男（読み）オトコ

デジタル大辞泉 「男」の意味・読み・例文・類語

おと‐こ〔をと‐〕【男】

 
︽﹁おと﹂は、動詞﹁お︵復︶つ﹂と同語源で、若々しいの意。﹁おとめ﹂に対する語︾
1
㋐人間の性別で、子を産ませる能力と器官をもつほう。男性。男子。⇔女。
㋑人以外の動植物で雄性のもの。おす。﹁男馬﹂
2 成熟した男性。子供を産ませる力を持つようになった男性。また、一人前の男子。﹁男になる﹂
3 強いとかたくましいとか、一般に1が備えていると考えられる性質をもっている人。﹁男たるもの初志を貫徹せよ﹂
4 男子としての面目、体面。また、男ぶり。﹁男が立つ﹂﹁男をあげる﹂
5 情夫。情人。愛人。﹁男ができる﹂
6 男子の奉公人。下男。﹁男を何人も使って商売をやる﹂
7 ︵接頭語的に名詞の上に付いて︶一対のもののうち、大きいほうのもの、険しいほうのものなどを表す。﹁男坂﹂
8 ︵上代、少(おと)女(め)に対して︶未婚の若い男子。
﹁あなにやし、え―を﹂︿記・上﹀
9 夫婦関係にある男子。夫。
﹁乳母なる人は、―なども無くなして﹂︿更級﹀
10 出家していない男子。
﹁西行法師―なりける時﹂︿十訓抄・八﹀
11 元服した男子。
﹁汝七歳にならば―になして﹂︿平家・二﹀
12 男色。若(にゃ)道(くどう)。
﹁順礼にはあらぬ―修行の君﹂︿浮・三代男・二﹀
[類語]︵1㋐︶、︵2︶︵3︶男性・男子・野郎・雄︵特に︵2︶︵3︶の意で︶男児・おのこ・壮(そう)丁(てい)・壮夫・士(し)・ますらお・丈(じょ)夫(うふ)・紳士・殿方・ジェントルマン／︵5︶情夫・間夫・間男・紐・色男・男妾・燕・若い燕・愛人・恋人・情人・いろ・彼氏・彼・彼女・いい人・思い人・思い者・情婦・女・妾・手掛け・二号・側室・側(そば)女(め)・愛妾・囲い者・思い者・内妻・色女・手つき・一夜妻・ボーイフレンド・ガールフレンド・ラバー・フィアンセ・ダーリン・ハニー・パートナー・アモーレ  
 

だん︻男︼﹇漢字項目﹈

 
﹇音﹈ダン︵漢︶　ナン︵呉︶　﹇訓﹈おとこ
﹇学習漢字﹈1年
︿ダン﹀
1 おとこ。﹁男子・男児・男女・男性・男装・男優﹂
2 五等爵の第五位。﹁男爵﹂
︿ナン﹀
1 おとこ。﹁男色／下(げな)男(ん)・美男・善(ぜん)男(なん)善(ぜん)女(にょ)﹂
2 むすこ。﹁次男・嫡男・長男・一男一女﹂
︿おとこ﹀﹁男前／作(さく)男(おとこ)・間(まお)男(とこ)・雪男﹂
﹇名のり﹈お・おと
﹇難読﹈男(おと)郎(こえ)花(し)・益(ます)荒(ら)男(お)  
 

お︹を︺︻▽男／▽夫︼

 
︽﹁雄(お)﹂と同語源。﹁女(め)﹂に対する語︾
1 おとこ。男子。
﹁吾が大国主汝(な)こそは―にいませば﹂︿記・上・歌謡﹀
2 おっと。
﹁吾(あ)はもよ女(め)にしあれば、汝(な)を置(き)て―はなし﹂︿記・上・歌謡﹀
3 ︵﹁雄﹂﹁牡﹂とも書く︶他の語の上または下に付いて複合語をつくる。
㋐男性、または動植物のおすを表す。﹁―牛﹂﹁―花﹂﹁益(ます)荒(ら)―﹂
㋑一対の物のうち、大きいもの、または男性的と思われるほうのものを表す。﹁―岳﹂﹁―竹﹂
㋒おおしい、勇ましい意を表す。﹁―たけび﹂﹁―心﹂  

なん【男】［漢字項目］

⇒だん

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精選版 日本国語大辞典 「男」の意味・読み・例文・類語

おと‐こをと‥【男】

 

(一)〘 名詞 〙 人間のうち、精子をつくる器官をそなえている方。
 (二)① 若々しく生命力の盛んな男子。⇔少女(おとめ)。
(一)(イ) 青年の男。成年に達した男性。
(一)[初出の実例]﹁麗(うるは)しき壮夫(ヲトコ)に成りて出で遊行(あそ)びき︿壮夫を訓みて袁等古(ヲトコ)と云ふ﹀﹂(出典‥古事記︵712︶上)
 (二)﹁憙哉(あなうれしゑや)可美(うまし)少男(ヲトコ)に遇ひぬること︿少男、此をば烏等孤(ヲトコ)と云ふ﹀﹂(出典‥日本書紀︵720︶神代上)
 (二)(ロ) 元服して一人前となった男子。→男になす・男になる。
 (三)② 老幼に関係なく、男性。男子。⇔女(おんな)。
(一)[初出の実例]﹁秋野には今こそ行かめもののふの乎等古(ヲトコ)女(をみな)の花にほひ見に﹂(出典‥万葉集︵8Ｃ後︶二〇・四三一七)
 (二)﹁をとこもすなる日記といふものを、女(をむな)もしてみんとてするなり﹂(出典‥土左日記︵935頃︶発端)
 (四)③ 夫婦関係、男女関係での男性。
(一)(イ) 夫。良人。妻に対する配偶者。
(一)[初出の実例]﹁昔おとこありけるをうなの、おとこ訪はずなりにければ﹂(出典‥古今和歌集︵905‐914︶雑下・九七三・左注)
 (二)(ロ) 情人。情夫。
(一)[初出の実例]﹁妓は皆舸夫を情夫(ヲトコ)や小夜千鳥︿六花﹀﹂(出典‥続春夏秋冬︵1906‐07︶︿河東碧梧桐選﹀冬)
 (五)④ 出家していない男性。在俗の男性。
(一)[初出の実例]﹁法師なるも、おとこなるも、おとづれつとして﹂(出典‥成尋阿闍梨母集︵1073頃︶)
 (六)⑤ 召使いの男性。下男。奉公人。
(一)[初出の実例]﹁おとこどもぞ御簾(みす)のとにありける﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶若紫)
 (二)﹁是非なく男になりまして、此東後屋(とうごや)へ料理人にありつき﹂(出典‥浮世草子・傾城歌三味線︵1732︶二)
 (七)⑥ 男性としての特質。また、その特質を持った男性。
(一)(イ) 男らしい男子。雄々しい男子。りっぱな男子。
(一)[初出の実例]﹁弓矢を取るも、取らざるも、おとこと首をきざまるる程の者が﹂(出典‥曾我物語︵南北朝頃︶五)
 (二)(ロ) 男子としての面目。名誉。男子の意地。
(一)[初出の実例]﹁あいつもおとこ磨くやつ、をれが難儀(なんぎ)も知ってゐる﹂(出典‥浄瑠璃・曾根崎心中︵1703︶)
 (三)(ハ) 男ぶり。男前。男子の容貌。
(一)[初出の実例]﹁あたまつき、人に替り、男(オトコ)も勝れて、女のすくべき風(ふう)也﹂(出典‥浮世草子・好色一代男︵1682︶四)
 (八)⑦ 雄性のもの。おす。﹁男犬﹂﹁男柱﹂等の熟語形で用いることが多い。
 (九)⑧ 対になったもののうち、大きい、けわしいなどの性質をそなえている方。﹁男坂﹂﹁男山﹂など。

男の語誌


(1)﹁ひこ︵彦︶﹂﹁ひめ︵姫︶﹂などと同様、﹁こ﹂﹁め﹂を男女の対立を示す形態素として、﹁をとめ﹂に対する語として成立した。﹁をと﹂は、﹁をち︵復︶﹂﹁をつ︵復︶﹂と同語源とみられ、若、未熟を意味する。
(2)本来、若い青年男子︵とりもなおさず結婚適齢期にあることを意味する︶を指したが、上代からすでに﹁をみな︵をむな・をんな︶﹂と対の関係が成立して、年代・世代を問わず男性︵一般︶を指す語となった。
 

なん︻男︼

 

(一)〘 名詞 〙
 (二)① おとこ。おのこ。男性。だん。
(一)[初出の実例]﹁また、これ男(ナン)︵︿注﹀ヲトコ︶、これ女(にょ)と分別せされ﹂(出典‥妙一本仮名書き法華経︵鎌倉中︶五)
 (三)② 息子。せがれ。だん。
(一)[初出の実例]﹁君は何の処の人、誰が家の男(ナン)にて御坐(おはします)ぞ﹂(出典‥太平記︵14Ｃ後︶一二)
  
 

だん︻男︼

 

(一)〘 名詞 〙
 (二)① おとこ。男子。男性。︹易経‐繋辞上︺
 (三)② むすこ。せがれ。子息。︹易経‐説卦︺
 (四)③ わかもの。元気さかんな者。壮丁。
 (五)④ 五等爵の第五位。旧華族制度でいう。ヨーロッパの貴族の階級についても用いる。男爵。
(一)[初出の実例]﹁﹃加ト男(ダン)﹄とは﹃加藤男爵﹄の略称﹂(出典‥号外︵1906︶︿国木田独歩﹀)
 (二)[その他の文献]︹礼記‐王制︺
  
 

おとこ‐しをとこ‥︻男︼

 

(一)〘 形容詞シク活用 〙 いかにも男という感じである。男らしい。⇔女し。
(一)[初出の実例]﹁いまより男しきふるまひなせそ、いづかたにも似つかはしき方に縁もこそあれ﹂(出典‥浮世草子・古今堪忍記︵1708︶三)
  

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世界大百科事典（旧版）内の男の言及

【性】より

…〈性〉ということばにはさまざまな意味がある。まず〈性〉は生物の多くの種にみられる二つの表現形態の区別で，ヒトであれば男性―女性，動植物であれば雄性(雄)―雌性(雌)の区別を意味する。次に，この二つの性が存在するところから生じる行動，現象も一般に〈性〉といわれる。…

※「男」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」

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