デジタル大辞泉
「節用集」の意味・読み・例文・類語
せつようしゅう〔セツヨウシフ〕【節用集】
室町中期に成立した国語辞書。編者未詳。語をいろは順に分け、さらに天地・時節・草木などの門を立て、意義によって分類・配列したもの。また、江戸時代にはこれを改編・増補した多種多様の節用集が刊行され、やがてはいろは引き国語辞書の代名詞のようにもなった。近世初期までに書写・刊行された諸本を特に古本節用集という。せっちょうしゅう。
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せつようしゅうセツヨウシフ【節用集】
(一)( 室町時代には﹁せっちょうしゅう﹂とも )
(二)[1] 室町中期の用字集、国語辞書。文明年間︵一四六九‐八七︶以前の成立。編者は未詳だが、建仁寺の僧かとする説がある。語の頭字のイロハ順と意味分類とで用字を検索する。用字には必要に応じて語義・語源などにも触れることがある。各種の写本・板本を生み、本書名は類書の総称の観すら呈するに至り、昭和初年まで刊行をみた。慶長以前のものは、﹁い﹂部天地門の初出の語が、﹁伊勢﹂で始まる伊勢本、同じく﹁印度﹂で始まる印度本、乾坤門初出の語が﹁乾﹂で始まる乾本(いぬいぼん)の三種に分けられる。主な諸本に、黒本(くろもと)本︵写本︶、天正一八年本・饅頭屋本・易林本︵以上板本︶、書名を異にする伊京集・和漢通用集︵以上写本︶などがある。
(一)[初出の実例]﹁近比御六ケ敷儀にて候へ共、節用集を遊候て給候はば可レ為二祝着一候﹂(出典‥吉川家文書別集‐︵年未詳︶︵室町︶二月二七日・吉川元長自筆書状)
(二)﹁節用集(セツヨウシウ)に見えわたらぬ難字を、庄屋殿より度々たづね給ふに﹂(出典‥浮世草子・西鶴織留︵1694︶一)
(三)[2] 実用的な教養書、雑学集。
(一)[初出の実例]﹁本書は婦人文庫第三巻節用集として、女学範、和漢筆道手習指南、教訓歌絵、都風俗化粧伝、当流節用料理大全、四季漬物早指南、菓子話船橋の七部十巻を収む﹂(出典‥婦人文庫︵1914︶三)
節用集の語誌
(1)﹁節用﹂の意味については、﹁時々要(い)る﹂の意︵俚言集覧・橋本進吉︶とも、﹁論語‐学而﹂の﹁節レ用而愛レ人﹂から出た︵中田祝夫︶ともいわれるが、後者の説が妥当か。
(2)近世では、乾本系のものが行なわれたが、一八世紀以降、教養全書風の付録や挿絵が併載されるようになり、一九世紀には最盛期をむかえた。近代になると、[ 二 ]の用法で使われることが多くなり、辞書部分のない教養全書が﹁節用︵集︶﹂と称されるにいたる。
(3)一八世紀後半には、イロハ二重引き、特殊仮名︵濁音・撥音・引音︶の有無で引くものなどが考案されたが、イロハ・仮名数引きの早引節用集が他を圧するようになる。ただし、明治中期から、近代的な国語辞書の小型判が刊行されるにしたがい、淘汰された。
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節用集 (せつようしゅう)
室町時代中期,文明年間︵1469-87︶を下らないころにできた,いろは引きの国語辞書。このような体裁および性質の辞書としては,ほとんど皮切りであったとともに,当時としてはその簡便な点が実用的な書として,一般の歓迎をうけ,以後,種々の訂補や改編を経ながら,明治時代の初期までおこなわれた。このようにながい生命をもっていた点で,本書は,日本における辞書および文字教育の文化史の上に,きわめて重要な位置を占めている。︿節用集﹀とは,今日の言葉でいえば,︿用字便覧﹀などにあたるが,江戸時代の一般民衆のあいだでは,節用集といえば,いろは引きの辞書の代名詞でさえあったものである。おそらく︽節用集︾の編者は,︽下学集︾をいっそう検索に便利な実用的なものにしようとして,その形式を︽色葉字類抄︾のごときにならい,新たにいろは引きの体裁を選んだものとおもわれ,したがって,︽節用集︾の原形は,︽下学集︾の1本を粉本とし,これの語彙︵ごい︶に取捨を加えて成ったものであろう。しかし,現存の︿古本節用集﹀は,︿い﹀の部︵天地門︶が︿印度﹀ではじまるか,︿伊勢﹀ではじまるかで,語彙の配列を互いに異にする大きな2系統に分かれ,その関係は複雑である。刊記の明らかな板本では,天正18年︵1590︶本が最も古く,これは伊勢本であるが,慶長︵1596-1615︶の初め易林が印行したいわゆる易林本は,︿い﹀の部が︿乾︵いぬい︶﹀ではじまるので,分類上は,乾本とよばれる。江戸時代におこなわれたのは,これをもととするもので,その数は180種以上にのぼるという。はじめは易林本の内容には手を加えず,外形の面で,行書や草書を加える程度の改変がおこなわれるにとどまったが,しだいに,種々の増補がくわだてられて,のちには,一種の百科辞書の体裁にまで発展したものもある。
執筆者‥亀井 孝
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節用集【せつようしゅう】
国語辞書。著者未詳。室町中期に成立。語をいろは順に四十数部に分け,その中を天地︵あるいは乾坤(けんこん)︶,時節︵あるいは時候︶などの十数門に分けて配列。多くは語義や語源などの簡単な注がついている。いろは引きで実用的な点が歓迎され,幾度か改編されながら室町〜江戸時代に盛んに行われた。古写本には,イ部天地門が︿伊勢﹀で始まる︿伊勢本﹀と,︿印度﹀で始まる︿印度本﹀とがある。板本は,イ部乾坤門が︿乾(いぬい)﹀で始まるので︿乾本﹀と呼ばれる。直接には︽下学集︾などの影響を受けているものと思われる。
→関連項目国語辞典︵日本︶|塵袋|和名類聚抄
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節用集
せつようしゅう
国語辞書。もと一巻、のち二巻または三巻の体裁をとる。編者は特定できず、改編増補の過程でさまざまな人が手を入れたと考えられる。室町中期ごろに成立し、江戸初期にかけて多くの写本が成立するが、このころのものを﹁古本(こほん)節用集﹂と称して、近世の版本と区別する。古本節用集は、い部天地門の最初の語が何であるかによって、伊勢(いせ)本系、印度(いんど)本系、乾(いぬい)本系に大別される。天正(てんしょう)年間︵1573~1592︶以後は乾本系を中心として発達し、また増補や改編された本も数多く刊行された。当時の日常語彙(ごい)を第一音節によっていろは順に配列し、そのなかを天地︵乾坤(けんこん)︶から言語︵言辞︶に至る12門ほどに意義分類し、京師九陌名(けいしきゅうはくのな)、十干十二支などを付す。各語は漢字と仮名︵多くは片仮名︶で示され、ときに意味や語源などを記す。読みからその語の漢字表記を調べるための実用的辞書で、書名の節用は﹁しょっちゅう﹂の意ともいう。
﹇沖森卓也﹈
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
節用集
せつようしゅう
﹁せっちょうしゅう﹂とも読む。室町時代後期の国語辞書。文明年間 (1469~87) よりやや以前の成立とみられる。編者は建仁寺の僧とする説もあるが不明。﹁節用﹂は﹁不断,しょっちゅう﹂などの意。室町時代の日常語を集め,それを書き表わす漢字を示し,ときに意味,語源を説く。同名の書は多いが,大部分のものは,語の第一音節によってイロハの部に分け,そのなかがさらに天地などの意味によって分類されている。その最初の語に従って,印度本,伊勢本,乾 (いぬい) 本の3系列に諸本が大別される。内容が通俗簡便で,検索にも便利なところから,室町時代から明治初期まで増補改訂を加えながら広く用いられ,同類イロハ引き辞書の代名詞のようになり,同名を冠する (なかには異名で同類の) 辞書が多数つくられている。古いものは語数が多くないが,江戸時代になると大部なものもつくられた。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
節用集
せつようしゅう
室町~江戸時代に作られた代表的な国語辞書。語を最初の音で「いろは」にわけたうえ,語義で分類して配列する形態の辞書の総称で,個々の書名は一定せず,語彙数も多様。15世紀半ばに「色葉(いろは)字類抄」などの体裁を参考として,「下学集」の語彙を中心に成立したと推測される。中世成立の古本節用集諸本でも,「い」の部冒頭の語により3系統にわけられ,語義分類の数や付録の内容も多様。16世紀末から刊行された。簡便で実用的なため,他の辞書を凌駕。17世紀末からは語数の追加などの増補が行われて,200近い種類の異なる辞書に「節用集」の名が冠せられ,明治初期まで広く用いられた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
節用集
せつようしゅう
作者不詳。天地・時節・草木・人倫などの十数部門にわけ,﹁いろは分け﹂により音から漢字をさがす体裁。干支・国尽・女子礼法などを付録とする。江戸時代には増補改訂を加え,類書の﹃倭玉篇﹄や﹃下学集﹄をまったく圧倒して流布した。明治初期まで使用され,のちの辞書・教科書に与えた影響は大きい。
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
節用集
室町時代から編纂され始めた簡易通俗ないろは引きの分類漢和辞書.巻首の語彙排列の異同によって,例えば,巻頭が﹁伊勢﹂で始まるものを伊勢本と呼ぶように,印度本,乾本︵いぬいぼん︶などと呼ばれるようないろいろな形に改編されたものが,たびたび出版されて普及した.節用は,江戸時代には通俗辞書の意味でも用いられるようになった.
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の節用集の言及
【辞書】より
…文明18年(1486)書写奥書の本がある)などがある。またイロハ引きのものに︽[節用集]︵せつようしゆう︶︾(︿せっちょうしゅう﹀ともいう)があるが,下位分類は意味によっている。文明期(1469‐87)より少し以前の成立である。…
※「節用集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」