デジタル大辞泉
「判断」の意味・読み・例文・類語
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はん‐だん【判断】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 法に基づいて判定すること。判定。断定。
(一)[初出の実例]﹁更忘二万民之撫育一、只存二一身之利潤一、経愁如レ此之間、専無二判断之心一﹂(出典‥宝生院文書‐永延二年︵988︶一一月八日・尾張国郡司百姓等解)
(三)② 外界やその人自身に関する物事が今どうであるのか、今後どうなるのか、どうあるべきなのか、どうすべきなのかを直感的あるいは論理的に考え、決めること。また、その決定の内容。
(一)[初出の実例]﹁かうあるをば仏の俗服ぢゃと判断したまふぞ﹂(出典‥六物図抄︵1508︶)
(二)[その他の文献]︹北斉書‐許惇伝︺
(四)③ 吉凶を見分けること。占い。﹁姓名判断﹂
(一)[初出の実例]﹁其人と膝を合はせて我子の身上を判断したくなる﹂(出典‥武蔵野︵1887︶︿山田美妙﹀下)
(五)④ ( [ドイツ語] Urteil の訳語 ) 哲学で、ある命題または思考内容を肯定または否定する精神作用。伝統的論理学で、主語について述語を肯定または否定するはたらき。蓋然的・実然的・必然的の区別がある。
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判断 (はんだん)
judgement
一般的にいえば判断とは︿何事かに関して真︵または偽︶と判ずるところの人間の心的作用﹀を意味する。一方,命題propositionは論理学において通常︿その真偽に関して論じうる文︵たとえば感嘆文や命令文は命題でない︶﹀と規定されており,したがって,命題は判断の言語表現であるといえる。ここでは論理学の用語としての︿判断﹀について述べるが,論理学の対象として見るかぎりでは,判断と命題はとくに区別する必要はない。
︵1︶伝統的論理学においては,判断︵命題︶とは︿二つの概念の結合または分離︵の叙述︶﹀である。すなわち,S,Pを概念︵名辞︶とするとき,もっとも基本的な判断︵命題︶は下記のものであるが,︵1︶においてはSにPが結合されており,︵2︶においてはSからPが分離されている。
︵1︶ SisP SはPである
︵2︶ Sis not P SはPでない
したがって判断︵命題︶は概念︵名辞︶と推理︵推論︶とのいわば中間に位置する。なぜなら,概念︵名辞の対象︶と概念︵名辞の対象︶の関係の把握︵叙述︶が判断︵命題︶であり,かつ,判断︵命題︶と判断︵命題︶の関係の把握︵叙述︶が推理︵推論︶であるといえるからである。さて︵1︶ではSに対してPが肯定されているといわれ,︵2︶ではSに対してPが否定されているといわれる。そして︵1︶の型の命題︵判断︶は肯定命題︵肯定判断︶,︵2︶は否定命題︵否定判断︶と呼ばれる。︵1︶においてSは主語subject,Pは述語predicateと呼ばれ,︿is︵である︶﹀は二つの名辞︵概念︶をつなぐものとして繫︵けい︶辞またはコプラcopulaと呼ばれている。さて,まず主語Sが個体のとき,︵1︶,︵2︶は単称命題といわれる。例えば︿ソクラテスは人間である﹀は単称命題である。次に,主語Sが︿人間﹀︿動物﹀など事物の集り︵集合︶である場合,その範囲を明確にするため︿すべての﹀︿或る﹀などの限定詞がSに付加されることになる。したがって,これらの限定詞と肯定・否定の組合せから,次の4種類の命題の型が得られる。
︵3︶ すべてのSはPである ……︵A命題︶
︵4︶ 或るSはPである ……︵I 命題︶
︵5︶ いかなるSもPでない ……︵E命題︶
︵6︶ 或るSはPでない ……︵O命題︶
︵3︶と︵5︶は全称命題,︵4︶と︵6︶は特称命題と呼ばれる。したがって︵3︶は全称肯定命題と呼ばれるが,これはA命題と略称されている。同様に︵4︶は特称肯定命題=I命題,︵5︶は全称否定命題=E命題,︵6︶は特称否定命題=O命題と呼ばれている。略称のAとIはラテン語の
FF
RMO︵肯定する︶から,EとOはN
G
︵否定する︶から由来する。以上,単称命題とA,I,E,Oの命題は,定言命題と総称されているが,伝統的論理学ではそのほかに次の命題の型が取り上げられている。p,qを任意の命題とするとき,︵a︶︿pならばq﹀という命題は仮言命題と呼ばれ,︵b︶︿pまたはq﹀は選言命題と呼ばれる。そしてこの両者︵a︶︵b︶は条件命題と総称されている。
→三段論法
︵2︶現代論理学では次の命題の型がもっとも基本的とされている︵下記において,a,b,cとa1,a2,……,anは個体を,R1,R2,……,Rnは個体の集合または個体間のなんらかの関係を表すものとする︶。
︵1︶ソクラテス︵a︶は人間︵R1︶である
︵1′︶aはR1に属する
︵2︶太郎︵a︶は花子︵b︶を愛する︵R2︶
︵2′︶aとbはR2という関係にある
︵3︶一郎︵a︶の両親︵R3︶は太郎︵b︶と花子︵c︶である
︵3′︶a,b,cはR3という関係にある
︵4︶a1,……,anはRnという関係にある
︵n≧1︶
︵1︶は︵1′︶の一例であり,同様に︵2︶は︵2′︶の,︵3︶は︵3′︶の一例である。したがって上のすべては︵4︶の例であると考えられる。︵4︶のRnはn項述語︵またはn項関係︶と呼ばれる。さて︵4︶の型の命題は単純命題と呼ばれるが,われわれはいくつかの単純命題をもとに︿……でない﹀︿……または--﹀︿……かつ--﹀︿……ならば--﹀︿すべての個体xについて……﹀︿或る個体xについて……﹀などの語句︵これらは論理語と呼ばれる︶を用いて,別の命題を合成することができる。合成によって生み出された命題は複合命題と呼ばれる。例えば次の︵5︶︵6︶は複合命題であり,おのおの︵5′︶︵6′︶の一例である。
︵5︶或る男性︵R1︶は花子︵a︶を愛する︵R2︶
︵5′︶或る個体xについて︵xはR1に属し,かつ,xとaはR2の関係にある︶
︵6︶すべての人間︵R1︶は動物︵R1′︶である
︵6′︶すべての個体xについて︵xがR1に属するならば,xはR1′に属する︶
以上から明らかなように,現代論理学での命題の定式化は伝統的論理学の命題形式をすべて含むことになる。例えば,上の︵6′︶は伝統的論理学でのA命題に相当する。
執筆者‥岡部 満
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普及版 字通
「判断」の読み・字形・画数・意味
【判断】はんだん
是非を定める。︹北斉書、許惇伝︺惇、![](/image/dictionary/jitsu/gaiji/14/1194bd.gif)
![](/image/dictionary/jitsu/gaiji/14/119270.gif)
![](/image/dictionary/jitsu/gaiji/14/119b54.gif)
、~司徒![](/image/dictionary/jitsu/gaiji/14/1192a8.gif)
に任ぜられ、能く
斷するを以て、時人に知らる。號して入鐵![](/image/dictionary/jitsu/gaiji/14/1192a8.gif)
と爲す。
字通﹁判﹂の項目を見る。
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判断
はんだん
judgment 英語
Urteil ドイツ語
jugement フランス語
一つの事実を断定すること。たとえば、電車の中でみかけた人の顔を見て﹁だれだったか﹂と考えているうちに、﹁ああ、古い知人の何々さんだ﹂という断定に達したときには、判断を下したことになる。伝統的論理学では、推論の基本単位となっている定言形の文、すなわち﹁SはPである﹂という形の文を﹁定言判断﹂とよび、﹁AならB﹂という形の文を﹁仮言判断﹂、﹁AさもなければB﹂という形の文を﹁選言判断﹂という。これは、推論の際にこれらの文に応ずる判断が心のなかで行われると考えることによるのである。現代論理学では、言語表現に即して論証の分析を行い、心のなかのことには直接は踏み込まないので、こういうことばは使わない。近ごろでは、いくつかの可能な場合のなかから一つを選び取ること、すなわち﹁意思決定﹂とよばれていることを﹁判断﹂ということもある。
﹇吉田夏彦﹈
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判断【はんだん】
一般にものごとの真偽・可能を判定する心的作用。論理学では,その言語表現が命題と呼ばれ,同じものとして扱われる。二つの概念︵名辞︶の結合ないし,分離として,主語,述語,緊辞︵コプラ︶を用いて形式化される。この意味からは,判断とは概念間の関係の把握とも言いうる。判断︵命題︶間の関係の把握が推理︵推論︶。
→関連項目命題|様相
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判断
はんだん
judgment
論理学で,ある概念と概念との間,また概念は実在を表象するとの意味で,実在と実在との間に一定の関係があることを肯定または否定する知性の行為もしくはその能力またはその結果をいう。判断を言語で表明したものを命題という。判断は一般に﹁SはPである﹂という形で表わされるが,Sを主語,Pを述語という。判断がSの概念の外延全体に及んでいるか (全称) ,あるいは一部にのみ (特称) かを判断の﹁量﹂,SとPの関係が肯定的であるか,否定的であるかを﹁質﹂という。またPの概念がすでにSの概念に含まれている場合を分析判断,そうでない場合を総合判断という。SとPの関係の断定が経験によらない場合を先天 (験) 的判断,経験に基づく場合を後天的判断という。 (→形式論理学 )
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判断
流れ図で用いる記号。記号中に記述された条件を評価し、その結果により処理が分岐することを表す。
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世界大百科事典(旧版)内の判断の言及
【意思決定】より
…
[認知科学的関心]
意思決定は,経営学,統計学などさまざまな分野で使われる概念であるが,ここでは主に認知科学における意思決定について述べる。認知科学は問題解決や知識に基づいた判断のように高次の認知活動のプロセスやメカニズムを解明し,支援することをその任務の一つとしているので,これらの認知活動に関連する意思決定も重要な研究課題になっている。 意思決定はたとえば,今までより大きな家に引っ越す必要が生じ,家を買ったり借りたりする可能性を検討し,実際に引っ越して,満足感を味わうというふうに,(1)目標の設定と選択の機会の発見,(2)選択肢あるいは代替案と呼ぶいくつかの異なる行為の可能性の生成,(3)選択,(4)これらの過程の評価,といった異なった局面から成り立っていると考えることができる。…
【多値論理学】より
…現代論理学の一分野。通常いかなる命題(判断)も真か偽のいずれかであると考えられている。そして,真でもなければ偽でもない中間の真理値は存在しないというのが論理学の常識であろう。…
※「判断」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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