デジタル大辞泉 「アラタ体」の意味・読み・例文・類語 アラタ‐たい【アラタ体】 《〈ラテン〉corpora allata》昆虫の頭部にある内分泌器官。脱皮のほか、多くの生理現象を支配するアラタ体ホルモンを分泌する。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「アラタ体」の意味・読み・例文・類語 アラタ‐たい【アラタ体】 (一)〘 名詞 〙 ( [ラテン語] corpora allata の訳語 ) 昆虫の脳後方にある内分泌腺の一つ。アラタ体ホルモン︵幼若ホルモン︶を分泌し、前胸腺ホルモンとの相互作用で、幼虫形質の保存や脱皮などに関係する。ハサミコムシ類を除いた無翅(むし)類の昆虫には存在しない。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
改訂新版 世界大百科事典 「アラタ体」の意味・わかりやすい解説 アラタ体 (アラタたい) 目次 アラタ体の機能 昆虫の脳のうしろに続いている1対のほぼ球形をした腺性内分泌器官で,ハサミトビムシ類を除く無翅︵むし︶昆虫にはない。種によっては癒着合一したものや側心体,前胸腺相同器官と対合して一つの器官を形成するなどの諸形態がある。側心体を含めて脳後方内分泌腺群︵あるいは内分泌系︶と総称される。アラタ体を初めて記載したのはリヨンP.Lyonet︵1762︶で,その後corpora incertaと呼ばれたこともあったが,現在はヘイモンスR.Heymonsによるcorpus allatumの名称が用いられている。発生的には頭部外胚葉が陥入,遊離して小球体となり,それが咽頭付近に移動したのち形成される。allatumの語はこの移動にちなみ,︿もたらされた﹀を意味するラテン語allatusに由来する。 アラタ体の機能 アラタ体は3種類の幼若ホルモンJH-Ⅰ,JH-Ⅱ,JH-Ⅲを分泌する。幼若ホルモンは,昆虫が脱皮を繰り返して成長する過程で,前胸腺から分泌されるエクジソン︵脱皮ホルモン︶との共同作用で脱皮後の形態を決める。幼若ホルモンの体液濃度が高ければ,幼虫へと脱皮する。完全変態をする昆虫では,幼虫が終齢になると幼若ホルモン量が減少し,蛹化︵ようか︶がおこる。さなぎが成虫に,また不完全変態昆虫で終齢若虫が成虫になる過程では,エクジソンが作用する時期の幼若ホルモン量は0となる。このようなときに幼若ホルモンを投与すると,さなぎは二次蛹へと脱皮する。アラタ体の分泌活性は神経および内分泌的に調節されている。脳の神経分泌細胞でアラトトロピンallatotoropin︵アラタ体刺激︶およびアラトヒビンallatohibin︵アラタ体抑制︶の2種の神経分泌物質がつくられ,アラタ体神経を経由して直接アラタ体に作用する。また神経は抑制的に作用する。このほか体液中に幼若ホルモン特異エステラーゼがあり,この活性の変動によっても幼若ホルモンの体液濃度が調節されている。成虫になるとアラタ体が再び活性化する種もあり︵ゴキブリなど︶,卵巣と卵の成熟に関与する。このほか前胸腺の維持,幼虫休眠の誘導︵ニカメイガ︶,幼虫や成虫の体色︵タバコスズメガ,バッタ︶,カーストの形成︵アリ︶などにも関係があるが,一般的な現象ではなく,いずれも幼若ホルモンの二次的な機能であろう。 執筆者‥片倉 康寿+桜井 勝 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
百科事典マイペディア 「アラタ体」の意味・わかりやすい解説 アラタ体【アラタたい】 大部分の昆虫に見られる内分泌腺。脳の後方,大動脈の両側に1対あり,球状。3種の幼若ホルモンを分泌する。このホルモンは前胸腺から分泌されるホルモン︵エクジソン︶と共同して幼虫期の脱皮をひき起こし,またゴキブリなどの成虫では,生殖腺の成熟に関与している。 →関連項目変態|ホルモン 出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報