安西水丸
安西 水丸︵あんざい みずまる、本名‥渡辺 昇︵わたなべ のぼる︶、1942年7月22日 - 2014年3月19日︶は、日本のイラストレーター、漫画家、エッセイスト、作家、絵本作家。
来歴[編集]
東京都港区赤坂生まれ。7人兄弟の末っ子で姉が5人いた。一番上の姉とは7つ離れている。生家は祖父の代から建築設計事務所を営んでいた[1]。 1945年、重い喘息を患い、母の郷里である千葉県千倉町︵現・南房総市︶に移住[1]。幼少期を千倉で暮らす。その頃の体験や思い出は、初期の漫画作品、エッセイ、小説など多くの作品に登場している。﹁千倉﹂は彼にとって重要なキーワードとなっており、すべての心象のルーツであるように描かれている。1949年、千倉町立七浦小学校に入学[1]。 1961年、日本大学豊山高等学校卒業。日本大学藝術学部美術学科造形コースに入学。1965年、同大学を卒業。電通にアートディレクターとして就職。1969年、同社を退社して渡米。現地でADアソシエイツ︵N.Y.のデザインスタジオ︶に就職[2]。 1971年、帰国。平凡社のADとなり、そこで当時雑誌﹃太陽﹄の編集をしていた嵐山光三郎に誘われたのをきっかけに、デザイナーからイラストレーターへと転向。ペンネームの﹁安西﹂は、嵐山から﹁あ﹂がつく名前がいいと言われ、祖母の苗字﹁安西﹂から取った。また﹁水丸﹂は、子どもの頃から﹁水﹂という漢字が好きだったことから。 また、嵐山の紹介で、﹃ガロ﹄等で多数の漫画も発表していた。 1979年、﹁パレットクラブ﹂発足。メンバーは、ペーター佐藤、原田治、当時﹁ポパイ﹂のアートディレクターの新谷雅弘の4人。パレットクラブから派生した東京築地にあるイラストの学校﹁パレットクラブ・スクール﹂に於いては、講師にも就いている。※講師としては、東京築地のパレットスクールより京都のインターナショナル・アカデミーのイラスト教室が先である。メンバーはパレットクラブの4人で、ペーター佐藤は講師に就いていた当時に逝去。 1981年、安西水丸事務所を設立し、本格的にフリーのイラストレーターとなる。その後イラストレーターと平行して日藝の講師を1991年から2003年まで務める。 1987年3月、エッセイ集﹃青インクの東京地図﹄を刊行。以降、エッセイや小説も発表する。小説の代表作に﹃メランコリー・ララバイ﹄、﹃バードの妹﹄、﹃アマリリス﹄など。 2005年、東京イラストレーターズ・ソサエティの理事長に就任。 2013年1月、個展﹁1984 〜 2013 vol.1 : MIZUMARU ANZAI ORIGINAL WORKS﹂と﹁1987 〜 2013 vol.2 : MIZUMARU ANZAI SILK SCREENS﹂をスペースユイにて開催。 2014年3月17日に神奈川県鎌倉市にて執筆中に倒れ、病院に搬送されて治療を受けていたが、3月19日の21時7分、脳出血のために死去した[3]。71歳没。 同年8月19日、玄光社よりムック﹃イラストレーション緊急増刊 安西水丸 青空の下﹄が刊行される。 同年10月17日から11月20日まで、﹁安西水丸展﹂が銀座のクリエイションギャラリーG8で開かれる[4]。エピソード[編集]
●村上春樹とは彼がジャズ喫茶の経営者時代からの付き合いで、親交が深い。共著として﹃象工場のハッピーエンド﹄、﹃村上朝日堂﹄、﹃ランゲルハンス島の午後﹄、﹃夜のくもざる﹄などがある。村上のホームページをCD-ROMにした﹃夢のサーフシティー﹄︵1998年︶と﹃スメルジャコフ対織田信長家臣団﹄︵2001年︶では、二人の対談を聴くことができる[5]。 ●村上春樹の小説にたびたび登場する﹁渡辺昇﹂あるいは﹁ワタナベノボル﹂は、安西水丸の本名が元となっている[6][7]。 ●スノードームのコレクターとしても知られる。﹁日本スノードーム協会﹂会長︵事務局長‥百瀬博教︶であり、コレクションを本にしている。また、ブルーウィローの絵柄の陶器もコレクションしている。著書[編集]
1970年代 - 1980年代[編集]
●ピッキーとポッキー あらしやまこうざぶろう、あんざいみずまる ︵福音館書店 1976年3月︶ ●安西水丸ビックリ漫画館 ︵ブロンズ社 1977年5月︶ ●ふりかえりおじさん あんざいみずまる ︵コーキ出版 1979年11月︶ ●ピッキーとポッキーのかいすいよく あらしやまこうざぶろう、あんざいみずまる ︵福音館書店 1980年8月︶ ●ハナクロ探検隊 ︵けいせい出版 1981年4月︶ ●バスにのりたかったおばけ あんざいみずまる ︵好学社 1981年7月︶ ●東京エレジー ︵青林堂 1982年5月︶ ●普通の人 ︵JICC出版局 1982年12月︶ ●象工場のハッピーエンド 村上春樹文、安西水丸絵 ︵CBS・ソニー出版 1983年12月︶ ●食卓のプラネタリウム 山本益博著、安西水丸画 ︵講談社 1984年5月︶ ●村上朝日堂 村上春樹、安西水丸 ︵若林出版企画 1984年7月︶ ●のりものおばけのんのん 矢玉四郎さく、安西水丸え ︵PHP研究所 1984年9月︶ ●新日本漫遊記 松木直也文、安西水丸画 ︵CBS・ソニー出版 1984年11月︶ ●水玉全集 小玉節郎文、安西水丸絵 ︵JICC出版局 1985年3月︶ ●安西水丸vs.奥村靫正 安西水丸、奥村靫正 ︵小学館 1985年10月︶ ●東京こちょこちょ物語 松木直也文、安西水丸画 ︵若林出版企画 1985年10月︶ ●村上朝日堂の逆襲 村上春樹、安西水丸 ︵朝日新聞社 1986年6月︶ ●ポストカード ︵学生援護会 1986年7月︶[8] ●ランゲルハンス島の午後 村上春樹文、安西水丸絵 ︵光文社 1986年11月︶ ●ぷーぷーぷー 嵐山光三郎文、安西水丸絵 ︵あすなろ書房 1986年10月︶ ●青インクの東京地図 ︵講談社 1987年3月︶ ●日出る国の工場 村上春樹、安西水丸 ︵平凡社 1987年4月︶ ●青の時代 ︵青林堂 1987年4月︶ ●がたんごとんがたんごとん ︵福音館書店 1987年6月︶ ●春はやて ︵筑摩書房 1987年12月︶ ●黄色チューリップ ︵角川書店 1988年6月︶ ●村上朝日堂はいほー! ︵文化出版局 1989年5月︶ ●アマリリス ︵新潮社 1989年6月︶ ●青山の青空 ︵PHP研究所 1989年8月︶ ●70パーセントの青空 ︵角川書店 1989年10月︶1990年代[編集]
●シネマ・ストリート ︵キネマ旬報社 1990年2月︶ ●Mysteric restaurant A to Z ︵架空社 1990年7月︶ ●朱色の島バリ 稲越功一、安西水丸 ︵扶桑社 1990年8月︶ ●冬の電車 ︵徳間書店 1990年10月︶ ●手のひらのトークン ︵新潮社 1990年10月︶ ●リヴィングストンの指 ︵マガジンハウス 1990年10月︶ ●エンピツ絵描きの一人旅 ︵新潮社 1991年10月︶ ●十五歳のボート ︵平凡社 1992年3月︶ ●平成版普通の人 ︵南風社 1993年4月︶ ●エンピツ画の風景 ︵日本文芸社 1993年7月︶ ●シネマ・ストリートpart2 ︵キネマ旬報社 1993年9月︶ ●荒れた海辺 ︵新潮社 1993年12月︶ ●草のなかの線路 ︵徳間書店 1994年1月︶ ●ガラスのプロペラ ︵誠文堂新光社 1994年4月︶ ●空を見る ︵PHP研究所 1994年7月︶ ●町の誘惑 安西水丸、稲越功一 ︵宝島社 1994年9月︶ ●ぼくの映画あそび ︵広済堂出版 1995年3月︶ ●ストローハウスからの手紙 ︵毎日新聞社 1995年5月︶ ●夜のくもざる 村上春樹、安西水丸 ︵平凡社 1995年6月︶ ●丘の上 ︵文藝春秋 1995年11月︶ ●スノードーム 安西水丸、百瀬博教 ︵日本スノードーム協会 1996年2月︶ ●青山の青空2︵清水書院 1996年4月︶ ●うずまき猫のみつけかた 村上春樹、安西水丸 ︵新潮社 1996年5月︶ ●普通の食事 山本益博、安西水丸 ︵マガジンハウス 1996年9月︶ ●アトランタの案山子、アラバマのワニ 安西水丸文、小平尚典写真 ︵小学館 1996年8月︶ ●村上朝日堂はいかにして鍛えられたか 村上春樹、安西水丸 ︵朝日新聞社 1997年6月︶ ●スケッチブックの一人旅 ︵JTB 1997年11月︶ ●青山へかえる夜 ︵マガジンハウス 1998年1月︶ ●カレーを食べに行こう 安西水丸とカレーの地位向上委員会編 ︵平凡社 1998年3月︶ ●メランコリー・ララバイ ︵日本放送出版協会 1998年5月︶ ●ふわふわ 村上春樹、安西水丸 ︵講談社 1998年6月︶ ●夜の草を踏む ︵光文社 1998年7月︶ ●CD-ROM版村上朝日堂 夢のサーフシティー 村上春樹、安西水丸 ︵朝日新聞社 1998年7月︶ ●ぼくのいつか見た部屋 ︵KSS出版 1998年8月︶ ●バードの妹 ︵平凡社 1998年9月︶ ●たびたびの旅 ︵フレーベル館 1998年10月︶ ●安西水丸の二本立て映画館 前篇 ︵朝日新聞社 1998年11月︶ ●安西水丸の二本立て映画館 後篇 ︵朝日新聞社 1998年11月︶ ●安西水丸が見た建設の世界 安西水丸、増田彰久 ︵大成建設広報部 1999年3月︶ ●三月の魚 岸田ますみ画集 岸田ますみ画、安西水丸詩 ︵新潮社 1999年8月︶ ●ニッポン・あっちこっち ︵家の光協会 1999年11月︶2000年代[編集]
●さるとかに 日本昔話 蘭巴文、安西水丸絵 ︵小学館 2000年3月︶ ●4番目の美学 ︵心交社 2000年6月︶ ●東京美女2 小沢忠恭写真、安西水丸文 ︵モッツ出版 2000年7月︶ ●おんなの仕種 ︵中央公論新社 2001年3月︶ ●CD-ROM版村上朝日堂 スメルジャコフ対織田信長家臣団 村上春樹、安西水丸 ︵朝日新聞社 2001年4月︶ ●メロンが食べたい ︵実業之日本社 2001年10月︶ ●魚心なくとも水心 ︵ぴあ 2002年3月︶ ●サボテンの花 ︵実業之日本社 2002年6月︶ ●美味しいか恋しいか ︵光文社 2002年8月︶ ●No idea 安西水丸、和田誠 ︵金の星社 2002年10月︶ ●少年カフカ 村上春樹、安西水丸 ︵新潮社 2003年6月︶ ●青豆とうふ 安西水丸、和田誠 ︵講談社 2003年9月︶ ●あげたおはなし 中山千夏ぶん、安西水丸え ︵自由国民社 2005年5月︶ ●彼はメンフィスで生まれた アメリカン・ジャーニー 安西水丸文、小平尚典写真 ︵阪急コミュニケーションズ 2005年7月︶ ●クッキーのおべんとうやさん ︵ポプラ社 2005年7月︶ ●テーブルの上の犬や猫 安西水丸、和田誠 ︵文藝春秋 2005年7月︶ ●りんごりんごりんご・りんごりんごりんご ︵主婦の友社 2006年1月︶ ●クッキーのぼうしやさん ︵ポプラ社 2006年1月︶ ●﹁これだけは、村上さんに言っておこう﹂と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける330の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? 村上春樹、安西水丸 ︵朝日新聞社 2006年3月︶ ●おばけのアイスクリームやさん ︵教育画劇 2006年6月︶ ●大衆食堂へ行こう ︵朝日新聞社 2006年8月︶ ●﹁ひとつ、村上さんでやってみるか﹂と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける490の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? 村上春樹、安西水丸 ︵朝日新聞社 2006年11月︶ ●はるのどきどきマジック!きむらゆういちのしかけクイズえほん きむらゆういち作、安西水丸絵 ︵教育画劇 2007年2月︶ ●村上かるた うさぎおいしーフランス人 村上春樹、安西水丸 ︵文藝春秋 2007年3月︶ ●おさるのケーキやさん ︵教育画劇 2007年6月︶2010年代[編集]
●水丸劇場 ︵世界文化社 2014年6月︶ ●ちいさな城下町 ︵文藝春秋 2014年6月︶のち文春文庫 2016年11月 ●イラストレーション緊急増刊 安西水丸 青空の下 ︵玄光社 2014年8月︶ ●地球の細道 ︵エーディーエー・エディタ・トーキョー 2014年8月︶ ●東京美女散歩 ︵講談社 2015年3月︶ ●イラストレーター 安西水丸︵クレヴィス 2016年6月︶ ●嵐山光三郎セレクション 安西水丸短篇集-左上の海︵中央公論新社 2016年6月︶ ●鳥取が好きだ。-水丸の鳥取民芸案内-︵河出書房 2018年5月︶2020年代[編集]
●青の時代︵クレヴィス 2021年4月︶ ●完全版 普通の人︵クレヴィス 2021年8月︶ ●たびたびの旅︵田畑書店 2022年7月︶ ●一本の水平線 安西水丸の絵と言葉︵クレヴィス 2022年8月︶ ●安西水丸 東京ハイキング︵淡交社 2023年5月︶ ●安西水丸が遺した最後の抒情漫画集 陽だまり︵講談社ビーシー 2023年8月︶ ●1フランの月︵小学館 2024年3月︶翻訳書[編集]
- ハリーズ・バー 世界でいちばん愛されている伝説的なバーの物語 アリーゴ・チプリアーニ (にじゅうに 1999年2月)
- 真夏の航海 トルーマン・カポーティ (ランダムハウス講談社 2006年9月)
脚注[編集]
(一)^ abc村上春樹、安西水丸﹃夢のサーフシティー﹄朝日新聞社、1998年7月。﹁安西水丸の宝箱﹂ホームページ展より。
(二)^ ﹃イラストレーション緊急増刊 安西水丸 青空の下﹄玄光社、2014年8月、110-111頁。
(三)^ “安西水丸さん死去 イラストレーター・作家71歳”. 朝日新聞. (2014年3月24日) 2014年3月24日閲覧。
(四)^ 安西水丸展 リクルートの2つのギャラリー
(五)^ ﹃夢のサーフシティー﹄に収録された対談のタイトルは﹁南青山﹃愛人カレー﹄対談﹂。﹃スメルジャコフ対織田信長家臣団﹄に収録され対談のタイトルは﹁﹃人妻・愛人スポーツクラブ﹄対談﹂。
(六)^ 和田誠﹃仕事場対談―和田誠と27人のイラストレーター﹄河出書房新社、2001年12月。
(七)^ 安西の本名である﹁渡辺昇﹂が村上春樹の小説に使われたのは以下の8作品。﹁象の消滅﹂、﹁ファミリー・アフェア﹂、﹁双子と沈んだ大陸﹂、﹁ねじまき鳥と火曜日の女たち﹂、﹁中断されたスチーム・アイロンの把手﹂、そしてショートショート集﹃夜のくもざる﹄に収められた﹁鉛筆削り (あるいは幸運としての渡辺昇①)﹂、﹁タイム・マシーン (あるいは幸運としての渡辺昇②)﹂、﹁タコ﹂。
(八)^ 本書には村上春樹の短編小説﹁中断されたスチーム・アイロンの把手﹂が収録されている。