兄（読み）ケイ

デジタル大辞泉 「兄」の意味・読み・例文・類語

けい【兄】［漢字項目］

 
﹇音﹈ケイ︵漢︶　キョウ︵キャウ︶︵呉︶　﹇訓﹈あに　せ　え
﹇学習漢字﹈2年
︿ケイ﹀
1 あに。﹁兄事・兄弟／義兄・実兄・従兄・父兄﹂
2 同輩や年長の友人に対する敬称。﹁雅兄・学兄・貴兄・諸兄・大兄﹂
︿キョウ﹀あに。﹁兄弟﹂
︿あに﹀﹁兄上・兄貴﹂
﹇名のり﹈えだ・これ・さき・しげ・ただ・ね・よし
﹇難読﹈従(いと)兄(こ)・従(い)兄(と)弟(こ)・兄(せ)子(こ)・兄(は)矢(や)  
 

あに︻兄︼

 
1きょうだいのうち、年上の男。⇔弟。
2 ︽﹁義兄﹂とも書く︾妻や夫の兄。また、姉の夫。義(ぎけ)兄(い)。
3 ︵﹁あにさん﹂などの形で︶年配者が若い男を親しんでいう語。
[類語]お兄さん・兄(にい)ちゃん・兄い・兄貴・兄上・実兄・義兄・姉婿・長兄・次兄・亡兄・愚兄・家兄・舎兄・令兄・賢兄・兄さん・お兄ちゃん・兄(あん)ちゃん  
 

けい︻兄︼

 
﹇名﹈あに。⇔弟(てい)。
﹇代﹈二人称の人代名詞。男子が手紙などで親しい先輩や友人などに用いる敬称。﹁兄のご健闘を祈る﹂
﹇接尾﹈親しい先輩や友人の名などに付けて、敬意を表す。男子が手紙などに用いる。﹁中村兄﹂
[類語]学兄・大兄・貴兄・賢兄・貴殿・貴台・貴下・貴君・貴所・貴公・足下・御身・貴女  
 

こ‐の‐かみ︻▽兄／▽首／▽氏上︼

 
︽﹁子の上(かみ)﹂の意から︾
1 長男。
﹁―を箭(やた)田(のた)珠(まか)勝(つの)大(おひ)兄(ね)の皇子と曰す﹂︿欽明紀﹀
2 兄。または、姉。
﹁この男の―も衛府の督(かみ)なりけり﹂︿伊勢・八七﹀
3 年上の者。年長者。
﹁それが年は、われにこよなく―にぞおはせし﹂︿宇津保・蔵開中﹀
4 うじのかみ。氏の首長。
﹁諸氏の人等、各可(よ)き―を定めて申し送れ﹂︿天武紀﹀
5 多くの人の上に立つもの。かしら。
﹁その―と思へる上手ども﹂︿源・若菜下﹀  
 

せ︻▽兄／▽夫／背︼

 
1女が男を親しんでいう語。主として夫・恋人をさす。⇔妹(いも)。
﹁信(しな)濃(ぬ)道(ぢ)は今の墾(は)り道刈りばねに足踏ましむな沓(くつ)はけ我が―﹂︿万・三三九九﹀
2 女の側から兄または弟をよぶ語。⇔妹。
﹁人ならば母が愛(まな)子(ご)そあさもよし紀の川の辺の妹と―の山﹂︿万・一二〇九﹀  
 

え︻▽兄︼

 
同性の者のうちの年長者。特に、兄弟・姉妹で年上の者。⇔弟(おと)。
﹁かつがつもいや先立てる―をし枕(ま)かむ﹂︿記・中・歌謡﹀
[補説]﹁え︵兄︶﹂と﹁おと︵弟︶﹂との複合が﹁えと︵干支︶﹂である。→干(え)支(と) →十干  

きょう【兄／経／卿／敬／慶／警】［漢字項目］

〈兄〉⇒けい
〈経〉⇒けい
〈卿〉⇒けい
〈敬〉⇒けい
〈慶〉⇒けい
〈警〉⇒けい

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精選版 日本国語大辞典 「兄」の意味・読み・例文・類語

あに【兄】

 

(一)〘 名詞 〙
 (二)① 親を同じくする者同士で、年上の男子。実兄。え。せ。いろせ。このかみ。しょうと。いろえ。⇔弟。
(一)[初出の実例]﹁あにの中納言行平(ゆきひら)のむすめの腹なり﹂(出典‥伊勢物語︵10Ｃ前︶七九)
 (三)② 妻や夫の兄弟で妻や夫より年上の男子、また、姉の夫など。義兄。義理の兄。
(一)[初出の実例]﹁義兄(アニ)だって貴方、左に右く医者ですし﹂(出典‥青春︵1905‐06︶︿小栗風葉﹀夏)
 (四)③ 長子。長男。
(一)[初出の実例]﹁勾大兄広国押武金日天皇は男大(をほ)迹天皇の長子(アニみこ)なり﹂(出典‥日本書紀︵720︶安閑即位前︵寛文版左訓︶)
 (五)④ 男が他の者より年長であること。
(一)[初出の実例]﹁今一人は、前の男より二つ三つ兄らしく﹂(出典‥浮雲︵1887‐89︶︿二葉亭四迷﹀一)
 (六)⑤ 年配者が若い男を親しんで呼ぶ語。また、若者のうちで年長者、実力者。
(一)[初出の実例]﹁兄々といふて、関とりも関分も、小どもあしらいした事じゃ﹂(出典‥随筆・胆大小心録︵1808︶一三八)
 (七)⑥ ( ﹁はな︵花︶の兄(あに)﹂の略 ) 梅の花。
(一)[初出の実例]﹁兄ははや盛りが過て吉野山﹂(出典‥雑俳・柳多留‐三七︵1807︶)
  
 

あにい︻兄︼

 

(一)〘 名詞 〙
 (二)① あにき。あに。
(一)[初出の実例]﹁阿哥(アニイ)も、お前商売をして居りゃア、多少(いくらか)屈托もあらあナ﹂(出典‥少年行︵1907︶︿中村星湖﹀四)
 (三)② 勇み肌の若者。また、その若者を呼ぶ語。多く江戸、東京地方で用いる。
(一)[初出の実例]﹁山手の惣領(アニイ)が、惣勘定といふ高慢らしい赤本を貸て行しゆへ﹂(出典‥洒落本・禁現大福帳︵1755︶序)
 (二)﹁小平哥々(アニイ)失錯(へまあ)遣ちゃアいけねへぜ﹂(出典‥塩原多助一代記︵1885︶︿三遊亭円朝﹀三)
 (四)③ あまり賢くない若者を呼ぶ語。
(一)[初出の実例]﹁夫馬鹿の名目一ならず。︿略﹀但同じ詞にて兄イといへば、少しやさしく、利口にないといへば、人めったに腹を立てねど﹂(出典‥談義本・風流志道軒伝︵1763︶序)
  
 

え︻兄︼

 

(一)〘 名詞 〙 ( ﹁え﹂は元来ヤ行のエ ) 年長であること。また、その者。年長者。⇔弟(おと)。
(一)[初出の実例]﹁かつがつも 最前(いやさき)立てる 延(エ)をし枕(ま)かむ﹂(出典‥古事記︵712︶中・歌謡)

兄の語誌


(1)上代語では複合語の一部として用いられることが多い。単独の形の挙例﹁古事記‐中・歌謡﹂も﹁兄﹂でなく﹁善﹂と解釈する説がある。また、﹁兄磯城(えしき)﹂に対する﹁弟磯城(おとしき)﹂のように、﹁おと﹂とひとくみで用いられることが多い。
(2)兄弟姉妹の間柄では兄と姉を指したが、姉の場合﹁あね﹂と併用された。平安時代以降は﹁あに﹂﹁あね﹂と交替した。→﹁おとうと﹂の語誌
 

けい︻兄︼

 

(一)[1] 〘 名詞 〙 ＝あに︵兄︶
 (二)[2] 〘 代名詞詞 〙 対称。男子が書簡などで、先輩・同輩などを敬っていうのに用いる。
(一)[初出の実例]﹁兄の所レ得、南海にて得候分歟﹂(出典‥浦上春琴宛頼山陽書簡‐文化一一年︵1814︶一二月七日)
 (三)[3] 〘 接尾語 〙 男子が書簡などで、先輩・同輩の氏名などに付して敬意を表わすのに用いる。
(一)[初出の実例]﹁昔、兄と同学で有し人也、互に恩深りき﹂(出典‥今昔物語集︵1120頃か︶九)
  
 

ひん︻兄︼

 

(一)〘 名詞 〙 ( ﹁ひん﹂は﹁兄﹂の唐宋音。﹁こうほうひん︵孔方兄︶﹂の略 ) 銭。金銭。金銀。鳥目。また、金持。
(一)[初出の実例]﹁サア手まへたひんを、ササまき出せ﹂(出典‥浄瑠璃・恋女房染分手綱︵1751︶二)
  

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