デジタル大辞泉
「素朴実在論」の意味・読み・例文・類語
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そぼく‐じつざいろん【素朴実在論】
- 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] naiver Realismus の訳語 ) 感覚に与えられたものすべてが、そのとおりに実在すると考える認識論的立場。〔普通術語辞彙(1905)〕
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素朴実在論
そぼくじつざいろん
naive realism
外界の物質的対象は、われわれが知覚するとおりに、そしてまた、われわれが知覚するということとは独立に存在する、とする考え方。われわれの日常的・常識的な世界の見方にほぼ一致するといえよう。意識・精神を基底に据える近代以降の認識論において厳しい批判を受けたが、G・E・ムーアなど20世紀イギリスの日常言語学派の哲学者たちによる常識的信念の基本的な重要性の指摘は、素朴実在論を安易に批判することに対する一種の反省となっている。
﹇丹治信春﹈
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素朴実在論
そぼくじつざいろん
naive realism
主として認識論上の立場で,われわれの認識の対象は,常識的に,感覚に映じるがままに実在するとした理論。実在論が観念論の批判を受けて,みずからを修正しながらその難点を克服し,いわゆる批判的実在論に立ったのに対して,それ以前のものが素朴実在論と呼ばれる。
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世界大百科事典(旧版)内の素朴実在論の言及
【実在論】より
…一般には,言葉や観念・想念に依存せず独立に存在する外界の事物の実在性を把握する立場を指す。 最も初歩的な実在論は素朴実在論naive realismであり,われわれが知覚し経験するとおりにものが在り,ものの実在性は知覚し経験するとおりに把握されているとみなす。素朴実在論は,知覚や経験が鏡のようにものの実在性を模写し反映するという素朴な[模写説]を前提する。…
【模写説】より
…スコラ哲学以来,︿鏡﹀に映じた像から実物・現物へとさかのぼる[思]弁が始まり,13世紀以後,心を︿やすりをかけられた板(タブラ・ラサtabula rasa)﹀とみなす考えが起こる。一般に,心は鏡が事物を映すように,平らな板に字が書かれるように,蠟に印形が刻印されるように,事物を模写し模像し,この模写ないし模像が事物の認識に当たると説くのが模写説であり,常識ないし素朴実在論の認識理論に当たる。この場合,心は受動的に事物のありのままを映し出すという前提があるが,映像・写像と実物とを見比べる心が鏡の外にあることになり,無限後退に陥る。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」