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﹁[[シモン・ボッカネグラ]]﹂︵1857年3月初演︶の次作としてヴェルディが作曲した作品 |
﹁[[シモン・ボッカネグラ]]﹂︵1857年3月初演︶の次作としてヴェルディが作曲した作品。1856年、[[ナポリ]]の[[サン・カルロ劇場]]から、翌57年に上演する新作歌劇の作曲依頼に応じていたヴェルディは、﹁シモン﹂初演後にナポリへの新作に取りかかる。この時ヴェルディはそれまで10年以上構想を温め続けていた[[ウィリアム・シェイクスピア|シェイクスピア]]の﹃[[リア王]]﹄のオペラ化を計画したが、サン・カルロ劇場がヴェルディが望む歌手たちと契約しなかったことで﹃リア王﹄オペラ化計画は頓挫した。そこで新たな題材を探すことになり、ヴェルディが選んだのが[[ウジェーヌ・スクリーブ|スクリーブ]]の戯曲であった。この戯曲は、[[スウェーデン]]の[[啓蒙専制君主]][[グスタフ3世 (スウェーデン王)|グスタフ3世]]が[[1792年]]に[[仮面舞踏会]]の壇上で暗殺された事件を題材に、王と暗殺者[[ヤコブ・ヨハン・アンカーストレム|アンカーストレム]]伯爵の妻との架空の恋を絡ませたもので、ヴェルディは﹃リア王﹄台本を依頼していたアントニオ・ソンマにこの新作の台本作成を要請する。ヴェルディはソンマの台本に通常通り細かく目を通し、再三にわたって推敲を求めつつ、台本作成と並行して作曲を進めた。1857年11月には台本が完成、同年暮れにはほぼ全曲の作曲も完成する。
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当時は[[イタリア統一運動]]︵リソルジメント︶が激化していた時期であり、フランスの影響が強く、検閲の厳しいナポリで国王暗殺事件を扱う作品の上演は簡単ではなかった。ヴェルディたちは内容にはできるだけ手を加えず、題名を﹃ドミノの復讐﹄としてナポリ検閲当局と交渉したが、折悪しく1858年1月にイタリアの民族主義者[[フェリーチェ・オルシーニ]]が、フランス皇帝[[ナポレオン3世]]暗殺未遂事件をおこしたことなどから、検閲当局は |
当時は[[イタリア統一運動]]︵リソルジメント︶が激化していた時期であり、フランスの影響が強く、検閲の厳しいナポリで国王暗殺事件を扱う作品の上演は簡単ではなかった。ヴェルディたちは内容にはできるだけ手を加えず、題名を﹃ドミノの復讐﹄としてナポリ検閲当局と交渉したが、折悪しく1858年1月にイタリアの民族主義者[[フェリーチェ・オルシーニ]]が、フランス皇帝[[ナポレオン3世]]暗殺未遂事件をおこしたことなどから、検閲当局は態度を硬化させ、舞踏会での暗殺場面の上演等は許可できないと強硬に主張、更なる内容改訂を要求する。劇場側はなんとか上演に漕ぎつけるべく、題名の変更や内容面の見直しをヴェルディに提案したが、作品の根幹に関わる変更はもはやヴェルディにとって到底受け入れられる話ではなく、彼はこれ以上の一切の変更を拒否、サン・カルロ劇場での新作上演を断念して、同劇場での上演作を﹁シモン・ボッカネグラ﹂に切り替え、1858年4月末、ナポリを去ることになる。
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ヴェルディ最新作の上演計画がナポリで頓挫したとの知らせはすぐイタリア中に広まり、ミラノ、ローマなど諸都市の一流劇場から新作の上演希望がヴェルディのもとに寄せられた。幾つもの候補の中からヴェルディはローマのアポロ劇場と上演契約を締結する。同劇場支配人ヤコヴァッチから、当時ローマ法王の直轄地であったローマでは検閲が比較的寛容で、ヴェルディの望む形態での上演を実現しやすいことを熱心に説かれたことや、以前同劇場で﹃[[イル・トロヴァトーレ]]﹄を初演した経験があったことなどが劇場選定の決め手になったといわれる。ローマでの交渉の結果、物語の内容はほぼそのままで、作品の舞台を[[ヨーロッパ]]以外の場所とすることを条件に上演許可が得られた。ヴェルディは舞台を[[イギリス]]植民地時代の[[アメリカ合衆国|アメリカ]]に移すことを提案、主人公グスタフ3世はボストン総督リッカルド、暗殺者アンカーストレム伯爵は総督の秘書レナートに、国王に反対する貴族ホーン伯爵とリッビング伯爵をそれぞれトムとサムエルとして名前が改められた。そして、リッカルドの殺害に使われた凶器をピストルから短剣に変えるなどの修正が行なわれ、題名も﹃仮面舞踏会﹄に決定、ヴェルディによる音楽には全く変更を加えることなく、ようやく初演を迎えることとなった。
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ヴェルディ最新作の上演計画がナポリで頓挫したとの知らせはすぐイタリア中に広まり、ミラノ、ローマなど諸都市の一流劇場から新作の上演希望がヴェルディのもとに寄せられた。幾つもの候補の中からヴェルディはローマのアポロ劇場と上演契約を締結する。同劇場支配人ヤコヴァッチから、当時ローマ法王の直轄地であったローマでは検閲が比較的寛容で、ヴェルディの望む形態での上演を実現しやすいことを熱心に説かれたことや、以前同劇場で﹃[[イル・トロヴァトーレ]]﹄を初演した経験があったことなどが劇場選定の決め手になったといわれる。ローマでの交渉の結果、物語の内容はほぼそのままで、作品の舞台を[[ヨーロッパ]]以外の場所とすることを条件に上演許可が得られた。ヴェルディは舞台を[[イギリス]]植民地時代の[[アメリカ合衆国|アメリカ]]に移すことを提案、主人公グスタフ3世はボストン総督リッカルド、暗殺者アンカーストレム伯爵は総督の秘書レナートに、国王に反対する貴族ホーン伯爵とリッビング伯爵をそれぞれトムとサムエルとして名前が改められた。そして、リッカルドの殺害に使われた凶器をピストルから短剣に変えるなどの修正が行なわれ、題名も﹃仮面舞踏会﹄に決定、ヴェルディによる音楽には全く変更を加えることなく、ようやく初演を迎えることとなった。
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2018年2月11日 (日) 14:01時点における版
﹃仮面舞踏会﹄︵かめんぶとうかい︶は、ジュゼッペ・ヴェルディが作曲し、1859年2月17日に初演された全3幕からなるオペラである。
作品のデータ
●原語曲名‥Un ballo in maschera ●原作‥ウジェーヌ・スクリーブの戯曲﹁グスタフ3世 または 仮面舞踏会﹂ ●台本‥アントニオ・ソンマ ●初演‥1859年2月17日、ローマ・アポロ劇場 ●日本初演‥1923年1月31日 東京・帝国劇場 カーピ歌劇団 ●邦人初演‥1959年10月4日 東京・文京公会堂 東京オペラアカデミー作曲の経緯
﹁シモン・ボッカネグラ﹂︵1857年3月初演︶の次作としてヴェルディが作曲した作品。1856年、ナポリのサン・カルロ劇場から、翌57年に上演する新作歌劇の作曲依頼に応じていたヴェルディは、﹁シモン﹂初演後にナポリへの新作に取りかかる。この時ヴェルディはそれまで10年以上構想を温め続けていたシェイクスピアの﹃リア王﹄のオペラ化を計画したが、サン・カルロ劇場がヴェルディが望む歌手たちと契約しなかったことで﹃リア王﹄オペラ化計画は頓挫した。そこで新たな題材を探すことになり、ヴェルディが選んだのがスクリーブの戯曲であった。この戯曲は、スウェーデンの啓蒙専制君主グスタフ3世が1792年に仮面舞踏会の壇上で暗殺された事件を題材に、王と暗殺者アンカーストレム伯爵の妻との架空の恋を絡ませたもので、ヴェルディは﹃リア王﹄台本を依頼していたアントニオ・ソンマにこの新作の台本作成を要請する。ヴェルディはソンマの台本に通常通り細かく目を通し、再三にわたって推敲を求めつつ、台本作成と並行して作曲を進めた。1857年11月には台本が完成、同年暮れにはほぼ全曲の作曲も完成する。 当時はイタリア統一運動︵リソルジメント︶が激化していた時期であり、フランスの影響が強く、検閲の厳しいナポリで国王暗殺事件を扱う作品の上演は簡単ではなかった。ヴェルディたちは内容にはできるだけ手を加えず、題名を﹃ドミノの復讐﹄としてナポリ検閲当局と交渉したが、折悪しく1858年1月にイタリアの民族主義者フェリーチェ・オルシーニが、フランス皇帝ナポレオン3世暗殺未遂事件をおこしたことなどから、検閲当局は態度を硬化させ、舞踏会での暗殺場面の上演等は許可できないと強硬に主張、更なる内容改訂を要求する。劇場側はなんとか上演に漕ぎつけるべく、題名の変更や内容面の見直しをヴェルディに提案したが、作品の根幹に関わる変更はもはやヴェルディにとって到底受け入れられる話ではなく、彼はこれ以上の一切の変更を拒否、サン・カルロ劇場での新作上演を断念して、同劇場での上演作を﹁シモン・ボッカネグラ﹂に切り替え、1858年4月末、ナポリを去ることになる。 ヴェルディ最新作の上演計画がナポリで頓挫したとの知らせはすぐイタリア中に広まり、ミラノ、ローマなど諸都市の一流劇場から新作の上演希望がヴェルディのもとに寄せられた。幾つもの候補の中からヴェルディはローマのアポロ劇場と上演契約を締結する。同劇場支配人ヤコヴァッチから、当時ローマ法王の直轄地であったローマでは検閲が比較的寛容で、ヴェルディの望む形態での上演を実現しやすいことを熱心に説かれたことや、以前同劇場で﹃イル・トロヴァトーレ﹄を初演した経験があったことなどが劇場選定の決め手になったといわれる。ローマでの交渉の結果、物語の内容はほぼそのままで、作品の舞台をヨーロッパ以外の場所とすることを条件に上演許可が得られた。ヴェルディは舞台をイギリス植民地時代のアメリカに移すことを提案、主人公グスタフ3世はボストン総督リッカルド、暗殺者アンカーストレム伯爵は総督の秘書レナートに、国王に反対する貴族ホーン伯爵とリッビング伯爵をそれぞれトムとサムエルとして名前が改められた。そして、リッカルドの殺害に使われた凶器をピストルから短剣に変えるなどの修正が行なわれ、題名も﹃仮面舞踏会﹄に決定、ヴェルディによる音楽には全く変更を加えることなく、ようやく初演を迎えることとなった。 20世紀以降は、1935年、デンマーク・コペンハーゲン王立歌劇場での上演を皮切りに、舞台をスウェーデンに戻した改訂前のオリジナル版での上演も増えてきている。初演の熱狂
こうして完成した作品は、1859年2月17日にローマのアポロ劇場で上演されて大成功を収め、﹃仮面舞踏会﹄は﹃運命の力﹄﹃ドン・カルロ﹄と並び、ヴェルディ中期を代表する三大傑作の一つとなった。ヴェルディは、このオペラの中でしばしば登場するリッカルドの民衆への愛、リッカルドに対する反逆者の敵意・そしてリッカルドとアメリアの愛という三つのモチーフを音楽で見事に表現していると評される。 初演の時はイタリア統一運動全盛期であり、初演に熱狂した人々は街のいたるところに Viva VERDI!︵ヴェルディ万歳!︶と落書きした。もちろんこれには素晴らしい作品を作曲したヴェルディを賞賛するのと同時に、VERDIが偶然にも﹁イタリア国王ヴィットリオ・エマヌエーレ﹂︵Vittorio Emanuele, ReD'Italia︶の頭文字を取ったものでもあり、イタリア統一を目指すサルデーニャ国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世と重ね合わせられ、それによってヴェルディは愛国のシンボルとなったのである。構成
全3幕6場 ●前奏曲 ●第1幕第1場 ボストン総督リッカルドの接見用大広間、朝 ●第1幕第2場 郊外にあるウルリカの家、深夜 ●第2幕 ボストン郊外の死刑台のある荒地 ●第3幕第1場 レナート邸の書斎 ●第3幕第2場リッカルドの書斎 ●第3幕第3場 仮面舞踏会が開かれている大広間登場人物
●ボストン総督リッカルド︻グスタフ3世︵イタリア語による元表記は﹁グスターヴォ﹂︶︼︵テノール︶ ●リッカルドの秘書レナート︻アンカーストレム伯爵︼︵バリトン︶ ●その妻アメリア︻アメリア︼︵ソプラノ︶ ●黒人の女占い師ウルリカ︻マダム・アルヴィドソン︼︵メゾ・ソプラノ︶ ●小姓オスカル︻オスカル︼︵ソプラノ︶ ●水夫シルヴァーノ︻クリスティアーノ︼︵バリトン︶ ●陰謀者サムエル︻リッビング伯爵︼︵バス︶ ●共謀者トム︻ホーン伯爵︼︵バス︶ ●判事︵テノール︶ ●アメリアの召使︵テノール︶ 墨括弧は初期の人物名。楽器編成
フルート2︵2番はピッコロ持ち替え︶、オーボエ2︵2番はイングリッシュホルン持ち替え︶、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チンバッソ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、ハープ、弦5部︵12型︶。 バンダ‥小さなオーケストラ︵ピアノ譜のみ︶、鐘演奏時間
約2時間10分︵各50分、30分、50分、カット無しの場合︶あらすじ
第1幕
第1場
ボストン総督リッカルドを賞賛する人々とそれにまぎれた反逆者たちの陰謀の合唱で幕が上がる。そこにリッカルドが現われ、小姓オスカルが差し出す仮面舞踏会の招待客名簿から、密かに思いを寄せるアメリアの名を見つけ、心をときめかせてロマンツァ﹁恍惚とした喜びの中で﹂を歌う。人々が退出して独りになったリッカルドは、物思いにふけりながら﹁アメリア﹂と独白するが、その時アメリアの夫レナートが入ってきて狼狽する。しかしレナートはこれに全く気が付かなかった。レナートはアリア﹁希望と喜びに満ちて﹂で、反対派がリッカルドの命を狙っている、もし万が一のことがあったら……と注意を促す。 そこへ判事がやってきて、人心を惑わせる占い師ウルリカの追放を求めるが、ウルリカと仲のいいオスカルがバラータ﹁浅黒い顔で星を仰ぎ﹂を歌ってこれを弁護する。ウルリカへの関心を抱いたリッカルドは、心配するレナートを押し切り、人々を伴ってウルリカの所へ行こうと提案する。これに対して反逆者たちは、リッカルドへの暗殺のチャンスと喜ぶ。第2場
ウルリカの家では大勢の信者が集まっている。ウルリカはアリア﹁地獄の王よ﹂で不気味な呪文を唱えながら、占いをしている。そこへ漁師に変装したリッカルドがやってくる。占いが始まり、総督に仕える水夫シルヴァーノが自分に出世の芽があるか占ってくれと言う。それに対してウルリカは﹁金と位がすぐ手に入る﹂と予言する。これを聞いたリッカルドは、シルヴァーノを士官に任命する辞令と金をシルヴァーノのポケットに入れる。それを見つけてシルヴァーノは大喜び、人々は占いの的中に驚く。 アメリアの召使が現れ、主人が内密に占ってくれるよう求めるので、ウルリカは人払いを命じる。そこへアメリアが現われ、総督リッカルドを愛してしまい、苦しんでいる。不倫の思いを消す方法を教えて欲しいと言う。ウルリカは﹁郊外の死刑台に生える薬草を深夜摘め﹂と言う。人の来る気配にアメリアは退出する。しかし、この話の一部始終をリッカルドは物陰で聞いていた。﹁アメリアが自分を愛している!私も死刑台へ行こう﹂と決心する。 そして、再び人払いをされていた人々が戻るとリッカルドは舟歌﹁告げておくれ…﹂で占いを頼むが、ウルリカは手相から﹁親しいものの手にかかって死ぬ﹂と予言する。さらに﹁最初に握手する者が加害者﹂と聞いて、周囲の人々は握手を求めるリッカルドに誰も応じない。反逆者たちもウルリカの占い結果に真っ青になる。そこへリッカルドの身を案じるレナートが現われ、何も知らずにリッカルドと握手する。これを見たリッカルドは、私が忠実なレナートに殺されるはずがないと笑う。そこへ、シルヴァーノを先頭に総督が来ていると気づいた民衆が押しかけ、大騒ぎとなる。しかし、ウルリカだけはこの中に反逆者がいると見破る。第2幕
死刑台にヴェールで顔を隠したアメリアが現われ、アリア﹁でも、ひからびた茎から﹂でこの恐ろしい場所で薬草を摘む勇気を!と神に祈る。夜中の12時の鐘におびえるアメリアのもとへ、リッカルドが姿を現し、驚くアメリアに愛を告白し、情熱的に迫る。アメリアもやがてこらえきれなくなり、二重唱﹁ああ、何と心地よいときめきが﹂でリッカルドを愛していると打ち明ける。しかし、そこに人が近づいてくる。それはアメリアの夫レナートだった。レナートは、反逆者たちがあなたを狙っている、私とマントを取り替えて逃げて下さいと、勧める。リッカルドは迷うが、アメリアの強い勧めもあってその通りにし、立ち去る。 そこへ反逆者たちがやってくるが、総督がすでに逃げたことを知った彼らは、腹いせに﹁総督の愛人﹂の顔を見ようとして小競り合いになる。それを止めようと仲裁に入ったアメリアだったが、被っていたヴェールが落ちてしまう。レナートは妻の裏切りに愕然となり、反逆者たちはレナートを嘲る。怒り狂ったレナートは総督に復讐を誓い、立ち去ろうとする反逆者たちに明朝屋敷に来るよう言う。第3幕
第1場
屋敷に戻ったレナートは妻の弁明に耳を貸さず、冷たく死を命じる。死を覚悟をするアメリアは、アリア﹁私は死んでまいりましょう。でもその前にこの願いを﹂で子供との別れを求める。これを受け入れ、アメリアが退出すると、レナートはアリア﹁おまえであったか、この魂を﹂でリッカルドの裏切りに憤り、妻との幸福だった生活を懐かしむ。そこに反逆者一派のサムエルとトムが訪れる。レナートはこの2人の陰謀を察知していたが、これを黙っておく代わりに総督の暗殺を引き受けると言う。しかし、サムエルとトムも自分が暗殺をすると言って聞かない。くじ引きで選ぶことになり、名前の書いたカードを壷に入れ、仮面舞踏会の招待状を持ってオスカルが来たことを告げるアメリアに引かせる。かくして、暗殺はレナートが行うことになった。喜ぶレナートにリッカルド暗殺を直感したアメリアだったが、これをリッカルドに知らせるべきか迷う。第2場
アメリアとのことが露見したとも知らず、リッカルドはアメリアを諦める決心をし、レナートとアメリアを本国に帰す辞令に署名する。アリア﹁もしも、私が永遠に﹂で、アメリアのことは美しい思い出にしようと歌う。そこへオスカルが、見知らぬ女性からと手紙を差し出す。総督暗殺の計画が仮面舞踏会の日にあるという内容だった。この手紙を書いたのはアメリアだった。しかし、逃げることを嫌ったリッカルドは、舞踏会に出ることをオスカルに告げ、もう一度アメリアに会っておこうと決心する。第3場
華やかな仮面舞踏会の会場に暗殺者3人組が現れる。レナートはオスカルに総督の扮装を聞き、勘のいいオスカルはうまくはぐらかすが、大事な話があるというレナートに結局は教えてしまう。リッカルドが会場に現れるが、アメリアが近寄り、危険だから立ち去るように言う。リッカルドはアメリアに本国に帰るよう言い、別れを告げる。しかし、そこへレナートが近寄ってリッカルドを刺す。倒れるリッカルド、総督が刺されたということで仮面舞踏会の会場は騒然となるが、リッカルドはこれを制し、レナートにアメリアが潔白だと告げて、懐から本国への帰国と栄転を記した辞令を渡す。呆然とするレナートを尻目に、リッカルドは事件の関係者の特赦を言い残し、民衆への別れの言葉を最後に息を引き取る。聴きどころ
第1幕
- ロマンツァ「恍惚とした喜びの中で」(リッカルド)
- テノールの美しさを堪能できる
- アリア「希望と喜びに満ちて」(レナート)
- レナートのリッカルドへの思いが切々と伝わる
- アリア「地獄の王よ」(ウルリカ)
- 出番が少ないウルリカの出来を左右する曲。メゾ・ソプラノの腕の見せ所
第2幕
- アリア「あの草を摘みとって」(アメリア)
- 二重唱「ああ、何と心地よいときめきが」(リッカルド&アメリア)
- 愛の陶酔の極致ともいうべき情熱的な二重唱
第3幕
- アリア「私の最後の願い」(アメリア)
- アリア「おまえこそ心を汚すもの」(レナート)
- リッカルドへの怒りとアメリアへのレナートの思いが切ない
- ロマンツァ「もしも、私が永遠に」(リッカルド)
- アメリアへの思いを諦める決心を歌う。切々とした思いが伝わる