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﹃幻想文学﹄︵げんそうぶんがく︶は、日本の幻想文学雑誌。1982年に編集人東雅夫により、幻想文学出版局から季刊誌として創刊。1994年からは、発行元を幻想文学出版局よりアトリエOCTAに、責任編集を幻想文学企画室に変更改組し、2003年7月に通巻67号で終刊。この時期の唯一の幻想文学専門誌として、研究進展に多大な寄与を果たした。
1980年から同人誌﹃金羊毛﹄を編集発行していた東雅夫が、幻想文学研究誌として、早稲田大学の文学サークル﹁幻想文学会﹂を母体とする幻想文学会出版局を発行所、川島徳絵︵石堂藍︶を発行人として、1982年4月に季刊誌﹃幻想文学﹄を発刊。創刊号は﹁幻想文学研究の現在﹂特集、128ページ︵980円︶であった。創刊号から終刊までの表紙画は一部の号を除き建石修志、41号以降の表紙デザインは伊勢功治。評論・研究、書評、インタビュー、創作・翻訳作品、エッセイ、ブックガイドなどを掲載。1989年26号から発行所を幻想文学出版局に改名。
﹁幻想ブックレビュー﹂は編集メンバーの他、読者投稿も掲載し、国内外の文学作品、研究書、哲学や民俗学書、美術、音楽、児童文学、漫画、映画までを幅広くカバー。1990年幻想文学出版局﹃ブックガイドマガジン﹄創刊により、1991年31号からは﹁新刊展望﹂コーナーに改編。常連寄稿者には倉阪鬼一郎、南條竹則、長山靖生、森村進らがいた。
新人賞[編集]
1985年から短篇小説賞である﹁幻想文学新人賞﹂を公募。選者は澁澤龍彦、中井英夫。しかし1987年に澁澤が死去したため、2回までで終了。第1回の入選作は﹃幻視の文学1985﹄︵1985年︶に収録、第2回の入選作は﹃小説幻妖﹄2号︵1986年︶に掲載された。第1回の入選者に牧野みちこ︵牧野修︶、加藤幹也︵高原英理︶、第2回入選者に小畠逸介︵芦辺拓︶、土井喜和︵土井喜和子︶がいる。
特集一覧[編集]
●1号(1982年4月) 幻想文学研究の現在
●2号(1982年11月) ケルト幻想
●3号(1983年4月) 幻想純文学
●4号(1983年7月) アーサー・マッケン+英米恐怖文学事始
●5号(1983年11月) 伝奇ロマン
●6号(1984年3月) ラヴクラフト症候群
●7号(1984年6月) 幻想児童文学
●8号(1984年9月) ロストワールド[要曖昧さ回避]文学館
●9号(1984年12月) 怪奇幻想ミステリー
●10号(1985年3月) 石の夢・石の花
●11号(1985年6月) 幻想SF
●12号(1985年9月) インクリングズ
●13号(1985年12月) フランス幻想文学必携
●14号(1986年3月) モダンホラー
●15号(1986年7月) 大江戸ファンタスティック
●16号(1986年10月) ハイ・ファンタジー最前線
●17号(1987年1月) ドイツ幻想文学必携
●18号(1987年5月) 魔界とユートピア - 日本幻想文学誌1明治篇
●19号(1987年7月) ヒロイック・ファンタジー
●20号(1987年10月) 幻想ベストブック1982-87、付録小冊子﹁追悼・澁澤龍彦﹂
●21号(1988年1月) ロシア東欧幻想文学必携
●22号(1988年4月) 大正デカダンス - 耽美と怪異 日本幻想文学誌2
●23号(1988年7月) ホラー読本
●24号(1988年10月) 夢みる二〇年代 - 日本幻想文学誌3大正昭和篇
●25号(1989年3月) ファンタスティック・マガジン
●26号(1989年6月) イギリス幻想文学必携
●27号(1989年9月) 猟奇と哄笑 - 日本幻想文学誌4昭和篇
●28号(1990年1月) 吸血鬼文学館
●29号(1990年5月) 幻視の文学1930-40 - 昭和文学の幻視者たち - 日本幻想文学誌5
●30号(1990年9月) 異端文学マニュアル - 日本幻想文学誌6昭和篇
●31号(1991年2月) アンドロギュヌス - 両性具有の妖しい夢
●32号(1991年10月) 人形綺譚 - ヒトガタの魅惑と恐怖
●33号(1992年1月) 日本幻想文学必携 - 美と幻妖の系譜
●34号(1992年4月) ケルト幻想文学誌 - 妖精の幸ふ古代へ
●35号(1992年7月) 鏡花夢幻帖
●36号(1992年11月) 悪魔のいる文学誌
●37号(1993年3月) 英国幽霊物語
●38号(1993年6月) 幻魔妖怪時代劇
●39号(1993年9月) 大怪獣文学館
●40号(1994年1月) 幻想ベストブック1987-1993、書評特集﹁ドラコニアの新地平﹂、﹁眠れ、黒鳥 追悼・中井英夫﹂
●41号(1994年7月) ホラー・ジャパネスク
●42号(1994年10月) RAMPOMANIA
●43号(1995年2月) 死後の文学
●44号(1995年6月) 中国幻想文学必携
●45号(1995年9月) アメリカ幻想文学必携
●46号(1996年2月) 夢文学大全、小特集﹁野中ユリの夢宇宙﹂
●47号(1996年6月) 怪談ニッポン!
●48号(1996年10月) 幻想建築文学館
●49号(1997年3月) シネマと文學!
●50号(1997年7月) 澁澤龍彦1987-1997
●51号(1997年11月) アンソロジーの愉楽
●52号(1998年3月) 猫の妖、猫の幻
●53号(1998年9月) 音楽+幻想+文学
●54号(1999年2月) 世の終りのための幻想曲、小特集﹁山尾悠子の世界﹂
●55号(1999年5月) ミステリVS幻想文学、小特集﹁京極夏彦考﹂
●56号(1999年10月) くだん、ミノタウロス、牛妖伝説
●57号(2000年2月) 伝綺燦爛 - 赤江瀑の世界
●58号(2000年6月) 女性ファンタジスト2000
●59号(2000年11月) ボルヘス&ラテンアメリカ幻想
●60号(2001年3月) 幻想ベストブック1993-2000
●61号(2001年8月) 百物語文学誌 - めぐりめぐる物語の魔
●62号(2001年11月) 魔都物語 - 都市が紡ぐ幻想と怪奇
●63号(2002年3月) M・R・ジェイムズと英国怪談の伝統
●64号(2002年7月) 幻獣ファンタスティック - 幻想動植物の世界
●65号(2002年11月) 神秘文学への誘い、小特集﹁日影丈吉小特集﹂
●66号(2003年3月) 幻想文学研究のキイワード
●67号(2003年7月) 東方幻想 - 異国への憧憬と恐怖
主な連載[編集]
●渋谷章﹁ハガード、ハガード!﹂1-67号 - ヘンリー・ライダー・ハガードの評伝
●﹁一書一会﹂1-11回、﹁新・一書一会﹈44-67号 - 作家インタビュー
●菊地秀行﹁シネマ幻想館﹂3-30号
●田中浩一﹁サイキックミュージック講座﹂﹁サイキックミュージック最前線﹂9-30号
●稲生平太郎﹁不思議な物語﹂10-67号
●笠井潔﹁日本幻想作家論﹂12-19号
●井辻朱美﹁ファンタジーの森から﹂21-33号
●山下武﹁ドッペルゲンガー文学考﹂37-67号
●篠田真由美﹁ARCHITECTURA PHANTASTICA 幻想建築術﹂50-60号 - 連載小説
別冊幻想文学[編集]
不定期での刊行。
●1. 中井英夫スペシャル︵1986年︶
●2. クトゥルー倶楽部︵1987年︶
●3. タルホ・スペシャル︵1987年︶
●4. 澁澤龍彦スペシャルIシブサワ・クロニクル︵1988年︶
●5. 澁澤龍彦スペシャルIIドラコニア・ガイドブック︵1989年︶
●6. 日本幻想作家名鑑 ︵1991年︶
●7. ドラキュラ文学館 吸血鬼小説大全︵1993年︶
●8. 中井英夫スペシャルI反世界の手帖︵上記第1号を増補改訂、1993年︶
●9. 中井英夫スペシャルII虚無へ捧ぐる︵1993年︶
●10ラヴクラフト・シンドローム︵1993年︶
●11. アンドロギュニス!両性具有文学館︵第31号を増補改訂、1995年︶
●12. モダンホラー・スペシャル︵1998年︶
●13. 怪人タネラムネラ 種村季弘の箱︵2002年︶
その他の雑誌[編集]
●﹃小説幻妖 壱 新春 妖女コレクション﹄1986年2月
●﹃小説幻妖 弐 晩秋 ベルギー幻想派&幻視の文学﹄1986年11月
●﹃BGM 創刊号 澁澤龍彦をめぐるブック・コスモス﹄1990年8月
●﹃BGM 2号 オトナのための恐竜本フルコース﹄1990年10月
●﹃BGM 3号 旅行記の快楽﹄1990年12月
関連書籍[編集]
各・東雅夫編
●﹃幻想文学 1500ブックガイド﹄︵国書刊行会、1997年︶、石堂藍との編著
●﹃日本幻想作家事典﹄︵国書刊行会、2009年︶、同上
●﹃日本幻想文学事典 日本幻想文学大全﹄ちくま文庫、2013年
●﹃幻視の系譜﹄、﹃幻妖の水脈﹄、各21作品、同上
●﹃幻想文学講義 ﹁幻想文学﹂インタビュー集成﹄︵国書刊行会、2012年︶。74名へのインタビュー
●﹃世界幻想文学大全﹄ちくま文庫︵全3巻︶、2012年11月-12月
●1幻想文学入門、2怪奇小説精華、3幻想文学神髄。第1巻は評論集
●﹃ゴシック文学入門﹄、﹃ゴシック文学神髄﹄ちくま文庫、2020年。前者は評論集
外部リンク[編集]