オーケストラ
オーケストラ(伊/英: Orchestra[注 1][注 2])は、管弦楽を多重編成で演奏する団体[1]。
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a7/Vienna_Philharmonic_Orchestra%2C_Carnegie_Hall%2C_conducted_by_Michael_Tilson_Thomas_%2847258679582%29.jpg/300px-Vienna_Philharmonic_Orchestra%2C_Carnegie_Hall%2C_conducted_by_Michael_Tilson_Thomas_%2847258679582%29.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2e/Chicago_Symphony_Orchestra_2005.jpg/300px-Chicago_Symphony_Orchestra_2005.jpg)
概要
編集現在では、ロマン派音楽の頃に多かったオーケストラ編成が「標準的な編成」とされている。古典的な作品の演奏ではこれよりも若干小規模となり、それに対し近代的な作品の演奏ではより大規模なオーケストラとなる場合がある。これらの編成は、主要な管楽器の員数によって二管編成、三管編成、四管編成などと呼ぶ。団体としてのオーケストラの構成員の数は様々なので、団体と作品によっては通常の団員に加えて臨時参加の奏者を加えて演奏することもある。
→#編成
なお、演奏の質が高く評価されているオーケストラは主にプロフェッショナルのオーケストラであるが(→#評価)、それ以外にアマチュア・オーケストラも存在している。
「Orchestra オーケストラ」という語の歴史
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古代ギリシアの劇場のオルケストラ。この図ではOrquestraと書かれている。舞台と観客席の間の部分。
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近代になり、オペラの舞台と観客席の間で演奏する器楽奏者のグループも「オーケストラ」と呼ばれるようになった。
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現代のオーケストラ。この写真ではステージ上におり、主要な存在である。
種類と名称
編集![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/ff/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%A5%BD%E5%9B%A3201001.jpg/300px-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%A5%BD%E5%9B%A3201001.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/58/M%C3%BCnchner_Philharmoniker_im_Gasteig.jpg/300px-M%C3%BCnchner_Philharmoniker_im_Gasteig.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/98/National_Chamber_Orchestra_of_Armenia-2.jpg/280px-National_Chamber_Orchestra_of_Armenia-2.jpg)
歴史
編集運営・組織
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編集編成
編集第1ヴァイオリンからコントラバスまでの弦五部は多くの場合、各部の人数が演奏者に任されているが、現代では一般的に次のようなパターンがある。
管楽器の規模の例 | 型 | 第1ヴァイオリン | 第2ヴァイオリン | ヴィオラ | チェロ | コントラバス | プルト比率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
二管編成 | 8型 | 8人 | 6人 | 4人 | 3人 | 1~2人 | 4:3:2:1:1 |
二管編成 | 10型 | 10人 | 8人 | 6人 | 4人 | 2~4人 | 5:4:3:2:1 |
二管編成 | 12型 | 12人 | 10人 | 8人 | 6人 | 4人 | 6:5:4:3:2 |
三管編成 | 14型 | 14人 | 12人 | 10人 | 8人 | 6人 | 7:6:5:4:3 |
四管編成 | 16型 | 16人 | 14人 | 12人 | 10人 | 8人 | 8:7:6:5:4 |
四管編成 | 18型 | 18人 | 16人 | 14人 | 12人 | 8~10人 | 9:8:7:6:5 |
五管編成 | 20型 | 20人 | 18人 | 16人 | 14人 | 10人 | 10:9:8:7:5 |
管楽器は原則として楽譜に書かれた各パートを1人ずつが受け持つ。ただし実際の演奏会では、倍管といって管楽器を2倍にしたり、「アシスタント」と呼ばれる補助の奏者がつくこともある。
楽譜に示されたオーケストラの編成の規模を示すのに、二管編成、三管編成、四管編成という言葉が使われる。いずれも木管楽器の各セクションのそれぞれの人数によっておおよその規模を示す。
中世音楽
編集この時代の西洋にはオーケストラは存在しないと言われている。しかし西洋以外では、当時の中国宮廷音楽は数百人の合奏による音楽が演奏されていることを示す資料が発掘されている[7]。
ルネサンス音楽
編集モンテヴェルディはスコア序文に楽器編成を書いた世界初の作曲家である。そこにはオーケストラの黎明期の編成が記されている[8]。
バロック音楽
編集- 木管楽器
- 金管楽器
- 打楽器
- ティンパニ 2(1対) 通常、トランペットとセットで
- 弦楽器
- 通奏低音
- チェロ
- ファゴット しばしばチェロの補強として
- コントラバス(またはヴィオローネ) チェロの8度下
- チェンバロ 低音部の旋律と、それに付随する和音を即興で奏でる
- ポジティフ・オルガン 宗教的な曲においては欠かさず
古典派音楽の二管編成
編集- 木管楽器
- フルート 2
- オーボエ 2
- クラリネット 2
- ファゴット 2
- 金管楽器
- ホルン 2
- トランペット 2
- 打楽器
- ティンパニ(1対)
- 弦楽器
盛期ロマン派音楽の二管編成
編集- 木管楽器
- フルート 2 ピッコロへの持ち替えあり
- オーボエ 2 イングリッシュホルンへの持ち替えあり
- クラリネット 2 バスクラリネットへの持ち替えあり
- ファゴット 2 コントラファゴットへの持ち替えあり
- 金管楽器
- ホルン 4
- トランペット 2
- トロンボーン 3
- チューバ 1
- 打楽器
- 編入楽器
- 弦楽器
ロマン派から近代にかけての三管編成
編集- 木管楽器
- フルート 2
- ピッコロ 1
- オーボエ 2
- イングリッシュホルン 1
- クラリネット 2
- バスクラリネット 1
- ファゴット 2
- コントラファゴット 1
- 金管楽器
- 打楽器
- 編入楽器
- チェレスタ
- ハープ 1か2
- 弦楽器
近代から20世紀中葉までの四管編成
編集20世紀以降の五管以上の編成
編集20世紀後半以後の一管編成
編集楽器の配置
編集オーケストラの楽器配置(Setting, Aufstellung)にはさまざまなやりかたがある。時代によって、また指揮者の方針によって工夫が重ねられてきた。
古典的配置
編集20世紀前半から半ばにかけては、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを左右に分ける楽器配置が多かった。これは「ヴァイオリン両翼配置」「対向配置」などと通称されている。
現代における一般的な配置
編集変則的配置
編集指揮者
編集多くの場合、指揮者は(専属契約を結んでいる場合でも)オーケストラの一員ではない。演奏会ごとに違う指揮者が指揮をすることが多い。しかし同時に、多くのオーケストラは「常任指揮者」(あるいは「首席指揮者」「音楽監督」)と呼ばれる特定の指揮者と長期にわたって演奏を行うため、その指揮者の任期中は、その指揮者の得意なレパートリーや演奏の様式によってオーケストラの個性が特徴付けられることが多く、しばしば常任指揮者や音楽監督の名前を冠して「~時代」などと言及されることもある。このような関係として特に有名なもの例を下に挙げる。
- メンゲルベルクとアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(50年におよび、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルと並んで世界最長記録である)
- フルトヴェングラーとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- ベームとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- アンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団
- クーベリックとバイエルン放送交響楽団
- コンヴィチュニーとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
- リヒターとミュンヘン・バッハ管弦楽団
- ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルハーモニー交響楽団(50年におよび、メンゲルベルク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団と並んで世界最長記録である)
- トスカニーニとNBC交響楽団
- ワルターとコロンビア交響楽団
- バーンスタインとニューヨーク・フィルハーモニック
- ストコフスキーとフィラデルフィア管弦楽団
- オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団
- ブリュッヘンと18世紀オーケストラ
- ライナーとシカゴ交響楽団
- ショルティとシカゴ交響楽団
- セルとクリーヴランド管弦楽団
- フェドセーエフとモスクワ放送交響楽団(現・モスクワ・チャイコフスキー交響楽団)
- スヴェトラーノフとソヴィエト国立交響楽団(現・ロシア国立交響楽団)
- チェリビダッケとミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団とシュトゥットガルト放送交響楽団
- メータとイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
- ミュンシュとパリ管弦楽団とボストン交響楽団
- クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団(現在のパリ管弦楽団の設立母体)
- ノイマンとチェコ・フィルハーモニー管弦楽団
- テンシュテットとロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
- ラトルとバーミンガム市交響楽団
- ムーティとミラノ・スカラ座管弦楽団
- デュトワとモントリオール交響楽団
- ヴァントと北ドイツ放送交響楽団
- マリス・ヤンソンスとオスロ・フィルハーモニー管弦楽団
- オスモ・ヴァンスカとラハティ交響楽団
日本人においては、
- 大植英次とミネソタ管弦楽団
- 小澤征爾と新日本フィルハーモニー交響楽団、ボストン交響楽団、サイトウ・キネン・オーケストラ
- 小林研一郎と日本フィルハーモニー交響楽団
- 秋山和慶と東京交響楽団
- 朝比奈隆と大阪フィルハーモニー交響楽団
- 尾高忠明と札幌交響楽団
- 高関健と群馬交響楽団
(団体名は在任当時)
常任指揮者以外の指揮者を「客演指揮者」と呼ぶ。多くのオーケストラでは、多数の客演指揮者を迎えることで、公演レパートリーの不足を補ったり、新しい共演により芸術的な向上を目指すことがある。しかし、かつてのフルトヴェングラーやカラヤンのように、常任指揮者の権限によって、自分の気にそぐわない指揮者に客演させないというケースも存在する。
用語
編集評価
編集2010年発行のグラモフォン誌において、"The world’s greatest orchestras"として、以下の20楽団が選出されている[15]。
- ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
- ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- ロンドン交響楽団
- シカゴ交響楽団
- バイエルン放送交響楽団
- クリーヴランド管弦楽団
- ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
- ブダペスト祝祭管弦楽団
- ドレスデン・シュターツカペレ
- ボストン交響楽団
- ニューヨーク・フィルハーモニック
- サンフランシスコ交響楽団
- マリインスキー劇場管弦楽団 (旧 キーロフ歌劇場管弦楽団)
- ロシア・ナショナル管弦楽団
- サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団
- ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
- メトロポリタン歌劇場管弦楽団
- サイトウ・キネン・オーケストラ
- チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
オーケストラを題材にした作品
編集- 映画
- オーケストラ!(2009年、フランス)
- オーケストラの少女(1937年、アメリカ)
- オーケストラ・リハーサル(1979年、イタリア)
- ここに泉あり(1955年、日本)
- 日本フィルハーモニー物語 炎の第五楽章(1981年、日本)
- 誇り高き戦場(1967年、アメリカ)
- リトル・マエストラ(2012年、日本)
- ベルリン・フィル 最高のハーモニーを求めて(英語原題:Trip to Asia: The Quest for Harmony)(2008年、ドイツ。ドキュメンタリー映画)[16]
- クレッシェンド 音楽の架け橋(2019年、ドイツ)[17]
- ミュージカル
- 童話
- 漫画
- ゲーム
脚注
編集注釈
編集出典
編集参考文献
編集- Peter Raabe: Stadtverwaltung und Chorgesang, Rede bei einem Chorkongress in Essen (1928), in: Peter Raabe: Kulturwille im deutschen Musikleben, Kulturpolitische Reden und Aufsätze, Regensburg, 1936, S. 26-41.
- Malte Korff (Hrsg.): Konzertbuch Orchestermusik 1650–1800. Breitkopf und Härtel, Wiesbaden 1991, ISBN 3-7651-0281-4.
- Nina Okrassa: Peter Raabe - Dirigent, Musikschriftsteller und Präsident der Reichsmusikkammer (1872-1945), Köln 2004, ISBN 3-412-09304-1.
- Orchester, Spezialensembles und Musiktheater. In: Deutscher Musikrat (Hrsg.): Musik-Almanach. Daten und Fakten zum Musikleben in Deutschland, Bd. 7 (2007/08), 2006, S. 733–823, ISSN 0930-8954.
- Gerald Mertens: Kulturorchester, Rundfunkensembles und Opernchöre, Deutsches Musikinformationszentrum 2010 (Volltext; PDF; 963 kB)
- Raynor, Henry (1978). The Orchestra: a history. Scribner. ISBN 0-684-15535-4.
- Sptizer, John, and Neil Zaslaw (2004). The Birth of the Orchestra: History of an Institution, 1650-1815. Oxford University Press. ISBN 0-19-816434-3.
- Marcello Sorce Keller, “L’orchestra come metafora: riflessioni (anche un po’ divaganti) a partire da Gino Bartali”. Musica/Realtà, luglio 2010, no. 92, pp. 67-88.
- 伊福部昭 完本・管絃楽法
- ニュー・グローブ音楽辞典第二版 Instrumentation and Orchestration
- MGG オーケストラの項
関連項目
編集外部リンク
編集- Orchester Und Musiktheater In Deutschland(Liste Des Deutschen Musikinformationszentrums)
- Kartografische Darstellung Der Kulturorchester In Deutschland Des Deutschen Musikinformationszentrums(PDF; 746 kB)
- Deutsche Orchestervereinigung(DOV)
- Deutsche Orchester-Stiftung(DO-S)
- MusData – Orchesterverzeichnis – Internationales Orchester- Und Musikerverzeichnis(Englisch)
- Deutscher Bühnenverein – Bundesverband Der Theater Und Orchester