御方（読み）オカタ

デジタル大辞泉 「御方」の意味・読み・例文・類語

お‐かた【▽御方】

 
1他人を敬っていう語。﹁あのお方の紹介なら信用します﹂→方(かた)4
2 貴人の妻(さい)妾(しょう)や子女の敬称。
﹁明日は殿ごの砧(きぬ)打(たう)ち、―姫ごも出て打たい﹂︿松の葉・一﹀
3 近世、庶民が他人の妻を敬っていう語。
﹁なんと―茶はまだあるまい﹂︿浄・孕常盤﹀  
 

おん‐かた︻御方︼

 
﹇名﹈﹁おおんかた﹂に同じ。
﹁小松殿、中宮の―に参らせ給ひて﹂︿平家・三﹀
﹇代﹈二人称の人代名詞。貴人を敬っていう。あなたさま。
﹁―をばまったくおろかに思ひ参らせ候はず﹂︿平家・七﹀  
 

おおん‐かた︹おほん‐︺︻▽御方︼

 
1貴人の住居。お住まい。
﹁父母、北の―になむ住み給ひける﹂︿宇津保・藤原の君﹀
2 貴人、特に、貴婦人・姫君の敬称。
﹁―︵＝中君︶は、とみにも見給はず﹂︿源・総角﹀  

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精選版 日本国語大辞典 「御方」の意味・読み・例文・類語

お‐かた【御方】

 

(一)〘 名詞 〙 ( ﹁お﹂は接頭語 )
 (二)① 人を敬っていう語。﹁かた﹂よりも敬意が高い。
(一)[初出の実例]﹁それにみえさせ給ふは、いかやうなる御かたにて候ぞ﹂(出典‥虎明本狂言・夷大黒︵室町末‐近世初︶)
 (三)② 貴人の妻妾や子女の部屋。また、その妻妾や子女を敬っていう語。
(一)[初出の実例]﹁二棟御方 将軍家御寵。号二大宮殿一﹂(出典‥吾妻鏡‐延応元年︵1239︶八月八日)
 (四)③ 中流以下で、他人の妻を呼ぶ語。近世では農家や一般町家の人妻に対していったが、青森県や九州地方では、今でも格式ある家の主婦に対していう。また、宮城・山形県や関東・甲信地方では、自分の妻のことを他にいう場合や陰口に使う。
(一)[初出の実例]﹁頭巾は三条唐物屋甚吉殿のおかたより、赤き錦を百日ばかりの其内に心を尽し縫ひ立て﹂(出典‥仮名草子・竹斎︵1621‐23︶上)
 (五)④ おもに、女が男を深い敬意をこめていう語。遊里で多く用いた。
(一)[初出の実例]﹁奥にござる民彌様は、傾城狂ひをなされたお方なれば﹂(出典‥歌舞伎・傾城壬生大念仏︵1702︶上)
 (六)⑤ 舅(しゅうと)と同居している場合の嫁の部屋。︹日葡辞書︵1603‐04︶︺
 (七)⑥ 貴人の家で部屋住みの息子の称︵随・貞丈雑記︵1784頃︶︶。
 (八)⑦ 村の旧家の称。﹁岡田﹂などと書き、屋号、通称、姓になったものも多い。
  
 

おん‐かた︻御方︼

 

(一)( ﹁おん﹂は接頭語 )
 (二)[1] 〘 名詞 〙
(一)① 貴人の住居、居室の敬称。おすまい。
(一)[初出の実例]﹁うちわらひ給て、御かたにおはして﹂(出典‥落窪物語︵10Ｃ後︶一)
 (二)② 住居の意から転じて、その住人、すなわち貴人の敬称。男に対しても女に対しても用いたが、特に貴婦人、姫君に対する敬称として用いた例が多い。多く、﹁…の御方﹂の形で用いる。
(一)[初出の実例]﹁西のおとどは女御の君の御方、︿略﹀すみ給ふ﹂(出典‥宇津保物語︵970‐999頃︶藤原の君)
 (三)[2] 〘 代名詞詞 〙 対称。貴人に対して用いる。あなたさま。
(一)[初出の実例]﹁﹃御かたこそ、此の花はいかが御覧ずる﹄と言へば﹂(出典‥堤中納言物語︵11Ｃ中‐１３Ｃ頃︶はなだの女御)
  

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