デジタル大辞泉
「オレステス」の意味・読み・例文・類語
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オレステス
- ( [ギリシア語] Orestēs ) ギリシア神話で、ミケーネ王アガメムノンの子。姉エレクトラとともに、父を殺した母とその姦夫とを討ち父王の復讐をとげる。
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オレステス
Orestēs
ギリシア伝説で,ミュケナイ王アガメムノンと妃クリュタイムネストラの子。トロイア戦争から凱旋した父を母とその情人アイギストスAigisthosが謀殺したとき,まだ少年だったオレステスは姉エレクトラの手引きで叔父のフォキス王のもとに逃れ,いとこのピュラデスPyladēsとともに育てられる。成人後,父の仇を報ぜよとのアポロンの神託をうけた彼は,生涯の友となったピュラデスと故国に帰り,母とその情人を討った。しかし,アイスキュロスの悲劇︿オレステイア三部作﹀によれば,母殺しの罪は復讐の女神エリニュスたちの追及を招き,彼は半狂乱のうちに各地をさまようが,最後にアポロンの命でアテナイに赴き,アレオパゴスの法廷で無罪を宣告された。のちヘレネの娘ヘルミオネHermionēを妻とし,父の王国を治めたという。彼を描いた悲劇作品には,ほかにもソフォクレスの︽エレクトラ︾,エウリピデスの︽エレクトラ︾︽オレステス︾がある。
執筆者‥水谷 智洋
オレステス
Orestēs
前408年にアテナイで上演されたエウリピデス作の悲劇。父アガメムノンの仇を討った後のエレクトラとオレステスの姉弟を扱っている。親殺しの罪ゆえに危機に陥った2人は,トロイアからヘレネを伴って帰国したアガメムノンの弟メネラオスに救いの手を求めるが拒否され,彼らの一族に不幸をもたらした元凶ヘレネの殺害にも失敗する。狂ったオレステスは,メネラオスの娘ヘルミオネを奪い,喉に刃をつきつけ,かけつけたメネラオスに,人質をとって追いつめられた犯人のごときふるまいを見せる。ここに,デウス・エクス・マキナたるアポロンが登場し,オレステスはヘルミオネにたちまち恋をして緊張は解け,幕となる。︿厚かましくも市井人を舞台に乗せた﹀とエウリピデスを批判するニーチェの言葉がそのまま当てはまりそうな悲劇であると言えよう。そのスペクタクルを多用する劇的緊張の高め方は,例えばソフォクレスの︽オイディプス王︾のそれとはまったく異なったものである。
執筆者‥安西 真
オレステス
Orestes
生没年:?-476
西ローマ帝国末期のローマ人将軍。パンノニアに住んでいたが,その地方がアエティウスによってフンに割譲され,448年ころにはアッティラ王の書記を務めた。その後,西ローマ軍に入り,475年にネポス帝によって全軍司令官の地位とパトリキウスの称号を与えられたが,同年8月謀反を起こして同帝をダルマティアに退去させ,息子ロムルス︵ロムルス・アウグストゥルス︶を西帝位に挙げて実権を握った。しかし翌476年,ゲルマン傭兵隊の土地分割要求を拒んだためオドアケルを長とする兵たちの反乱を招き,8月28日プラケンティアで殺された。
執筆者‥後藤 篤子
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オレステス
ギリシア伝説上の人物。アガメムノンの子。父の非業の死後,国外にのがれ,成長して帰国,姉エレクトラとともに母クリュタイムネストラとその情夫アイギストスを殺して復讐(ふくしゅう)する。復讐の女神エリニュスたちに追われ狂気となり諸国をさまようが,アテナイにきてアレオパゴスで罪を赦される。のちミュケナイ王となったという。アイスキェロス︿オレステイア三部作﹀,ソフォクレス︽エレクトラ︾,エウリピデス︽オレステス︾などに登場する。
→関連項目アイギストス|イフィゲネイア|オレステイア三部作
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オレステス
おれすてす
Orestēs
ギリシア神話の英雄アガメムノンとクリタイムネストラの子で、父を殺した母親と姦夫(かんぷ)アイギストスに対して復讐(ふくしゅう)を果たした。この物語は古代ギリシア悲劇『オレステイア』として知られる。
[編集部]
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世界大百科事典(旧版)内のオレステスの言及
【アトレウス家伝説】より
…10年に及ぶ遠征から凱旋したアガメムノンは,その間アイギストスと密通した妻[クリュタイムネストラ]に謀殺された。しかしこの両者もアガメムノンの遺子[オレステス]とその姉[エレクトラ]によって非業の死を遂げた。そのことで実母殺しを犯したオレステスは狂気に陥り,復讐神の追跡を受けたが,法と秩序の神アポロンの弁護のもとアテナイ法廷の裁きで無罪とされ,呪われた一族にまつわる罪と罰との長い連鎖はとざされた。…
【エレクトラ】より
…(3)ミュケナイ王アガメムノンと妃クリュタイムネストラの娘。トロイア戦争から凱旋した父を母とその情人アイギストスAigisthosが謀殺したとき,幼い弟[オレステス]を国外に逃し,成人してからいとこのピュラデスPyladēsとともに故国に戻った弟と力をあわせて父の仇を討った。アイスキュロスの〈[オレステイア三部作]〉,ソフォクレスおよびエウリピデスの《[エレクトラ]》などの悲劇作品でよく知られる。…
【オレステイア三部作】より
…作者は三部作という構成によって,数世代にわたり神と人とがかかわり合う壮大な悲劇の舞台を作り出した。この劇は素材をトロイア伝説から取り,[オレステス]による父の仇討のための母殺しというテーマを取り上げている。アトレウスの一族の血で血を洗う復讐劇に正義の観点から光を当て,その部族社会的な近親者の手による報復の掟から脱却して,市民社会にふさわしい新しい倫理と解決方法を模索する。…
【クリュタイムネストラ】より
…ヘレネの姉妹。夫がトロイアをめざすギリシア艦隊の出帆を可能ならしめるために娘の[イフィゲネイア]を犠牲に供したことを恨んだ彼女は,夫の出征中に通じた義理の従兄弟のアイギストスAigisthosと謀り,10年ぶりに凱旋した夫を,婢妾として連れ帰ったトロイア王女カッサンドラもろともに殺害したが,のち息子の[オレステス]に討たれた。︻水谷 智洋︼。…
【ローマ】より
…次のアンテミウス(在位467‐472)は東帝から送り込まれた皇帝であるが,リキメルと対立して殺され,リキメルもその6週間後に死んだ。次の皇帝ネポス(在位474‐475)も東から送り込まれたが,彼も将軍オレステスに追い出され,オレステスは息子ロムルス・アウグストゥルスを帝位に就けた。しかし,同盟部族との交渉が決裂してスキラエ人将校オドアケルはオレステスを殺し,ロムルス・アウグストゥルスを廃位した(476)。…
【エウリピデス】より
…彼の作品は92編あったと伝えられるが,現存作品はサテュロス劇︽キュクロプス︾と偽作︽レソス︾を含めて19編である。そのうち上演年代が確定している作品は,︽アルケスティス︾(前438),︽[メデイア]︾(前431),︽ヒッポリュトス︾(前428),︽トロイアの女︾(前415),︽ヘレネ︾(前412),︽[オレステス]︾(前408)である。他の現存作品は︽ヘラクレスの子ら︾︽アンドロマケ︾︽ヘカベ︾︽救いを求める女たち︾︽ヘラクレス︾︽イオン︾︽[エレクトラ]︾︽タウリケのイフィゲネイア︾︽フェニキアの女たち︾,そして遺作︽バッコスの信女︾と︽アウリスのイフィゲネイア︾であるが,これらは皆︽メデイア︾以後に上演されている。…
【オレステス】より
…ギリシア伝説で,ミュケナイ王アガメムノンと妃クリュタイムネストラの子。トロイア戦争から凱旋した父を母とその情人アイギストスAigisthosが謀殺したとき,まだ少年だったオレステスは姉[エレクトラ]の手引きで叔父のフォキス王のもとに逃れ,いとこのピュラデスPyladēsとともに育てられる。成人後,父の仇を報ぜよとのアポロンの神託をうけた彼は,生涯の友となったピュラデスと故国に帰り,母とその情人を討った。…
※「オレステス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」