デジタル大辞泉 「まじ」の意味・読み・例文・類語 まじ[助動] ﹇助動﹈﹇まじから|まじく・まじかり|まじ|まじき・まじかる|まじけれ|○﹈︽上代語﹁ましじ﹂の音変化︾活用語の終止形に付く。ただし、ラ変型活用語には連体形に付く。 1 打消しの推量の意を表す。…ないだろう。…ないに違いない。 ﹁唐(から)の物は、薬のほかは、なくとも事欠くまじ﹂︿徒然・一二〇﹀ 2 打消しの意志の意を表す。…ないつもりだ。…するつもりはない。 ﹁ゆめゆめ粗(そら)略(く)を存ずまじう候﹂︿平家・七﹀ 3 否定されることが当然であることを表す。…するはずがない。…ないのが当然だ。 ﹁いとあるまじきことと思ひ離れにしを﹂︿源・葵﹀ 4 不可能の推量の意を表す。…できそうもない。…できないようだ。 ﹁げにえ堪ふまじく泣い給ふ﹂︿源・桐壺﹀ 5 不適当・禁止の意を表す。…しないほうがよい。…てはならない。…するな。﹁警官としてあるまじき行為だ﹂ ﹁後世を思はん者は、湛(じん)汰(だが)瓶(め)一つも持つまじきことなり﹂︿徒然・九八﹀ [補説]﹁まじ﹂は﹁べし﹂の打消しと考えられる。平安時代以降、漢文訓読文の﹁べからず﹂に対して、和文では﹁まじ﹂が用いられたが、中世、連体形﹁まじき﹂のイ音便形﹁まじい﹂が現れ、新しく生じた﹁まい﹂に押されてしだいに衰えた。現代語では、5の意で﹁あるまじき﹂という形で用いるだけである。 まじ[形動] [形動]《「まじめ」の略》本気であるさま。本当であるさま。「まじな話」「まじ、うざい」→がち[類語]まじめ・真剣・本気・がち 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「まじ」の意味・読み・例文・類語 まじ (一)〘 助動詞 〙 ( 活用は﹁〇・まじく・まじ・まじき・まじけれ・〇﹂。補助活用は﹁まじから・まじかり・〇・まじかる・〇・〇﹂。動詞型活用語の終止形に付く。ただし、ラ変型活用語︵形容詞・形容動詞︶には連体形に付く。→語誌 ) ﹁べし﹂の打消に相当し、推量・意志などの強い打消を表わす。 (二)① 不適当であるとの判断、または、しないことが当然・義務である意を表わす。…ないほうがよい。…のはずがない。…べきでない。 (一)[初出の実例]﹁為不(マジキ)行を為言ふ不(マジキ)行を為﹂(出典‥東大寺諷誦文平安初期点︵830頃︶) (二)﹁かくて京へ行くに、島坂にてひとあるじしたり。必ずしもあるまじきわざなり﹂(出典‥土左日記︵935頃︶承平五年二月一六日) (三)② 禁止、または、しないことを勧誘する意を表わす。…ないようにせよ。 (一)[初出の実例]﹁三日は、爰のものは外へは持ていくまじ﹂(出典‥落窪物語︵10C後︶三) (四)③ 否定的な意志を表わす。…しないでおこう。…しないつもりだ。 (一)[初出の実例]﹁み命のあやうさこそおほきなるさはりなれば、猶つかうまつるまじきことを﹂(出典‥竹取物語︵9C末‐10C初︶) (二)﹁にくいやつばら。一人もあますまじ﹂(出典‥平治物語︵1220頃か︶中) (五)④ 否定的な推量の意を表わす。否定的に予想し、また推定する。きっと…ないだろう。…ないに違いない。 (一)[初出の実例]﹁十千の魚有りて、日の為に暴(さら)されて、将に死なむこと久しくある不(マジ)﹂(出典‥西大寺本金光明最勝王経平安初期点︵830頃︶) (二)﹁重き病をし給へば、え出おはしますまじ﹂(出典‥竹取物語︵9C末‐10C初︶) (六)⑤ 不可能だという判断を表わす。…できないだろう。 (一)[初出の実例]﹁なほ、この女見では、世にあるまじきここちのしければ﹂(出典‥竹取物語︵9C末‐10C初︶) まじの語誌 (1)上代語の﹁ましじ﹂の変化したもので、中古になって成立した。﹁ましじ﹂と﹁まじ﹂には、接続・意味・用法において類似性が認められる。﹁ましじ﹂から﹁まじ﹂への変化は、類音が連続した場合、一方が落ちるという傾向によるものであろう。 (2)中古においては、和文の散文に見られ、和歌や漢文訓読資料においてはあまり見られない。中世以降、口頭語では次第に﹁まじい﹂﹁まい﹂が勢力を広げ、﹁まじ﹂は徐々に衰退していく。 (3)一般に、﹁まじ﹂は﹁べし﹂の否定であるといわれ、対応が注意されているが、接続・意味・文法機能において共通性が認められる。原則的に両者が承接しないことも注意される。 (4)接続は、中世以後、口語﹁まい﹂の接続の混乱が﹁まじ﹂にも及び、特に未然形に付く例が多くみられる。﹁金刀比羅本平治‐下﹂の﹁一人も助けまじき物を﹂など。 まじ 〘 名詞 〙 ( 形動 ) 「まじめ(真面目)」の略。[初出の実例]「気の毒そふなかほ付にてまじになり」(出典:洒落本・にゃんの事だ(1781)) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
日本大百科全書(ニッポニカ) 「まじ」の意味・わかりやすい解説 まじまじ / 真風 各地で﹁まじ﹂﹁まぜ﹂﹁まかぜ﹂とよばれる風を調べてみると、その風向がまちまちなので、風向による風の固有名ではないことがはっきりする。まじの語源には諸説あるが、ある場所、ある季節に吹く、その場所でもっとも重要な風がまじ・まぜなどという呼称でよばれていると思われる。まかぜ・まじをよい風の意味に解釈している説もあるが、実際には警戒すべき強風についていわれている場合もあり、かならずしもよい風であるというわけにはいかない。 (1)まかぜ 石川県・福井県および京都府では、冬にとくに多い北寄りの強風をいう。この場合﹁たまかぜ﹂からの転化であるという説もある。富山県氷見(ひみ)市藪田(やぶた)では春の南の最強風をまかぜとよんでいる。岩手県宮古市では西風をいう。 (2)まじ 南ないし南西の風。四国・九州東岸・山陰・瀬戸内にかけていう。 (3)まぜ 真風(まぜ)として古くは西風もしくは南西の風がよばれたが、地方名としては大阪・愛知・徳島・和歌山の各府県などでは南風をいい、岡山・高知両県と東京の八丈島などでは南西風をいう。 ﹇根本順吉﹈ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
百科事典マイペディア 「まじ」の意味・わかりやすい解説 まじ ︿まぜ﹀とも。真風とも書き,良い風の意味で,太平洋岸の各地で春から夏にかけて吹く南寄りの季節風をさす。桜まじ,油まじ︵油風︶,日和(ひより)まじ等という表現もある。 出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「まじ」の意味・わかりやすい解説 まじ 主として九州東側,瀬戸内および四国地方で吹く局地風の名称。南または南寄りの風。温暖で多湿な南風で夏の季節風をさす。﹁じ﹂は風のこと。九州や四国地方では﹁まぜ﹂,山陰地方や九州の一部では﹁はえ﹂ともいう。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のまじの言及 【風】より …︿あなじの八日吹き﹀といって,陰暦12月8日に荒れ模様になることなどがこの風の特徴。 油風︵あぶらかぜ︶︿油まじ﹀︿油まぜ﹀ともいう。4月ころ吹く南寄りの穏やかな風。… ※「まじ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」