フェルデ2世 - 絵画7点
●ヨハネス・フェルメール - 絵画1点
●ヤン・ウェーニクス - 絵画1点
●フィリップス・ワウウェルマン - 絵画5点
イギリス美術
﹃ウィンザー宮近況﹄︵1841年 - 1843年︶
エドウィン・ランドシーア
●ウィリアム・ビーチー - 絵画17点
●トマス・ゲインズバラ - 絵画30点以上、﹁ディアナとアクタイオン﹂をモチーフとした、ゲンズバラには珍しい神話絵画もある
●ウィリアム・ホガース - 絵画3点
●ジョン・ホップナー - 絵画7点
●ゴドフリー・ネラー - 絵画15点
●エドウィン・ランドシーア - 絵画・ドローイング100点
●トーマス・ローレンス - 絵画50点
●ピーター・レリー - 絵画20点
●ジョシュア・レノルズ - 絵画20点以上
●ジョージ・スタッブス - 絵画18点
フランドル美術
﹃聖母被昇天﹄︵1662年 - 1664年頃︶
ピーテル・パウル・ルーベンス
●ヤン・ブリューゲル (父) - 絵画1点
●ピーテル・ブリューゲル - 絵画1点
●フランス・フランケン2世 - 絵画1点
●マークス・ヘラート - 絵画1点
●ヤン・ホッサールト - 絵画1点
●クエンティン・マサイス - 絵画1点
●ハンス・メムリンク - 絵画1点
●ピーテル・パウル・ルーベンス - 絵画13点、ドローイング5点
●ダフィット・テニールス (子) - 絵画27点
●アンソニー・ヴァン・ダイク - 絵画26点
フランス美術
﹃手紙を読む聖ヒエロニムス﹄︵1621年 - 1623年︶
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
●フランソワ・クルーエ - 絵画3点
●ガスパール・デュゲ - 絵画3点
●クロード・ロラン - 絵画5点
●ジャン=エティエンヌ・リオタール - 絵画16点
●クロード・モネ - 絵画1点
●ニコラ・プッサン - ドローイングの一大コレクション
●ジョルジュ・ド・ラ・トゥール - 絵画1点
ドイツ美術
﹃我に触れるな (Noli me tangere)﹄︵1532年 - 1533年頃︶
ハンス・ホルバイン
●アルブレヒト・デューラー - 絵画1点
●ハンス・ホルバイン - 絵画7点、ドローイング80点、彩色写本5点
●ルーカス・クラナッハ - 絵画4点
●フランツ・ヴィンターハルター - 絵画120点、ドローイング・水彩画20点
●ヨハン・ゾファニー - 絵画17点
イタリア美術
歴史[編集]
主要なコレクション[編集]
絵画、版画、ドローイング[編集]
アングロアメリカ ●ベンジャミン・ウエスト - 絵画60点 オランダ美術︵200点以上︶[7]ベンジャミン・ウエスト - Edward III Crossing the Somme, 1788
- オランダ絵画
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ヘラルト・ドウ - 『玉ねぎを刻む少女』, 1646
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ピーテル・デ・ホーホ - 『陽の射す部屋でトランプに興じる人々』(Cardplayers in a Sunlit Room), c. 1658
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レンブラント・ファン・レイン - An old woman: ‘The Artist’s Mother’, c. 1630
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ヤン・ステーン - A Woman at Her Toilet (1663)
- イギリス絵画
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トマス・ゲインズバラ - Johann Christian Fischer (1774)
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ジョシュア・レノルズ - The Death of Dido (1781)
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James Wilson Carmichael - The Pursuit (c.1820-1868)
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エドウィン・ランドシーア - Isaac van Amburgh and his Animals (1839)
- フランドル絵画
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アンソニー・ヴァン・ダイク - 『キューピッドとプシュケ』(1639–40)
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ピーテル・パウル・ルーベンス - Pythagoras advocating vegetarianism (1618–20)
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ダフィット・テニールス (子) - The Virgin and Child with Saints Stephen, Jerome and Maurice (1656)
- フランス絵画
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ウスタシュ・ル・シュウール - Caligula Depositing the Ashes of his Mother and Brother in the Tomb of his Ancestors (1647)
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クロード・ロラン - A view of the Roman Campagna from Tivoli, evening (1644–45)
- ドイツ絵画
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ルーカス・クラナッハ - 『パリスの審判』(1537–40)
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アルブレヒト・デューラー - Portrait of Burkard von Speyer (1506)
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Johann Zoffany - The Tribuna of the Uffizi (1772–78)
- イタリア絵画
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ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ - Triptych (1305–08)
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ベルナルド・ダッディ - The Marriage of the Virgin (1330–42)
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フラ・アンジェリコ - Blessing Redeemer (1423)
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ラファエロ・サンティ - Leda and the Swan, c. 1505–07
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ラファエロ・サンティ - 『アテネでのパウロの説教』 (1515)
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ジョヴァンニ・ベリーニ - Portrait of a young man (1505–09)
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コレッジョ『聖ヒエロニムスのいる聖家族』(1517年–1519年)
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ロレンツォ・ロット - Andrea Odoni(1527)
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ティントレット - 『アハシェロス王の前のエステル』 (1546-47)
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パオロ・ヴェロネーゼ - The Marriage of Saint Catherine (1580)
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アンニーバレ・カラッチ - An allegory of Truth and Time (1584–85)
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クリストファーノ・アローリ - 『ホロフェルネスの首を持つユディト』 (1613)
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ドメニコ・フェッティ - David with the head of Goliath (1620)
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グイド・レーニ - Cleopatra with the Asp (1630)
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アルテミジア・ジェンティレスキ『絵画の寓意としての自画像』(1638年-1639年頃)
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ルカ・ジョルダーノ - Psyche's Parents Offering Sacrifice to Apollo, 1692-1702
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Sebastiano Ricci - The Adoration of the Magi (1726–30)
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カナレット - Entrance to the Grand Canal; Looking East (1744)
フランス調度品[編集]
幅広い年代に渡って125点以上の作品があり、世界最大かつ最重要のコレクションになっている。
- ジョセフ・バウムハウアー - 1点
- ピエール・アントワン・ベランジェ - 13点
- アンドレ=シャルル・ブーレ - 12点;
- マルタン・カルラン - 2点
- フランソワ=オノレ=ジョルジュ・ジャコブ=デマルテル - 1点
- ヤコブ・フレール - 1点
- ジェラール=ジャン・ガレ - 1点
- ピエール・ガルニエール - 2点
- ジョルジュ・ヤコブ - 30点
- ジル・ジュベール - 2点
- ピエール・ラングロワ - 5点
- エチエンヌ・ルヴァスール - 7点
- マルタン=エロイ・リニュルー - 2点
- ベルナール・モリトール - 3点
- ジャン・アンリ・リーズネル - 6点
- フランス国立セーブル製陶所 - 1点
- ピエール=フィリップ・トミール - 15点
- ベンジャミン・ヴリアミー、ベンジャミン・ルイ・ヴリアミー - 4点
- ベンジャミン・ヴリアミー - 3点
- アダム・ヴァイスヴァイラー - 13点
ヨーロッパ調度品[編集]
イギリス[編集]
- ロバート・ヒューム - 1点
フランドル[編集]
- 作者未詳 - 2点
ドイツ[編集]
- ヨハン・ダニエル・ゾンマー - 2点
- メルキオール・バウムガルトナー - 2点
オランダ [編集]
- 作者未詳 - 1点
時計[編集]
- アンドレ=シャルル・ブール - 4点
- アブラアム=ルイ・ブレゲ - 1点
- デ・ラ・クロワ - 1点
- ジェラール=ジャン・ガレ - 1点
- ジャン=アントワーヌ・レピン - 1点
- マルタン=エロイ・リニュルー - 1点
- ピエール=フィリップ・トミール - 1点
- ベンジャミン・ヴリアミー - 1点
- ベンジャミン・ルイ・ヴリアミー - 1点
装飾美術[編集]
- マシュー・ボールトン - 4点
- ファベルジェ - 世界最大のコレクションの一つ
- ジェラール=ジャン・ガレ - 2点
- フランソワ・ルモンド - 12点
- ピエール=フィリップ・トミール - 3点
陶磁器[編集]
- フランス国立セーブル製陶所 - まず間違いなく世界最大のコレクション
- チェルシー磁器工房 - 全ての磁器がコレクションされている
彫刻[編集]
- アントニオ・カノーヴァ - 3点
- フランソワ・ジラルドン - 1点
- ルイ・クロード・ヴァッセ - 1点
- 古代ローマ彫刻 - 1点
タペストリー / 絨毯[編集]
- ゴブラン織り - 14点
出典[編集]
(一)^ The Royal Collection - What is the Royal Collection?
(二)^ Company Accounts, available from Companies House
(三)^ “The Queen”. The Sunday Times. Rich List (London). (27 April 2008). オリジナルの2009年5月7日時点におけるアーカイブ。 2009年5月20日閲覧。.
(四)^ R. Brinley Jones, ‘Llwyd, Humphrey (1527–1568)’, Oxford Dictionary of National Biography, Oxford University Press, Sept 2004
(五)^ Royal Treasures, A Golden Jubilee Celebration. Edited by Jane Roberts. Publisher: Royal Collection Enterprises, St. James' Palace, London, 2002. Page 25 (by Sir Hugh Roberts) and Page 391 (chapter 14).
ISBN 1 902163 49 4 (h-b uk) and ISBN 1 902163 52 4 (pb uk)
(六)^ 桜井武﹃ロンドンの美術館﹄、平凡社新書、2008
(七)^ The Social Affairs Unit - Web Review: Dutch Paintings at the Royal Collection
(八)^ Jones, Jonathan (2006年8月30日). “The real Da Vinci code”. The Guardian (London) 2011年7月14日閲覧。
(九)^ 池上英洋﹃西洋美術史入門﹄筑摩書房、2012年、125頁。ISBN 978-4-480-68876-7。
(十)^ The Royal Collection - The Art of Italy in the Royal Collection: Renaissance & Baroque