Menu
Skip to content
●明かりの本モバイルについて
●本棚
与謝野晶子 みだれ髪
Posted on byakarinohon
みだれ髪
与謝野晶子
この書の体裁は悉く藤島武二先生の意匠に成れり表紙画みだれ髪の輪郭は恋愛の矢のハートを射たるにて矢の根より吹き出でたる花は詩を意味せるなり
臙脂紫
夜の帳︵ちやう︶にささめき尽きし星の今を下界︵げかい︶の人の鬢のほつれよ
歌にきけな誰れ野の花に紅き否︵いな︶むおもむきあるかな春︵はる︶罪︵つみ︶もつ子
髪︵かみ︶五尺ときなば水にやはらかき少女︵をとめ︶ごころは秘めて放たじ
血ぞもゆるかさむひと夜の夢のやど春を行く人神おとしめな
椿それも梅もさなりき白かりきわが罪問はぬ色︵いろ︶桃︵もゝ︶に見る
その子二十︵はたち︶櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
堂の鐘のひくきゆふべを前髪の桃のつぼみに経︵きやう︶たまへ君
紫にもみうらにほふみだれ篋︵ばこ︶をかくしわづらふ宵の春の神
臙脂色︵えんじいろ︶﹇#ルビの﹁えんじいろ﹂は初出では﹁ゑんじいろ﹂﹈は誰にかたらむ血のゆらぎ春のおもひのさかりの命︵いのち︶
紫の濃き虹説きしさかづきに映︵うつ︶る春の子眉毛︵まゆげ︶かぼそき
紺青︵こんじやう︶を絹にわが泣く春の暮やまぶきがさね友︵とも︶歌ねびぬ
まゐる酒に灯︵ひ︶あかき宵を歌たまへ女︵をんな︶はらから牡丹に名なき
海棠にえうなくときし紅︵べに︶すてて夕雨︵ゆふさめ︶みやる瞳︵ひとみ︶よたゆき
水にねし嵯峨の大堰︵おほゐ︶のひと夜︵よ︶神︵がみ︶絽蚊帳︵ろがや︶の裾の歌ひめたまへ
春の国恋の御国のあさぼらけしるきは髪か梅花︵ばいくわ︶のあぶら
今はゆかむさらばと云ひし夜の神の御裾︵みすそ︶さはりてわが髪ぬれぬ
細きわがうなじにあまる御手︵みて︶のべてささへたまへな帰る夜の神
清水︵きよみづ︶へ祇園︵ぎをん︶をよぎる桜月夜︵さくらづきよ︶こよひ逢ふ人みなうつくしき
秋の神の御衣︵みけし︶より曳く白き虹ものおもふ子の額に消えぬ
経︵きやう︶はにがし春のゆふべを奥の院の二十五菩薩歌うけたまへ
山ごもりかくてあれなのみをしへよ紅︵べに︶つくるころ桃の花さかむ
とき髪に室︵むろ︶むつまじの百合のかをり消えをあやぶむ夜︵よ︶の淡紅色︵ときいろ︶よ
雲ぞ青き来し夏姫︵なつひめ︶が朝の髪うつくしいかな水に流るる
夜の神の朝のり帰る羊とらへちさき枕のしたにかくさむ
みぎはくる牛かひ男歌あれな秋のみづうみあまりさびしき
やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
許したまへあらずばこその今のわが身うすむらさきの酒うつくしき
わすれがたきとのみに趣味︵しゆみ︶をみとめませ説かじ紫その秋の花
人かへさず暮れむの春の宵ごこち小琴︵をごと︶にもたす乱れ乱れ髪
たまくらに鬢︵びん︶のひとすぢきれし音︵ね︶を小琴︵をごと︶と聞きし春の夜の夢
春雨にぬれて君こし草の門︵かど︶よおもはれ顔の海棠の夕
小草︵をぐさ︶いひぬ﹃酔へる涙の色にさかむそれまで斯くて覚めざれな少女︵をとめ︶﹄
牧場いでて南にはしる水ながしさても緑の野にふさふ君
春よ老いな藤によりたる夜︵よ︶の舞殿︵まひどの︶ゐならぶ子らよ束︵つか︶の間︵ま︶老いな
雨みゆるうき葉しら蓮︵はす︶絵師の君に傘まゐらする三尺の船
御相︵みさう︶いとどしたしみやすきなつかしき若葉︵わかば︶木立︵だち︶の中︵なか︶の盧遮那仏︵るしやなぶつ︶
さて責むな高きにのぼり君みずや紅︵あけ︶の涙の永劫︵えいごふ︶﹇#ルビの﹁えいごふ﹂は初出では﹁えうごふ﹂﹈のあと
春雨にゆふべの宮︵みや︶をまよひ出でし小羊︵こひつじ︶君︵きみ︶をのろはしの我れ
ゆあみする泉の底の小百合花︵さゆりばな︶二十︵はたち︶の夏をうつくしと見ぬ
この本を、全文縦書きブラウザで読むにはこちらをクリックしてください。
︻明かりの本︼のトップページはこちら
以下の﹁読んだボタン﹂を押してツイッターやFacebookを本棚がわりに使えます。
ボタンを押すと、友人にこの本をシェアできます。
↓↓↓
by
Pages: 1 2345678
Post navigation
← 寺田寅彦 KからQまで
新美南吉 仔牛 →
*
次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">
●
宮沢賢治 春と修羅
●
楠山正雄 たにしの出世
●
波の如く去来す 小川未明
●
竹取物語 和田萬吉
●
なよたけ 加藤道夫
●
聖三稜玻璃 山村暮鳥
●
ヘンゼルとグレーテル グリム兄弟
●
いたずらな天使 アンデルセン作 山田由香里訳
●
新生の門 ――栃木の女囚刑務所を訪ねて 林芙美子
●
私の先生 林芙美子
●
新版 放浪記 林芙美子
●
北海道の﹁俊寛﹂ 小林多喜二
●
雨の夜 樋口一葉
●
まじなひの一方面 折口信夫
●
夜行巡査 泉鏡花
●
巨男の話 新美南吉
●
ひょっとこ 芥川龍之介
●
オリンポスの果実 田中英光
●
転向 和辻哲郎
●
農民文学の問題 黒島傳治
●
歩くこと 三好十郎
●
魔の退屈 坂口安吾
●
半分だけの物語︵後編︶ヘンリー・ヴァン・ダイク 山田由香里訳
●
平和への意志 原民喜
●
春は馬車に乗って 横光利一
●
原爆回想 原民喜
●
ファウスト ゲーテ︵下巻︶
●
ファウスト ゲーテ
●
草みち 田山録弥
●
半分だけの物語︵前編︶ ヘンリー・ヴァン・ダイク
●
犬 正岡子規
●
アラビヤンナイト アラジンとふしぎなランプ 菊池寛
●
レ・ミゼラブル 第四部︵1︶
●
若菜集 島崎藤村
●
アンデルセン ひこうかばん
●
なまけ者と雨 若山牧水
●
雪中富士登山記 小島烏水
●
一九二八年三月十五日 小林多喜二
●
トロッコ 芥川龍之介
●
詩集 芥川龍之介
●
相馬御風 幽霊の足
●
路傍の草 寺田寅彦
●
日本国憲法
●
夏目漱石 私の個人主義
●
福沢諭吉 学問のすすめ
●
養生の心得 福沢諭吉
●
芥川龍之介 侏儒の言葉
●
実語教
●
菊池寛 無名作家の日記
●
宮本百合子 明日をつくる力
●
芥川龍之介 しるこ
●
大杉栄 獄中記
●
寺田寅彦 映画と生理
●
萩原朔太郎 装幀の意義
●
森鴎外 沈黙の塔
●
須川邦彦 無人島に生きる十六人
●
昔からの幸いの道 ヘンリー・ヴァン・ダイク
●
宮沢賢治 農民芸術概論綱要
●
海野十三 三角形の恐怖
●
中原中也 山羊の歌
●
小川未明 名もなき草
●
北大路魯山人 料理の第一歩
●
芥川龍之介 恋愛と夫婦愛とを混同しては不可ぬ
●
森鴎外 山椒大夫
●
楠山正雄 鵺
●
海野十三 透明猫
●
折口信夫 山越しの阿弥陀像の画因
●
宮本百合子 今日の生命
●
岸田劉生 ばけものばなし
●
京に着ける夕 夏目漱石
●
梶井基次郎 雪後
●
生田春月 聖書
●
原田義人 カフカ解説
●
フランツ・カフカ 中島敦訳 罪・苦痛・希望・及び眞實の道についての考察
●
ゲーテ詩集 生田春月訳
●
芥川龍之介 小説の読者
●
新美南吉 仔牛
●
与謝野晶子 みだれ髪
●
寺田寅彦 KからQまで
●
宮沢賢治 オツベルと象
●明かりの本モバイルについて
●本棚
Proudly powered by WordPress. Theme: Book Lite by WPshoppe.