シーレーン
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シーレーンとは、一国の通商上・戦略上、重要な価値を有し、有事に際して確保すべき海上交通路のことである。英語の類義語はSLOCs︵Sea Lines of Communication︶である[1]。
概要[編集]
そもそも海上には決まった通航路があるわけではなく、航海が一般化するにつれて、ほぼ一定した航路のようなものが自然に形成されるようになった。こうした海上交通ルートを、陸上の小途になぞらえたものがシーレーンである。また、シーレーン防衛上、その要衝となる地点をチョークポイントという。 海洋国家にとって、シーレーンの安全保障は最重要課題である。さらに現代のシーレーンは単に物品の輸送路というだけでなく、海底ケーブル網の基幹をなしており、商用・公用の両面で国際通信の要である。日本の場合[編集]
日本は四方を海に囲まれた島国であり、海岸線の長さは北方四島を含めると4,842海里、つまり8,967.496kmに及び世界第7位、排他的経済水域の面積は3,861.1万km2に及ぶ。オイルショックなどの影響から産油国との外交関係、そしてシーレーンの安定化が不可欠と感じた日本は、1982年︵昭和57年︶頃から外洋に伸びるシーレーン 1,000海里防衛構想を策定するなど、日本のシーレーン防衛のあり方が課題とされるようになった。 また今日において、国内経済もほぼ海上交易に依存し、日本の輸入依存度を見てみれば輸入量は石油2億トンをはじめ、7億5,000万トンにも達しており、特にエネルギーは2001年︵平成13年︶時点の資源エネルギー庁調査において国内の輸入依存度の高さは石油が99.8%、石炭98.4%、天然ガス︵LNG︶96.6%、原子力︵ウラン︶に至っては100%を依存している。輸出はハイテク工業品だけで2,000万トン、第1次産品を含めれば7,000万トンにも及ぶ。 こうしたことから、日本の食卓に並ぶ豆腐や蕎麦も﹁シーレーンの賜物﹂といわれるなど、いかに日本の輸入依存度が高いかを示している。 海上自衛隊の戦術思想の原点は、かつての大日本帝国海軍が軽視しがちであった﹁シーレーン防衛﹂にあり、対潜戦・対機雷戦に重点をおいた訓練を行っている。中曽根航路帯[編集]
中曽根内閣はこのシーレーン防衛に対して次の4つの基本指針を定めた。 (一)日本列島の地勢的な位置付けを、ソ連のTu-22M バックファイア爆撃機の侵入に対して防波堤となる﹁不沈空母﹂の存在にすること。 (二)日本列島を取り巻く海峡︵宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡︶について完全な支配権を保持すること。 (三)ソ連潜水艦やその他の海軍艦艇による通航を許さないこと。 (四)太平洋の防衛圏を数百海里拡大し、グアム - 東京および台湾海峡 - 大阪を結ぶシーレーンの確立をなすこと。 これらの点に防衛政策の軸がおかれることとし、中曽根内閣のとったシーレーン体制を俗に中曽根航路帯といった。脚注[編集]
- ^ 英語の Sea lane、またはshipping lane は、日本語のシーレーンがもつ「通商上・戦略上、重要な価値を有し、有事に際して確保すべき」のニュアンスを含まない。単に「航路帯」の意味である。また、日本財団図書館(電子図書館)の海洋略語辞典(日本水路協会)によれば、SLOCsの日本語訳は「海上交通路」である。