デジタル大辞泉 「勢子」の意味・読み・例文・類語 せ‐こ【▽勢子/列=卒】 《「せご」とも》狩猟の場で、鳥獣を追い出したり、他へ逃げるのを防いだりする役目の人。狩子かりこ。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「勢子」の意味・読み・例文・類語 せ‐こ【勢子・列卒】 (一)〘 名詞 〙 ( ﹁せご﹂とも ) 狩猟の場で、鳥獣を駆り立てたり、他へ逃げ去ることを防ぎ止めたりする人夫。狩子(かりこ)。︽ 季語・冬 ︾ (一)[初出の実例]﹁夏の野におちくる鹿を待かけてあふにあふ共みゆるせこかな︿源俊頼﹀﹂(出典‥永久百首︵1116︶夏) (二)﹁北山にて鹿狩を催し。則ち勅使の上覧に備へん為。兼ては青顧(せこ)の用意も致す﹂(出典‥浄瑠璃・仮名写安土問答︵1780︶初) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
改訂新版 世界大百科事典 「勢子」の意味・わかりやすい解説 勢子 (せこ) 狩猟に際して野獣を追い出したり包囲して一方に誘導する人々をさす言葉。勢子を多数用いて野獣をとりまき捕獲する猟法を一般に巻狩と呼ぶ。近世・中世に領主が多数の農民を使役した巻狩では,勢子は数百人を超えることがまれではなかった。現代ではまたぎなどの仲間で巻狩を行うが,その場合は勢子役は指揮者の指名に従ってなすべきものとされ,射撃は行わないのが通例で,それについて不服をいわないことが不文律となっている。しかしながら,全国的にみて指揮者,射手,勢子役などを分担する適任者は衆目の一致する形できまることが多く,その成果は現物の場合でも換金した場合でも,任務にかかわらず平等分配が原則である。勢子に対する指揮者の合図は口笛,身ぶり,棒や枝,その他種々な手段で伝達され,それに従って勢子は適切な行動をとることが要求され,必ずしも未熟者の役とはかぎらない。また,対象の獲物によって勢子の行動にさまざまのちがいがある。たとえば猪に対しては発声は禁じられるが,逆に熊を追うには発声が必要であった。 執筆者‥千葉 徳爾 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
日本大百科全書(ニッポニカ) 「勢子」の意味・わかりやすい解説 勢子せこ 集団の狩猟で、鳥獣を駆り出すことを受け持つ人々。カリコ、マキコ、サワナリなどともいう。集団猟では、タチバ、タツマ︵射場︶に待ち伏せている﹁撃ち手﹂に対し、山谷を巻き込んで獲物を追い出す人々が必要で、その数や配置にも狩猟対象ごとに一定のきまりがおのずからできていた。谷の下から寄せるのをナリコミ、上から寄せるのをオオビキとよんでいた所もある。それを指揮するのがスカリ、シカリなどとよぶ狩猟の﹁頭目﹂であった。また旧時、大名などの行った大掛りな﹁巻狩り﹂には、たくさんの﹁勢子﹂が動員されもしたが、その多くは臨時に駆り出された農民であった。専業的な狩人(かりゅうど)団では﹁勢子﹂の役割もおおむね固定していて、狩猟成果の配分にもあずかった。それを﹁カケダマス﹂とよんでいた所もある。また、明治以後には学校行事として﹁兎(うさぎ)狩り﹂が行われた所が多かったが、その際の﹁勢子﹂はすべて生徒たちであり、若干の﹁狩人﹂が雇われて﹁射手﹂になっていた。古い﹁巻狩り﹂の名残(なごり)であろう。しかしマタギなどの専業的狩猟団は生業の根拠をいまや失い、一般的な﹁巻狩り﹂もまったく消失したので、﹁勢子﹂の名も過去の存在となったとみてよいであろう。 ﹇竹内利美﹈ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「勢子」の意味・わかりやすい解説 勢子せこ 狩猟の補助者。鳥獣を駆り出したり,また逃げ出すことを防ぎ,射手がそれを撃取るのを補助する。いのしし,しかなどの大物猟では,射手と勢子が多数で猟隊を組み,勢子が狩猟犬とともに山や森林の中から獲物を追出し,射手が持ち場で待ち構えて撃つ。この猟法は古く,すでに鎌倉時代の﹃吾妻鏡﹄や﹃新撰六帖題和歌﹄などにその記述がみられる。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報