改訂新版 世界大百科事典 「ローソン」の意味・わかりやすい解説
ローソン
Henry Lawson
生没年:1867-1922
オーストラリアの詩人,短編作家。ノルウェー人の父,イギリス系の母︵ルイザ。のちに社会改革家,ジャーナリスト︶の長男として金鉱町グレンフェルの鉱夫テントに生まれた。少年時代の耳の病気︵完全に聞こえなくなった︶,両親の離婚は彼の生涯に大きな影を落とすことになった。シドニーで雑誌を発刊し始めた母の影響で詩や短編を書き,1887年有力週刊誌︽ザ・ブレティン︾にデビューした。詩人,作家として成功したもののアルコール中毒などで妻子と別居,シドニーで貧困のうちに惨めな死をとげた。時の首相ヒューズは国葬をもって報いた。生前は詩が評判であったが,のちにはむしろ短編小説が高い評価を受けた。彼の最盛期は1890年代の第1次文化興隆期で,この国の辺境エートスであるメートシップをブッシュ︵奥地︶や都市のスラムの下積みの人間像を通じて,心にしみる筆致で形象化した。アメリカの辺境エートスを華やかに形象化したマーク・トウェーンとよく比較される。
執筆者‥越智 道雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報