出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
﹃白い僧院の殺人﹄︵しろいそういんのさつじん、原題‥ The White Priory Murders ︶は、アメリカの推理作家カーター・ディクスン︵ジョン・ディクスン・カーの別名義︶による推理小説。発表は1934年。ヘンリ・メリヴェール卿ものの長編第2作目にあたる。
あらすじ[編集]
ハリウッドで大女優となったマーシャ・テートがロンドンでの凱旋舞台のためにイギリスに戻ってきた。しかし、秘密にしていた彼女の宿泊地にチョコレートが贈られ、不審に思った関係者が全員でチョコレートを食べたところ、宣伝係のティム・エマリーがストリキニーネの入ったチョコレートを食べて病院に担ぎ込まれた。
そのような中マーシャは、サリー州にあるモーリス・ブーンの屋敷﹁白い僧院﹂の別館﹁女王の鏡﹂に宿泊する。その翌朝、クリスマスに招待されたジェームズ・ベネットが﹁白い僧院﹂に到着したとき、モーリス・ブーンの弟のジョンに呼ばれて別館﹁女王の鏡﹂に向かう。そこには頭を割られたマーシャ・テートの死体が横たわっていた。﹁女王の鏡﹂の周囲30メートル四方は深夜に降り積もった雪に覆われており、新雪の上に残された真新しい足跡は、死体の発見者のジョンと到着したばかりのベネットの2組が﹁女王の鏡﹂に向かっているものだけだった。しかし、検死の結果、マーシャの死亡推定時刻は午前3時から3時半の間で、雪がやんだ2時から1時間ほど後だった。果たして犯人はいかにして足跡を残さずに﹁女王の鏡﹂に侵入してマーシャを殺害し、そこから脱出したのだろうか。﹁雪の密室﹂の謎にH・Mことヘンリ・メリヴェール卿が挑む。
主な登場人物[編集]
H・M︵ヘンリ・メリヴェール卿︶
イギリス政府の高官。犯罪捜査の天才。
ジェームズ・ベネット
H・Mの甥。外交官。
マーシャ・テート
ハリウッドの女優。
カール・レインジャー
映画監督。
ティム・エマリー
マーシャの宣伝係。
モーリス・ブーン
﹁白い僧院﹂の当主。歴史学者。
ジョン・ブーン
モーリスの弟。
キャサリン︵ケート︶・ブーン
モーリスの姪。
カニフェスト
新聞界の大物。
ルイーズ・カルー
カニフェストの娘で秘書。
ジャーヴィス・ウィラード
舞台俳優。
トムスン
﹁白い僧院﹂の執事。
ハンフリー・マスターズ
ロンドン警視庁の主席警部。
ポッター
州警察の警部。
作品の評価[編集]
●江戸川乱歩は﹁カー問答﹂︵﹃別冊宝石﹄、カア傑作集、1950年︶[1]の中で、カーの作品を第1位のグループから最もつまらない第4位のグループまで評価分けし、本作を第2位のグループ7作品の2番目に挙げている[2]。さらに本作について﹁犯人の足跡がないという不思議を、変なメカニズムなんか使わないで、心理的に巧みに構成している。私はこれはカーの発明したトリックの内で最も優れたものの一つと考えている。﹂と評している。
関連項目[編集]
|
---|
長編・中編小説 |
|
---|
短編集 |
カー短編全集 |
- 1.不可能犯罪捜査課(マーチ大佐シリーズを含む)
- 2.妖魔の森の家(ギデオン・フェル、ヘンリー・メリヴェール・シリーズを含む)
- 3.パリから来た紳士(マーチ大佐、ギデオン・フェル、ヘンリー・メリヴェール・シリーズを含む)
- 4.幽霊射手
- 5.黒い塔の恐怖
- 6.ヴァンパイアの塔
- グラン・ギニョール(アンリ・バンコラン・シリーズと重複)
|
---|
エイドリアン・コナン・ドイルとの合作短編集 |
|
---|
アンソロジー |
- 世界短編傑作集5(マーチ大佐シリーズ「見知らぬ部屋の犯罪」を収録)
- 51番目の密室 世界短篇傑作集(ヘンリー・メリヴェール・シリーズ「魔の森の家」を収録)
|
---|
|
---|
その他 |
ラジオ・ドラマ集 |
|
---|
評伝 |
- コナン・ドイル(原題:The Life of Sir Arthur Conan Doyle)
|
---|
|
---|
カテゴリ |
|
---|