改訂新版 世界大百科事典 「チョウジ」の意味・わかりやすい解説
チョウジ (丁子/丁字)
clove
Syzygium aromaticum(L.)Merr.et Perry(=Eugenia aromatica(L.)Kuntze)
民俗
丁子︵丁香︶は古代から代表的な媚薬︵びやく︶の一つであり,中世アラビアではこれを食べれば老いず白髪にもならぬといった。中国では古く鶏舌香とよばれ,後漢の応劭の︽漢官儀︾には宮中で皇帝と話すときに口臭消しとしてこれを口に含んだとある。日本に渡来したのは8世紀ごろとされ,薫香や防腐用として珍重されたが,平安時代に五月節供に辟邪︵へきじや︶延命の呪具︵じゆぐ︶として身につけた薬玉︵くすだま︶に,麝香︵じやこう︶,沈香︵じんこう︶,丁子などの香料を入れたという。この薬玉に似た風習が,沖縄の八重山群島でかつて見られた背守りの風習である。これはマムリイ︵守り︶と呼ばれ,丁子やミカンの葉などの香料を入れた袋で,産婆に火の神に祈って作ってもらい,着物の背縫いの上部に魔よけとしてつけたのである。 執筆者‥飯島 吉晴出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報