豚汁
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概要
豚肉︵バラ肉を使用する事が多い︶の脂、牛蒡など灰汁の強い根菜などの野菜や味噌の香りが特徴である。この調和は人気があり、他の汁物には見られない特徴のある料理である。加えて、入れる具材の多さから各種の栄養素が含まれている。名称の元となっている豚肉のほか、複数種の野菜、あるいはそれらの加工品を入れるため、単に副食としての汁物としてでは無く、単品で主菜にもなり得る。
寒い地域や寒い時期に食べられる事が多いのは、豚肉から出る脂がスープの表面を覆い、冷めにくいからである。神社などにおいて年始の参拝客へ、またスキー場など寒い場所や寒い時期に振舞われたりする。家庭で作られ、特に寒い時期に好まれるが、通年、日本料理店や牛丼店で出されている。
地域によって具材が異なり、地域色が
強い料理である。
具が入ったレトルト食品、具を練りこんだ生みそ汁、インスタントカップなど、手軽に食べられる製品も販売されている。
発祥
- けんちん汁に肉を入れたという説(けんちん汁はそもそも作り方が違い、「神奈川県鎌倉市建長寺(語源ともなっている)の精進料理であり肉を入れない」)[1]。
- ぼたん鍋を参考にした説
- 旧日本海軍においてカレー粉の代わりに味噌を入れて作ったことから始まったという説
- 北海道の開拓を行った屯田兵が食べた「屯田兵の汁」を屯汁(とんじる)と呼ぶようになったという説
- 山形県庄内地方の芋煮がもとになったという説
- 日本国外から持ち込まれた説
名称
﹁とんじる﹂ではなく﹁ぶたじる﹂と呼ぶ地域がある。﹁とんじる﹂は重箱読みであるが、﹁とんじる﹂に限らず、重箱読みが慣用化している例は少なくない。また、芋として薩摩芋を使用する﹁めった汁﹂や﹁スキー汁﹂など、地方独自名称もあるなど多様である。
商品名称
多くの場合は﹁とん汁﹂と表記されている。または﹁豚汁﹂と表記される事もある。
●全国販売される有名メーカー商品名のほとんどが﹁とん汁﹂と表記されている。
●全国展開有名牛丼チェーン店においてほとんどが﹁とん汁﹂と表記されており、﹁ぶた﹂表記は無い。
例
●ハナマルキ - はなまる屋カップとん汁[2]
●旭松食品 - 生みそずい 生タイプ とん汁[3]
●すき家 - とん汁
●神州一味噌 - コクが自慢のとん汁[4][5]
●マルコメ - 生みそタイプ とん汁
●永谷園 - あさげ とん汁 カップ入 生みそタイプ
●タケヤ味噌 - タケヤ味噌会館 豚汁
アンケート
●﹁﹃豚汁﹄呼び名集計﹂の﹃豚汁﹄呼び名MAPによると、8割以上が﹁とんじる﹂と呼ぶ地域がほとんどである一方、8割以上が﹁ぶたじる﹂と呼ぶ地域は青森と佐賀だけであった[6]。
●﹁とんじる﹂‥殆どの地域
●﹁ぶたじる﹂‥顕著なのは青森と佐賀︵大まかには、日本北側と九州、また近畿関西の一部︶
●﹁アンケート100人に聞きました﹂によると、﹁とんじる﹂が72%であり、﹁ぶたじる﹂は25%であった[7]。
●NHKのアンケート[8]によると、全国的には﹁とんじる﹂が54%、﹁ぶたじる﹂が46%であった。地域でわけると大まかに次のようになった。
●﹁とんじる﹂‥下記以外の日本全国
●﹁ぶたじる﹂‥東北、北陸、近畿、山陰、四国、北海道
辞書類
料理用語辞典・食材辞典
●﹃丸善食品総合辞典﹄︵丸善、1998年︶では項目名﹁豚汁﹂として﹁とんじる﹂の箇所に説明されており[9]、﹁ぶたじる﹂の箇所では﹁とんじる﹂の箇所への参照としている[10]。
●﹃料理食材大事典﹄︵主婦の友社、1996年︶では項目名﹁豚汁﹂として﹁ぶたじる﹂の箇所で説明している[11]。
国語辞典
国語辞典において﹃豚汁﹄の項目が存在する場合は﹁とんじる﹂を中心に記述するものと﹁ぶたじる﹂を中心に記述するものがある。
●見出し語に﹁とんじる﹂しかみあたらないもの。﹃明鏡国語辞典﹄、﹃新明解国語辞典第6版﹄
●﹁とんじる﹂に説明し、﹁ぶたじる﹂は誘導に留めるもの。﹃日本国語大辞典第2版﹄
●﹁ぶたじる﹂に説明し、﹁とんじる﹂は誘導に留めるもの。﹃広辞苑 第5版﹄﹃大辞林 第2版﹄﹃大辞泉 増補・新装版﹄
和英辞典
和英辞典においてはそもそも﹃豚汁﹄の項目が存在しない場合が多いが、ある場合は﹁とんじる﹂のみとなっている。
作り方
材料
豚汁に用いる材料には、地域差・家庭差があるが、ここでは一般的と思われる物の中から一部を挙げる。
●味噌、酒粕
●醤油、味醂、酒、出汁
●豚肉︵脂のある肉、バラ肉を使用することが多い︶
●牛蒡︵ごぼう︶、大根・人参などの根菜類
●長葱 、
●里芋、じゃが芋、薩摩芋などの芋類
●蒟蒻 ︵こんにゃく︶
●木綿豆腐、油揚げ、焼き豆腐などの豆腐類
●椎茸、しめじなどのきのこ類
他の野菜も多く使用され、また好みにより一味唐辛子・七味唐辛子などの香辛料をふりかける。
調理方法
調理方法も、地域や家庭などで様々である。
作り方の例︵NHK﹁ためしてガッテン﹂によるもの[8]︶
(一)煮える時間が同じくなるように野菜を切り湯通しする。肉は表面が変化し霜降りになる程度に湯通しする。
(二)水に野菜を入れ強火で煮ることで素材の味を十分に出し切る。それらが完全に柔らかくなる前に半分の味噌を加えて再度煮る。
(三)湯通しによって旨みを閉じ込めた豚肉を加える。豚脂の香りをなくさないために長く煮ないようにする。
(四)再度味を見ながら味噌を加えて、刻み長ネギを入れ火を止める。
脚注
- ^ スープ大辞典 豚汁の基礎知識と発祥
- ^ はなまる屋カップとん汁
- ^ カップ生みそずい とん汁
- ^ コクが自慢のとん汁
- ^ おいしいね!! とん汁
- ^ 「『豚汁』呼び名集計」
- ^ アンケート100人に聞きました 「豚汁」。何て読みますか?
- ^ a b NHKためしてガッテン 2005年11月2日放送(2005年11月4日時点のアーカイブ)
- ^ 『丸善食品総合辞典』丸善 p.777 1998年
- ^ 『丸善食品総合辞典』丸善 p.937 1998年
- ^ 『料理食材大事典』主婦の友社 p.729 1996年