XScale
XScale︵エックススケール︶は、インテルが実装した第五世代ARMアーキテクチャのRISCマイクロプロセッサであり、v5TE ISAに基づいている。
これは、DECのStrongARMマイクロプロセッサおよびマイクロコントローラの後継であり、StrongARMはDECとの訴訟問題の和解案としてDECの半導体部門から購入した経緯がある。インテルはStrongARMを同社の古くなったRISCプロセッサ(i860、i960)の後継として使用した。
2006年6月27日のプレスリリースでインテルはマーベル・テクノロジー・グループ︵マーベル︶にXScaleおよびその周辺チップ事業を6億ドルで譲渡する事を発表した。
Intel PXA255
XScaleプロセッサにはいくつかのファミリが存在する。アプリケーションプロセッサ (PXA) と3G携帯電話向けベースバンドプロセッサ (PXA)、I/Oプロセッサ (IOP)、ネットワークプロセッサ (IXP)、コントロール・プレーン・プロセッサ (IXC) である。
その他にスタンドアロンプロセッサとして80200と80219︵PCIデバイス向け︶がある。
2006年11月にPXAプロセッサ事業がマーベルへ譲渡された後は、マーベルからの販売サポートが継続されている。
以下はXScaleアプリケーションプロセッサを列挙したものである。
●PXA210 (2002年2月)‥エントリレベル向け、携帯電話などをターゲットとしている。動作周波数は133MHzと200MHz。
●PXA250 (2002年2月)‥動作周波数は 200MHz, 300MHz, 400MHz。
●PXA255 (2003年3月)‥バスクロックを倍に強化(100MHz→200MHz)。低電圧化(400MHzで1.3V)。
●PXA260 (2003年3月)‥パッケージを53%小型化。
●PXA261 (2003年3月)‥16ビット StrataFlashメモリ 16Mバイト内蔵
●PXA262 (2003年3月)‥16ビット StrataFlashメモリ 32Mバイト内蔵
●PXA263 (2003年3月)‥32ビット StrataFlashメモリ 32Mバイト内蔵
●PXA270 (2004年4月)‥動作周波数は 312MHz, 416MHz, 520MHz, 624MHz
●PXA271 (2004年4月)‥動作周波数は 312MHz, 416MHz。16ビット StrataFlashメモリ 32MB、16ビットSDRAM 32MB内蔵
●PXA272 (2004年4月)‥動作周波数は 312MHz, 416MHz, 520MHz。32ビット StrataFlashメモリ 64MB内蔵
インテルはPXA27xファミリにいくつかの新技術を導入している。
●ワイヤレス・スピードステップ‥負荷に応じて自動的にクロックを落として電力消費を抑える。
●ワイヤレスMMX‥43種の新しいSIMD命令(MMX命令セットとSSE命令とXScale独自命令)を追加。マルチメディアコンテンツのデコード、エンコードおよびゲームで使用。
●組み込み用グラフィックスコプロセッサ 2700G も同時にリリース。
以下はXScaleI/Oプロセッサを列挙したものである。
●IOP321‥PCI-X (64bit/133MHx)インターフェイス。最大で1GBのDDR200をサポート。動作周波数は400と600MHz。
●IOP310‥PCI (64bit/66MHz)インターフェイス。最大で512MBのPC100をサポート。動作周波数は 400MHzと600MHz。
●IOP332‥PCI-E to PCI-Xブリッジインターフェイス。最大で2GBのDDR333又は1GBまでのDDR400をサポート。動作周波数は500MHzと667MHzと800MHz。
●IOP331‥PCI-X (64bit/133MHz)ブリッジインターフェイス。最大で2GBのDDR333又は1GBまでのDDR400をサポート。動作周波数は500MHzと667MHzと800MHz。
●IOP333‥PCI-E to Dual PCI-Xブリッジインターフェイス。最大で2GBのDual-Ported DDR333又は1GBまでのDual-Ported DDR400をサポート。動作周波数は500MHzと667MHzと800MHz。
●IOC340‥PCI-E to PCI-Xインターフェイス。最大で4GBのDDR2 400/533をサポート。動作周波数は800MHzと1200MHz。
●IOP341‥PCI-E & PCI-Xインターフェイス。最大で4GBのDDR2 400/533をサポート。動作周波数は800MHzと1200MHz。
●IOP342‥PCI-E & PCI-Xインターフェイス。最大で4GBのDDR2 400/533をサポート。動作周波数は800MHzと1200MHz。
●IOP348‥PCI-E & PCI-Xインターフェイス。最大で4GBのDDR2 400/533をサポート。動作周波数は667MHzと800MHzと1200MHz。
Toradex Colibri - XScale Monahan s PXA290 Prototype Of XScale PXA3xx series
2005年8月、インテルは後継となるMonahans︵コード名︶を発表した。新開発の第三世代XScaleプロセッサ・コアを開発し、その上でSoCとしての周辺機能やデータ・スループットを大幅に改善した。当初はPXA29xシリーズとなる予定だったが、XScaleがマーベルに移った後、仕様変更を経て2006年11月にPXA3xx (PXA300/PXA310/PXA320) シリーズとして改めて製品発表が行われた。動作周波数は最大806MHz。性能向上は例えば624MHz同士で比較した場合、PXA270に比較して約25%だという。2005年8月時点では、2700Gの後継となる組み込み用グラフィックスコプロセッサ︵コード名Stanwood︶も発表しているが、2006年11月のPXA300シリーズ発表時点で発表はされなかった。
︵写真はインテル時代のPXA290試作品の物であり、PXA3xxシリーズとは異なる。︶
PXA300シリーズに採用された第三世代XScaleコアは、それまでのXScaleコアと同様ARM V5TE互換であることに変化はない。しかし、性能向上のための根本的な改良が加えられている。
●PXA320では256KBのL2キャッシュが追加された。
●内部のローカルバスの本数を増やし、バススイッチという機能でデータ転送の多重化を行った。
●ワイヤレスMMX系の命令セットを追加した。︵ワイヤレスMMX2︶
●PXA320では最高806MHz、PXA310/300でも最高624MHzを仕様とした。
●DRAMとして、DDR-SDRAMを標準対応とした。
●NANDコントローラを内蔵し、システムブートをNANDからできるようにして、NORフラッシュメモリが不要になった。︵NORメモリ対応品とNANDメモリ対応品の2種類が存在する。︶
加えて、周辺機能としては、次のような特長がある。
●PXA320ではVGA16ビットカラー対応のオンチップ・フレームメモリ(RAM)を内蔵 ︵LCDコントローラとしてはSVGA解像度までを標準でサポート︶
●省電力機能を強化、ワイヤレス・スピードステップ2となった。
●LCDコントローラに2Dグラフィック・アクセラレーション機能が追加された。
●USB機能が強化。デバイス機能︵クライアント︶ではUSB2.0ハイスピード対応になった。︵ホスト機能・OTGは1.1フルスピードのまま︶
●クイックカメラ・キャプチャ機能では、PXA310の場合最大500万画素まで対応する
●PXA310では、MPEG2/4,H.264,JPEGなどのコーデック機能をハードウェアで内蔵することで、消費電力のピークを抑えるように考慮されている。
製品は以下の通り。
PXA300︵2006年11月︶
エントリレベル向けまたは低消費電力用途向け。16ビット外部バス。208MHz/624MHz。
PXA310︵2006年11月︶
携帯電話や情報端末向け。16ビット外部バス。マルチメディア拡張機能内蔵。セキュリティ機能搭載。624MHzのみ。
PXA320︵2006年11月︶
ハイエンド機器向け。32ビット外部バス。L2キャッシュ搭載、624MHz/806MHz。