心霊スポット巡礼ツアー
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心霊スポット巡礼ツアー︵しんれいスポットじゅんれいツアー︶は、横浜市のタクシー会社である三和交通が運行する完全予約制のタクシーツアー。東京や横浜周辺の心霊スポットをタクシー乗務員が案内する。
2015年より開始されて[1][2]以来、毎年夏に期間限定で運行している。2016年度のツアーから多摩地区および東京都内のツアーも加わった[3]。心霊スポットを回るツアーは、タクシー業界では初とされる[1][2]。
沿革[編集]
2007年に父の後を継いで[4]同社の3代目社長に就任した吉川永一は、2012年に、同業他社が先行していた、急な出産時に妊婦のところにかけつける﹁陣痛119番﹂サービスに加盟したところ、大きな反響があったことをきっかけに、﹁売り方次第でタクシー業界もなんとかなる﹂と思い始めた[5][6]。また、吉川は以前にウェブデザイナーとして働いていた時代に得た人脈や知識を利用し、﹁ネットで話題になりそうな企画﹂を提案し始める[4]。 2013年には、乗客が車内のボタンを押すとゆっくり走ってもらえる﹁タートルタクシー﹂[7]を始め、2014年のグッドデザイン賞を受賞した[5][6]。その後、﹁タクシー流鏑馬﹂[8]﹁裏ヨコハマ探索ツアー﹂などの遊びの要素のある、﹁炎上寸前[4]﹂の企画も実行している[6]。 そして2015年5月には、﹁夏に会社のPRとなるイベントをやろう﹂と社長の吉川自身がこのツアーを発案した[9]。乗務員が耳にした怖い噂話の情報をもとに﹁肝試しツアー﹂を組んでみようと思った[10]が、社内では反対の声も強かったという[9][6]。吉川は、﹁炎上一歩手前じゃないと拡散されない。キワモノの会社にならないようバランスは考えている﹂と語っている[6]。当初は発案者の吉崎自身も﹁企画倒れになるかもしれない﹂とさえ考えていたため、ツアーを発表後の反響の大きさには本人が一番困惑していたという[10]。 2015年のツアーは計13回実施したが、予約開始後すぐに満員になるほどの人気であった[3][11]。同社のWebサイトは1日あたり500件程度のアクセスであったが、ツアーを発表後は1万件を超えたという[10]。案内役は、﹁霊感がある﹂と自称する2人の乗務員が勤めた[11]。 2016年はコースと運行回数を増やした[3][6]が、抽選倍率は10倍以上にもなった[12][13]。2018年のツアーは42組の枠に約1900も応募があったという[14]。吉川は、﹁当ツアーは反響が大きすぎて止められなくなった﹂と述べている[4]。 当ツアーでは運転手が現場を十回以上も下見するため、採算は赤字続きという[14]。タクシー業界では新人の採用が困難になっているが、当社では本企画の開始以降、社員に応募する人が年々増え続け、﹁心霊タクシーのドライバーをやりたい﹂という応募者もいるという[14]。ツアー[編集]
客は出発前に、心霊現象で異常をきたしても主催者に責任を問わない旨の誓約書にサインすることを求められる[13][9]。運転中は運転手が、行き先の説明や自分や同僚の体験した怪奇体験を話してくれる[11][13]。乗客の中には携帯機器が故障するなどのトラブルもあるので、ツアー後に運転手と車はお祓いを受けている[14]。また、地域住民に迷惑がかからないように巡礼先は伏せられており、街中で同社の運転手に巡礼先を聞いても﹁知らされていない﹂と答えられる[10]。2015年[編集]
7月14日から9月4日まで毎週金曜日と土曜日に各1回運行[1][15]。21時に新横浜駅を出発して約90分かけ、サラリーマンが自殺をしたトンネル、少女の霊が出るというガード下、窓に人影が目撃されているというラブホテルの廃墟、数年前に殺人事件があった死体遺棄現場、古い整備工場などを巡り、新横浜に戻る[15][9]。2016年[編集]
2015年と同様の新横浜駅発のコース[16]に加え、八王子駅または高尾駅から出発する﹁心霊スポット巡礼ツアー多魔[注 1]﹂[17]、および都内の怪談名所を巡る﹁東京怪談名所ツアー﹂[18]も実施する。また、横浜と多摩のツアーにはショートコースとロングコースがあり、コースにより所要時間と巡回先が異なる。﹁東京怪談名所ツアー﹂は昼間コースと夜間コースになっている。各コースにはそれぞれ﹁恐怖度﹂﹁親密度﹂﹁知見度﹂の基準で主催者による評価が付けられている。[19] 7月24日から9月5日まで、毎週日曜日と月曜日に各コースをそれぞれ1回運行する[16][17][18]。ツアーには820組の応募があり、74組が体験した[20]。2018年[編集]
従前の横浜と多摩に加え、新たに﹁凍京︵東京︶﹂、﹁不死身野︵埼玉県ふじみ野︶﹂のエリアを巡るコースが用意された[21]。また、本年度はオールナイトツアーも用意された[22]。2020年[編集]
例年のコースに加えて、ジャンプSQで連載中であったホラー漫画ダークギャザリングとのコラボ企画として、当作品に登場する心霊スポットを中心に回るコースも設定された[23]。脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 「多摩」の間違いではなく、このように表記している。
出典[編集]
(一)^ abc“タクシーで心霊ツアー”. 日経MJ (日本経済新聞社): p. 16. (2015年7月12日)
(二)^ ab﹃タクシーで行く﹁心霊スポット巡礼ツアー﹂﹄︵プレスリリース︶三和交通、2015年7月4日。2016年9月23日閲覧。
(三)^ abc﹃タクシーで行く﹁心霊スポット巡礼ツアー2016﹂﹄︵プレスリリース︶三和交通、2016年6月10日。2016年9月23日閲覧。
(四)^ abcd“元気のひけつ タクシーロボ話題さらう ネット騒然 奇抜なアイデア続々 三和交通 吉川永一社長”. 朝日新聞 朝刊 神奈川県版: p. 28. (2017年5月17日)
(五)^ ab“神奈川のエンジン 三和交通 ユニークタクシー快走 ﹁心霊﹂﹁亀﹂アイデアと機動力”. 日本経済新聞: p. 地方経済面. (2016年7月1日)
(六)^ abcdef“ユニーク企画で知名度アップ 吉川永一社長に聞く”. 朝日新聞 朝刊 神奈川県版: p. 22. (2016年6月28日)
(七)^ “着眼着想 タートルタクシー ゆっくり走行、燃費も優しく”. 日経MJ (日本経済新聞社): p. 13. (2014年12月19日)
(八)^ “タクシーから流鏑馬いかが 西区”. 朝日新聞 朝刊 神奈川県版: p. 29. (2016年2月23日)
(九)^ abcd山崎 島 (2015年7月30日). “夏にひんやりタクシードライブ? 三和交通の新横浜発﹁タクシーで行く、心霊スポット巡礼ツアー﹂を体験レポート!!”. 横浜のココがキニナル!. はまれぽ.com. 2016年9月23日閲覧。
(十)^ abcd“前代未聞﹁心霊タクシーツアー﹂に予約殺到 ﹁少女の笑い声がするガード下﹂を冷や汗ルポ!”. アサヒ芸能: 48. (2015-07-30).
(11)^ abc“この夏も出るぞ?心霊スポットツアー”. 朝日新聞 朝刊 神奈川県版: p. 22. (2016年6月28日)
(12)^ 酒井 明子 (2016年7月18日). “真夏の﹁悪夢﹂? タクシーで行く﹁心霊スポット巡礼ツアー﹂をひんやりレポート!”. 横浜のココがキニナル!. はまれぽ.com. 2016年9月23日閲覧。
(13)^ abc“タクシーで心霊ツアー 不自然な声?背筋ゾクッ 運転手の体験談 盛り上げ”. 日経MJ (日本経済新聞社): p. 4. (2016年8月1日)
(14)^ abcd“リポートかながわ ぞくり演出﹁心霊タクシー﹂ 三和交通 運転手も﹁人、見えませんか﹂”. 朝日新聞 朝刊 神奈川県版: p. 32. (2019年7月7日)
(15)^ ab“三和交通・タクシーで行く 心霊スポット巡礼ツアー﹁あなたの知らないタクシーの世界﹂”. 三和交通 (2015年7月). 2015年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月24日閲覧。
(16)^ ab“心霊スポット巡礼ツアー横浜”. 三和交通 (2016年7月19日). 2016年9月24日閲覧。
(17)^ ab“心霊スポット巡礼ツアー多魔”. 三和交通 (2016年7月19日). 2016年9月24日閲覧。
(18)^ ab“東京怪談名所ツアー”. 三和交通 (2016年7月19日). 2016年9月24日閲覧。
(19)^ “三和交通 夏企画ツアー2016”. 三和交通 (2016年7月20日). 2016年9月26日閲覧。
(20)^ “北欧女子オーサの日本探検 心霊スポット 怖いけど行ってみたい! タクシーで横浜を﹁巡礼﹂”. 朝日新聞 be on Saturday: p. 4. (2016年10月22日)
(21)^ “︻怖い︼タクシーで巡る﹁心霊スポット巡礼ツアー﹂今年は初のオールナイトコースも”. ウレぴあ総研. ぴあ (2018年7月23日). 2018年7月25日閲覧。
(22)^ “心霊タクシー 三和交通が恐怖体験できる巡礼ツアー今年も開催”. 港北経済新聞 (2018年6月27日). 2018年7月25日閲覧。
(23)^ “ダークギャザリング×心霊スポット巡礼ツアー”. 三和交通 (2020年). 2022年12月29日閲覧。