スキー場
発祥[編集]
元々は冬季の登山に際して交通機関のある山麓の人里から山へのアプローチにスキーを利用しそれを楽しむ登山者が泊まり込みで練習するための場所︵=ゲレンデ、独: Gelände、土地、地形、敷地[1]︶だったが、次第に練習場でスキーを楽しむことだけを目的とする人々が増えてスキー場と広く一般的に呼ばれるようになり、もとの目的から独立したスポーツ・レジャーとしてそこで滑ることをスキーと呼ぶまでになった。 日本における最初のスキー場は1911年︵明治44年︶に開設された五色温泉スキー場︵山形県︶であり、民間用にチェアリフトが最初に設けられたのは草津国際スキー場︵1948年︵昭和23年︶・群馬県︶である。草津国際スキー場以前では、進駐軍が1946年︵昭和21年︶に建設した札幌スキー場と1947年︵昭和22年︶に建設した志賀高原丸池があった。 世界初の屋内スキー場は1958年︵昭和33年︶に開設された、豊島園インドアスキー場︵東京都︶である。 現在ではスキー場は全国各地に点在し、特に長野県北部や新潟県、山形県などの豪雪地帯では主要産業となっている。スキー場の周囲には宿泊施設や飲食店、土産物店などが点在し、温泉施設が充実している所も多い。これらが冬はスキー、夏はハイキング、パラグライダーなどのアウトドアスポーツの拠点として、またリゾート施設や避暑地として利用される傾向が強い。索道︵リフトなど︶[編集]
一方、一部の長距離の物を除いた、例えばゴンドラリフト路線間に2~3線程度配置されているチェアリフトは、麓付近で滑ることの多い初心者、検定やレースなどの決まったコースでの利用、景色や特定のコース自体(スキーのモーグルコースやスノーボードのハーフパイプ等フリースタイルコースなど)を楽しみたい場合、あるいは「山頂は無理でも途中の中腹位からなら…」という場合等において、乗り継ぎも含めた巧みな配置でゴンドラリフトを補っている。
チェアリフトはスキー板やスノーボードを履いたまま搬器(イス)に座るものが主流で、通常は1~8人が乗車でき、いかなる定員の場合でも1座席200kgまで耐えられるように設計されている。1~4人乗りはそれぞれシングル、ペア(ロマンス)、トリプル、クワッドの名称が付くが、6人以上のリフトは現在の日本において独自の呼称が無い。なお、石打丸山スキー場やニセコビレッジなどに設置されている、同じケーブルで6人乗りリフト搬器とゴンドラリフト搬器が混合運用されているものもあり、これは「コンビリフト」と呼ばれている。
旧来からのシングル(1人乗り)リフトは乗車時や風などで前後左右に揺れることがあるために幾分心許ないものもあり、乗車時は、搬器のバーにしっかり掴まるか腕を掛けるよう推奨されている。また、後に出現した高速タイプ(通常2.0 - 2.5 m/sの速度[5])の物は、乗降時に速度が速くてタイミングが取りにくいことがあるので[注釈 3]乗降に技術が必要で、初心者にはあまり勧められない。
ペアリフト以上の乗車定員の物は、搬器がケーブル(支曳索)に固定されて一定速度で動く固定循環式の他に、乗降車停留場で搬器がケーブルから離れてゆっくりと動く自動循環式の物もある。初心者は自動循環式のリフトの方が乗車しやすいことになるが、自動循環式のリフトは長距離リフトである場合もあり、その関係でリフト乗降停留場間の範囲内にあるゲレンデに急斜面箇所も含まれることがあるので、あらかじめリフトの運行範囲間にあるゲレンデの傾斜、あるいは「初級」「中級」「上級」といった表記などを把握する必要がある。
その他、後述のロープトゥ・リフト、Jバーリフト、Tバーリフト、プラッターリフト、マジックカーペットと呼ばれる、雪面上を滑りながら上昇する滑走式リフトという物もある。
リフトの種類[編集]
●チェアリフト︵もっとも一般的な椅子式のリフト︶ ●シングルリフト︵1人用︶ ●ペアリフト・ロマンスリフト︵2人用︶ ●トリプルリフト︵3人用︶ ●クワッドリフト︵4人用︶ ●6人乗りリフト ●8人乗りリフト ●ゴンドラリフト ●フニテル ●ロープウェイ ●3Sロープウェイ ●滑走式リフト ●ロープトゥ・リフト︵英語︶‥ケーブルに付いているバーや握り玉等の支持具に掴まるか、バーを体の横から引っかける、もしくは旧来のロープタイプの場合でロープそのものに掴まる一人用。 ●Jバーリフト︵英語︶‥J形をしたバーに掴まるか、バーを体の横から引っ掛けて使う一人用。日本では後述の物とまとめてTバーリフトとも呼称する場合がある。 ●Tバーリフト︵英語︶‥T形をしたバーに掴まるか、バーを体の横から引っ掛けて使う二人用。一人で乗車する場合はバーに掴まるかバーの片側に跨がるなどする。 ●プラッターリフト︵ボタンリフト︶︵英語︶‥プラッター︵ボタンとも︶と呼ばれる円盤が付いたバーを跨ぐ、またはスノーボーダーが脇に抱えるか山側の脚の膝裏に引っ掛けて使う一人用。日本ではTバーリフトと呼称する場合もある。 ●マジックカーペット︵スキー・スノーボード用動く歩道︶︵英語︶‥雪面とほぼ同じ高さに設置されたベルトコンベア様のベルトの上に乗って移動する。リフト券[編集]
多くのスキー場では遊園地のように入場料は徴収していないが、チェアリフトやゴンドラリフトに乗るためにリフト券と呼ばれる券を購入する必要がある。 チェアリフト、ゴンドラリフトの両方があるスキー場では両方に乗ることのできる共通リフト券を発行しており、しばしば共通リフト券のみとなっている。 リフト券は1回券・回数券・1日券・半日券・各種時間券・ナイター券・シーズン券など複数の種類がある。 多くのスキー場では視認性の高い紙製のリフト券︵最近では偽造防止対策が施されたリフト券もある︶を用いていて、これを透明な窓のついたリフト券ホルダーに入れた状態で係員に見せて入場するのが通例である。 1回券・回数券はスキー場によりカード式か紙の回数券タイプがあり、カード式は改札機のカードリーダーの挿入口に差し込むか、ICカードの場合はカードリーダーにタッチする。回数券タイプは係員に規定の枚数の券をちぎって渡すか、改札口にてまたは係員から直接改札鋏で入鋏してもらってから入場する。1回券・回数券は余っても基本的に払い戻しはできないが、余った券はシーズン終了までであれば後日利用することもできる。 リフト券ホルダーは腕やウェアの金具につけたり首から下げたりするものをリフト券売場などで購入でき、小物入れと一体になったものもあるほか、ウェアに専用ポケットとして付いているものもある。 一部のスキー場では非接触型ICカード技術を用いたICチケットをリフト券としており、リフト乗り場の入場口ゲートにあるカードリーダーでチケットを認識させて入場する。たいていのICチケットリフト券は高価で、購入時に保証金を徴収してチケットの返却時に保証金を償還するデポジット制や、購入後にICカードへのチャージ等をして来シーズン以降を含めて複数回使用できる方法︵一例として、後述する北海道のニセコアンヌプリにある4つのスキー場など[6]︶が取られているが、現在ではカード本体を紙製にするなどして低価格化したICカードが作られるようになり、保証金及び返却不要の使い捨てとしたICチケットも出てきている[7]。ICチケットは視認性を要求されないので好みの場所に収納できる。ただ、ICチケットは利用者の利便性というよりは、複数の索道会社が一つのスキー場で営業を行っている、あるいは同じ山に複数のスキー場が開設されて相互にスキー場の往来可能なことから各スキー場共通リフト券を発行しているなどといった場合に、利用実績を明確にして収益の配分を行うことが主要な目的だというのが実際のところである。 基本的にリフト券を有償・無償を問わず他人に譲渡・転売することは禁止されている。地域によっては条例によって罰せられることもある。ICカード式の場合は、不正利用禁止のためゲートを通過したら一定時間使えない仕組みがある。スキー場にもよるがコース外滑降等のスキー場の規則に違反した場合、リフト券を没収されることもある。 欧米やオセアニアなどのスキー場では、リフト券は針金のついた紙製シールになっていて、針金をスキーウェアのファスナーのスライダーの取っ手などに通してからシール面同士を貼り合わせて固定し、利用が終わったら破り捨てるものが多い。これは、紛失などのトラブルを防ぎ、また使用済の券の譲渡などの不正行為の予防策である。 リフト券は、通常はスキー場のリフト券売り場で購入する方法が多く、スキー場によってはスキー場内ショップのレジカウンターを兼用したり、自動発券機︵後述するニセコの例など︶が使われることもある。 旅行代理店で販売している宿泊を伴うパックツアーではリフト券の料金が旅行費用に含まれていることがあり、その場合引換券を入手した上でリフト券売り場に渡してリフト券を受け取ることが多いが、旅行費用に含まれていなくてもリフト券の割引券が入手できる場合もある。 近年では主要なコンビニエンスストアの端末で目的のリフト券チケットを事前に購入できることもあり、その場合は割引価格での販売であったり、通常のリフト券料金分を支払うとリフト券引換券の他に一定額のスキー場内施設利用金券やスキー場内レストランの飲食券も一緒に付いてきて、実質的な割引となっている物もある。 オンライン決済によるリフト券の事前購入も行われ始めている。一例として、北海道のニセコアンヌプリにある、ニセコユナイテッドに加盟する4つのスキー場において、2019年よりウェブサイト上で共通リフト券のネット販売が開始されている[6][8]。初回利用時は事前にウェブサイト上でクレジットカードを使うオンライン決済を行って購入し、現地ではスキー場内の自動発券機にQRコード︵プリントアウトするか、スマートフォンやタブレットの画面に表示させた物︶を認識させてICカードを購入する。リフト券となるICカードは引き続き所持することになり、2回目からは翌シーズン以降も含めてオンライン決済だけでそのままスキー場の自動改札機を利用できる。また、この方式による割引制度も行われている。管理[編集]
難易度表示[編集]
アルプス山脈では、DIN 32912によって以下のように定められている。シンボル | 色/ 対象 |
説明 |
---|---|---|
青/ 初級者向け |
ごく短い区間以外、横縦全てで最大勾配が25%以下 | |
赤/ 中級者向け |
ごく短い区間以外、横縦全てで最大勾配が40%以下 | |
黒/ 上級者向け |
勾配が40%以上 |
レンタル[編集]
スクール[編集]
スキー場では、スキースクール、スノーボードスクールといった滑り方に関する教育を受ける環境を用意しているところもある。 一般的なスクールは、1人から申し込みができ、受講を申し込んだ人が集まって複数人で実地の教育を受ける。用具はスクールでレンタルできる場合もあるが、通常は各自で事前に用意する。 スクールを受講するには、受講開始時刻までに事務所等で予約をしておく必要がある。時間は半日コース、一日コースなどから選ぶことになる。半日コースは1回2時間、一日コースは午前2時間、午後2時間程度のものが多い。 スクールは、初心者や中級者、上級者などのコースに分かれており、全く経験がない初めての人から、ある程度経験のある人まで自分の技量に合わせて学習することができる。未経験者が初めてスキー、スノーボードを始める場合には、リフトの乗り方、降り方、道具の装着方法や使い方などの最小限の知識もないことから危険なため、安全面、上達面からみて、初めて始める場合には、初心者向けのスクールに入って学ぶことが最適である。 プライベートスクールと呼ばれるスクールでは、見知らぬ人の集団ではなく、個人やグループ単位で教育を受けることができる。また、キッズスクールなどの子供を対象にしたスクールや、市町村単位やスポーツ運営企業などで独自に構成されているスキー・スノーボードクラブ等の団体が主催でスキー場の利用許可を受けてスクールを開いているところもある。 多くのスクールでは、スキー技術の習得の度合いを客観的に判断する検定会が行われている。この場合、日程を定めた全日本スキー連盟︵SAJ︶によるスキーバッジテストやスノーボードバッジ︵級別︶テストなどを開催し、受験してもらうことも多い。スノーボード禁止[編集]
スノーボードの草創期には、その認知度の低さもあって特に滑走規制をもうける必要は無かったが、ボーダー人口の増加とともにスノーボードを全面禁止にしたり、部分的に解禁したりするなど、スキー場によって対応が分かれていた。現在ではスノースポーツとしてスキーに匹敵するほど一般化しているため、営業的な兼ね合いも相まって規制は順次緩和されており、現在は大半のスキー場でスノーボードは全面利用可能である。脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 国際スキー連盟(FIS)が定めるルールにより、「コースを歩く時は真ん中を歩かない」とされていて、全国スキー安全対策協議会によってこのような啓発活動 (PDF) が行われている。
- ^ 中には、スノーボードを立てる設備が付いていない、カービングスキーやファットスキー等の幅広のスキー板がスキー立てに入らない、子ども用やスキーボード(ファンスキー)等の短小スキー板でスキー立てが使えない、そもそもスキー立てがキャビン内にある構造といった場合、スキー板やスノーボードをキャビン内に持ち込んで乗車することがある。
- ^ ただし係員への申し出により、乗降時の減速操作を行ってくれる場合がある。
出典[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- SBN FREERUN (日本語)
- 雪番長 (日本語)